■補助金の「特別枠」と「事業再開支援パッケージ」
「ものづくり・商業・サービス補助金」、「持続化補助金」、「IT導入補助金」とは、中小企業(法人・個人事業主)の生産性向上のための設備投資などを支援する、国からの代表的な補助金です。
現在、この3つの補助金に、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した「特別枠」が設けられています。
「特別枠」は、通常枠よりも高い補助率が設定され、優先的に支援が受けられるほか、通常枠よりも補助対象が広がっているものもあります。
また、緊急事態宣言の解除を踏まえた「事業再開支援パッケージ」が策定されたことにより、特別枠の一部の補助率がさらに高まるとともに、一部の補助金の上乗せとなる「事業再開枠」が創設されました。
「事業再開支援パッケージ」の内容が反映された各補助金の公募は、5月22日からスタートしています。
■特別枠の申請要件
特別枠の申請要件は、補助対象経費の6分の1以上が、次項の類型A・B・Cのいずれか1つにあてはまることが必要です。
「ものづくり・商業・サービス補助金」、「持続化補助金」、「IT導入補助金」のいずれも共通の要件となります。
特別枠の類型
・類型A:サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
(例:部品調達困難による部品内製化、出荷先営業停止に伴う新規顧客開拓)
・類型B:非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと
(例:店舗販売からEC販売へのシフト、VR・オンラインによるサービス提供)
・類型C:テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
(例:WEB会議システム、シンクライアントシステム等の導入)
出典:経済産業省支援策パンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(令和2年6月5日19:00時点版)より
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
特別枠の補助率の引き上げ
もともとの「特別枠」の補助率は、類型A・B・Cともに「3分の2」でした。
これが「事業再開支援パッケージ」が策定されたことにより、類型B・Cのみ、「4分の3」に引き上げられています。
次項で、3つの補助金の種類ごとに、補助率や補助金額等を、通常枠と比較しながらまとめます。
■特別枠の補助金額・補助率等のまとめ
ものづくり・商業・サービス補助金
<通常枠>
・補助上限額 1,000万円
・補助率 中小企業2分の1、小規模事業者3分の2
<特別枠>
・補助上限額 1,000万円
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
新製品・サービス・生産プロセスの改善に必要な設備投資の補助事業。
中小企業・小規模事業者が対象。
特別枠は、広告宣伝・販売促進費も補助対象となる。
持続化補助金
<通常枠>
・補助上限額 50万円
・補助率 3分の2
<特別枠>
・補助上限額 100万円
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
販路開拓などの取り組みを支援する補助事業。
小規模事業者が対象。
一般型とコロナ特別対応型がある。
IT導入補助金
<通常枠>
・補助上限額 30〜450万円
・補助率 2分の1
<特別枠>
・補助上限額 通常枠と同じ
・補助率(類型A):3分の2、(類型B・C):4分の3
<備考>
ITツール導入による業務プロセスの改善と効率化を支援する補助事業。
中小企業・小規模事業者が対象。
特別枠は、PC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用も補助対象となる。
■「事業再開枠」による補助金の上乗せ
「事業再開支援パッケージ」の策定により、「事業再開枠」が創設されました。
「事業再開枠」とは、「持続化補助金(特別枠・通常枠)」と「ものづくり補助金(特別枠)」の採択者のうち、一定の経費の支出がある場合に、補助金額を最大50万円上乗せするものです。
一定の経費には、消毒、マスク、清掃、間仕切り、換気設備等の費用など、業種別ガイドラインに沿った経費が該当します。
補助率は、定額補助(10分の10、上限は50万円)です。
39県で緊急事態宣言が解除された5月14日以降に発生した経費が対象になります。
■補助金を検討するときの注意点
資金繰りにゆとりがないときは後回し
補助金は、あくまで今後の事業展開のための投資を支援する「後払い」の補助です。
したがって、売上の著しい減少によって、今まさに資金繰りにゆとりがないときは、まずは「持続化給付金」や自治体の給付、日本政策金融公庫等の融資などを検討しましょう。
必ず最新情報を
今回の記事は、経済産業省のホームページ「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(令和2年6月5日19:00時点版)などを参考に作成しています。
最新の情報は、申請前に各補助金の事務局が公開する公募要領などをご確認ください。
■納税を猶予する「特例制度」
新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する国税について、一定の要件を満たせば納税の猶予を受けられる「特例制度」が新設されています。
通常時でも、納税を猶予する制度には、「納税猶予」や「換価の猶予」といったものがありますが、新設された「特例制度」では、より有利な条件で猶予を受けることができます。
具体的には、税額に「延滞税」(納税が遅れることによって税額に上乗せされる"利息"のような税金)がかからない上、担保の提供が不要といったメリットがあります。
■「特例制度」の具体的な内容
対象となる税目
所得税、法人税、消費税等、ほぼすべての税目が対象になります。
たとえば、令和元年分の所得税や個人事業主の消費税、令和3年1月31日までに納期限が到来する法人の法人税や消費税などが対象となります。
なお、法人事業税や法人住民税など、自治体の税金についても同様の対応が行われていますので、それぞれのホームページ等でご確認ください。
猶予される期間
原則1年間の納税が猶予されます。
その間の任意の時期に一括納付をすることもできますし、分割納付も可能です。
「特例制度」を利用できる事業者の要件
「特例制度」を利用できるのは、次の要件を満たす事業者になります。
・令和2年2月1日以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期と比べておおむね 20%以上減少していること
・一時に納税することが困難であること
・納期限までに申請すること
「一時に納税することが困難」とは、納付すべき国税の全額を一時に納付する資金がないこと、又は納付すべき国税の全額を一時に納付することにより納税者の事業の継続若しくは生活の維持を困難にすると認められることをいいます。
出典:「国税の納税の猶予制度FAQ」(問16)
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/pdf/0020004-96.pdf
■通常の「納税猶予」「換価の猶予」との違い
もともと国税には、新型コロナウイルス感染症とは関係なく、納税が難しい場合に利用できる、「納税猶予」や「換価の猶予」という制度を利用することができます。
いずれも原則として1年間の猶予が認められます。
延滞税がかかる点や、原則、担保の提供が必要な点で、「特例制度」ほどのメリットはありません。
しかし延滞税の税率は、通常より低く設定されていますので、何もしないよりは、現行の制度を利用した方が得です。
「特例制度」には収入の減少要件等がありますので、要件にあてはまらず利用できないときも、現行の制度の適用を検討しましょう。
詳しくは、税務署や顧問税理士などにご相談ください。