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相続放棄をした場合の相続税について

■相続放棄をしても相続税を支払うことがある?

相続放棄をすることにより、財産の相続権を失いますが、相続税の課税対象となるものには、放棄の対象にはならない「みなし相続財産」にあたる生命保険金などがあります。
つまり、相続放棄をしても、相続税がかかる財産を取得することはあり、財産の状況によっては、相続税の申告と納税が必要になることがあります。
相続放棄をしたからと言って相続税の申告や納税が一切関係なくなるわけではないということです。
「みなし相続財産」の他にも、遺贈によって特定の財産を取得していたり、相続時精算課税によって生前贈与を受けていたりすれば、その財産は相続税の対象になります。
また、これらを取得することにより、暦年課税による生前贈与加算分も(対象となる生前贈与があれば)課税対象になります。

■相続放棄をした場合、相続税の計算で不利になることはあるのか

みなし相続財産にあたる生命保険金には、「500万円×法定相続人の数」までの非課税限度額があります。
この計算に用いられる「法定相続人の数」は、相続放棄がなかった場合の数とされていますので、相続放棄をした人がいてもいなくても、非課税限度額に影響はありません。
ただし、この非課税限度額の適用対象者は「相続人」のみであり、相続放棄をした者が取得した生命保険金には適用されません。
この場合、非課税限度額は、他の相続人の生命保険金に適用されます。
相続放棄をしなかった場合と比べると、非課税の適用がない相続放棄者の税負担は大きくなり、その分、非課税の適用をした他の相続人の税負担は小さくなります。
また、相続放棄者の他に生命保険金を取得した人がいないなど、非課税限度額を適用しきれないこともあります。その場合は、全員の相続税額(相続税の総額)の計算に影響を与えることもあります。
また、相続放棄をすると、相次相続控除(今回の相続開始前10年以内に、今回の被相続人が他の相続によって財産を受け取っている場合に適用できる控除)が使えなくなります。未成年者控除や配偶者の税額軽減などは相続放棄者でも適用できます。

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法人所有の暗号資産 期末評価方法の一部が見直しに

令和5年度・令和6年度の2年連続で、法人所有の暗号資産の期末評価方法に関する改正が行われました。
この改正は、法人の暗号資産の保有目的が、短期売買からブロックチェーン技術による開発事業や法人の資金調達などに広がっていることに起因します。
今回は一連の改正の背景をわかりやすくお伝えしながら、法人で所有する暗号資産の期末評価がどのように変化したのかを解説します。

■法人所有の暗号資産は原則、期末に時価評価

活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産といいます)を日本の内国法人が取得して、それを期末まで保有すると、事業年度終了の日における市場価格に基づいて時価評価を行わなければなりません。
活発な市場が存在するかどうかには複数の法的要件がありますが、主に「継続的に売買価格や交換比率が公表されている」、「十分な数量・頻度で取引がされている」といった点から判断されます。
それではなぜ、市場暗号資産について期末に時価評価を行うのかというと、暗号資産を保有する理由が、主に短期売買のためであると考えられていたからです。この場合、暗号資産は経営者の任意のタイミングで売却できるため、例えば、法人の所得を圧縮するために含み損を抱える暗号資産だけを期末前に売却するような租税回避に利用することが懸念されていました。そのため、恣意的な操作がなるべく入らないよう、期末時価による課税が実施されてきたのです。

■Web3.0推進を目指し評価方法を見直す

近年、暗号資産の基盤となるブロックチェーン技術を用いたWeb3.0と呼ばれる次世代のインターネット経済が注目されています。
こうした変化から、暗号資産を自社で開発する企業や、自社で開発していなくても事業戦略として暗号資産を継続的に保有する企業が現れるようになりました。
こうした企業の暗号資産に、期末の時価評価はなじみません。なぜなら、事業活動のために暗号資産を継続的に保有する必要があるからです。
それでは、こうした企業が毎期末においてその含み益に課税されるとどうなるでしょうか。含み益は未実現の利益ですから、キャッシュフローを伴いません。お金が入っていないのに納税しなければならず、事業上の制約からそれを簡単に売却することも選べない状況です。
その結果、暗号資産を発行するスタートアップ企業などが、税制の異なるシンガポール等の海外に流出していることが問題視されました。
今回の改正は、この流れを受けて、期末の時価評価の対象から除外する暗号資産を定義し、それらの暗号資産については、活発な市場が存在しない暗号資産と同様に、時価法ではなく「原価法」を適用できるようにしたものとなります。
「原価法」であれば期末の帳簿価額による評価となるため、時価のような評価損益は発生せず、それに基づく法人税等の課税もないことになります。

■期末時価評価の対象にならない暗号資産とは

令和6年度税制改正によって、法人所有の暗号資産の期末の評価方法は、次のように変わっています。

(画像出典)国税庁:令和6年度法人税関係法令の改正の概要
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2024/01.htm

表の1番の区分が従来どおりの時価評価によらなければならないもの、そして3番の「特定自己発行暗号資産」と2番の「特定譲渡制限付暗号資産」に該当する市場暗号資産が、それぞれ令和5年度と令和6年度の税制改正において創設された、時価評価の対象から除外される暗号資産になります。
令和5年度の「特定自己発行暗号資産」の原価法による評価はすでに施行されており、令和6年度の「特定譲渡制限付暗号資産」の改正は令和6年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。
「特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除く)」の改正後の評価方法は「時価法または原価法」とされ、法人が選定した方法によって評価できるものになっています。選定には税務署への届け出が必要で、この手続きをしなければ「原価法」が適用されることになっています。(法人税法第61条第2項)

■特定自己発行暗号資産とは

令和5年度税制改正で期末時価評価の対象から除外された「特定自己発行暗号資産」は、暗号資産の発行法人が発行時から継続保有する暗号資産が対象になります。

対象者 暗号資産の発行法人(共同発行も可)
内容 その法人が発行し、かつ、発行の時から継続して有する暗号資産(自己発行暗号資産)であって、次の「譲渡についての制限その他の条件」を満たすもの
要件 【譲渡についての制限その他の条件】
次のいずれかに該当するものであること
・他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられている
・一定の要件を満たす信託財産とされている
評価方法 原価法

■特定譲渡制限付暗号資産とは

令和6年度税制改正で期末時価評価の対象から除外された「特定譲渡制限付暗号資産」は、発行者ではない第三者が継続保有する暗号資産が対象になります。

対象者 暗号資産を保有する法人(発行法人ではない第三者)
内容 その法人が有する市場暗号資産であって、次の要件に該当するもの
要件 次のすべての要件に該当するものであること
・「譲渡についての制限その他の条件」を満たすこと
・上記の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、暗号資産交換業者に対する通知等の手続きをとっていること
評価方法 原価法または時価法のうち、その法人が選定した評価方法

(※)移転制限の措置が解除されるまでおおむね1年以上の期間が必要

■暗号資産の評価・税務申告は税理士に相談を

法人所有の暗号資産の期末の評価方法は、暗号資産によって変わります。暗号資産の評価や税務申告は、税理士にご相談ください。

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