相続した土地を手放したい人に向けた「相続土地国庫帰属制度」が、2023年4月27日からスタートしています。
「相続土地国庫帰属制度」とは、相続や遺贈によって土地を取得した方が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度です。政府が喫緊の課題とする所有者不明土地問題の解決策の一つであり、所有者不明土地を新たに発生させないための対策として、相続登記の義務化等の改正とともに新設されました。
わかりやすくいうと「相続したくない土地を国に引き取ってもらえる制度」なのですが、制度を利用するには法務局の承認を得なければならず、承認された場合は10年分の管理費に相当する「負担金」の支払いをしなければなりません。
それなりに手間とコストのかかる制度ですが、将来発生し続ける責任やコスト(管理費・税)から解放されるメリットを考慮して検討するとよいでしょう。
あらゆる土地を国が引き取るとなると、管理コストのかかる土地の押し付けによって、制度自体が崩壊してしまいます。
そのため、管理や処分に過分のコストがかかる土地は、この制度の対象になりません。
【対象にならない土地の例】
(出典)法務局HP:相続土地国庫帰属制度の概要
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji1
法務局に、申請に必要な書類を提出します。審査手数料(土地一筆あたり1万4,000円)が必要になります。
なお、法務局では申請前に事前相談(要予約)が可能ですので、まずはそれを活用するとよいでしょう。
(参考)法務省HP:令和5年2月22日から相続土地国庫帰属制度の相談対応を開始します
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00498.html
法務局により、書面調査・実地調査が行われます。
審査に問題がなければ、法務大臣・管轄法務局長による承認の通知、負担金の通知が行われます。
負担金とは、土地の種目に応じた10年分の管理費相当額のことで、負担金の通知から30日以内に納付しなければなりません。
負担金の金額については、こちらをご覧ください。
法務局HP:相続土地国庫帰属制度の負担金
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
インボイス制度が企業にもたらす影響は、税務に関する影響だけではありません。
公正取引委員会では、インボイス制度を契機に、事業者が取引先の免税事業者に価格交渉をする際、独占禁止法・下請法に抵触しないよう注意を呼びかけています。
令和5年5月、公正取引員会から「インボイス制度の実施に関連した注意事例について」という文書が公開されました。
内容は、インボイス制度に関して独占禁止法違反につながるおそれのある複数の事例が確認され、これに対し、公正取引委員会から正式に注意を行ったというものです。
同文書では、その注意事例が紹介されています。
(参考)公正取引委員会HP:インボイス制度関連コーナー
https://www.jftc.go.jp/invoice/index.html
問題となった注意事例は、買い手側にインボイス制度の「経過措置」が適用されるにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も免税事業者を選択するのであれば、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書などで一方的に通告を行ったというものです。
(出典)インボイス制度の実施に関連した注意事例について
https://www.jftc.go.jp/file/invoice_chuijirei.pdf
「経過措置」とは、免税事業者からの課税仕入れであっても令和5年10月〜令和11年9月末の6年間は、仕入税額相当額の80%または50%を仕入税額として控除できる、買い手側に有利な措置のことです。
6年間のうち前半3年が80%控除、後半3年が50%控除になります。
つまり、インボイス制度開始後、当面は同じ価格で免税事業者と取引をしても負担増は仕入税額相当額の2割であるところ、この注意事例では10割分の値下げを一方的に通告したことになります。
こうした注意事例が発出された以上、今後、免税事業者との価格交渉を考えている事業者は取引価格に「経過措置」を考慮することや、それを一方的に通告することについて注意をしなければならないといえます。
このような事例が問題視される理由は、独占禁止法において「優越的地位の濫用」が規制されているからです。
「優越的地位の濫用」とは、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることをいいます。
「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(平成22年公正取引委員会)」によると、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の判断は、取引の相手方との関係をみて相対的に優越した地位にあることや、買い手に対する売り手の取引依存度、買い手側の市場における地位などから総合的に判断されるとしています。
公正取引委員会における、インボイス制度を契機とする価格引き下げについての基本的な考え方も確認しておきましょう。
まず、独占禁止法や下請法は、インボイス制度をきっかけに取引条件の見直しをすること自体を規制しているわけではありません。
そもそも取引条件を決めることは、当事者間の自主的な判断に委ねられる事項です。
公正取引委員会は、インボイス制度を契機とする免税事業者との取引価格の変更について、買い手の経過措置や免税事業者の諸経費にかかる消費税の負担(※)などを考慮し、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても問題にならないとしています。
(参考)公正取引委員会:免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A(Q7:「1 取引対価の引下げ」より)
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html
(※)免税事業者は、消費税相当額を含む売上高を総取りできるものと誤解されやすいのですが、免税事業者の場合、課税仕入れに含まれる仕入税額の控除を受けられないことから、仕入れや経費として支払う消費税を全額負担しなければなりません。