2019年10月から、eLTAXで、全国の都道府県、市区町村に一定の地方税の電子納税ができるようになりました。
今回は、eLTAXとは何か、電子納税できる税金の一覧、利用するメリット、納税方法などをご紹介します。
■eLTAX(エルタックス)ってそもそも何?
eLTAX(エルタックス)とは、地方税ポータルシステムのことで、e-Tax(イータックス)の地方税版のような位置づけになります。
主な機能は、地方税に関する
・電子申告
・電子納税
・電子申請、届出
です。
このeLTAXに、10月から「地方税共通納税システム」という新しいシステムが導入されました。
「地方税共通納税システム」とは、簡単にいうと、納税者・金融機関・地方公共団体の3者をつなぐシステムです。
マルチペイメントネットワークというしくみを利用して、システム上の「共通の口座」に納税者が納めた税金をいったん収納し、それを納税者の申告情報等から作成された「納付情報」と照合して、都道府県や市区町村に振り分けるというものになります。
これによって、eLTAXによる電子納税の納付先が、一部の地方公共団体から全国の都道府県・市区町村に拡大されました。
このほか、
・複数の納税先への一括納税ができる
・申告から納税までを一連の手順で行える
・地方公共団体が指定する金融機関以外からも納税ができる
など、地方税に関する納税者の利便性がアップしています。
■電子納税できる税金の一覧
「地方税共通納税システム」の納税には
・提出済の電子申告データを読み込んで、その納税額を納付する方法
・納税者が、納税先や税額を自分で入力して納付する方法
があり、それぞれ以下の税金に対応しています。
電子申告データと連動させて納付する方法(※1) | 納付金額等を自分で入力して納付する方法 |
---|---|
・法人都道府県民税 ・法人事業税 ・地方法人特別税 ・法人市町村民税 ・事業所税 ・個人住民税 (特別徴収で税額通知が電子的に送付されている場合、退職所得に係る納入申告(※2)) |
・個人住民税(特別徴収で税額通知が電子的に送付されていない場合)(※1) ・法人都道府県民税の見込納付(※3)及びみなし納付(※4) ・法人事業税の見込納付及びみなし納付 ・地方法人特別税の見込納付及びみなし納付 ・法人市町村民税の見込納付及びみなし納付 ・更正・決定に関する納付 |
(※1)延滞金等を含みます。
(※2)退職金から住民税を計算して徴収した場合の手続きです。
(※3)申告期限の延長を行ったときに行われる、法定期限内に税額を見込みで納付することです。
(※4)中間申告書を提出しなかった時の予定申告による納税額のことです。
参考資料:eLTAX「共通納税とは」
https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/gaiyou/
将来、利用可能な税金は増える?
「地方税共通納税システムに関するQ&A」によると、将来的には、賦課税目などの追加が検討されるとのことです。
地方税のうち賦課税目とは、たとえば固定資産税や自動車税などを指します。
「地方税共通納税システムに関するQ&A」問4
https://www.eltax.lta.go.jp/news/files/20190802/IHP4-QA.pdf
■ eLTAXで個人住民税の納付が便利に
納税者の利便性アップが特に期待されているのは、特別徴収の個人住民税の納付です。
特別徴収とは、従業員の給与から個人住民税を事業主が天引きして、事業主から市区町村に納税することをいいます。
納付先は、その従業員の1月1日時点の住所地のある市区町村です。
毎年5月ころになると、6月から1年間の特別徴収税額の通知書が、各市区町村から、専用の納付書とともに事業所に送られてきます。
これまで担当者は、各市区町村の納付書を保管し、毎月(納期の特例は年2回)、納付書を金融機関等に持ち込んで、それぞれの特別徴収税額を納める必要がありました。
しかしeLTAXの「地方税共通納税システム」を利用すれば、今後は、金融機関等に出向くことなく会社などのPCから納税できます。さらに、複数の納税先に一括納税する操作も可能です。
複数の地方公共団体に、毎月、個人住民税を納付している事業所は、eLTAXの利用によって納税事務の負担軽減が期待できます。
税額通知の「書面」と「電子データ」
特別徴収の税額通知は、市区町村からの「書面」の郵送や「電子データ」の送付によって行われます。
どちらでも、eLTAXの電子納税は利用できますが、書面であれば「納付金額等を自分で入力して納付する方法」、電子データであれば「電子申告データと連動させて納付する方法」で納税することになります。
電子データの送付を受けたい場合は、納付先の市区町村のHP等で確認しましょう。
■3つの納税方法
eLTAXの「地方税共通納税システム」における納税方法には、
・ダイレクト納付
・ATMからの納付
・インターネットバンキングからの納付
があります。
それぞれに対応する金融機関は、こちらから確認できます。
eLTAX「共通納税対応金融機関」
https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/kinyukikan/
ダイレクト納付
ダイレクト納付とは、事前に「地方税共通納税システム」に登録した口座から、地方税を納付する方法です。
地方税共通納税システムで「納付情報」を発行し、利用前に口座登録を行う必要があります。
ATMからの納付
金融機関に設置される、ペイジーマークの付いたATMから納付する方法です。
事前に地方税共通納税システムで「納付情報」を発行する必要があります。
自宅や会社から納税する方法でないため、利便性の面ではいまひとつかも知れません。
インターネットバンキングからの納付
インターネットバンキングを使って納税する方法です。
インターネットバンキングのHPから納税する方法と、PCdesk(ピーシーデスク)というeLTAXのソフトウェアを使用して納税する方法があります。
事前に地方税共通納税システムで「納付情報」を発行する点は、ダイレクト納付やATMからの納付と同じですが、PCdeskを使用すれば、納付情報が引き継がれるため入力の手間が省けます。
利便性が高いのは「ダイレクト納付」
総合判断ですが利便性が高いのは、ダイレクト納付です。
ダイレクト納付であれば、自宅や会社のPCから納付できるという電子納税のメリットも受けられますし、インターネットバンキングの口座を用意する必要もありません。
ほかにも、ダイレクト納付には以下のようなメリットがあります。
・手数料がかからない
地方税共通納税システムの利用は、どの納付方法でも無料です。
ただしATMやインターネットバンキングの利用手数料は、金融機関の基準によって発生することが考えられます。
この点は、各金融機関に確認するほかありません。
ダイレクト納付であれば、この手数料がかかる心配は無用です。
・税理士の代理納税が可能
ダイレクト納付であれば、代理人の納税も可能です。
これによって、税理士が納税者に代わって納税手続きをすることもできます。
申告代理を依頼している事業者は、税理士に相談してみましょう。
利用するときは、事前に、PCdeskで納税者の承認手続きが必要です。
・納付日を指定できる
ダイレクト納付であれば、納税する日を指定することができます。
クレジットカード納付やコンビニ納付は?
国税ではすでに対応が行われているクレジットカード納付やコンビニ納付ですが、2019年10月において、eLTAXではまだ行われていません。
「地方税共通納税システムに関するQ&A」によると、今後検討するとのことです。
「地方税共通納税システムに関するQ&A」問5
https://www.eltax.lta.go.jp/news/files/20190802/IHP4-QA.pdf
■eLTAXで電子納税を行う手続き
まずeLTAXを初めて利用される方は、eLTAXの利用届出が必要です。
PCdeskから利用届出を行い、利用者IDを取得する必要があります。
その後は、すべての納税方法で「納税情報」を取得する必要があります。
また、ダイレクト納付であれば、口座情報の事前登録が必要です。
納税期限に間に合うよう、なるべく早めに手続きを始めましょう。
手順は下記のリンクをご覧ください
「eLTAXのご利用の流れ」
https://www.eltax.lta.go.jp/eltax/gaiyou/flow/