令和8年度税制改正大綱で示された「こどもNISAの創設」と「暗号資産課税の見直し」についてご紹介します。
現行のNISA口座は18歳以上の成人のみ開設できますが、令和9年からは年齢の下限が撤廃され、0歳から17歳でもNISA口座を開設できる「こどもNISA」の創設が見込まれています。
成人と異なり、利用できるのは「つみたて投資枠」のみで、年間の非課税投資額は60万円まで、非課税で保有できる総額は600万円までとされています。
18歳になると、自動的に成人向けのつみたて投資枠(年間120万円、総額1,800万円)へ移行するしくみです。

(画像出典)金融庁|令和8(2026)年度税制改正について
払い出しができるのは、原則として12歳以降となります。
資金の使い道が本人(子ども等)のためで、その同意がある場合に親権者等によって可能となります。
上記の金融庁の資料によれば、書面などの提出によって同意の確認が行われるようです。
一見すると制約だらけのようにも感じられますが、2023年に廃止されたジュニアNISAでは18歳まで原則として引き出しができなかったことに比べると、かなり柔軟性の高い制度といえるでしょう。
早期から積み立てを始めれば、中学進学からの学資にも活用できそうです。
こどもNISAの活用方法として、子どもの教育資金の積み立て、NISAを使い切った後の投資枠としての活用、そして相続税対策が考えられます。
・子どもの教育資金の積み立て
教育資金の支出に備え、こどもNISAで積み立て投資を始める方法です。
親の口座とは別に開設することで、老後資金とお子さんの教育資金を分けて管理しやすくなります。
12歳以降は払い出しが可能となるため、お子さんが小さいころから積み立てを始めれば、受験や進学にかかる費用の準備にも活用できます。
ただし、成人のNISAと同様、長期で積み立てることが基本です。
すでに中学生や高校生のお子さんの場合、大学資金などを短期間で準備しようとすると、元本割れのリスクが高まる点には注意が必要です。
・NISA枠を使い切った場合の追加投資先として
2024年からNISA制度は恒久化され、成人の非課税投資枠は1人あたり1,800万円に拡大されました。
この年から非課税枠を上限まで使って毎年投資を続けた場合、2028年頃には枠を使い切る計算になります。
有価証券での資産運用にまだ余力があるご家庭では、その次の選択肢として、こどもNISAを検討する方法もあります。
・祖父母等の相続税対策にも
こどもNISAの元手として、祖父母などが年間60万円を拠出し、贈与税の基礎控除を活用した相続税対策として利用する方法も考えられます。
贈与税の基礎控除は「贈与を受ける人ごとに年間110万円まで」です。
そのため、こどもNISAの投資額がこの範囲に収まっていれば、通常は贈与税の対象になりません。
ただし、別に贈与を行っている場合は、年間の合計額で110万円を超える可能性がありますので注意が必要です。
なお、令和9年以降の相続からは、「生前贈与加算」の対象期間が段階的に延長されます。
生前贈与加算とは、亡くなる前の一定期間に行われた贈与を相続財産に持ち戻して計算するしくみです。
従来は3年でしたが、最終的には相続開始前7年まで広がる予定です。

(画像出典)国税庁|令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!
7年のうち直前3年以内の贈与は原則として全額、それより前の期間の贈与は100万円を控除した残額が、相続財産への持ち戻しの対象となります。
この取り扱いは税法上のルールであり、贈与契約書を作成して贈与を成立させていても回避できません。
こどもNISAの活用を含め、相続税対策として生前贈与を検討される場合は、資産の内容や年齢、目的によって適した方法が変わりますので、早めに顧問税理士へご相談ください。
令和10年分(2028年分)の所得から、個人で投資した仮想通貨の利益について、税率20%の分離課税とする方向で検討されています。
現行制度では、総合課税の雑所得として扱われ、給与所得などと合算したうえで、5%から45%(住民税を含めると最大55%)の累進課税が行われるしくみです。
新制度では、上場株式やETFなどと同じ課税方法となり、所得金額にかかわらず一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税率となる見込みです。
また、暗号資産取引によって生じた損失については、3年間の繰越控除を認める制度の創設も改正案に盛り込まれています。
制度が成立すれば、海外ですでに承認されている「仮想通貨によるETF(上場投資信託)」の組成にもつながる見通しです。
なお、新制度の施行には、税制改正法案の成立に加え、金融商品取引法の改正が前提となります。
本改正により、仮想通貨投資へのハードルは下がると見込まれます。
一方で、値動きの大きい投資対象である点に変わりはありませんので、投資方法には引き続き注意が必要です。
相続税の税務調査について、国税庁がまとめた最新の件数や追徴税額、最新の動向などをお知らせします。
最新の令和6事務年度における相続税の実地調査では、非違割合は82.3%でした。
| 事務年度 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 |
|---|---|---|---|---|---|
| 実地調査件数 | 5,106件 | 6,317件 | 8,196件 | 8,556件 | 9,512件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 4,475件 | 5,532件 | 7,036件 | 7,200件 | 7,826件 |
| 非違割合 | 87.6% | 87.6% | 85.8% | 84.2% | 82.3% |
| 1件あたりの申告漏れ | 3,496万円 | 3,530万円 | 3,209万円 | 3,208万円 | 3,093万円 |
| 1件あたりの追徴税額 | 943万円 | 886万円 | 816万円 | 859万円 | 867万円 |
(参考)国税庁HP:各年度分の「相続税の調査等の状況」から作成
非違割合とは、実地調査によって申告漏れなどが見つかった割合を指します。
近年も80%台で推移しており、高い確率で申告内容の修正等が発生していることがわかります。
無申告者に対する実地調査も継続して行われています。
最新の追徴税額は142億円となり、調査実績の公表を開始した平成21事務年度以降で最高額となりました。
一方、調査件数は過去2年と比べるとやや減少しています。
対象の選別や財産把握の精度が高まっている可能性も考えられます。
| 事務年度 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 |
|---|---|---|---|---|---|
| 無申告に対する 実地調査 |
462件 | 576件 | 705件 | 690件 | 650件 |
| 追徴税額 | 61億円 | 74億円 | 111億円 | 123億円 | 142億円 |
資産運用の国際化に対応し、近年は海外資産の把握も強化されています。
CRS情報(金融口座情報の国際的な交換制度)や租税条約に基づく情報交換により、海外口座や資産の情報が税務当局に共有されるしくみです。
最新の非違件数は209件、申告漏れは97億円となり、いずれも増加が見られました。

(画像出典)国税庁:令和6事務年度における相続税の調査等の状況より
令和7年末、国税庁が公表した「令和6年分相続税の申告事績の概要」によると、令和6年の相続税の課税割合(相続税申告のあった被相続人の数/亡くなった方の数)は1割を超えました。
この割合は、約10年前の基礎控除引き下げ以降、増加傾向が続いています。
近年の増加には、地価の上昇やインフレなどの影響もあると考えられます。
相続税は、課税価格が基礎控除(3,000万円+法定相続人数×600万円)以下であれば、原則として申告は不要です。
ただし、本当に基礎控除の範囲内に収まるかどうかについて、安易な判断は禁物といえます。
財産評価の誤りや課税対象の見落としにより、財産額を実際より低く見積もってしまうケースもあるためです。
また、日本の税制では、被相続人または相続人のいずれかが日本に住んでいる場合、あるいは過去10年以内に住んでいた場合には、国内外すべての財産が日本の相続税の課税対象となる点にも注意が必要です。
相続税について気になる方は、早めに顧問税理士へご相談ください。