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暗号資産(仮想通貨)の利益によって個人の税金はいくら増える?

暗号資産の利益確定をした個人から、「どのくらい税金が増えるのでしょうか」とご質問をいただくことがあります。
暗号資産にかかる税金は、その年の他の所得と、その年の所得控除が影響します。
この記事では、暗号資産の所得の計算方法、暗号資産にかかる税金の種類とその計算方法、そして最後に、暗号資産によっていくら税金が増えるのかを解説します。

■暗号資産は総合課税の「雑所得」に

暗号資産(仮想通貨)の売却益は、その年の総合課税の「雑所得」になります。

雑所得の計算式

雑所得の計算式は、次のとおりです。
【雑所得の計算式】
雑所得=総収入金額?必要経費

暗号資産における総収入金額・必要経費とは

「総収入金額」は、1月1日〜12月31日における、暗号資産の売却代金の合計額です。
「必要経費」は、1月1日〜12月31日における、暗号資産の売却に直接必要となった費用の合計額になります。
必要経費に該当するものは、次の3つです。
・売却した暗号資産の譲渡原価
・売却手数料
・その他、暗号資産を売却するために必要な費用
暗号資産の購入手数料は、譲渡原価に含まれる形で経費になります。

暗号資産の譲渡原価とは

暗号資産の譲渡原価とは、売却した仮想通貨の原価のことで、銘柄ごとに計算する必要があります。
たとえば、お持ちの銘柄がビットコインであれば、計算方法は次のとおりです。(他の銘柄でも計算式は同じです)
【譲渡原価の計算式】
譲渡原価=A+B−C
A:年初に保有するビットコインの評価額
B:年中におけるビットコインの取得価額
C:年末に保有するビットコインの評価額
Bは、1月1日〜12月31日におけるビットコインの取得価額(購入価格+購入手数料)です。
Cは、年末(12月31日)において、売却していないビットコインの評価額になります。 評価額とは、「1単位あたりの取得価額×年末保有数」です。
まず「1単位あたりの取得価額」を、総平均法または移動平均法で計算します。
評価方法について、税務署に何も手続きをしていなければ、個人の方は「総平均法」で計算します。
ご自身で計算する場合は、国税庁の「暗号資産の計算書」を活用するとよいでしょう。(確定申告書に添付する必要はありません)
国税庁HP:申告書・申告書付表と税額計算書等一覧
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/1557_2.htm#a107
Cで算出した評価額が、翌年のAになります。

売却以外にも雑所得が発生するケースも

売却の他にも、他の銘柄の暗号資産に交換して利益を得た場合や、暗号資産を支払いに使用して利益を得た場合などでも、売却益と同様に「雑所得」が発生します。
(例:100万円で取得した1BTCを、5ETH(時価150万円)に交換したような場合) こうした取引についても、上記の「暗号資産の計算書」に入力することで、譲渡原価を計算することができます。

■暗号資産にかかる税金は所得税と住民税

暗号資産から生じた「雑所得」は、所得税や住民税の課税対象になります。
所得税とは、税務署に納める国税です。
暗号資産の雑所得のように、総合課税に分類される所得には、5%〜45%の税率が適用されます。
住民税とは、1月1日時点で住所地のある役所に、翌年度に納める地方税です。
住民税の多くを占めるのは「所得割」という税で、これは前年の課税所得に対し、一律10%で計算されます。
このことから、暗号資産にかかる税率は、「15%〜55%」(所得税+住民税所得割)と表現されることがよくあります。
しかしそれでは、実際にいくら税金を負担することになるのかがわかりません。
そのため、ご自身の所得に適用される税率を調べる必要があります。

■所得税率と所得税の計算方法

所得税率は5%〜45%の超過累進税率

所得税率は、「課税される所得金額」に応じて次のように変わります。
「課税される所得金額」と「税率」のみを見てください。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

(出典)国税庁:所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

課税所得の価格帯で適用税率が変わる

所得税は、「課税される所得金額」のうち、金額の部分ごとに適用される税率が異なります。195万円未満の部分に5%、195万円以上330万円未満の部分に10%…というように、一定の金額を超えるたびに、その超過部分に適用される税率が上がるのです。
これを超過累進税率といいます。

課税される所得金額とは

「課税される所得金額」とは、「各種所得の合計額」から「所得控除」を差し引いた額のことです。
確定申告書で説明すると、A・Bともに第一表の右上に表示される金額になります。
「各種所得の合計額」とは、給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得といった総合課税に分類される所得の合計額になります。
「所得控除」とは、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など、その年に支払った一定の費用に基づく控除や、配偶者控除、扶養控除、ひとり親控除など、本人や家族に応じた控除の合計額になります。
基礎控除だけは、誰でも適用することができます。
ちなみに、「課税される所得金額」は1,000円未満を切り捨てることから、上記の速算表でも1,000円未満が切り捨てられています。

所得税の計算例

所得税の計算方法を、具体例で確認します。
【例】
・給与所得が400万円、不動産所得が100万円の方の所得税
(所得税の計算式)
452万円×20%−42万7,500円=47万6,500円
(所得税及び復興特別所得税)
48万6,500円
(計算手順)
・給与所得、不動産所得を合計します。(500万円)
・所得控除を差し引きます。ここでは便宜上、基礎控除48万円のみを適用します。(※)
・452万円(500万円−48万円)に所得税率を乗じます。計算式は速算表を使用していますが、452万円を、税率の異なる部分に分けて計算して合算しても、答えは同じです。
・復興特別所得税(所得税×2.1%)を加え、100円未満を切り捨てます。
・すでに納めた税額(例:給与から引かれた源泉徴収税額など)があれば、それを差し引いた残額が納税額になります。
(※)実際は、社会保険料控除など他の所得控除を適用できる方が多いため、税額はもう少し安くなることが一般的です。

■住民税の計算方法

住民税の所得割は、所得税で計算した、「各種所得の合計額」から、住民税の「所得控除」を差し引いた額に、一律10%を乗じて計算します。
住民税と所得税の所得控除は、項目はほぼ同じなのですが、控除額に違いがあり、住民税のほうが低めに設定されています。
たとえば、住民税の基礎控除は、所得税よりも少ない「43万円」になります。
ただし、基礎控除を含む人的控除の差は、調整控除という税額控除によって、若干緩和されます。
所得税と住民税の所得控除の違いや調整控除については、下記を参考にしてください。
東京都主税局HP:個人住民税の所得控除
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_07

■暗号資産によって税金はいくら増えるのか

暗号資産の利益が同じでも増える税額が違う

所得税の税率は、「課税される所得金額」によって変わります。
つまり、所得が0円の人と、給与や個人事業などから得た所得が3,000万円ある人が、ともに暗号資産で500万円の利益を得たとしても、増える税額は違うということです。

所得0円・300万円・1,000万円・3,000万円でシミュレーション

暗号資産以外の年間の所得が0円、300万円、1,000万円、3,000万円の人が、それぞれ暗号資産によって雑所得500万円を得た場合、どのくらい税負担が増えるかを比較します。
【計算条件】
・所得税及び復興特別所得税と住民税所得割を合わせた税額で比較
・所得控除は基礎控除のみを考慮する
【0円の場合】
増加する税額:約94万円
【300万円の場合】
増加する税額:約146万円
【1,000万円の場合】
増加する税額:約218万円
【3,000万円の場合】
増加する税額:約254万円

■まとめ

暗号資産によってどのくらい税負担が増えるかは、所得税の超過累進税率のしくみによって、他の所得の金額の有無でかなり変わります。
「いくら用意すればいいか不安だ…」という方は、早めに税理士にご相談ください。

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