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企業版ふるさと納税による税金の控除がアップします

令和2年度税制改正大綱によって、企業版ふるさと納税の延長と控除額の増加が行われることがわかりました。
企業版ふるさと納税とは、地方公共団体による地方創生のための事業に対して、民間企業が支出した寄附金の一部に相当する額を、寄附を行った企業の税金から控除できるというものです。
今回は、企業版ふるさと納税とはそもそも何か、どのように利用するのか、改正後はどのくらい税金が控除されるかについて解説します。

■企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税とは、民間企業が、地方創生のための事業に対して支出した寄附金によって受けられる、税金の控除の制度です。
「地方創生応援税制」ともいいます。
企業にとって税負担の軽減のほか、寄附を行うことによる企業のイメージアップ、寄附を行った地方公共団体とのパートナーシップの構築といった効用が期待できます。

企業版ふるさと納税の寄附はいくらから?

企業版ふるさと納税の対象となるのは、1回あたり10万円以上の寄附金です。

どこに寄附すればいい?

企業版ふるさと納税による寄附の対象になるのは、地方公共団体による「地方創生のための事業」です。
寄附を行う先を選ぶ際に注意していただきたいのは、以下の点になります。

・国が認定した地方創生のための事業であること
・寄附の代償として経済的な利益を受けるものでないこと
・本社(主たる事務所・事業所)が所在する地方公共団体への寄附でないこと

特に注意していただきたいのは、3点目の本社がある地方公共団体への寄附が対象に「ならない」点です。
個人のふるさと納税と違い、どの地方公共団体への寄附でも対象になるわけではありません。

寄附を行う事業の選び方

企業版ふるさと納税の対象となる事業は、下記の内閣府のホームページから確認できます。
現在、「地域」「事業分野」「キーワード」から、企業版ふるさと納税の対象となる事業を検索できるようになっています。
イメージアップやパートナーシップの構築といった効用を生み出すには、自社と関連する事業を「事業分野」や「キーワード」から選んだり、支店の所在する「地域」から事業を選んだりするとよいでしょう。
「企業版ふるさと納税ポータルサイト」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html

企業版ふるさと納税を適用するには

企業版ふるさと納税を適用できるのは青色申告法人に限られます。
青色申告法人は、寄附金を支払った事業年度の税務申告書に、所定の明細書と寄附金受領書を添付して、確定申告を行う必要があります。

■企業版ふるさと納税の減税効果と上限について

それでは、税制改正によって控除できる税額がどのくらいアップするかを解説します。

税額控除が3割から6割にアップ

企業版ふるさと納税では、寄附金の額の一部に相当する金額を、企業が負担する法人事業税や法人住民税などから控除することができます。
控除額は、改正前は寄附金の額の最大30%でしたが、大綱によると、改正後は最大60%にアップします。

改正前 改正後
【控除額】
寄附金の額×30%
【控除の内訳】
〇法人事業税から控除・・・10%
〇法人住民税から控除・・・20%
 ・法人道府県民税2.9%
 ・法人市町村民税17.1%
【控除額】
寄附金の額×60%
【控除の内訳】
〇法人事業税から控除・・・20%
〇法人住民税から控除・・・40%
 ・法人道府県民税5.7%
 ・法人市町村民税34.3%

なお、法人住民税から控除しきれなかった額が出た場合、その額は法人税から控除されます。

企業の手出しは約10%になることも

法人から地方公共団体に払い込まれた寄附金は、企業版ふるさと納税に該当するかどうかにかわらず、もともとその全額を損金に算入することができます。
仮に法人の所得にかかる法人税など(以下「法人税等」)の税率を約30%とした場合、その減税効果は、寄附金の額の約30%に相当します。
この効果に、企業版ふるさと納税による減税効果が上乗せされます。
改正後の企業版ふるさと納税による減税効果は、寄附金の額の最大60%ですので、損金算入による減税効果と合わせると、最大約90%の減税が見込めることになります。
そうすると実質的な手出しは、寄附金の約10%とみることができます。

寄附金の額 (100%)
法人税等
約30%
法人事業税
20%
法人税+法人住民税
40%
約10%
企業負担
(手出し)
損金算入による減税効果 企業版ふるさと納税による税額控除 企業版ふるさと納税による税額控除

たとえば100万円の企業版ふるさと納税を行った場合、法人税等の税率を30%とすると、最大で90万円分の税金が減ることになります。
これは企業に90万円分の現金が残るのと同じことですので、そうすると企業の手出しは、実質的に10万円とみることができるというわけです。

寄附金の上限額に注意

ここまでは、あくまで減税効果を最大で受けられた場合の話です。
企業版ふるさと納税による税額控除(60%の部分)には、上限額が設けられています。
税額控除の上限額は、次のとおりです。

【企業版ふるさと納税による税額控除の上限額】
・法人事業税の控除額の上限
法人事業税の20%(※)
・法人住民税の控除額の上限

たとえば、法人事業税の額が50万円だった場合、企業版ふるさと納税によって法人事業税から控除できる上限は7万5,000円(50万円×15%(※))になります。
もしこの会社が仮に200万円の寄附を行った場合、法人事業税から控除できる税額は、本来であれば40万円(200万円×20%・改正後)のはずですが、法人事業税から控除できるのは7万5,000円までですので、差額の32万5,000円は手出しになるということです。
このあたりは、個人のふるさと納税をイメージしていただくとわかりやすいかも知れません。
個人のふるさと納税では、個人所得が多い人の方が、たくさん寄附をしても手出しが2,000円で済むというしくみがありましたよね。
ふるさと納税の上限額のシミュレーションをやってみたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法人もこれと同じように、法人所得の多い企業の方が、法人事業税などの額が大きいため、手出しが10%で済む寄附金の上限額が大きくなるということです。

■企業版ふるさと納税のその他の改正点

企業版ふるさと納税に関する、その他の改正点もご紹介します。

適用期間5年間の延長

税制改正大綱によると、企業版ふるさと納税の適用期間が5年延長されます。(令和7年3月31日まで)
延長は、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されたことを受けて実施されるものになります。

一定の補助金事業も対象に

地域再生計画に記載される「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」の対象事業に、一定の補助金等による事業が加わることになりました。

事業を行う「前」の寄附金も対象に

企業版ふるさと納税の流れとしては、まず企業から地方公共団体に寄附の申し出を行い、寄附金を払う前に地方公共団体が事業を行って、その年度の事業費が確定した「後」に、企業が寄附金を払い込むというものになります。
このことから、地方公共団体が事業を行う「前」に支払われる寄附金については、制度の対象外とされていました。
税制改正大綱によると、地方公共団体の受け取る寄附金が、関連する事業費を上回った場合の適正化措置が講じられることを前提に、事業を行う「前」に支出する寄附金も、制度の対象になるとしています。

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