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「令和8年分 源泉徴収税額表」が公表されました

令和8年の源泉徴収に用いる「令和8年分 源泉徴収税額表」が国税庁のWebサイトで公表されました。
令和8年分の扶養控除等申告書において新たに創設された「源泉控除対象親族」と、従来からの「源泉控除対象配偶者」を合わせた数から、扶養親族等の数を算定する必要があります(下図2の範囲)。

(画像出典)国税庁|令和8年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書記載例より

■源泉控除対象親族の注意点

新設された「源泉控除対象親族」の範囲は、下図のとおりです。

(画像出典)年末調整のしかた(44ページより)


基礎控除の見直しにより、控除対象扶養親族(図の水色部分)の所得要件が58万円以下となります。
特定親族(図の赤色凸字の飛び出ている部分)については合計所得金額の要件が本来の控除対象よりも少ないことに注意しましょう。
【特定親族の所得要件】
・「特定親族特別控除」の対象(本来の控除対象)
58万円超123万円以下
・「源泉控除対象親族」の対象
58万円超100万円以下

また、障害者控除の対象となる「障害者」や「同居特別障害者」に該当する方がいる場合、扶養親族等の数に1名(両方に該当すれば2名)を加算するルールにも注意が必要です。
このルールは、合計所得金額58万円以下の同一生計配偶者や扶養親族(16歳未満含む)にのみ適用されます。
したがって、所得が58万円を超える特定親族にはこの加算が適用されないことにご注意ください。
たとえば、次のケースは「源泉控除対象親族」が2人で、どちらも障害者、同居特別障害者に該当します。ただし、2人のうち1人は「所得58万円超100万円以下」の特定親族です。

(画像出典)令和8年分源泉徴収税額表「扶養親族等の数の算定方法」(21ページ)
この場合、扶養親族等の数は「4人」となります(源泉控除対象親族2名、障害者+1名、同居特別障害者+1名)。

■源泉控除対象配偶者は特に変更なし

「源泉控除対象配偶者」については特に改正はありません。令和8年分の合計所得金額の見積額は引き続き95万円以下で、従業員本人の合計所得金額も900万円以下である必要があります。

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今すぐ始められる!経営指標の活用|収益性分析編

■経営指標を活用するメリット

経営指標とは、企業を収益性や安全性といった多角的な観点から分析するための数値です。
経営指標を活用することには、以下の3つのメリットがあります。
1.会社の状態を確認できる
単に売上高や利益の数字を確認するだけでは見えにくい会社の状態を客観的に評価することができます。
2.同業他社と比較できる
経営指標から得られた数値は自社の過去の値や同業他社の値との比較に使用します。経営課題の早期発見にもつながります。
3.誰でも手軽にできる
経営指標の多くは普段作成している試算表や財務諸表から容易に算出できます。専門家の手を借りず日常業務の延長で経営分析ができるため、思い立った時にいつでも始められます。

■経営指標の種類

経営指標の種類には、企業の収益性・効率性・安全性・生産性を分析するものがあります。
本記事では、「収益性」を分析する代表的な経営指標について、計算方法や統計から見た産業別の平均的な値をご紹介します。

■収益性分析のための経営指標

収益性分析の指標は、企業の「稼ぐ力」を表します。
利益率から算定される指標であり、「資本に対する利益率」と「売上高に対する利益率」に分かれます。
本記事でご紹介する指標は、以下のとおりです。

経営指標 計算式
総資本営業利益率(ROA) 営業利益÷総資本×100
自己資本利益率(ROE) 当期純利益÷自己資本×100
売上高総利益率 売上総利益÷売上高×100
売上高営業利益率 営業利益÷売上高×100
売上高経常利益率 経常利益÷売上高×100

ROAとROEは資本に対する利益率、それ以外は売上高に対する利益率となります。 以下、一つずつ解説します。

●資本に対する利益率

資本に対する利益率は、会社のモノやカネを使ってどのくらい利益を得ているかを表す指標です。一般的に高いほど「稼ぐ力」の強い企業となります。

【総資本営業利益率(ROA:Return On Assets)(%)】
計算式:営業利益÷総資本×100
企業の総合的な収益性を測るための指標です。
分母の「総資本」とは「総資産」または「負債及び純資産の合計」のことで、分子の「営業利益」とは売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を除いた「本業からの利益」のことです。総資本は貸借対照表、営業利益は損益計算書に記載されています。
一般的には5%以上が優良と言われています。

【自己資本利益率(ROE:Return On Equity)(%)】
計算式:当期純利益÷自己資本×100
自己資本(株主から調達した資金など)、つまり返済不要の資産でどのくらいの最終利益が出せているのかを表す指標です。 分母の自己資本は純資産の部から新株予約権や非支配株主持分を除いた額であり、分子の「当期純利益」は損益計算書の一番下の当期純利益になります。10%以上が優良と言われていますが、他人資本(銀行からの融資など)が多すぎる場合も見かけ上の数値が高くなる傾向があるため、安全性分析と併用することが重要です。

●売上高に対する利益率

売上高に対する利益率もまた、高いほど「稼ぐ力」のある企業となります。 ROAやROEとの違いは、分母が「売上高」になる点です。より少ない原価や経費で収益を得ている企業ほど高くなります。
ROAやROEとの使い所の違いは特に決められていませんが、ROAやROEには会社の利益の積み重ねである内部留保が分母に含まれます。そのため、状況によっては会社の設立年数なども考慮にいれる必要があるでしょう。言い換えれば、ROAやROEは会社のこれまでの歩みも含めた総合的な収益力といえます。
これに対し、売上高に対する利益率は「単年の売上高と経費」から算定します。そのため、会社の年数や成長段階に関係なく、どのような会社でも経営に役立てやすい指標といえます。
それでは、売上高に対する利益率を見ていきましょう。各指標は、損益計算書の各利益(売上総利益、営業利益、経常利益など)を分子とし、それぞれ売上高総利益率、売上高営業利益率…と呼ばれます。本記事では、売上高経常利益率までの3つを紹介します。

【売上高総利益率(%)】
計算式:売上総利益÷売上高×100
売上総利益(売上高から原価を除いた利益=粗利)が売上に占める割合のことです。高いほどその商品やサービスに企業が与えるブランド力などの付加価値が高いといえます。一方、業種の影響も受けるため、業界別の数値を見ることも大切です。

【売上高営業利益率(%)】
計算式:営業利益÷売上高×100
営業利益(本業から生じた利益)が売上に占める割合です。販売費・一般管理費を差し引いた利益であるため、経費の見直しにより改善しやすい指標といえます。5%〜10%あれば優良と言われます。

【売上高経常利益率(%)】
計算式:経常利益÷売上高×100
経常利益(企業の活動全体から生じた利益)が売上に占める割合です。営業利益に財務活動による損益を加減した利益であり、臨時的な損益は含まないことから、企業の普段の活動で会社に残せる利益の割合となります。

●参考指標

参考までに、令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)の結果から各指標を計算してみました。結果は以下のとおりです。
(※)中小企業実態基本調査とは、中小企業の経営実態等を明らかにするための国の調査です。調査対象は全国の約11万社の中小企業であり、総務省が実施した「経済センサスー基礎調査」等の結果をもとに選出されています。

【全体版】

総資本営業利益率
(ROA)
自己資本利益率
(ROE)
売上高総利益率 売上高営業利益率 売上高経常利益率
3.3% 6.7% 25.6% 3.3% 4.4%

【業種別版】

産業 総資本営業利益率(ROA) 自己資本利益率(ROE) 売上高総利益率 売上高営業利益率 売上高経常利益率
建設業 4.3% 7.0% 23.4% 4.0% 4.7%
製造業 3.5% 5.7% 20.6% 3.8% 5.1%
情報通信業 5.9% 7.0% 47.3% 5.9% 7.0%
運輸業,郵便業 2.6% 7.7% 23.2% 2.4% 3.4%
卸売業 3.4% 6.5% 14.9% 2.1% 2.7%
小売業 2.9% 6.5% 29.3% 1.8% 2.5%
不動産業,物品賃貸業 2.6% 8.3% 45.1% 9.1% 12.6%
学術研究,専門・技術サービス業 4.6% 6.1% 54.3% 8.6% 10.3%
宿泊業,飲食サービス業 1.6% 13.4% 68.0% 1.5% 3.5%
生活関連サービス業,娯楽業 2.0% 5.0% 37.2% 1.9% 3.1%
サービス業(他に分類されないもの) 3.5% 7.0% 41.0% 3.7% 4.8%

(参考)中小企業庁:中小企業実態基本調査の結果から独自に計算

今回紹介した収益性指標以外にも、効率性・安全性・生産性などを測る指標もあります。他の指標については、次の機会にご紹介します。