平成21年度の税制改正に対応した法人税の申告書別表などが、6月15日(月)から国税の電子申告システム(e-Tax)で利用できるようになることを国税庁が発表しました。
e-Taxは、会社のパソコンを使ってインターネットを通じて国税の申告ができるシステムです。とくに法人税については、確定申告書に添付する別表などが数多くあるため、専用ソフトを使うことで手作業よりもスムーズに作成できることから、利用する企業が増えています。
このほど国税庁が発表した6月15日から利用を可能とする法人税の申告書別表などは、今年4月1日以後開始する法人の事業年度に対応したもので、平成21年度の税制改正項目を盛り込んだものです。また、国税庁ではe-Taxソフトについても、同日からバージョンアップにより「対象帳票一覧」に掲載したすべての様式の利用を可能とすることを予定しています。
なお、平成21年度税制改正では、平成21年2月1日以後に終了する事業年度において発生した欠損金額に応じて、前年度に納めた法人税を還付する欠損金の繰戻し還付制度が中小企業のみ適用できることになりました。さらに、政府による追加の経済対策で、資本金1億円以下の法人が支出する交際費の定額控除限度額が400万円から600万円に引き上げられ、試験研究費の総額に係る税額控除制度などについても、平成21、22年度における税額控除の限度額が法人税額の20%から30%に引き上げられています。これらは、申告書別表等で計算することになる予定です。
5月21日、国民に司法参加を義務付けた裁判員制度がスタートしました。選任された人には日当や交通費が支払われますが、当然、それらは所得として税務署に申告しなければなりません。
国から選任された裁判員は、会社を休んで裁判所に出向くことになるため、職務への対価として日当と旅費が国から支払われます。具体的な額は、選任手続や審理・評議などの時間に応じて、裁判員候補者・選任予定裁判員については1日当たり8000円以内、裁判員・補充裁判員については1日当たり1万円以内と決められています。たとえば、裁判員候補者の場合は、選任手続が午前中だけで終わり、裁判員に選任されなかった場合は、最高額の半額程度が支払われる予定です。
問題は、その日当などにかかる税金の取扱いです。じつは、その取扱いについては、昨年11月に国税庁が最高裁判所からの問い合わせに対して回答しています。それによると裁判員、補充裁判員並びに裁判員等選任手続の期日に出頭した裁判員候補者と選任予定裁判員に対して支給された日当や旅費については「その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する」とされ、「実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する」とされています。
このほど、国会で成立した追加の経済対策に盛り込まれた「エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業」(エコポイント事業)で税務上の問題が急浮上しています。
エコポイント事業は、地球温暖化防止や経済の活性化、地上デジタル放送対応のテレビの普及を目的としていて、省エネ性能の高いエアコン、冷蔵庫、テレビを購入した人に対して、一定のエコポイントを国が付与し、そのポイントを使ってエコ商品などと交換ができるという仕組みになっています。
エコ商品購入時に付与されるエコポイントについては、エアコン、冷蔵庫が価格の5%分程度 、地デジ対応テレビは価格の10%分程度 、対象家電商品の購入に合わせ、同種の古い家電をリサイクルした場合は、それらに加えてリサイクル料金相当分程度のポイントが付与されます。
いま取り沙汰されている税務上の問題とは、まず付与されるエコポイントは、それを受け取った人の所得となり、個人ならば雑所得として課税され、法人ならば法人税の課税対象となるのではないかということです。というのも、航空会社が取扱っているマイレージなどは一時所得で、一般小売店などが行っているキャッシュバックなどは雑所得として課税されているからです。
また、このエコポイントは法人も利用可能なのですが、付与されたポイントの交換にあたって、購入したエコ商品の領収書を国に提出しなければならず、消費税の課税事業者ならば、仕入税額控除の適用要件となっている請求書等の保存義務を果たせなくなってしまうことになります。
国税庁では、こうした問題について「法的な整備が必要なのではないか」として取扱いに苦慮しているところです。
滞納している税金を納めてもらうために、国税局のコールセンターが滞納者にかけている電話が振込め詐欺と勘違いされる可能性があるため、国税庁がそういった勘違いをしないようPRに躍起になっています。
全国の国税局に設置されている集中電話催告センター室(納税コールセンター)が、この5月から2カ月間、平日だけでなく休日も電話催告を実施しています。5月と6月以外は、納税コールセンターや税務署は、土・日曜日、祝日は閉庁しているので、国税庁が懸念しているのは、納税者が振込め詐欺などの悪質な電話と勘違いしてしまうことです。
電話催告とは、国税を期限までに納付していない人に対して、所轄の税務署に代わって、納税コールセンターに配属されている国税局の職員がコンピュータシステムを利用して、集中的に電話で納税を促すというもの。したがって、平日ならばいざ知らず、休日にそのような電話がかかってくると、当然、振込め詐欺などの電話と勘違いする可能性があるわけです。そこで、国税庁では、(1)税務職員が納税者に電話で問い合わせをする場合は、提出した申告書等を基にその内容について本人に確認することを原則としていること、(2)税務署や国税局では、還付金受取のために金融機関等の現金自動預け払い機(ATM)の操作を求めることはない、(3)国税の納税のために金融機関の口座を指定して振込みを求めることもない―、といった点を納税者に呼びかけています。
金融商品取引業者からの個人向け国債の購入者へ交付するキャンペーン景品の所得税法上の取扱い関する照会に対して、東京国税局が「その景品は一時所得ではなく雑所得にあたる」という回答を出していたことがわかりました。
財務省が売り出している個人向け国債は、1万円から購入ができることから、その販売代理を行なう銀行などの金融商品取引業者の間では、売れ筋商品のひとつとなっています。
そのため代理店間の販売競争も激しく、あの手この手で売り込み合戦が展開されています。このほど東京国税局に文書で問い合わせてきた業者もその代理店のひとつで、個人向け国債を販売するにあたり「新規資金にて100万円以上購入した顧客に対して2,000円以上のキャッシュバックまたはギフトカードを景品として提供する」というキャンペーンを実施。その景品を受け取った顧客は、一時所得で所得税を申告しても大丈夫かを尋ねてきたものです。
福引の懸賞金や競輪・競馬の払戻金は、一時所得とされていることから誰もが一時所得で大丈夫だと思っていましたが、東京国税局の回答は「当該景品の交付金額は、個人向け国債を募集期間内に100万円以上購入し、その購入の多寡に応じて決定されることになるため、当該景品の交付は、当該国債の購入という行為に密接に関連してなされているものと認められる。そうすると、当該景品は、対価性を有していることから、一時所得に該当しない。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないことから、雑所得として取り扱う」としています。
麻生内閣を支える与党の一角、公明党がこのほど公表した「都市農業・新ビジョン試案」がクローズアップされています。生産緑地法で塩漬けされた都市農地を宅地並み課税なしで他者に貸し出すことを認めているからです。
都市農地が誕生したのは、1991年です。政府が生産緑地法を改正し、市街化区域内農地を「宅地化する農地」と「保全する農地(生産緑地)」に区分けしたことが発端でした。三大都市圏の特定市の「宅地化する農地」(特定市街化区域農地)については、固定資産税・都市計画税の宅地並み課税を行い、相続税の納税猶予・免除制度を廃止する一方で、生産緑地となった農地については、30年間の営農を義務付けました。
都市農地をつくった目的は、安全・安心な食料を供給することや緑と潤いのある住環境の形成、災害時の避難場所などに利用することにありましたが、あまりにも厳格だったため、1985年に約18.7万haあった全国の市街化区域内農地が、2007年には約9.3万haとほぼ半減しました。公共性の高い都市農地ですが個人の資産である以上、相続が発生するたびに縮小・分散しているわけです。
そこで、公明党では都市農地について抜本的な対策を講じなければ、一気に農地が減少する危機感を覚え、都市農業振興プロジェクトチームを立ち上げて議論を展開。新たなビジョンへ向けた座長試案をこのほどまとめました。
同試案の中で注目されているのは生産緑地制度の改革で、現在、一団の農地で「500平方メートル以上」とされている生産緑地の指定要件を「300平方メートル以上」に緩和することと、生産緑地を個人以外の経営主体に貸し出した場合には、相続税納税猶予制度を適用できるようにするとした点です。
減価償却資産に課税される固定資産税について減価率の再チェックを行う事業者が増えています。中部・近畿圏で、課税された固定資産税をめぐり自治体を相手取って争っている業者が勝訴するケースが相次いでいるからです。
4月23日、名古屋市の倉庫会社2社が、同市の課税ミスで固定資産税などを過大に徴収されたとして、同市を相手に約2,800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、名古屋高等裁判所が地裁判決を変更し、「課税処分は違法」として自治体に計約2,700万円の支払を命じる判決を行ないました。裁判長は「名古屋市は、2社が所有する冷凍倉庫を一般の倉庫として評価し、過大な課税徴収をしていた」と指摘。その上で、「倉庫の用途を識別する職務上の注意義務を尽くしていない」と述べて同市の過失を認定しました。
また同日、神戸地方裁判所においても、神戸市の倉庫会社など15社が、倉庫の種類を取り違え固定資産税などを過大に徴収されたとして、神戸市と兵庫県尼崎市に損害賠償を求めた訴訟の判決で、両市に計約5億円の支払いを命じています。判決理由では、冷凍倉庫は経年劣化が早いため、一般の倉庫より固定資産税や都市計画税が安いにもかかわらず両市は誤って一般の倉庫として扱い余分に税金を徴収したとしています。
償却資産に対する固定資産税の評価額は、原則として「前年度の価格×(1−減価率)」で求めます。算式中にある減価率は、耐用年数表(財務省令)に準じて定められているため、自社についてもその減価率の適用誤りなどがなかったかを再確認する事業者が増えています。
新型インフルエンザ発生で北米への出張を取り止める会社が相次いでいますが、そういった会社が支払う旅行会社へのキャンセル料の税務処理がクローズアップされています。
4月28日、世界保健機関(WHO)が豚インフルエンザの警戒レベルを「フェーズ4」に引き上げたことを受けて、外務省が「感染症危険情報」を出し、メキシコへの不要不急の渡航を延期するよう国民に要請しました。さらに、4月30日にはアメリカでも新型インフルエンザの感染者の死亡が確認されたため、北米への出張を取り止める日本国内企業が増えています。
ただ、その出張を取り止める会社の間で問題となっているのが、旅行会社などに支払うキャンセル料です。出発日直前のキャンセルは、前金で支払っている費用の50%から100%がキャンセル料として差引かれるため、会社にとってはこれが経費として計上できなければ大きな痛手となります。
今回の事態を受けて国税当局では「旅行を取り止めたことで発生するキャンセル料は、雑損として損金に算入することができる」としています。ただし、キャンセル料といわれるものの中には、解約に伴う事務手数料としての性格のものと、解約に伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格のものとがあります。原則として、事務手数料は消費税の課税対象ですが、損害賠償金については、消費税は非課税です。したがって、旅行会社などにキャンセル料を支払う場合、消費税は非課税となり、もし誤って消費税を支払ってしまった場合は、返金を求める必要があります。というのも、その誤って支払ってしまった消費税は仕入税額控除の計算上、課税仕入れとして売上げに係る消費税から差引くことができないからです。