今年3月に終了した平成29年分の所得税の確定申告状況を国税庁が明らかにしました。それによると、株式等の譲渡で有所得人員が前年に比べ81.1%増と驚異の伸びを見せています。
平成29年分所得税等の確定申告書の提出人員は2198万人で、平成28年分(2169万人)から28万7千人(1.3%)増加、平成23年分からほぼ横ばいで推移しました。このうち、納税人員(申告納税額がある方)は640万8千人で、所得金額は41兆4298億円、申告納税額は3兆2037億円となっています。平成28年分と比較すると、人数(プラス0.6%)、所得金額(プラス3.4%)及び申告納税額(プラス4.6%)はいずれも増えています。
事業所得者の納税人員は169万7千人で、その所得金額は7兆254億円、申告納税額は6198億円でした。これを平成28年分と比較すると、納税人員(マイナス2.0%)、所得金額(マイナス1.2%)及び申告納税額(マイナス2.6%)はいずれも減少しています。
今回の確定申告で、最も注目されているのが株式等の譲渡所得です。確定申告書を提出した人員のうち、株式等の譲渡所得の申告人員は103万1千人でした。そのうち、有所得人員は53万3千人で、その所得金額は3兆5732億円となっています。
これを平成28年分と比較すると、申告人員(プラス10.6%)、有所得人員(プラス81.1%)及び所得金額(プラス36.7%)はいずれも増加しました。
2017年は日経平均株価が6年連続の上昇となり、バブル崩壊後の最長記録を更新しましたが、今回の確定申告では、その株価の好調な動きに敏感に反応した人が非常に多かったことを物語っています。
規制を凍結し、技術革新や設備投資を促進して短期間に企業の生産性向上を図ることを柱とする「生産性向上特別措置法案」が5月16日に国会で成立しました。これを受け、中小企業が生産性向上のための先端設備を導入した場合、3年間設備の固定資産税をゼロから2分の1に軽減する制度が全国の自治体でスタートすることになっています。
この制度は、中小企業は国の指針、市町村が策定する先端設備などの導入促進計画に沿って先端設備等導入計画を策定し、市町村に申請して、認定されると、先端設備の固定資産税の課税標準が、自治体が定める範囲でゼロから2分の1に減免されるほか、事業に必要な資金繰りの制度融資を受けられるというものです。
さらに、自治体が固定資産税を「ゼロにする」と表明すると、ものづくり関連などの国の各種補助金の優先採択が受けられることになっています。
先端設備とは、機械装置、測定・検査工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウエアに分類され、旧モデルに比べて生産性が年平均1%以上向上することが条件です。また導入によって労働生産性が年平均3%以上向上することを目標とするものもあります。
中小企業庁が全国自治体に行ったアンケート調査によると、例えば、神奈川県内では、ほぼ全域で先端設備の固定資産税をゼロにする特例措置の制度を導入する方針を回答しています。5月22日に開会中の市議会で関連の市税条例改正案を提出する横浜市は、6月中には導入促進基本計画を策定し募集を開始する予定です。来年1月1日からの固定資産税評価で適用することにしています。
国税庁が今年5月27日と6月10日の両日曜日に、国税を納期限までに納付されていない方に対して集中電話催告センター室(納税コールセンター)から電話催告を実施すると発表しました。くれぐれも振り込め詐欺などと間違わないようにしたいものです。
各国税局に設置されている納税コールセンターは、所轄の税務署に代わり国税局の職員が電話や文書による納税催告を行っている機関で、基本的に土・日曜日及び祝日は閉庁日となっています。しかし、催告対象者の中には、日曜日ならば電話に出れるという方も少なくないことから、国税庁では定期的に閉庁日(日曜日)に電話催告を行なってきました。
今回、5月27日に電話催告を行うのは、札幌、関東信越、金沢、高松、福岡の5国税局です。そして、6月27日に行うのは、仙台、東京、名古屋、大坂、広島、熊本の6国税局と沖縄国税事務所となっています。
最近、税務職員を装った不審な電話が増えていることから、国税庁は「納税コールセンターでは、国税の納税のために金融機関の口座を指定して振込みを求めるようなことや、金融機関等の現金自動預け払い機(ATM)の操作を求めることはありませんので、納税される場合には、原則として納付書によって所轄の税務署や金融機関の窓口で行ってください」と電話催告対象者に注意を呼びかけています。
このほど東京都が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中、宿泊税の課税を停止する方針を固めました。平成30年第2回都議会定例会に東京都宿泊税条例改正案を提案する予定です。
東京都では、現在、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てることを目的として、都内のホテル又は旅館の宿泊者を対象に宿泊税を課税しています。税率は、宿泊料金1人1泊につき、1万円以上1万5千円未満の宿泊が100円、1万5千円以上の宿泊は200円となっていて、1泊1万円未満の宿泊については課税を免除しています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの期間中については、招致段階では大会関係者の宿泊税を免除すると公約していましたが、宿泊施設で関係者かどうかを確認するのが難しいことなどから、東京都では対象を全宿泊者に拡大することにしました。
宿泊税の免除期間についは2020年7月1日から9月30日までとしています。これにより約5.5億円の税収減となる見通しです。
都主税局では「ボランティアや観客らの負担軽減につなげるとともに、宿泊施設側が大会関係者とそれ以外を判別することが難しいという問題を解消するため対象者を拡大した」と説明しています。
信託の契約時の委託者兼受益者と同一の委託者に信託財産が戻って来る場合には登録免許税が課税されない、いわゆる信託財産の登記等の課税の特例で、昨年、東京国税局が示した「二次相続の場合も要件さえ満たせば同特例は適用できる」とする見解がクローズアップされています。
東京国税局に持ち込まれたのは、「被相続人甲が、その有する不動産の管理、運用及び処分を目的として、甲の相続人(養子)である乙が代表取締役を務めるX社との間で、甲を委託者兼受益者、X社を受託者とし、建物、宅地及び金銭を信託財産とする信託契約を締結していたところ、実際に相続が発生して乙と甲の妻(丙)とで甲のその信託財産を2分の1ずつ相続し、両者ともに委託者となった。ところが、数年後丙が死亡。丙が相続した甲の信託財産を乙が二次相続で取得したわけだが、その際、信託財産の登記等の課税の特例が適用可能か」という質問でした。
原則として、信託財産の登記等の課税の特例が適用されるのは、「信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合」(要件1)であって、「当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合」(要件2)において、「当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(……)であるとき」(要件3)という要件を満たす必要があります。
今回の場合、まず甲の死亡後においても、信託の委託者となった乙及び丙のみが信託財産の元本の受益者であることに変わりはなく、要件2を満たしています。次に、乙は今回の信託の効力が生じた時における委託者である甲の相続人に該当することから、要件3も満たしていました。問題は、「信託財産を受託者から受益者に移す場合」(要件1)でした。
「信託の効力が生じた時からその信託の信託財産を受益者に移すまでの間の受益者を、例えば『信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る』などと限定する規定が同特例には設けられていない。したがって、信託財産の移転を受ける受益者が『信託の効力が生じた時における委託者の相続人』であること」という要件1を満たしていることから、東京国税局は同特例の適用は可能とする見解を示したわけです。
5月10日に東京都の小池百合子知事と経済同友会の小林喜光・代表幹事が都内で懇談会を開き、その席上、小池都知事が「2018年度税制改正で年間1,000億円の税収が都から奪われた」として不合理な改正に理解を求めました。
経済同友会では、今回の小池都知事と小林代表幹事との懇談会について「東京都も含め地方自治体の自立に何が必要か、日本全体の持続的成長に向け、東京が何をすべきか、地方財政や国家財政の視点から建設的な議論をしました」としています。
その議論の中で小池知事は「2018年度税制改正で、地方消費税の清算基準の見直しにより年間1,000億円の税収が都から奪われたと強調。日本の発展のためにも都の活性化が必要とし、経済団体でも議論してほしい」と訴えていたことが分かりました。
地方消費税の帰属地域は、最終負担者である消費者が消費する最終消費地であるべきだと考えられています。そこで、現行制度においては、製造業者や卸売業者の納税地が地方消費税の最終消費地である都道府県と異なる場合は、国が消費税と一緒に徴収した地方消費税を各都道府県に払い込むときに、各都道府県における「消費に相当する額」に応じて「清算(調整)」しています。
その「消費に相当する額」とは、消費に関連した基準によって算出されますが、その基準は@小売り年間販売額(商業統計)、Aサービス業対個人事業収入額、B人口、C従業者数―、についてそれぞれに負担割合が決められています。その割合は@とAの合計額で75%、B17.5%、C7.5%とされていて、この負担割合で「消費に相当する額」が計算されます。
今回の税制改正で、@とAの合計額で75%とされていたものが50%とされ、B17.5%とC7.5%を合わせたものが50%とされたのです。これにより、平成29年度予算で清算基準の変更を当てはめると、東京都は1,000億円の減収となるわけです。
小池都知事の申し入れについて同友会の小林代表幹事は、記者団の前で「地方と東京は対峙するのではなく、全体としてどう最適化できるか議論すべきだ」と述べ、冷静な議論が必要との考えを示しました。
日本銀行がこのほど発表したレポート「経済・物価情勢の展望(2018 年4 月)」の中で、2019年10月に予定されている消費増税で増える一般家計の負担額は2.2兆円で、前回2014年の増税時の4分の1程度にとどまると試算しています。
同レポートによると、消費増税で増える一般家計の負担額は1997年に税率が3%から5%に引き上げられた時は「所得減税の打ち切りも重なり8.5兆円の負担増となった」としています。そして、税率が5%から8%に増税された2014年は「給付金などの軽減措置もあったが8兆円だった」そうです。
ところが、2019年に消費税率が8%から10%に上がる際「税率引き上げの直接的な影響は5.6兆円」としていて、しかも、軽減税率で1兆円、教育無償化で1.4兆円、年金額改定で6千億円といった軽減要素が見込めることから、「負担増は差し引き2.2兆円になる」と予測しています。
2019年の税率引き上げで一般家計に与える負担増が、小幅なものにとどまる理由については次のように分析しています。
@ 今回の消費増税のタイミングが2019 年度央となるため、駆け込み需要とその反動が、2020 年度では成長率の下押しとなるものの、2019 年度内では均されるほか、実質所得の減少効果も2019 年度と2020 年度で分散して発生するという技術的な要因がある。
A 税率の引き上げ幅は、前回よりも小さく、かつ一部品目には軽減税率も適用される。
B 教育無償化や各種の負担軽減策が講じられる。
C 今回は2回目の増税を見据えた駆け込み需要が発生したと考えられる。
ただし、「消費税率引き上げのインパクトは、その時々の消費者マインドの動向に左右されるなど、不確実性が大きいことに留意する必要がある」と警告しています。
このほど、税関が来年1月7日からスタートする国際観光旅客税のPRを始めました。恒久的に徴収する国税の新設は1992年の地価税以来、27年ぶりとなることから、財務省の力の入れ様も尋常ではありません。
政府では、訪日外国人旅行者について、2020年4000万人、2030年6000万人の達成に向けた施策を推進しています。その施策の一つとして、平成30年度税制改正の大綱において、観光立国実現に向けた観光基盤の拡充・ 強化を図るため、我が国からの出国に対し負担を求める「国際観光旅客税」の創設を盛り込みました。
同税の根拠法は、今年4月11日に国会で可決成立した国際観光旅客税法です。
国際観光旅客税は、日本人だけでなく外国人も航空機や旅客船で出国する際に、1人1,000円を運賃に上乗せするなどして徴収することになっています。ただし、乗員や乗り継ぎ客、2歳未満の子供などは課税対象外です。
徴収された同税の使い道としては「快適な旅行のための環境整備」「体験型観光の満足度向上」「日本の魅力に関する情報発信強化」といった分野に限定されていて、2018年度予算では60億円の税収を見込んでいます。これは、最新技術を活用した顔認証ゲートなどに使う予定です。なお、政府は通年で税収が入る2019年度以降は年430億円を見込んでいます。
財務省は3月28日に平成30年度税制改正関連法案が国会で成立すると、満を持して国際観光旅客税のPRを開始。施行は来年1月7日ですが、海外旅行が少なくても数カ月前から計画を立てるものであることから、このほど、税関もホームページなどで告知し始めたわけです。