2026年3月31日、令和8年度の税制改正法案が可決されました。
今回は、物価上昇対策として実施される、給与課税の非課税限度額や固定資産税の免税点の引き上げを解説します。
マイカー(自動車その他の交通用具)を使用する従業員の通勤手当は、その通勤距離(km)に応じて非課税限度額が決められています。
これまで片道55km以上は一律38,700円で頭打ちとなっていましたが、改正後は、さらに通勤距離の長い従業員向けの区分が設けられます。
| 通勤距離の区分 (片道) |
改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 片道55km以上 65km未満 | 38,700円 | 38,700円(変更なし) |
| 片道65km以上 75km未満 | 45,700円 | |
| 片道75km以上 85km未満 | 52,700円 | |
| 片道85km以上 95km未満 | 59,600円 | |
| 片道95km以上 | 66,400円 |
上記の改正は、令和8年4月1日以後に支払われる通勤手当から適用されます。
65km未満のマイカー通勤や他の通勤手段による非課税限度額に変更はありません。
国税庁が改正後の非課税額を一覧にしていますので、他の交通手段の現状も確認したい場合は参考にしてください。
(参考)国税庁|通勤手当の非課税限度額の改正について
食事の「現物支給」は原則として給与課税の対象ですが、これまで月額3,500円まで非課税だったところ、7,500円に引き上げられます。
ただし、食事の価額の50%以上を従業員から徴収し、かつ、その徴収額を控除した残額(会社負担)が月7,500円以下となる範囲までが非課税として扱える食事の限度となります。役員も同じ条件でなら非課税となります。
なお、このルールが「現物支給」のみを対象としている点は従来のとおりです。(例:社員食堂での食事提供、弁当の支給など)
令和8年4月1日以後に支給する食事から適用されます。
(参考)国税庁|食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
深夜勤務の従業員に食事代として金銭を支給する場合、これまで「1回あたり300円以下」非課税でしたが、「1回あたり650円以下」に見直されます。 令和8年4月1日以後に支給する金銭から適用されます。
少額な減価償却資産を一度に損金にできる特例については、対象資産の取得価額が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられます。
令和8年(2026年)4月1日以降に取得した資産が対象で、個人事業主も対象となります。
業務のために使用を開始した年分の損金(個人は必要経費)となることや、各事業年度において、この特例を適用する資産の取得価額の合計が「300万円」に達するまでが上限となる点は従来と変わりません。
固定資産税の免税点の見直しが、以下のとおり行われました。令和9年度分の固定資産税から適用される見通しです。
| 現行 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 土地 | 30万円未満 | 変更なし |
| 家屋 | 20万円未満 | 30万円未満 |
| 償却資産 | 150万円未満 | 180万円未満 |
上記のとおり、土地と家屋の免税点はともに「30万円未満」となりました。
土地の免除点が据え置きとなった理由は、前回の見直しが行われた平成3年のバブル期よりも、現在の地価が下がっているためのようです。
また、償却資産の免税点が「180万円未満」に引き上げられました。これにより、来年度から課税標準額が180万円以下となる事業者に償却資産税は課されないこととなる見通しです。ただし償却資産の「申告」が不要となるわけではありません。償却資産の課税標準額は、最終的には市区町村が申告内容から決定するものであるためです。
なお、償却資産の申告対象にならない資産に、1回で償却する10万円未満の資産や、3年で均等に償却する一括償却資産(20万円未満)として処理されたものがありますが、この上限額について引き上げ等の改正はありませんでした。
一方、引き上げのあった「40万円未満」の少額減価償却資産は、引き続き償却資産の申告対象となりますので、この点もあらためて注意が必要です。
男性の育児休業の取得率が、近年急増しています。
今回は男性の育児休業について、現行の法制度や給付金、企業が利用しやすい助成金をまとめます。
厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、配偶者が出産した男性労働者のうち、育児休業を取得した割合の近年の推移は以下のとおりです。
| 令和2年 | 12.65% |
| 令和3年 | 13.97% |
| 令和4年 | 17.13% |
| 令和5年 | 30.1% |
| 令和6年 | 40.5% |
(参考)厚生労働省HP:令和6年度雇用均等基本調査
増加の理由は、子育てに対する意識の変化だけでなく、法や助成金など制度面の整備が進んだことが考えられます。
近年、令和4年10月施行の「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」や、令和7年4月施行の男性の育児休業の取得率等の公表義務の拡大(改正前:従業員数1,000人超の企業→300人超の企業)といったものがありました。
また、仕事と子育ての両立を支援する企業向けの「両立支援等助成金」などもあります。
(参考)産後パパ育休(出生時育児休業)が10月1日から施行されます
(参考)厚生労働省HP:男性の育児休業取得率等の公表について
現在、男性労働者が取得できる現行の育児休業には、従来からある「通常の育児休業」と、令和4年10月に施行された「出生時育児休業(通称:産後パパ育休)」があります。
この2つは取得できるタイミングや期間に違いがあり、希望すれば両方を取得することができます。
| タイミング | 期間 | |
|---|---|---|
| 通常の育児休業 | 子の1歳の誕生日の前日まで (最長2歳まで延長要件あり) |
労働者の希望する期間 |
| 出生時育児休業 (産後パパ育休) |
子の出生後8週間以内 | 4週間(28日間) (2回に分けて取得可) |
従業員から申し出を受けた場合、事業主は原則としてこれらの休業を取得させる必要があります。また、これらの休業の申し出や取得を理由に、解雇や不利益な扱いをすることは禁止されています。
通常の育児休業に対しては「育児休業給付金」、出生時育児休業(産後パパ育休)に対しては「出生時育児休業給付金」が雇用保険から支給されます(原則賃金の67%)。
また、令和7年4月から、出生後一定期間に両親とも14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、「出生後休業支援給付金」も支給されます(賃金の13%)。
これらの給付金を合わせると、「出生後休業支援給付金」の期間中は賃金の80%が支給されることになります。給付金は所得税等の課税対象外となり、さらに育児休業中は勤務先への申し出により社会保険料が免除されることから、「手取りなら100%相当の給付」とも言われています。
男性に育児休業を取得させる企業の取り組みを支援する助成金に、「両立支援等助成金」があります。
この助成金は育児や介護などの両立支援を広く対象としているため複数のコースがあり、男性の育児休業の取得に関しては「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」(第1種・第2種)があります。
第1種は、一定日数以上の育児休業を取得した3人までの男性休業者につき、1人目は20万円、2人目・3人目は10万円の助成金を受給できるものです。
第2種は、職場全体の男性の育休取得率の上昇等を条件に60万円を助成するものです。
いずれも雇用環境整備などの要件があること、第1種と第2種は同一年度内に両方を申請できないこと、第2種申請後は1種を申請できないことなどに注意が必要です。

(画像出典)厚生労働省:2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」より
他にも、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コースと併用できる場合があるため、併せて検討するとよいでしょう。