海外から輸入する個人使用貨物の課税価格を、海外小売価格の「6割」に引き下げる特例が、公平性の確保の観点から令和10年4月1日より廃止されます。
廃止の背景には、制度が設けられた当時から輸入環境が大きく変わったことや、海外事業者と日本の輸入販売事業者との間で競争上の不公平が生じていることがあります。
特例の対象となる「個人使用貨物」とは、小売段階の取引による輸入貨物であり、輸入する者が個人的に使用するものを指します。
現行制度では、この個人使用貨物にかかる関税を計算する際、海外小売価格の6割を課税価格とする特例が設けられています。これにより、個人使用であれば本来よりも少ない税負担で物品を海外から購入することができます。
この特例は1980年、当時はめずらしかった海外旅行の土産品などを念頭に設けられました。
商業貨物は卸売価格をもとに輸入される一方、土産品などの個人使用貨物は小売価格で購入されます。そのため、両者の価格差をこの特例で調整し、関税などの負担を公平にすることが、当初の目的でした。
近年はインターネットを利用した越境ECサイトが普及し、海外事業者が日本国内の消費者へ商品を直接発送しやすくなりました。
その結果、日本の消費者が越境ECサイトで商品を購入する際の価格と、日本の事業者が商業貨物として輸入する際の仕入価格との差が縮まっています。つまり、海外小売価格と海外卸売価格の差が、制度創設当時よりも小さくなったのです。
これにより、国内外での競争上の不均衡がみられるようになりました。
この不均衡のイメージについて、令和7年11月に開催された「関税・外国為替等審議会 関税分科会」では、次のような比較資料が示されています。

(画像出典)財務省|関税・外国為替等審議会 関税分科会(令和7年11月26日開催)配付資料(資料3-1)3ページ目より
この図は、仮に海外から3万円で購入できる衣類について、次の2つの方法で購入した場合に生じる関税と消費税、消費者の支払総額を比較したイメージです。
・日本の消費者が越境ECサイトを通じて海外から直接購入する場合(図の上段)
・輸入販売を行う国内小売事業者を介して購入する場合(図の下段)
まず、日本の消費者が越境ECサイトを通じて直接購入する場合、個人使用貨物として扱われるため、3万円の衣類の課税価格は18,000円(3万円の6割)となります。衣類の関税率を10%とすると、関税額は1,800円、消費税は関税額を含めて計算されるため1,900円(消費税の課税価格は1,000円未満を切り捨て)となります。これにより日本の消費者の支払総額のイメージは33,700円(商品:30,000円、税:1,800円+1,900円)となります。
一方、輸入販売を行う国内小売事業者を介して購入する場合、商業貨物として扱われるため、関税は3万円の課税価格に対して計算されます。衣類の関税額は3,000円、消費税は3,300円となり、国内小売事業者の仕入れ額は36,300円になります。さらに国内小売事業者は、この仕入価格に国内での販売経費や自社の利益などを上乗せして販売するため、日本の消費者の支払総額は、36,300円を超えることになります。
このような価格差が国内外の事業者間に競争上の不均衡を生じさせる要因となっていることに加え、国内事業者が事業用の物品を個人使用貨物と装って輸入する事例もみられ、あわせて問題視されていました。
こうした不均衡をなくすため、「6割特例」は令和10年4月1日より廃止されることとなりました。
これにより、越境ECサイト等から個人輸入を行っている方は負担額の上昇が予想されます。一方で、国内の輸入販売事業者にとっては、現状よりも公平な競争条件に近づく可能性があります。
なお、越境ECサイトを通じた海外からの輸入は、コロナ禍以降、増加傾向にあり、6割特例が適用された貨物の9割以上は、関税や消費税の少額免税制度が適用される課税価格1万円以下の貨物でした。
こうした状況を踏まえ、通信販売によって輸入される少額貨物を消費税の課税対象とする改正も、あわせて行われています。
こちらの改正も、令和10年4月1日以後に適用されます。
令和8年度税制改正により、住宅ローン控除の適用期限が5年間延長されました。
これにより、令和8年から令和12年までに新たに入居する方も、改正後の住宅ローン控除の対象となります。
今回の改正では、子育て世帯・若者夫婦世帯への支援に加え、省エネ性能の高い中古住宅や床面積の小さい住宅に対する制度が拡充されました。
一方、令和10年以降は、新築の省エネ基準適合住宅に加え、土砂災害などの危険性が高い「災害レッドゾーン」内に建てられた新築住宅も、原則として住宅ローン控除の対象外となります。
控除率は各年末の住宅ローン残高の0.7%で、変更はありません。
次の図は、国土交通省が公表している改正後の住宅ローン控除の全体像です。

改正前の制度と比較すると、借入限度額や控除期間、対象となる住宅の範囲が次のように拡充・縮小されています。
省エネ性能の高い中古住宅について、控除期間がこれまでの10年から13年に延長されます。
借入限度額も見直され、認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)とZEH水準省エネ住宅は、3,000万円から3,500万円に引き上げられます。さらに、子育て世帯・若者夫婦世帯については、省エネ基準適合住宅を含め、1,000万円が上乗せされます。
子育て世帯とは、19歳未満の扶養親族がいる世帯です。若者夫婦世帯とは、夫婦のいずれかが40歳未満の世帯をいいます。
住宅ローン控除の対象となる住宅は、原則として床面積50u以上であることが必要です。例外として、新築住宅等については、合計所得金額が1,000万円以下の年に限り、床面積40u以上50u未満の住宅も対象とされていました。今回の改正では、この床面積要件の緩和が中古住宅にも拡大されます。
ただし、子育て世帯・若者夫婦世帯がこの特例を適用する場合、借入限度額の上乗せ措置の対象になりません。
新築の省エネ基準適合住宅のうち、令和10年以降に建築確認を受けたものは、原則として住宅ローン控除の対象外となります。登記簿上の建築日が令和10年6月30日以前である住宅などは対象です。
この見直しは、新築住宅に求められる省エネ性能の基準が、段階的に引き上げられることを踏まえたものです。政府は、遅くとも令和12年度以降に新築される住宅や建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能を確保することを目指しています。
そのため、住宅ローン控除においても、令和10年以降の新築住宅には、原則としてZEH水準以上の省エネ性能が求められることになります。
住宅の安全性を確保する観点から、令和10年以降に入居する災害レッドゾーン内の新築住宅も、住宅ローン控除の対象外となります。
ただし、中古住宅や一定の建て替えによる住宅は、引き続き対象となります。
災害レッドゾーンとは、災害危険区域(都市再生特別措置法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった場合に限る)、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域をいいます。