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増税前に知っておきたい消費税の基本と軽減税率の導入について

消費税の納税義務は、事業年度ごとに判定が必要で、該当すれば消費税の確定申告と納税を行う義務が生じます。
また2019年10月からは、消費税増税とともに軽減税率が導入され、現場や経理サイドの業務に様々な影響が及ぶことが予想されます。
今回は、消費税の基本から、軽減税率の概要とその影響まで、増税前に事業者が知っておきたい消費税の基本を解説します。

そもそも消費税とは

消費税とは、国内において事業者が代金の支払いを受けて行う、物やサービスの販売などに付随して発生する税金です。
事業者は、売り値に消費税率をかけた金額を、本体の価格に上乗せして、買い手から受取ります。
現行の消費税率は、8%(国税6.3%、地方税1.7%)ですが、2019年10月からは、ご存知のとおり、10%(国税7.8%、地方税2.2%)に引き上げとなります。

消費税は誰が納めるの?

消費税を納税する義務のある人は、「課税事業者」と呼ばれる法人や個人になります。
消費税の納税義務は、事業年度ごとに判定され、「課税事業者」に該当する場合のみ、消費税を納めることになります。
これに対して、納税する義務のない事業者を「免税事業者」といいます。

消費税を納税するのは事業者ですが、その税金を実際に負担しているのは、最終的にそのサービスを消費した人(消費者)です。
このことから消費税は、納税者と負担者が異なる「間接税」と呼ばれる税金になります。

消費税はいくら納めるの?

消費税は、原則、課税事業者が事業で受け取った消費税から、事業で支払った消費税を控除した金額を納税します。
この時、支払った消費税として控除する金額のことを「仕入控除税額」といいます。
「仕入」というと、会計の場合、商品仕入など、売上原価に限定されるイメージですが、消費税でいう「仕入」とは、販売管理費・一般管理費などの経費も含む、概念の広い言葉になります。

仕入控除税額の計算方法は、原則と特例に分かれます。
まず、原則の方法としては、全額控除あるいは、個別対応方式又は一括比例配分方式の選択となります。
全額控除は、消費税の計算上、事業者にとって最も有利な計算方法といえますが、課税売上割合が95%以上かつ、課税売上高が5億円以下の課税事業者しか適用されません。
課税売上割合とは、簡単にいうと、非課税売上を含めた全ての売上高のうち、課税取引となる売上高の割合のことです。
個別対応方式又は一括比例配分方式とは、全額控除が適用されない課税事業者が使用する計算方法です。
事業者にとって有利な方を選択することができますが、一括比例配分方式を選択すると、選択したときから少なくとも2年間は、個別対応方式に変更できません。

特例としては、売上高に対して業種別の割合(みなし仕入率)をかけて仕入控除税額を計算する、簡易課税制度があります。
原則から簡易には、税務署への届出で変更できますが、変更できない期間が生じる場合や、課税売上高によっては適用できない場合があるため、簡易課税に変更したい時は、専門家に相談しましょう。

消費税の課税事業者の判定方法

消費税の課税事業者の判定は、事業年度ごとに、次の2段階で行われます。
・前々事業年度における課税売上高が1,000万円を超えるかどうか
・前事業年度の開始から6ヶ月間の課税売上高又は給与等の額が1,000万円を超えるかどうか
ただし、該当する事業年度が1年未満の法人の場合は、判定のための計算が異なります。

まず、前々事業年度の課税売上高が、1,000万円を超える場合は、課税事業者となります。
たとえば2019年4月1日から2020年3月31日の事業年度を判定する場合は、2017年4月1日から2018年3月31日までの間の課税売上高で判定します。
判定対象となる前々事業年度のことを「基準期間」と呼びます。
免税事業者が、課税売上高が1,000万円を超えることがわかった場合は、税務署に「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を速やかに提出する決まりとなっています。

もし基準期間が課税事業者の要件にあてはまらなかった場合でも、前事業年度の開始から6ヶ月間(特定期間)の課税売上高又は給与等の額が1,000万円を超える場合は、課税事業者となります。
こちらも同じく税務署に、「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を速やかに提出する決まりとなっています。
ただし、特定期間が7ヶ月以下の事業年度に該当する場合は、判定方法が異なります。
基準期間、特定期間のいずれの判定にしても、1年未満の事業年度がある場合は、専門家に相談しましょう。

消費税の確定申告と納税期限

消費税の確定申告と納税の期限は、法人と個人で異なります。
まず法人は、法人税と同じで、課税期間終了の日から2ヶ月以内となります。
12月決算法人であれば、2月末日、3月決算法人であれば5月末日です。
これに対して個人は、3月末です。
ちなみに、個人事業主の平成30年分の消費税及び地方消費税の確定申告と納税の期限は、平成31年(2019年)4月1日(月)までとなります。

軽減税率の概要

2019年10月から消費税が10%に増税とともに、消費税の軽減税率が導入されます。
10%の税率を「標準税率」とし、この「軽減税率」という税区分が併設される仕組みです。
軽減税率をざっくりと表現すると、生活必需品の税率を、従前の8%のままで維持するための制度です。
主に所得者の低い方に配慮した税制と言われています。
対象となる商品は
・飲食料品
・新聞
の2つです。
税率は従来の8%ですが、国税と地方税の内訳は、国税6.24%、地方税1.76%に変更されます。

軽減税率導入で事業者が受ける影響について

■現場の影響

飲食料品と日常雑貨などを販売している店舗では、軽減税率の対象かそうでないかで、お客さんから受け取る消費税を区別することになります。
レジの税率改正がメインになるでしょう。

複雑化が予想されるのが、テイクアウト可能な飲食店を展開する飲食業です。
店内の飲食提供は10%、持ち帰り販売は8%という税区分となるため、レジの接客員が、お客さんの注文に応じて税率を判断することとなります。
したがって、レジの接客員に対する研修が必要となるでしょう。

■経理業務の影響

業種に関わらず影響を受けるのが、経理業務です。
たとえば会議費で処理するお茶とお弁当代、お客さん用の茶菓、従業員の飲み物など、これらを課税仕入として処理する場合は、8%の税率で経理しなければならないため、軽減税率の制度そのものについてよく理解しておく必要があります。

また、消費税の確定申告では、
・軽減税率が適用される売上と仕入
・標準税率が適用される売上と仕入
をそれぞれ集計して、納税額を計算する必要があります。
したがって、この区分ができるように経理をしなければなりません。

さらに、取引相手と交わす請求書等についても、2019年10月からは、軽減税率の対象品目かどうかがわかるように記載する「区分記載請求書等」にすることが必要です。
売上げた事業者は、この「区分記載請求書等」を相手に発行し、仕入れた事業者は、受け取った「区分記載請求書等」を保存することで、仕入税額控除を適用することができます。

国のサポートを活用しよう

軽減税率の導入により、複数税率に対応するレジを購入する場合、費用の一部を、中小企業庁が補助する制度があります。
既に導入済みのレジを改修する費用も助成の対象です。
また、「区分記載請求書等」の発行を行うシステムの改修にかかる費用も補助の対象となります。
窓口は中小機構です。
期限は2019年9月30日のものと、一部に事前申請が必要なものがありますので、検討中の事業所は、早めに相談しましょう。

政府広報オンラインHP:消費税の軽減税率制度より
https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/keigen_zeiritsu/support/reg_system.html

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