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2019年4月から順次施行 働き方改革の内容まとめ

働き方改革とは、労働者が多様な働き方を選択できる環境を整えるための政策です。
改革が始まった背景には、少子高齢化に伴う働き手世代の人口減少や、「育児や介護と両立して働きたい」「高齢になっても働きたい」など、働き手自身のニーズの多様化があります。
働き手を取り巻く環境とその意識の変化にともない、働き方改革では、働く意欲を発揮できる環境をつくるとともに、働き手の健康管理が適正に行われるよう、労働に関する各法令の改正が行われました。
今回は、働き方改革について事業主を中心とした改正内容をまとめます。

事業主が注意すべき改正内容の一覧

働き方改革は、
・長時間労働の是正
・多様で柔軟な働き方の実現
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
を改革の中心とし、これに関する8つの法律に必要な改正を行うことで進められています。
事業主が注意すべき改正内容の一覧は次のとおりです。

働き方改革 中小企業の施行時期
中小企業の施行時期
勤務間インターバル制度の普及促進
産業医・産業保険機能の強化
労働時間の状況の把握の実効性確保
フレックスタイム制の見直し
高度プロフェッショナル制度の創設
時間外労働の上限規制の導入 2020年4月〜
同一労働同一賃金 2021年4月〜
時間外労働に対する割増賃金の見直し 2023年4月〜

「○」は、2019年4月から大企業・中小企業ともに施行されています。

2019年4月から施行された制度

2019年4月から大企業・中小企業ともに施行された働き方改革の内容は次のとおりです。
・年次有給休暇の確実な取得
・勤務間インターバル制度の普及促進
・産業医、産業保険機能の強化
・労働時間の状況の把握の実効性確保
・フレックスタイム制の見直し
・高度プロフェッショナル制度の創設

■年次有給休暇の確実な取得

これまでは、労働者に所定の日数の年次有給休暇を付与することは決められていましたが、その休暇の具体的な消化日数は義務付けられて居ませんでした。
改正では、対象となる労働者に年5日の年次有給休暇を取得させることが義務化されました。

<改正のポイント>
・対象者は年次有給休暇を10日以上付与(※)されている労働者
・年次有給休暇の付与日から1年以内の時季指定を行い、その間に5日間の年次有給休暇を取得させなければならない
・就業規則に「時季指定の対象となる労働者の範囲」、「時季指定の方法」等について記載が必要
・年次有給休暇管理簿の作成と3年保存が必要

(※)年次有給休暇を10日以上付与される従業員とは、次の条件をいずれも満たす従業員です。
・雇入れの日から6ヶ月継続して雇われている
・全労働日の8割以上を出勤している
なお、パートタイム労働者など所定労働日数が少ない従業員は、その所定労働日数に応じた年次有給休暇が付与されます。

■勤務間インターバル制度の普及促進

勤務間インターバル制度とは、終業から始業までの休息時間(インターバル時間)を一定時間以上確保することを、努力義務として定めたものです。

<改正のポイント>
・労働者の健康及び福祉を確保するため、1日の勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間を確保するよう努めること

■産業医・産業保険機能の強化

労働安全衛生法等の改正によって、
・産業医、産業保健機能の強化
・長時間労働者に対する面接指導等
の規定が強化され、産業医の権限や役割、労働者の情報の取扱い、面接指導の対象となる長時間労働者に関する規定が強化・拡大され、これに伴って事業主の義務も変化しました。

<改正ポイント>
産業医を選任した事業者に、以下の内容が義務付けられました
・産業医に労働者に関する一定の情報(時間外・休日労働時間が1月あたり80時間を超えた者の氏名ほか)を提供する
・産業医から勧告を受けて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその理由等)を記録し、3年間保存
・産業医から勧告を受けた内容、講じた措置等は衛生委員会等に報告する
・安全委員会、衛生委員会等の開催の都度、一定の事項を記録し、3年間保存
・事業場に産業医の業務の具体的内容、健康相談の申出の方法等を掲示、交付などの方法で労働者に周知させる
・時間外、休日労働時間が1月あたり80時間を超えた労働者にその旨を通知する
・次の対象者について医師による面接を行う
→「1月あたり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる者」・・・労働者の申出による面接実施
→「1月あたり100時間を超える研究開発事業者」・・・労働者の申出なしで面接実施(業種による経過措置あり)

■労働時間の状況の把握の実効性確保

これまでも労働時間の管理は事業主の責務とされてきましたが、その労働時間を適正に把握する方法が定められていませんでした。
今回、労働安全衛生法の改正によって、長時間労働者に対する医師の面接指導等を実施するために、労働時間の状況を客観的な方法によって把握するための方法などが定められたガイドラインが作成されました。

<改正のポイント>
・労働者の労働時間の状況を把握しなければならない
・把握する方法は、タイムカードによる記録、PCの使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法による
・把握した労働時間は3年間の保存が必要

■フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制とは、総労働時間の範囲内で、労働者が始業・終業の時刻を自由に決めることができる制度です。
総労働時間は「清算期間」とよばれる期間内で定められますが、今回、労働基準法の改正によって、清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に延長されました。
労働者側の裁量がより大きくなったといえます。

<改正ポイント>
・清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に延長

■高度プロフェッショナル制度の創設

働き方改革で新設された制度です。
職務の範囲が明確で、少なくとも1,000万円以上の年収である労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合、年間104日の休日を確実に取得させること等一定の要件を満たすことで、労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金等の規定を適用除外とすることができる制度です。
導入は労使間委員会の決議によらなければなりません。

今後施行される働き方改革

今度導入される働き方改革の内容は次のとおりです。
・時間外労働の上限規制の導入
・同一労働同一賃金
・時間外労働に対する割増賃金の見直し
大企業については、すでに施行されているものや、中小企業に先行して施行が予定されるものがあります。

■時間外労働の上限規制の導入

時間外労働については、法定労働時間(1日8時間、週40時間)が定められていますが、改正前は36協定を結び労働基準監督署に届けることによって限度時間(年360時間、月45時間)までの時間外労働が認められ、さらに36協定に特別条項を付すことで、この限度時間を無制限に延長することができました。
改正では、この特別条項の時間外労働に上限が設けられることとなります。
中小企業は2020年4月から施行予定ですが、大企業は2019年4月から施行されています。

<改正のポイント>
・36協定による時間外労働の上限は原則、年360時間・月45時間
・特別条項を付しても、年720時間・月100時間未満(2〜6ヶ月の平均は80時間以内)で適用は年6ヶ月以内
・一部の業種では適用までに猶予あり

■同一労働同一賃金

雇用形態によって不合理な待遇差を設けないことを事業主に義務付けるものです。
これまで一部の労働者については、正規雇用者との待遇差を禁じる規定も設けられていましたが、今回の改正で、パート労働者、有期雇用労働者、派遣労働者それぞれで規定が整備されるとともに、どのような待遇差が不合理にあたるかを示すガイドラインが策定されました。
中小企業は2021年4月から、大企業は2020年4月から施行予定となります。

<改正ポイント>
・不合理な待遇差を解消する規定が整備された
・労働者に対して待遇差に関する説明が義務化された
・行政による事業主への助言、指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備された

■時間外労働に対する割増賃金の見直し

最後は、時間外労働に対する割増賃金の増加です。
現行では、時間外労働の割増賃金は、通常の賃金の25%増しですが、改正後は、「月60時間超え」の部分について、50%増しとなります。
中小企業の施行は2023年4月からで、大企業についてはすでに施行されています。

<改正ポイント>
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率が現行の25%から50%以上にアップ

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