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【令和5年度税制改正】2024年から始まる新しいNISA、3つの改正点

令和5年度税制改正大綱が決定しました。
今回は、その中でも注目度の高いNISA(少額投資非課税制度)の改正点について解説します。
新しいNISAが始まるのは2024年(令和6年)からです。
来年2023年(令和5年)は、現行制度の扱いが続きますので注意してください。

■新しいNISAの3つの改正点

改正点1:NISAが恒久的措置になる

現行のNISA制度では、一般NISAが2023年まで、つみたてNISAが2042年までとされていますが、新しいNISA制度では、これらの期限がいずれも撤廃されます。
つまり、2024年以降にNISAで購入した金融資産から発生する配当金や分配金(インカムゲイン)や売却益(キャピタルゲイン)に税金がかからない期間が「無期限」になるということです。
2024年以降、NISA口座内で株式や投資信託を保有し始めれば、そこから発生するインカムゲインを、何十年も非課税で受け取り続けることができるようになります。
なお、NISA制度について、これまで細かい点まで興味を持っていなかった方も多いと思いますので、改正点だけの紹介では少しわかりづらいかも知れません。
以下、Q&A形式で補足します。

Q:NISA制度ではそもそも何が非課税になるのか。
A:NISA制度で非課税になるのは、NISA口座内で管理する株式や投資信託から発生する配当金や分配金(インカムゲイン)と、売却時に発生する売却益(キャピタルゲイン)です。

Q:NISAを使わなかったらもともと何の税金がかかるのか。
A:NISAを使わず、個人が上場している金融商品からインカムゲインやキャピタルゲインを得た場合、どちらの利益にも各20.315%(15.315%の所得税及び復興特別所得税、5%の住民税)が発生します。たとえば、1万円の配当を得たとしても、通常その手取りは7,967円に減りますが、NISA口座内で管理する金融商品であれば、1万円の配当は1万円で受け取ることができます。

Q:「NISA口座で管理する」とはどういうことか。
A:証券口座を通じて金融商品を購入する際、他の口座(特定口座や一般口座)ではなく、NISA口座内で管理することを選択することによって、その商品をNISA口座で管理できるようになります。NISA口座は、証券会社に申し込んで開設することが可能です。

改正点2:投資上限額が増える

現行のNISA制度は、一般NISAでの非課税投資額が年120万円まで、つみたてNISAが年40万円までに定められていますが、この金額がいずれも増加します。
また、現行のNISA制度において一般NISAとつみたてNISAは択一制であり、いずれか片方の枠でしか投資することができなかったのですが、新しいNISA制度では、この択一制が撤廃されます。
つまり、2024年以降の投資上限額は、下記のように変わります。

現行NISA 改正NISA(2024年〜)
一般NISA:年120万円 成長投資枠:年240万円
つみたてNISA:年40万円 つみたて投資枠:年120万円
投資上限額:年120万円または年40万円のいずれか 投資上限額:合計年360万円

Q:投資上限額は非課税効果にどのように影響するのか。
A:投資上限額とは、非課税で購入できる株や投資信託などの上限額を意味します。
たとえば、投資上限額が年240万円の場合、1月1日〜12月31日の間にNISAで購入した240万円分に相当する金融資産から発生するキャピタルゲイン・インカムゲインが非課税になるということです。 注意点は、売却しようが保有を続けようが、その年の投資上限額は「購入時点」で消費されることにあります。たとえば4,000円の株式を600株(計240万円分)購入した場合、それを即日売却しようが保有を続けようが、その年の240万円は使い切ったこととなり、その日から12月31日までに購入する他の株や投資信託のキャピタルゲイン・インカムゲインは課税対象となります。

Q:なぜ改正後も240万と120万円の2枠があるのか。
A:現行制度の特色が引き継がれると仮定した上での説明となりますが、成長投資枠(現:一般NISA)とつみたて投資枠(現:つみたてNISA)には、投資対象と投資方法に大きな違いがあります。
前者は株式や投資信託などの金融商品を広く投資対象としますが、後者は、政府が長期投資に向いていると判断した一定の投資信託がメインとなります。また、前者は好きなタイミングで投資できますが、後者は累積投資(毎月定額での投資)に限られます。
なお、税制改正大綱によると、成長投資枠では高レバレッジ投資信託などの商品を対象外にする見込みのようです。

改正点3:生涯投資上限額が創設される

NISA制度における生涯の投資上限を1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)とする制限が新設されました。
つみたて投資枠ですべて1,800万円を使うことも、成長投資枠1,200万円+つみたて投資枠600万円とすることのいずれもOKです。
税制改正大綱によれば、この制限は、NISAが高所得者層に対する優遇制度になりすぎないよう配慮したものと説明されています。

Q:すでにNISAを使ったことのある人の上限額はどうなるのか。
A:1,800万円の投資枠をゼロから使うことができます。
現行の一般NISAやつみたてNISAの非課税口座内にある金融資産は、新しい制度における非課税限度額の外枠で、現行の取扱いを継続することになっています。したがって、2024年からのNISAは新たな投資枠として管理されることとなり、現行のNISA制度で投資を行ってきた人も、新たに投資枠1,800万円を使うことができるのです。

■改正後のNISAについて

今回の改正によって注目すべき点は、長期投資のメリットが格段に大きくなったことです。
できるだけ早く1,800万円分の上限まで、長期投資向けの商品に投資することが有効といえます。
たとえば、これまで何となく投資をしてこなかった、資金にゆとりのある50代前後の方が、毎年360万円ずつ1,800万円分を5年で投資してしまうような方法も、2024年以降ならありです。
もちろん、年齢の若い方ならこつこつと毎月少額な投資を継続し、数十年かけて複利を上げていく利用も有効といえます。
一方、長期投資にはあまり興味がなく、主に売却益を狙って一般NISAを利用してきたトレード好きな方にとっては、生涯投資上限額の創設に戸惑いを覚えることでしょう。
トレードには今後一切NISAを使わないことを選択する人や、成績が好調であれば、1,200万円分の投資枠で稼げるだけトレードを続け、残り600万円を長期投資に充てるなど、投資枠を分けて使う人が出てくるかもしれません。
いずれにしても、NISAはあくまで安定的な資産形成を目的とする制度ですので、この機会に、多くの方が長期投資にシフトするのではないでしょうか。

経営者に知ってほしいNISAとiDeCoの違いについて

長期投資が税金面で優遇されている制度には、NISAの他にも「iDeCo(イデコ)」があります。
iDeCoの目的は、老後の資産形成であり、受給年齢が60歳以降に設定されている代わりに下記の利点があります。

上記の利点のうち、NISAにないものは、掛け金が全て所得控除になる点です。 毎年の個人所得税・住民税の負担軽減をしながら資産形成ができるため、個人の税負担が気になる経営者の利用に向いています。
特に、小規模企業共済の掛け金の上限とiDeCoの掛け金は別枠になるため、経営者の方にとっては小規模企業共済と併用し、節税効果の上乗せ対策としての利用も可能です。
一方、NISAの利点としては、いつでも売却して現金化できる点にあります。
たとえば、融資を返済中の方やお子さんの教育資金などの準備をこれから始める方は、いざという時に60歳を待たずに引き出すことができるNISAを優先的に利用するといった選択も考えられます。
(※)NISA・iDeCoはいずれも投資制度です。税制面での優遇がある分、投資の成果を上げやすいのですが、投資成績によっては元本割れのリスクがあります。

参考資料
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/204848_1.pdf

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