観光庁による令和6年度のインバウンドに関する補助金の公募が次々に行われています。
令和6年度の補助事業を含むインバウンド関連の予算額は、「持続可能な観光地域づくり」(約51億円)と「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取り組み」(約439億円)を柱に、東日本大震災復興枠や令和5年度補正予算などを合わせて、計約1,200億円の規模となっています。
この額には補助事業以外も含まれますが、補助金に対する注目度は高く、公募が始まると早々に予算額に達して途中で打ち切られたものもあります。
国土交通省の予算概要の説明資料によると、コロナ後の訪日外国人旅行者数は着実に回復している一方で、三大都市圏に宿泊客が集中しているため、混雑やマナー違反による地域住民への影響や、旅行者の満足度が低下していることが懸念されています。
これに対応するため、令和6年度のインバウンド補助金は、オーバーツーリズムの防止、地方への需要分散、滞在日数の延長を図るための観光産業の高付加価値化に関する施策が中心となっています。
令和6年度の「インバウンド安全・安心対策推進事業」には、約4か月間という長めの公募期間が設けられたにもかかわらず、およそ2か月で「所定の予算額に達したため受付を終了」という表示に変わりました。
(画像出典)観光庁HP: 令和6年度当初予算事業「インバウンド安全・安心対策推進事業」の公募画面(現在、公募の受付は終了している)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00008.html
この補助金は、令和4年度補正、令和5年度補正でも公募が行われましたが、いずれも同様に早期に締め切られており、人気の高さがうかがえます。
「インバウンド安全・安心対策推進事業」の趣旨は、訪日外国人観光客が災害に遭遇したり医療機関を受診したりする場合に備え、インバウンドの誘致に意欲的な地域に所在する観光施設や医療機関、その地域の店舗や事業所を有する企業に対し、安全・安心な旅行環境の整備を補助するものです。
ほんの一例となりますが、トイレの洋式化、キャッシュレス決済の整備、多言語案内に対応するためのデジタルサイネージの整備、スタッフ研修などの費用が補助対象となります。興味のある方は、次の予算で再公募がもしあれば、早めの申請を検討すると良いでしょう。
他にどのようなインバウンド補助金があるのか気になる方のために、令和6年1月〜8月に公募された、民間事業者が補助対象になり得る補助金を以下にまとめましたので、参考にしてください。
補助事業 | 事業内容 | ステータス |
---|---|---|
持続可能な観光の促進に向けた受入環境整備事業 | 自然環境・文化等の地域資源の保全・活用やオーバーツーリズムの未然防止に向けた受け入れ環境の整備を支援 | 二次公募 (〜11/8) |
インバウンド安全・安心対策推進事業 | 訪日外国人旅行者の災害や事故など非常時の対応強化 | 公募終了 (予算達成) |
インバウンド受入環境整備高度化事業 | ストレスフリーな旅行環境の整備、新たなニーズ・新技術の活用、賑わい環境の創出、ユニバーサル対応、観光拠点の整備 | 公募終了 |
持続可能な観光推進モデル事業 | 持続可能な観光地マネジメントが期待できる地方公共団体及びDMO等に対し、専門家派遣による伴走支援等を実施 | 公募終了 |
MICE誘致の促進 | MICE施設の受入環境整備事業、コンベンションビューローの受入体制整備事業、海外からのミーティング・インセンティブ旅行誘致に関わるコンベンションビューロー等機能高度化事業、海外からのミーティング・インセンティブ旅行誘致に向けた地域連携支援事業 | 公募終了 |
地域一体となったインクルーシブツーリズム促進事業 | 多様な食習慣・文化的習慣を有する訪日外国人旅行者への受入対応を目的とした、誘客促進・観光消費の拡大が期待できる地方公共団体及びDMO等に専門家を派遣する支援 | 公募終了 |
地域観光資源の多言語解説整備支援事業 | 観光資源の解説文作成に係る支援 | 公募終了 |
ブルーツーリズム推進支援事業(東日本大震災からの復興) | 海の魅力を高めるブルーツーリズムを推進する取組を総合的に支援 | 公募終了 |
地域観光新発見事業 | 地域の観光資源を活用した地方誘客に資する観光コンテンツについて、十分なマーケティングデータを活かした磨き上げから適時適切な誘客につながる販路開拓及び情報発信の一貫した支援を実施 | 二次公募終了 |
特別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質の向上推進事業 | インバウンド消費の更なる拡大・質の向上を図るため、特別な体験コンテンツ・イベント等の創出等を支援 | 二次公募終了 |
オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業 | 住民を含めた、地域の関係者による協議の場の設置、協議に基づく計画策定や取組に対する包括的な支援 | 三次公募終了 |
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業 | 省エネ設備等の導入支援 | 二次公募終了 |
宿泊施設インバウンド対応支援事業 | バリアフリー化を支援 | 二次公募終了 |
観光地・観光産業における人材不足対策事業 | 宿泊業が抱えている人手不足を解消するための設備投資やサービスの導入に関わる経費の一部を支援 | 三次公募 (〜9/30) |
2024年8月末時点では、一部を除き公募は終了していますが、興味のあるものがあれば次の機会を逃さないよう注意してください。
また、観光庁の公募情報は随時更新されていますので、最新の情報をチェックしましょう。
観光庁HP:公募情報2024年
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo_2024.html
再公募が行われるかどうかを予測するには、観光庁の予算情報を確認することが有効です。
観光庁の下記のページがわかりやすいため、参考にしてください。なお、前年の例では、11月に補正予算の情報が追加掲載されています。
(参考)観光庁HP:観光庁予算
https://www.mlit.go.jp/kankocho/yosan_zeisei/yosan/index.html
2024年8月末時点において公募中の補助金には、「持続可能な観光の促進に向けた受入環境整備事業」があります。(〜2024年11月8日まで)
(参考)観光庁HP:令和6年度「持続可能な観光の促進に向けた受入環境整備事業」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo08_00013.html
オーバーツーリズムの未然防止と環境保全を目的とした事業であり、民間事業者も「持続可能な観光の促進に向けた受入環境整備事業を実施する者」として「一般型」を申請すれば、補助対象になります。
「一般型」の補助メニューは、次の1〜11の事業です。
1. トイレの有料化に係る整備
2. 入域料・協力金徴収のためのオンライン等による徴収システムとその徴収に必要な整備
3. 自然保護のための保護柵、遊歩道等の整備
4. 景観に配慮した工作物の整備
5. 光害防止のための照明の整備
6. バイオトイレ等の整備
7. ペットボトル削減のための給水機等の整備
8. パークアンドライドのための駐車場の整備
9. マナー啓発のためのコンテンツ制作、設備整備
10. 混雑平準化・解消のための予約システムの整備
11. 混雑平準化・解消のための混雑状況の可視化に資するシステムの整備
申請には、所定の様式による「整備計画」と「要望書」の提出が必要です。
「整備計画」は単独でも共同でも策定可能ですが、その策定者が「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」ロゴマークの取得者や、観光地域づくり法人(DMO)のうち「先駆的DMO」に選定された者である場合、加点されることに留意する必要があります。