昨年から児童手当の対象が高校生に拡大されたことを受け、高校生年代の所得税の扶養控除とひとり親控除の見直しが検討されています。令和7年度税制改正では現行の税制を維持することとしましたが、政府は、令和8年度以降の税制改正において結論を発表するとしています。
その一方で、子育て世帯に対する住宅ローン控除・リフォーム減税の優遇は、昨年から1年延長されました。さらに、令和8年には生命保険料控除の拡充も予定されています。
令和7年度税制改正による子育て世帯に関する改正は、以下のとおりです。
子育て世帯等の住宅ローン控除の計算対象となる借入限度額の上乗せ措置が、令和7年中に入居する場合にも適用されます。(1年延長)
・子育て世帯等(夫婦のいずれかが40歳未満であるか、19歳未満の扶養親族がいる世帯)であること
・認定住宅等のうち、新築・未使用・買取再販のいずれかであること(認定住宅等以外や中古住宅はこの特例の対象外)
・令和7年1月1日〜同年12月31日に入居していること
住宅ローン控除とは、その年末の住宅ローン残高の0.7%をその年の所得税から控除する制度です。
控除額の計算対象にできるローンには限度額がありますが、上記の子育て世帯等に該当する方は、この限度額が次のとおり上乗せされます。
適用区分 | 通常 | 子育て世帯等 |
---|---|---|
@認定住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
AZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
B省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
例えば、新築のB省エネ基準適合住宅を購入し、住宅ローンを4,000万円で組んで令和7年12月に入居しても、控除対象となるローンの限度額は3,000万円(最大21万円控除)なので、通常はローン残高の全額を控除の対象にできません。ただし、子育て世帯等が令和7年に入居する場合は、上乗せ措置により全額の4,000万円(最大28万円控除)が控除対象となります。
子育て世帯等が「子育て対応リフォーム」を実施し、その住宅に令和7年中に入居する場合、その年の所得税から、標準的な工事費用の額(工事の種類ごとに定められた額。50万円以上が対象)の10%の控除が受けられる税制が1年延長されます。
子どもの事故防止のための工事、リビング等を見渡せる対面式キッチンへの交換工事、防犯性や防音性を高めるための工事、収納設備の増設工事、間取りの変更工事など多岐にわたります。
制度の対象となるリフォームの例は、国土交通省の「リフォーム促進税制(子育て対応リフォーム)ご利用ガイドブック」にわかりやすく掲載されています。たとえば、対面式キッチンへの交換工事では、調理台とコンロ台の2箇所に正対した位置からリビング・ダイニングの過半を見渡すことができる工事など、詳しい要件が記載されています。
(参考)国土交通省HP:住宅リフォームにおける減税制度について
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000248.html#kosodate
リフォーム税制の計算方法はやや複雑です。通常は、標準的な工事費用のうち250万円までは10%、超過分は5%で控除を受けられると考えてよいのですが、別の工事費用を計算に加える場合やリフォームの規模が1,000万円を超える場合には計算式が異なります。
リフォーム税制の控除額は、以下の方法で計算されます。
【計算式】
控除額=A×10%+B×5%
A:標準的な工事費用相当額(上限250万円。補助金を受けた場合はその分を減額)
B:次の@とAのいずれか低い額(Aと合わせて1,000万円が限度)
@Aの250万円超過分+Aの工事と合わせて行う増築等のリフォームの工事実費(補助金を受けた場合はその分を減額)
A標準的な工事費用相当額
23歳未満の扶養親族がいる個人の生命保険料控除(一般)の限度額を、通常の4万円から6万円に引き上げます。子育て中の万が一の死亡リスクを生命保険で備えている方の負担に配慮した政策となります。
実施は今年ではなく令和8年であり、現時点ではその1年限りの措置とされています。
【通常】
年間保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 全額 |
20,000円超40,000円以下 | 保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【令和8年分のみの措置】
年間保険料 | 控除額 |
---|---|
30,000 円以下 | 全額 |
30,000 円超 60,000 円以下 | 保険料×1/2+15,000 円 |
60,000 円超 120,000 円以下 | 保険料×1/4+30,000 円 |
120,000 円超 | 一律 60,000円 |
上記のとおり、年間の生命保険料の支払額が12万円を超える場合、控除は一律6万円(+2万円)となります。金額面でインパクトのある改正内容ではありませんが、控除が2万円増えれば、年末調整(あるいは確定申告)で計算される所得税が、例年よりも数千円安くなります。
また、全額控除となる範囲が2万円から3万円に拡大されますので月額1,670円ほど(年間2万円超)の生命保険料を支払っていれば、少額ではありますが恩恵を受けられることになります。
上記のとおり、令和7年度税制改正では、子育て世帯等の負担軽減を目的とした措置が導入・延長されます。住宅ローン控除の上乗せや子育て対応リフォーム促進税制の延長といった、住まいに関する支援が拡充されているため、うまく活用して負担を少しでも減らせるようにしましょう。詳細は税理士にご相談ください。
大学生年代の子どもを扶養している親などに適用される扶養控除において、適用要件の一つである、子ども本人の所得要件が見直されています。
大学生年代の子どもを扶養する従業員がいる場合、令和7年の年末調整や令和8年以降の源泉徴収に関わる改正となります。
19歳〜23歳未満の大学生年代の親族に係る扶養控除(大学生の親などが受けられる扶養控除)
令和7年分の所得税から適用されます。翌年度の住民税についても同様の改正が行われます。
19歳〜23歳未満の親族は、「特定扶養親族」として、一般の控除対象扶養親族よりも高額な扶養控除の対象となります。
しかし、本人の所得要件については他の扶養親族と同様に、基礎控除以下(改正前:合計所得金額48万円以下)とされていました。
この要件が大学生のアルバイトを阻害する要因とならないよう、令和7年度税制改正により、合計所得金額85万円(給与収入150万円相当)までは、特定扶養親族と同額の63万円の控除が適用されるようになりました。
【改正前】
19歳から23歳未満の 扶養親族の合計所得金額 |
控除額 |
48万円以下 | 63万円 |
【改正後】
19歳から23歳未満の 扶養親族の合計所得金額 |
控除額 |
85万円以下 | 63万円 |
なお、85万円を超えても控除額はただちに0円とはならず、徐々に減少する仕組みです。具体的には以下のようになります。
19歳から23歳未満の 扶養親族の合計所得金額 |
控除額 | |
改正前 | 48万円以下 | 63万円 |
48万円超 | 控除なし | |
改正後 | 85万円以下 (給与年収150万円相当) |
63万円 |
85 万円超 90 万円以下 | 61万円 | |
90 万円超 95 万円以下 | 51万円 | |
95 万円超 100 万円以下 | 41万円 | |
100 万円超 105 万円以下 | 31万円 | |
105 万円超 110 万円以下 | 21万円 | |
110 万円超 115 万円以下 | 11万円 | |
115 万円超 120 万円以下 | 6万円 | |
120 万円超 123 万円以下 | 3万円 | |
123万円超 (給与年収約187万円相当) |
控除なし |
住民税についても同じ趣旨の改正が行われます。
19歳から23歳未満の 扶養親族の合計所得金額 |
控除額 | |
改正前 | 48万円以下 | 45万円 |
48万円超 | 控除なし | |
改正後 | 95万円以下 (給与年収160万円相当) |
45万円 |
95 万円超 100 万円以下 | 41万円 | |
100 万円超 105 万円以下 | 31万円 | |
105 万円超 110 万円以下 | 21万円 | |
110 万円超 115 万円以下 | 11万円 | |
115 万円超 120 万円以下 | 6万円 | |
120 万円超 123 万円以下 | 3万円 | |
123万円超 (給与年収約187万円相当) |
控除なし |
詳細な基準は未定ですが、令和8年1月1日以後に支払う給与の源泉徴収額に反映させられるようになります。令和7年中の給与について気にする必要はありません。
令和7年分の年末調整から適用できるようになります。