総務省の地方財政審議会固定資産評価分科会(総務大臣の諮問機関)が7月25日、償却資産の評価方法に関する特例の見直しに係る固定資産評価基準にある期末帳簿価額を基礎として価額を求める償却資産に係る評価の特例を廃止することを答申しました。
平成19年度税制改正により資産の減価償却制度に新たに導入された250%定率法は、定額法の償却率(0.125)の250%の償却率(0.312)で償却をし、定率法により計算した金額と耐用年数から経過年数を控除した期間内に、その時の帳簿価額を均等償却した金額との多い方の金額を減価償却費とするというものです。
同固定資産評価分科会は、こうした減価償却制度の新たな定率法の導入に伴い、固定資産税の償却資産に関する評価方法の特例である「期末帳簿価額を基礎として価額を求める償却資産に係る評価の特例」(固定資産評価基準第3章第4節に規定)の廃止を決めました。
250%定率法の償却率は、従来の償却方法(旧定率法)の償却率と異なることから、同特例の計算方法では、250%定率法が適用される資産を他の資産とは別に管理した上で、一般の評価方法に準じて評価する必要があります。したがって、同特例の計算方法が現在よりも複雑なものとなり、手続の簡素化のためという同特例の趣旨が保たれなくなること、また、時間経過とともに250%定率法適用資産が既存の資産と置き換わっていくため、同特例によって同評価を行う資産が減少し、同特例の存在意義がなくなっていくことから廃止することにしたわけです。
ただし、同特例を利用している法人が、一般の評価方法への移行を円滑に行えるように、平成20年度まで同特例は適用できるとされました。
今年8月7日から3日間にわたって全国の主要都市で実施される税理士試験の受験申込者数がまとまりました。
平成19年度(第57回)税理士試験は、今年も真夏の猛暑の中、全国11国税局と沖縄国税事務所の所在地で実施されます。受験申込者数は、昨年よりも1,378人少ない64,706人です。ただし、税理士試験の特徴として、科目ごとに合格し、5科目に合格すれば資格が取得できることから、科目別の受験申込者数が集計されています。
受験科目には、簿記論や財務諸表論という必須科目のほか、選択制となっている所得税法や法人税法などの税法9科目がありますが、今回の試験もこの科目別受験申込者数(延人数)は105,341人と10万人を突破しました。しかし、実際の科目受験者数は8割程度になると予測されています。
受験申込者数が多い会場は、東京都の28,317人(前回29,030人)がトップで、次が大阪府の12,939人(同13,480人)、三番目に多いのが埼玉県の5,492人(同5,543人)となっています。逆に、受験申込者数が少ない会場は、那覇市の371人(前回367人)が一番で、次が金沢市の993人(同1,003人)、三番目が熊本市の1,151人(同1,127人)といった具合です。ちなみに、受験手数料は、1科目受験するのに3,500円かかり、複数科目受ける場合は、その3,500円に1科目につき1,000円加算されることになっています。
政府税制調査会(安倍晋三首相の諮問機関)の香西泰会長が、記者会見で「今回の参議院選挙の与党の勝敗により、今後の消費税議論の流れが変わる」ことを明らかにしました。
記者会見は、霞ヶ関の中央合同庁舎第4号館において今年7月13日に開催された税制調査会第9回調査分析部会終了後に行われたものです。香西会長に対して、記者団が「来る参議院選挙の結果というのは、秋以降の税制論議に影響を与えるとお考えでしょうか」との質問に対して香西会長は「私たちとしては既に与えられた使命があるわけですから、その使命を静かにやっていくしか対応の仕方がないだろう、こう考えているわけです」とまずは交わしました。
しかし、記者から「具体的に言えば、特定の税目について筆が鈍ったりするのか、そういった影響は受け得るのでしょうか」と突っ込まれると「私どもとしては議論をする際には、あまり政治とは関係なしに、もっぱら経済なり、いわば中立的な立場に立って、どういう税制がいいかということを中心にやるつもりですけれども、しかし、選挙の結果を一番に受けとめられるのは政治家の方々だろうと想定はしております。想定というか、そうなるだろうと思っていることは思っております」と香西会長は戸惑いを見せました。そして、「税制の改正というのは、私どもの答申だけではなくて、いろいろな政治的なプロシージャーを経て税法というものになっていくということですから、その過程では、当然、選挙の結果というものは大きな影響を持つだろう」とホンネを語りました。ただし、香西会長は「それによって私どもが考えを急に変えるかどうかということは、今のところは考えておりません」と自分の立場を考え補足しました。
国税庁が、今年6月29日にまとめた平成19年4月1日以後終了事業年度(連結事業年度)分法人税申告書一覧表に誤りがあることを発表しました。
今回誤りが発覚した法人税申告書は、今年7月10日(火)17時00分まで国税庁のホームページに掲載されていました。間違いがあったのは、法人税申告書別表16(4)でした。国税庁は、同別表を訂正して、7月12日(木)に再掲載しています。
訂正した同別表は、法人の減価償却資産について旧国外リース期間定額法若しくは旧リース期間定額法又はリース期間定額法によりリース契約を締結した減価償却資産の償却限度額等の計算を行う場合に使用するものです。間違っていたのは、具体的には同別表の中のリース契約年月日を記入する項目が、取得年月日となっていました。また、適格組織再編成により引き継ぐべき合併等特別償却不足額について「(32)―(35)と(28)のうち少ない金額」と説明しなければならないものを、「(32)−(36)と(28)のうち少ない金額」としていました。
今回の誤りについて国税庁は、「今年7月10日以前に出力している方はお手数ですが、訂正後の別表を出力していただきますようお願いいたします」としています。
国税庁が減価償却制度に関する法人税基本通達の一部改正を行い、その内容を公表しました。減価償却制度は、今年4月1日に施行された平成19年度税制改正で40年ぶりの抜本的な見直しが行われましたが、今回の通達はその見直しに伴うものです。
減価償却とは、業務に使うことによって価値が減少する資産、いわゆる減価償却資産について、その取得価額を使用可能期間に費用として配分する計算手続きのことです。
ただし、修繕費については一括即時損金算入が認められていて、支出した金額が修繕費に当たるかどうかは「形式基準で判定」することができることになっています。形式基準とは、修繕費か資本的支出かが明らかでない支出について、その金額が「60万円に満たない場合」又は「その修理、改良に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合」に該当するとき、修繕費として損金経理することができるとされているものです。ここに出てくる資本的支出とは、修繕などにより、その機械の寿命を延ばしたり、価値を高めたりする費用のことです。これまでは、資本的支出が取得価額に加算されていましたが、平成19年度税制改正で、平成19年4月1日以後に行う資本的支出は、「その支出を行う資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産として新たに償却する」とされたことから、資本的支出があった場合、「取得価額」に含まれるかどうかが簡単には分からなくなりました。しかし、形式基準により修繕費を判定するときについて通達では、一の資産の取得価額に関する考え方は従前と変わらないことから、資本的支出を行った場合「取得価額」にその資本的支出の額が含まれるとしています。
国税庁が新信託法によって、新たな形態の信託が出てくることに対応するため、「法定資料を光ディスク及び磁気ディスクにより提出する場合の標準規格等の制定について」(法令解釈通達)を一部改正しました。新信託法の施行により、信託の利用機会が大幅に広がり、委託者と受託者が同一である自己信託や受託者を定めない目的信託など新たな形態の信託が可能になります。これまでの信託に対する課税は、不動産・動産の管理などの信託は受益者段階で信託収益の発生時、貸付信託や投資信託は受益者に信託収益が分配された時、資産流動化法上の特定目的信託では信託段階に所得税や法人税が課税されていました。
ところが、平成19年度税制改正では、法人が委託者となる信託のうち、「重要な事業の信託で、受益権の過半を当該法人の株主に交付するもの」、「期間20年超の長期信託の自己信託」、「損益分配の操作が可能な自己信託」については、租税回避を防止するため、受託者の信託財産から発生する所得に法人税を課税する―、などとされました。これを受け、国税庁はこのほど、法定資料を光ディスク等で提出する際の規格を定めました。具体的には「信託の計算書」と名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書」「信託に関する受益者別(委託者別)調書」について規格を定めています。
法定資料は、国税当局が税務調査を行うときに参考とする重要な資料情報と位置づけているものです。したがって、今回の通達改正により定められた法定資料の中身をチェックすることで、国税当局がどのような情報を入手したいのかが把握できます。
日本税理士会連合会(日税連、森金次郎会長)がこのほどまとめた平成20年度の税制改正建議がクローズアップされています。特に年金暮らしの高齢者への税制措置を求めた点が大きな反響を呼んでいます。
日税連がさきごろ、恒例の税制改正建議の20年度版を取りまとめました。今回も、公平な税負担、理解と納得のできる税制、必要最小限の事務負担、時代に適合する税制、透明な税務行政―、の5つの視点を基本として掲げ、税制のプロの立場から日本の経済状況にマッチした税制の見直しを求めています。
同建議に盛り込まれた税制改正要望全63項目のうち、注目を浴びているのが「公的年金以外に収入のない者について納税手続きを簡素化」です。サラリーマンについては、納税者としての意識を向上させることが重要であるにもかかわらず年末調整により納税手続きが完了するのに、高齢者世代である年金受給者には事務負担軽減のための制度がありません。しかも、政府は所得税の老年者控除の廃止や公的年金等控除額の縮減を行い、高齢者の税負担は一段と重くなっています。毎年約1千万人前後が所得税の還付申告を行っていますが、この中には公的年金しか所得のない人が多数含まれています。
そこで、日税連は今回の税制建議で「公的年金の受給者のうち扶養控除等申告書を提出した者については年金の支払者において年末調整に準ずる措置を講じ、公的年金以外に収入のない者については選択により確定申告を不要とするなど、納税手続きの簡素化を検討すべきである」として高齢者に負担の少ない制度への見直しを求めています。
総務省統計局が、家計調査の平成18年分を公表しました。同調査は、全国168市町村の約9,000世帯に毎日の収入・支出を専用の「家計簿」に記入することを委託し、それを集計したもので、今回は住宅ローン控除制度の廃止に伴う駆け込み適用者が多かったことを垣間見ることができます。
平成18年分の家計調査「家計簿からみたファミリーライフ」が公表されました。その中の、世帯人員や物価の変化の影響を取り除いた「消費水準指数」による生活水準を見てみると,バブル経済が崩壊した平成4〜5年をピークに下がり始め、平成18年は平成元年と同じ水準となっています。
最もお金が費やされたのはテレビで、1世帯当たり1ヵ月平均の支出金額を四半期ごとに見てみると、薄型テレビの価格が下落したことや、トリノオリンピック(平成18年2月10日〜2月26日)、さらには、サッカーのワールドカップドイツ大会(18年6月9日〜7月9日)による特需もあって、18年1〜3月期、4〜6月期は前年に比べ70%以上の実質増加となりました。平成18年7〜9月期は増加幅が縮小しましたが、10〜12月期は再び拡大しています。
一方、勤労者世帯に占める住宅ローン返済世帯の割合について近年の動きを見てみると、平成12年、13年に34.1%となった後、14年、15年と低下しました。しかし、平成16年は35.2%と比較的高い水準となっています。これについて、同調査結果では「17年から住宅借入金等特別控除が段階的に縮小されることを控え、駆け込み需要が発生したため」と分析しています。また,平成18年は持家率の上昇とともに、住宅ローン返済世帯の割合も上昇しています。
国税庁が平成19年2月から5月にかけて、e-Taxの利用に関するアンケートを実施。このほどその結果がまとまりました。それによると、e-Taxを利用しない理由で意外な答えが返ってきています。
国税庁が実施した今回のe-Taxの利用に関するアンケートには、1,885件が回答を寄せています。集計結果を見てみると、e-Taxの利用状況では、「開始届出書を提出し、すでに利用している」と答えた人は52.4%で、「開始届出書を提出したが、利用していない」は22.0%、「開始届出書を提出していない(利用していない)」は25.6%でした。
e-Tax を利用しようと思った理由では「税務署又は金融機関に行く必要がない」が541件で最も多く、これは常識的な回答数といえます。また、e-Taxで利用した手続については「申告手続き」が901件でトップでした。これについては、国税庁が掲げた方針通りに納税者が動いていることを物語っています。さらに、利用の際に使用したソフトウェアについて見てみると「e-Taxソフト」が48.7%、「会計事務所向けのソフト等を含む市販の会計ソフト」は24.3%、「確定申告書等作成コーナー」が27.0%でした。
問題は、開始届出書を提出したけれども、e-Taxを利用していない人です。e-T利用していない理由を尋ねたところ「e-Taxソフトが使いづらい」が137件、「ICカードリーダーの入手に手間がかかる」132件、「ICカードリーダーの入手に費用がかかる」が119件といったものが上位に掲げられました。一方、そもそも開始届出書を提出していない人については、利用していない理由について「電子証明書の取得に手間がかかる」が223件、「ICカードリーダーの入手に費用がかかる」217件、「電子証明書の取得に費用がかかる」が204件といった状況です。
日本経済団体連合会(日本経団連、御手洗冨士夫会長)が2007年度の規制改革要望をまとめました。新しい規制の撤廃項目として、地方税の徴税業務の民間委託などが盛り込まれ注目を浴びています。
日本経団連がこのほどまとめた「2007年度の規制改革要望」で税制の面で注目を浴びている新規の要望が、徴税業務における各プロセスの民間開放です。
総務省では2005年4月1日に地方公共団体に対して、納税者の秘密情報の保護に配慮を行った上で、地方税の徴収において民間事業者のノウハウを活用できる業務については民間への業務委託を推進するよう依頼しています。しかし、地方税法上の行政処分としての「督促」、滞納処分に関わる財産調査のための「質問及び検査」や「捜索」、「差押」などについては、「公権力の行使そのもの」として、民間委託を禁止しています。
そこで、日本経団連では、「地方税法上の行政処分としての『督促』、滞納処分に関わる財産調査のための『質問及び検査』や『捜索』、『差押』についても、一定の服務規律を課した上で民間委託を実施できるようにすべきである」としています。
そのほか、税制関連では「税理士試験の受験資格の撤廃」を引き続き要望しています。税理士試験は、「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として」(国税庁HPより)行われるものです。しかし、日本経団連は「税理士には、税理士試験合格後に2年間の実務経験が要求されており、この過程で必要な学識などを身につけることが可能である。採用試験に関しても、採点者数の増加や業務の民間委託を通じたコスト削減・効率化などを通じて対応することが可能である。現在も、税理士の受験資格を得るために、簿記1級や放送大学で通信講座を取得している例が多くあり、現在の受験資格は多くの志望者に対して必要以上の労力と時間を費やさせている」と前回と同じ理由で要望しています。