東京都税制調査会(会長=神野直彦東大大学院教授)が、平成20年度の答申を取りまとめました。それによると「税及び社会保険料を合わせた企業負担は、高いとは言えないので実行税率の引下げは早計」としています。
東京都税制調査会の平成20年度の答申では、「地方の基幹税のあり方」として、地方消費税・消費税については、地方自治体が増大する担う役割を果たしていくため、財政基盤の強化の必要性を訴え、所得税から住民税への税源移譲に続く次のステップとして「地方消費税の充実が不可欠である」としています。税率については、国・地方を通じた安定的な財源を確保するため「引上げについて積極的に検討し、できるだけ早い時期に選択肢や道程を示すべきだ」としました。ただし、「当面の景気状況に十分配慮するとともに、行政の無駄遣いを厳しく見直す必要がある」ことも付け加えています。
一方、法人住民税と法人事業税の法人2税と法人税については「税及び社会保険料を合わせた我が国の企業負担は、高いとは言えない。また、実効税率の高さが国際競争力を阻害する主たる要因ではなく、引下げは早計」として、国の実効税率の引き下げに向けた議論を牽制しました。
今後の課題として注目されたのが、個人所得課税を巡る課題です。同答申では「経済社会の活力を維持しつつ、所得税の所得再分配機能を回復していく必要がるとしたうえで、金融資産所得への課税のあり方や給与所得控除の上限設定、高所得者の公的年金等控除の見直し、給付付き税額控除の導入などが今後の検討課題である」としています。
三井住友フィナンシャルグループのシンクタンク「株式会社日本総合研究所」が政府の実施する定額給付金について「可処分所得を押し上げるが、2009年度の名目消費は6年ぶりに減少する」というレポートを発表しました。
日本総合研究所が発表したレポートは「景気後退が長期化するわが国経済〜2年連続マイナス成長に〜」と題するものです。それによると、2007年末に後退局面入りした日本経済は、「足元で調整が深刻化。今年7〜9月期の成長率が2四半期連続のマイナスになったほか、企業マインド、消費者マインドも急速に悪化している」としています。そして、日本の景気について「景気後退局面が長期化する見通し。これは、個人消費は持ち直すものの、欧米の景気の低迷長期化やマーケットの混乱を背景に、企業部門の業況が深刻化することが原因」という展望を示しました。
企業部門の業況が悪化する要因については「原材料コストの低減によりマイナス幅は縮小するものの、内外景気の悪化による売上げ減により、減益基調は持続する。これに加えて、設備稼働率も急低下するため、設備投資は減少傾向が強まる見通し」があるためです。
また、政府が減税措置から切り替えた定額給付金の効果については「可処分所得を押し上げるものの、景気後退による雇用者報酬の減少、消費マインドの悪化により、2009年度の名目消費は6年ぶりに減少する。しかし、物価が大幅に下落するため、実質消費の増勢は拡大。景気の下支え役になる」としています。
来年5月から裁判員制度がスタートしますが、このほど、裁判員などに支給される旅費や日当、宿泊料に関する所得税法上の取扱いを国税庁が明らかにしました。
今回の取扱いは、最高裁判所が税務上の取扱いを想定したものに対して国税庁がそれを承諾した形がとられています。
最高裁判所によると、裁判員制度では「裁判員候補者及び選任予定裁判員として裁判所から呼出しを受けた場合、裁判員等選任手続の期日に出頭しなければならず、その呼出しに応じて出頭した裁判員候補者及び選任予定裁判員には、『裁判員の参加する刑事裁判に関する規則』により、旅費、日当及び宿泊料が支給され、『裁判員法』でも、裁判員及び補充裁判員について、旅費等を支給されることになっている」と説明しています。
そこで、問題となるのが、その支給される旅費などの税務上の取り扱いでした。最高裁判所では、裁判員などに支給される旅費などは、労務提供の対価として使用者から受ける給付とはいえないから給与所得には該当せず、また、実費弁償的な対価としての性質を有していることから一時所得にも該当しないと判断。したがって「裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する」とし、「実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する」と想定しました。これに対して国税庁は「貴見のとおりで差し支えない」と回答しています。
会計検査院の「平成19年度決算検査報告」で、財務省が財務局職員の宿舎建設に絡んで、建設会社に支払わなくても良い消費税を約8千万円も払っていたことがクローズアップされています。
会計検査院の報告によると、財務省は関東、東海、近畿各財務局の公務員宿舎赤羽住宅整備事業ほか4整備事業として公務員宿舎の設計、建設、維持管理などを、その整備事業を実施するために設立された5つの特別会社にBTO方式によるPFI事業として発注。契約金額286億9578万円で実施していたとしています。
そして、同検査院が同事業の契約書の中身を調べたところ「建設費相当分は、年1回(2月〜5月)元利均等払いによる割賦方式により支払うこと」、「建設費相当分には、施設設計、整備費等事業に伴う費用の総額である割賦元金261億3978万円に加えて、この金額を分割払で5つの特別会社に支払うことから必要となる割賦金利を含むこと」、「割賦金利の計算上の金額は、契約書に記載された建設費相当分から割賦元本分を差し引いた16億7533万円となり、その具体的な計算方法は、施設の引渡時期から年1回到来する各支払時期までの期間に対応する利子額となっていること」を把握。しかし、契約書には割賦金利の金額として明示されているものがないことが分かりました。
同検査院が消費税法を確認したところ、同法第6条の規定で「利子を対価とする貸付金などに類するものには消費税を課さない」とされていました。そこで、同検査院は財務省に対して「速やかに契約相手方と協議の上、割賦金利に係る消費税相当額が契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなどの是正の処置」を要求しています。
国の予算などが適切に使われたかどうかをチェックする会計検査院が、2007年度の決算検査報告書を麻生太郎首相に提出しました。それによると、不適切な経理処理の金額は約1,253億円にものぼり過去最悪となっています。
2007年度の決算検査報告書によると、税金の無駄遣いなど不適切な経理処理の指摘件数は981件、総額1253億6,000万円で、指摘額としては前年度の4倍以上となり過去最悪をマークしました。
省庁別で指摘額が一番大きかった機関は、法務省の約353億円でした。取得した土地建物の登記を行っていないことが「財産管理の面で不適正」な処理と指摘されました。一方、先にマスコミがこぞって取り上げた全国12の道府県を選んで調査した不正経理問題も記載されていて、12の道府県のすべてで不正が把握され、指摘額は約11億3,700万円となっています。
納税者が一番怒りを覚えるのは、やはり国税を課税・徴収する税務署職員による不正です。今回の報告書では、職員が国税の各種事務を処理するシステムの端末機を不正に使用して税金を横領する事件が4件も把握され、その損害額は総額3億43,11万円にのぼりました。中でも大阪国税局左京税務署に勤務していた職員は、国税の各種事務処理システムの端末機を不正に使用して、実在する法人を支払先とする虚偽の還付金の支払決議書等を作成するなどした上で、郵便局で法人の代表者を装い還付金の支払を受け総額3億1,443万円を横領していました。報告書には、この損害額については、平成20年9月末までに4,380万7,553円が同人から返納されていると記されています。
中小企業の多くが景気の減速により、資金繰りに困っています。中小企業が元気を取り戻せば税収も確実にアップすることから、金融庁が金融機関の監督指針などを改定して融資に応じやすい環境の整備をしました。
金融庁が金融機関に開示を求めるリスク管理債権(回収に懸念がある貸出金)のひとつに貸出条件緩和債権というものがありますが、このほど、金融庁はその貸出条件緩和債権の範囲に含めなくても良い特別な取り扱いを改定しました。
貸出条件緩和債権は、金融機関の監督指針に定められているもので、債務者の経営再建・支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄など、金融機関が債務者に有利となる取決めを行った貸出金で、破綻先債権や延滞債権および3ヵ月以上延滞債権に該当しない貸出金のことです。この貸出条件緩和債権の範囲については例外的な取り扱いがあり、「融資条件の緩和を行っても、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画があれば貸出条件緩和債権には該当しない」と規定されています。金融庁では、このほどこの規定の取扱いを改定して、金融機関が中小企業に対して融資しやすい環境を整えました。
具体的には、同規定の取扱いには「抜本的な経営再建計画」について「概ね3年後の債務者区分が正常先となること」が要件として記載されています。これについて「中小企業は経営改善に時間がかかる」という特質があることから、「概ね3年」について企業の規模に応じた延長を認める旨が加えられました。
また、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」においても貸出条件緩和債権について同様の取り扱いがあるわけですが、「概ね3年後に正常先」とされている部分が「概ね5年(5年〜10年で計画通りに進捗している場合を含む)後に正常先(計画終了後に自助努力により事業の継続性を確保できれば、要注意先であっても差し支えない)」に緩和されました。
政府の追加経済対策に住宅ローン減税の大幅な拡大が盛り込まれ、不動産業界などが色めき立っていますが、実際に同減税措置を利用するサラリーマンの間では、取り扱いに頭を悩ませている人が少なくありません。
景気の悪化から人員整理が始まり、残された社員が人手不足を補うために地方へ転勤を命ぜられるケースはよくある話しです。転勤を命ぜられたサラリーマンの中には、今年マイホームを購入したばかりの人もいて、同年中に転居せざるを得ないケースもあります。そういった人たちが、もし住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)を適用していた場合は要注意です。転勤期間が 1 、 2 年間で、その後に購入した住宅に再居住することにしていても、住宅ローン減税を再適用することができないからです。
住宅ローン減税の再適用については、一度でも同減税措置を適用していた居住者だけに限り認められています。したがって、今年マイホームを購入して、同年中に転勤先へ転居した場合は、同減税措置の適用要件である「住宅を購入後、その年の 12 月 31 日まで引き続き居住用として使っていること」を満たさなくなり、初年度のローン控除が適用できなくなることから、一度も減税措置を適用していないことになります。そのような人については、将来、空き家だった家屋に再居住したとしても、住宅ローン減税を再適用することはできません。
全国の税務署・国税局が今年 6 月までの 1 年間(平成 19 事務年度)で実施した法人税と消費税の調査状況を国税庁がまとめました。それによると、鉄の高騰が続いたことから、金属を扱う業者に集中的な調査が実施されています。
平成 19 事務年度において全国の税務署は、大口・悪質な不正計算が想定される法人 14 万 7,000 件に対して実地調査を実施しています。そして、実地調査を行った法人のうち 10 万 9,000 件から何らかの非違(ミス)を把握。それによる申告漏れ所得金額は 1 兆 6,259 億円で、前年度に比べて 988 億円 (5.7%) 減少しました。
仮装、隠ぺいによる不正計算を行っていたのは 3 万 2,000 件で、その不正発見割合は前年度と同じ 21.7% でした。不正脱漏所得金額は 4,268 億円で、前年度に比べて 78 億円 (1.8%) 減少しています。調査による追徴税額は 3,916 億円で、これも前年度に比べて 486 億円 (11.0%) 減少しました。不正発見割合の高い業種は、 1 位がバー・クラブで、 2 位がパチンコ、 3 位はランク外から一挙に現れた再生資源卸売です。リサイクルの名のもと、大儲けをしている業者があることを物語る順位といえます。また、 5 位に構築用金属製品製造、 6 位が自動車修理といずれもランク外からの登場で、中国の北京オリンピックを契機に鉄が高騰したことから、税務署がマークしていたことが伺えます。
一方、法人に対して実施された消費税調査は、 13 万 9,000 件で、そのうち 7 万 6,000 件から何らかのミスを洗い出しています。その追徴税額は 668 億円で、前年度に比べて 54 億円 (7.5%) 減少しました。