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電子インボイスに関する国税庁のQ&Aが追加

国税庁ホームページのインボイス制度に関するQ&Aに「お問合せの多いご質問」が随時追加されています。
今回は、電子インボイスに関する基本的な内容と「お問合せの多いご質問」のうち電子インボイスを交付したい事業者(売り手側)に向けた2つのQ&Aを解説します。

■電子インボイスとは

インボイスとは、令和5年10月から始まるインボイス制度における適格請求書のことです。
売り手側(適格請求書発行事業者)にとっては買い手の求めに応じて交付義務を負う書類であり、買い手側にとっては仕入税額控除を適用するための重要な書類です。
電子インボイスとは、取引相手との間において電子データで授受するインボイスをいいます。

■電子インボイスの保存義務と保存方法

電子インボイスを相手に交付したり相手から受け取ったりした場合、改正消費税法では、そのデータは、@データのまま、A紙に印刷のいずれかの方法で保存することを義務付けています。

データで保存する場合

電子インボイスをデータで保存(@)する場合、その保存方法は、電子帳簿保存法の「電子取引」の保存要件に準じた方法であることが求められます。
言い換えると、電子インボイスをデータのまま正しく保存するには、電子帳簿保存法の保存要件を満たさなければならないということです。
ここで電子帳簿保存法の「電子取引」について少し解説します。
電子帳簿保存法では、保存対象に応じて保存要件を3つに区分しており、「電子取引」はこの3区分の1つにあたります。

保存区分 電子帳簿保存 スキャナ保存 電子取引保存
保存対象 一貫してコンピュータで作成した帳簿書類 取引相手と紙で授受した書類 取引相手と電磁的方法によって授受した取引情報

「電磁的方法」とは、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引などです。
「取引情報」とは「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項」をいいます。

【電子取引の保存要件】
「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たす必要があります。

真実性の要件 以下のいずれかの措置を行うこと
@タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
A取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付すとともに、保存を行う者等に関する情報を確認できるようにしておく
B記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録時効の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
C正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う
可視性の要件 ・保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
・電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
・検索機能を確保すること(ダウンロードの求めに応じることができる場合は一部不要。このうち小規模事業者はすべて不要)

紙で保存する場合

電子インボイスは、消費税法上は紙で保存することも認められています。
しかしながら、令和4年以降、所得税・法人税上では、電子取引のみ紙による保存を認めないこととしています。
この運用が本格的に始まるのは、令和6年1月からとなります。

【電子取引の保存対象となる取引情報の紙保存の可否】

  令和5年末まで 令和6年以降
消費税法
所得税法・法人税法 ×

令和6年以降はデータ保存に統一したほうがわかりやすいのかも知れませんが、消費税法上は、紙保存も認められます。
つまり、令和6年以降も買い手側の仕入税額控除を、紙保存した電子インボイスから適用することができるということです。
この理由について、国税庁は、保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案した結果としています。

電子インボイスの保存期間

紙のインボイスと同じで、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日より7年の保存が必要になります。

■電子インボイスに関するQ&Aの追加

ここからは、国税庁のQ&Aに追加された電子インボイスに関する質問を見ていきます。

「取引年月日」等の項目名のないデータの保存の適否

以下、「お問合せの多いご質問」のうち、お問合せの多い事項についての追加問(問1)から引用。
“当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供しています。
提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされておりますが、当該電磁的記録がXML形式等の取引情報に関する文字の羅列である場合、電帳法における保存要件の一つである「整然とした形式及び明瞭な状態」での画面及び書面への出力は、どの程度の表示が求められるのでしょうか。
例えば、適格請求書の記載事項を示す文言(例えば、「取引年月日」という文言)も必要となるのでしょうか。”
(出典)お問合せの多いご質問
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm

・質問の補足
適格請求書発行事業者(=インボイス制度に登録した事業者)は、消費税の課税取引を行った際、買い手側の求めに応じて、原則、適格請求書(インボイス)を交付しなければなりません。
このとき、適格請求書(インボイス)には、一定の記載項目(下記@〜E)があります。
質問では、電子インボイスの基データがXML形式であり、文字の羅列であることや取引年月日などインボイスの項目名がないことから、これをデータのまま保存することによって保存要件を満たすのかという質問です。
【インボイスの記載項目】
@適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
A課税資産の譲渡等を行った年月日(取引年月日)
B課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(軽減税率の対象である場合はその旨)
C課税資産の譲渡等の税抜き価額または税込み価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
D税率ごとに区分した消費税額等
E書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

・国税庁の回答の主旨
・インボイスの記載項目の文言が必要になるわけではない。
XML形式で問題なし。
・たとえば、下記の出力(印刷)イメージ(※)のように適格請求書であることが視覚的に確認でき、その内容が記載要件のどれにあたるものかわかるのならOK。

梶宦 御中 XX年11月30日
△△商事
登録番号T123…
  54,800
XX/11/1  ビール 課10% 30,000
XX/11/1  缶 詰 軽 8% 8,000
XX/11/9  ビール 課10% 10,000
XX/11/9  缶 詰 軽 8% 2,000
請求時消費税10% 4,000
請求時消費税 8% 800
課税10% 税込額 44,000
内消費税 4,000
課税8% 税込額 10,800
内消費税 800

(※)「お問合せの多いご質問」に示された図画を参考に作成したもの
・電子取引の保存要件を満たしていることが前提であるため、たとえば、上記のようなデータをディスプレイ画面やプリンタから書面として速やかに出力できることなどが求められる点に注意。

交付データの基となったデータベース保存の適否

以下、問2から引用。
“当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録(PDF形式)を提供しております。
提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされておりますが、保存する電磁的記録は、相手方に提供したPDF形式のものではなく、このPDF形式を作成するための基となったXML形式の電磁的記録でも認められますか。”
(出典)お問合せの多いご質問
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm

・質問の補足
相手にはPDF形式にした画像データによる電子インボイスを交付しているところ、自社ではその基データであるXML形式データを保存したいケースです。
相手に交付したデータそのものでない場合も、保存要件を満たすのかという質問になります。

・国税庁の回答の主旨
・取引内容が変更されるおそれがなく合理的な方法により編集されたものであれば可。
・たとえば、データベースからフォーマットに出力してPDF形式の請求書を作成するような場合のXML形式のデータならOK。
・電子取引の保存要件を満たしていることが前提であるため、たとえば、相手に提供したPDF形式をディスプレイ画面やプリンタから書面として速やかに出力できることなどが求められる点に注意。

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