2022年7月下旬から、令和3年度補正予算における事業承継・引継ぎ補助金の公募(全4回中、第2回目)と、令和4年度当初予算における同補助金の公募(全1回)が開始されています。
事業承継やM&Aに伴う費用や、経営資源を引き継ぐ創業や廃業に伴う費用を補助するものです。
具体的には、下記の3つの補助事業に分かれています。
経営革新事業
事業承継やM&Aを契機として行われる経営革新のための事業費を幅広く補助する事業です。
経営革新とは、設備投資、販路開拓、経営統合作業(PMI)などのことで、令和3年度補正予算における事業承継・引継ぎ補助金では、@デジタル化、Aグリーン化、B事業再構築のいずれか1つを伴う取り組みであることが求められています。(取り組みの独創性も審査項目に含まれます)
補助対象者は、事業を承継した後継者や経営資源を引き継いだ創業者です。
ただし、被承継者と共同申請を行うケースのうち一定のものは、被承継者が取り扱った経費についても補助対象として認められる可能性があります。
【注意点】
・次の@〜Cのいずれか1つに該当する必要がある
@小規模企業者である
A直近決算における営業利益または経常利益が赤字
B「2020年4月以降の連続する6か月のうち任意の3か月の合計売上高」が「2019年1月〜2020年3月のうち同3か月の合計売上高」より10%以上減少
C公募申請時に再生計画等策定中または、再生計画等策定済みで過去3年内にそれが成立している
・認定経営革新等支援機関による確認が必要(申請期限に間に合うよう依頼しましょう)
・物品や不動産等のみを保有する事業の承継(売買含む)や設備のみを引き継ぐ等、個別の経営資源のみを引き継ぐ場合は補助対象にならない
専門家活用事業
M&Aに伴う専門家費用を補助する事業です。
専門家への謝金、旅費、外注費、委託費、M&Aマッチングサイトの利用料などが補助金の対象になります。
買い手・売り手の両方とも補助対象者になりますが、買い手はM&A後に地域経済を牽引する事業を行うことが見込まれること、売り手は地域経済を牽引する事業が第三者によって継続されることが見込まれることが条件となります。
【注意点】
・不動産のみの引継ぎは対象外
・補助対象経費の一部に「M&A 支援機関登録制度」に登録された事業者への支払いしか対象にならないものがある
廃業・再チャレンジ事業
廃業に伴う費用(廃業費用、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費など)を補助する事業です。
補助対象となる廃業は、下記のとおりです。
・事業承継またはM&Aで事業を譲り受けた後の廃業
・M&Aで事業を売買した際の廃業
・M&Aで事業を譲り渡せなかった廃業・再チャレンジ
事業承継やM&Aで事業を譲り受けた側が経営革新のために既存の事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合、M&Aで事業を売り買いした者が手元に残った事業や買った事業の一部を廃業する場合、M&Aに挑戦するも事業を売却できなかった者が新しい事業や仕事に再チャレンジするために廃業する場合が対象になります。
経営革新事業や専門家活用事業との併用申請をするか、再チャレンジを伴って廃業・再チャレンジ事業として申請することになります。
【注意点】
・併用申請をする場合、経営革新事業や専門家活用事業で申請し、補助対象に廃業費を上乗せする形となる。(この場合、廃業・再チャレンジ事業での申請はしない)
・再チャレンジで申請する場合は、M&Aで事業を売却できなかったことの証明が必要になる。(事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、M&Aを支援する企業や機関との包括契約、マッチングサイトへの登録のいずれかがわかる書類を提出する)
・再チャレンジする事業に関する計画を作成し、認定経営革新等支援機関による確認を受けることが必要である。(申請期限に間に合うよう依頼しましょう)
経営革新事業
・補助率:3分の2
・補助上限:600万円以内
※補助額の内400万円超〜600万円の部分の補助率は2分の1
専門家活用事業
・補助率:3分の2
・補助上限:600万円
廃業・再チャレンジ事業
・補助率:3分の2
・補助上限:150万円
経営革新事業と専門家活用事業には、それぞれ申請類型が分かれています。
申請類型の別や、事業承継等の手段、法人・個人事業主の別によって、申請に必要となる書類が変わります。
経営革新事業の申請類型
・【T型】創業支援型
廃業を予定している者等から経営資源(設備、従業員、顧客等)を引き継いで行う開業が対象になります。
・【U型】経営者交代型
代表者交代を含む事業譲渡が対象となります。
主に親族内承継や従業員承継に活用することが考えられます。
・【V型】M&A型
事業再編・事業統合等のM&Aが対象になります。
※U型・V型の申請は、産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であることが必要です。
専門家活用事業の申請類型
・【T型】買い手支援型
事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受ける側の申請類型です。
・【U型】売り手支援型
事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り渡す側の申請類型です。
2022年7月下旬から、令和3年度補正予算における事業承継・引継ぎ補助金の公募(全4回中、第2回目)と令和4年度当初予算における同補助金の公募(全1回)が開始されています。
令和3年度補正予算における事業承継・引継ぎ補助金(第2回目)のほうが、補助率や上限額、補助事業完了期限の面で、令和4年度当初予算の同補助金よりも優遇されています。
同じ類型の事業を両方で申請することはできません。
違いを把握し、どちらで申請すべきかを判断する必要があります。
経営革新事業の比較
対象項目 | 令和3年度補正予算(2回目公募) | 令和4年度当初予算 |
---|---|---|
補助事業完了期限日 | 2023年4月30日 | 2022年12月16日 |
補助対象者 | 小規模企業者、一定期間の売上減少等、一定要件を満たす中小企業者 | 一定要件を満たす中小企業者 |
補助対象事業 | 経営革新等に係る取り組みかつ、DX化、グリーン化、事業再構築のいずれかに貢献する事業 | 経営革新等に係る取り組み |
補助率 | 3分の2 (400万円を超える部分は1/2) |
2分の1 |
補助上限額 | 600万円以内 | 500万円以内 |
専門家活用事業の比較
対象項目 | 令和3年度補正予算(2回目公募) | 令和4年度当初予算 |
---|---|---|
補助事業完了期限日 | 2023年4月30日 | 2022年12月16日 |
加点事由 |
・中小企業基本法等の小規模企業者 (売り手支援型のみ) ・直近決算期の利益が赤字 ・2020年4月1日以降の年度売上高が、2022年3月末日までの直近年度売上高より減少していること |
− |
補助率 | 3分の2 | 2分の1 |
補助上限額 | 600万円以内 | 400万円以内 |
廃業・再チャレンジ事業の比較
補助上限額は、令和3年度補正・令和4年度当初ともに150万円で同額です。
対象項目 | 令和3年度補正予算(2回目公募) | 令和4年度当初予算 |
---|---|---|
補助事業完了期限日 | 2023年4月30日 | 2022年12月16日 |
補助率 | 3分の2 | 2分の1 |
補助上限額 | 150万円以内 | 150万円以内 |
※事業承継・引継ぎ補助金を申請される際は、必ず事務局のホームページで最新の公募要領をご確認ください。
※令和3年度補正予算は第2回目公募の内容で執筆しています。第3回目・第4回目の公募で申請される際も必ず最新の公募要領でご確認ください。
(参考)事業承継・引継ぎ補助金事務局ホームページ
https://jsh.go.jp/