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消費税の「任意の中間申告制度」をご存知ですか

消費税の「任意の中間申告制度」をご存知でしょうか。
消費税の中間申告を行う法的な義務はないけれど、あえて中間申告を行う制度です。
「一体、何のためにそんなことを?」を不思議に思われるかもしれませんが、例えば、売上が急激に増えた時の納税資金の管理に役立てることができます。
今回はこの「任意の中間申告制度」についてご紹介します。

■消費税の任意の中間申告制度とは

消費税の中間申告と、それに伴う中間納付は、直前の課税期間における確定消費税額が「48万円」を超える場合に義務として発生します。この「48万円」は地方消費税を除いた税額であり、地方消費税を含めた場合の判定ラインは「61万5,300円」となります。
この税額を下回る課税事業者には、中間申告や中間納付を行う義務はありません。つまり、年1回の確定申告のみで消費税の申告と納税を完了させることができます。
しかし、税務署に対して一定の手続きを行うことにより、あえて消費税の中間申告と納付を行うことも認められています。
国税庁では、これを「任意の中間申告制度」とし、適用に必要な届出書や専用の申告様式を公開しています。
国税庁HP:任意の中間申告制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6611.htm

■任意の中間申告、どんなときに活用される?

任意の中間申告制度は、主に納税資金の管理を目的として活用されます。
例えば、事業が軌道にのって急激に売上が増加した事業年度では、確定申告の際に想像以上の消費税の納税が必要になり、資金繰りを圧迫するおそれがあります。特に消費税の性質上、赤字であっても納税額が発生するケースがあることには注意が必要です。もし納税できなければ、滞納した日数分の延滞税も追加されます。
このような心配がある時、任意の中間申告を利用すれば、課税期間の開始から6か月分(上半期分)で消費税の仮決算をするなどし、中間納付を行うことができます。これにより、確定申告時の納税額の一部を前払いする形となり、負担を分散することができるのです。
手間はかかりますが、繁忙期などにうっかり運転資金として納税に必要なお金を使い込んでしまう事態を避けることができます。

■「納め過ぎ」にならないのか

任意の中間申告では、税負担を上半期分と下半期分で分散するイメージになります。
中間納付した税額は、確定申告時に年税額から控除され、もし控除しきれない場合は還付も受けられますので、支払いすぎることはありません。

■任意の中間申告・中間納付を行うには

制度を利用するには、「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を、課税期間開始から6か月以内に税務署へ提出する必要があります。 また、制度の適用を終了したい場合には、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を、同じく課税期間開始から6か月以内に提出します。
なお、中間申告書を提出せず期限を過ぎた場合は、「取りやめの届け出があった」と自動的にみなされます。義務として行わなければならない中間申告(通常の中間申告)とは扱いが異なる点となります。

■ 任意の中間申告・納付の税額計算方法

税額の計算方法には、以下の2つがあり、どちらかを選択できます。
1.前期の実績による方法
直前の課税期間における消費税額(地方消費税を除いた年税額)の12分の6の額に、地方消費税(消費税額×78分の22)を加えた額を納税します。
2.仮決算による方法
課税期間の開始から6か月間の取引をもとに仮決算を行い、通常の消費税の申告様式を使って申告・納付します。
前期と比べて売上が急激に増加しており、納税資金の管理として活用したい場合は、こちらの方法を検討すると良いかもしれません。

■任意の中間申告・納付の期限

中間申告および納付の期限は、対象期間(この場合、課税期間の開始から6か月間)の末日の翌日から2か月以内です。
・個人事業主:任意の中間申告の対象期間:1月〜6月 → 申告・納付期限:8月末
・3月決算法人:任意の中間申告の対象期間:4月〜9月 → 申告・納付期限:11月末
この期限までに、所定の事項を記載した中間申告書を納税地の所轄税務署に提出し、あわせて消費税および地方消費税を納付します。

■任意の中間申告を適用する際の注意点

任意で利用できる制度とはいえ、中間申告書を提出した以上は、その申告に係る税額を期限内に納付する必要があります。納付が遅れた場合には、延滞税が課されることになりますので、適用する際はスケジュールの管理が重要です。
また、納税資金に不安がある場合には、申告方法(原則課税か簡易課税か)の見直しや、状況に応じて納税の猶予制度などの他の制度も含めて、総合的に検討すべき時もあります。

■制度の活用をご検討の際は、まずはご相談を

「今年は納税額が多くなりそう」「資金繰りの見通しが不安」と感じた時は、早めの対応が重要です。
任意の中間申告制度は、適切に活用すれば納税資金の管理に有効ですが、利用する以上は、中間納付の期限をしっかり守ることが必要です。また、状況によっては他の制度と併せて検討すべきケースもあります。まずは顧問税理士に相談してみましょう。

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税制改正で創設された「防衛特別法人税」とは

令和7年度税制改正において、「防衛特別法人税」が創設されました。
実際に納税額が生じる法人は限られますが、その申告は、法人税の申告を要するすべての法人に義務づけられています。
この記事では、「防衛特別法人税」について解説します。

■防衛特別法人税とは

防衛特別法人税とは、防衛力強化のための財源確保として、法人に対して創設された新たな税目です。令和8年4月1日以後開始事業年度から課税が始まります。

■防衛特別法人税が課される法人

法人税を課されるすべての法人が対象になります。
ただし、税額の計算方法から、実際に納付税額が発生するのは一部の法人に限られます。

■防衛特別法人税の計算方法

「基準法人税額」から、「基礎控除額」としての500万円を控除した金額が、防衛特別法人税の課税標準となります。
したがって、「基準法人税額」が500万円以下の法人等については、防衛特別法人税の納付税額はありません。
【防衛特別法人税の計算式】
(基準法人税額−500万円)×4%

(画像出典)国税庁:防衛特別法人税が創設されました
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf

●基準法人税額とは

基準法人税額とは、所得税額控除等を適用する前の法人税額となります。

●通算法人の基礎控除額について

通算法人の基礎控除額は、500 万円を各通算法人の基準法人税額または加算前基準法人税額の比で配分した金額となります。

■防衛特別法人税の申告について

●申告期限

防衛特別法人税の申告期限は、法人税の確定申告と同じです。
申告期限の延長特例の適用があれば、防衛特別法人税の申告期限もその延長された期限となります。

■申告方法

防衛特別法人税の申告は、法人税等申告書と一体となった新様式を用いて、法人税等とあわせて行います。
令和7年5月に国税庁が公開した新様式によれば、法人税等申告書の別表一は大きく変わらず、それに続く「別表一次葉一」にて、防衛特別法人税の申告欄が追加される予定です。
現行の「別表一次葉」は法人税額や地方法人税額の計算等に関する様式ですが、これが「別表一次葉"二"」に繰り下げられます。
新様式の「別表一次葉一」は、以下のようなイメージとなります。

(画像出典)国税庁HP:防衛特別法人税が創設されました
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf

●中間申告も必要に

令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から、法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税についても中間申告書を提出する必要があります。

■防衛特別法人税の注意点

防衛特別法人税は、原則すべての法人に申告義務が生じます。
たとえ納税額が発生しなくても、防衛特別法人税額の欄には「0」円を記載して申告書を提出する、いわゆる「ゼロ申告」が必要になることに注意が必要です。

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