このほど、国税庁が平成28年分の国外財産調書の提出状況を明らかにしました。それによると、総財産額は3兆3,015 億円で前年分(3兆1,643億円)よりも約1,400億円も増えています。
国外財産調書の提出制度は、平成26年からスタートしたものです。海外に資産を移して所得税や相続税の課税を免れようとする資産家が増えていることから、その実態を把握するために法律によって「その年の12月31日においてその価額の合計額が5千万円を超える国外財産を有する居住者は、翌年3月15日までに当該財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した『国外財産調書』を、税務署長に提出しなければならない」とされました。
提出状況を国税局別に見てみると、一番多かったのは東京局の5,922件(65.1%、前年分5,792件)で、2番目が大阪局の1,260件(13.8%、前年分1,223件)、3番目は名古屋局の660件(7.3%、前年分673件)となっています。
これを、金額的に見てみると、東京局は2兆4,601億円(74.5%、前年分2兆3,274億円)、大阪局が3,957億円(12.0%、同年分3,927億円)、名古屋局は1,734億円(5.3%、同年分1,793億円)となり、国外財産総額は3兆3015億円にのぼります。
さらに、日本の資産家が国外に持っている財産の種類を見てみると、一番多かったのは「有価証券」(1兆7,093億円、全体の51.8%)で、2番目が「預貯金」(6,015億円、同18.2%)、3番目が「建物」(3,474億円、同10.5%)といった状況です。
なお、この国外財産調書の提出制度には、「提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたときは加算税が5%軽減される」などといったインセンティブが設けられていることから、毎年、提出者数が増えています。
国税不服審判所が、これまでに提出された審査請求書の審査結果からポイントや誤りやすい事項などを取りまとめ、これを「審査請求書作成・提出時のセルフチェックシート」として、ホームページに掲載しています。
「審査請求書作成・提出時のセルフチェックシート」は、審査請求書の記載漏れや添付漏れなどの不備を未然に防止するために、審査請求を行なう人やその代理人が、審査請求書を提出する前に、記載漏れや添付書類の漏れなどの不備がないかを自分で確認するものです。
具体的に、同チェックシートの内容を見てみると、まず、共通事項として審査請求書の提出部数(正本と副本の2通)や、法定の審査請求期間を確認するように指示しています。次に、審査請求書の記載事項の再チェックを求めていて、例えば「審査請求年月日は正しく記載していますか?」、「審査請求人の氏名又は名称は正しく記載していますか?」などと基本的な事柄から点検しなければなりません。
特に請求人にとって記入ミスが多くなるのが、税務署から受けた課税処分の内容を記載する項目。これについても、「原処分庁(税務署の名称)は正しく記載していますか?」や「原処分の通知を受けた年月日は正しく記載していますか?」などといった細かな質問を展開していて、チェック項目を順番通りに点検して行けばほぼ記載漏れなどがなくなる仕組みになっています。
なお、審判所はこのセルフチェックシートについて「審査請求書に添付して提出していただくようお願いします」としています。
自民、公明の与党は12月14日、2018年度税制改正大綱を正式決定しました。デフレ脱却の鍵を握る企業投資を税制面で後押しするほか、昨年に続く所得税改革として、給与所得控除や年金控除を縮小し、基礎控除に振り替える方針を示しています。
今回の大綱で注目されているのは、昨年に続く所得税改革の第2弾です。具体的には、2020年1月から、所得税の基礎控除を10万円引き上げる一方で、会社員と公務員に限られる給与所得控除を10万円引き下げるとともに、その控除額の上限が、年収850万円で頭打ちとなるとしています。
こうした、個人所得課税の改正方針に対して日本税理士会連合会(日税連、神津信一会長)が「高額所得者の基礎控除が消失する仕組みについては、基礎的な人的控除が憲法25条に定める生存権の保障を目的としたものと解されていることを踏まえれば、より慎重かつ丁寧な議論がなされるべきと考えます」と諌めています。
また、多くの中小企業経営者が相続税の負担増に頭を悩ませていることから、事業承継税制について、雇用維持要件を事実上撤廃するとともに、猶予対象となる株式の数や課税価格の制限を撤廃するなど、適用要件が大幅に緩和されるほか、経営悪化により株式を譲渡した場合等における相続税額の再計算の特例が盛り込まれました。これについて日税連は「当会は、ドイツの充実した事業承継税制の視察等を踏まえ、繰り返し適用要件の緩和を建議してきました。今回、それが採用され、過去に例のない改正が行われることを高く評価いたします。この制度の利用により次世代への健全な承継が円滑に行われ、日本経済の底上げに寄与すると確信しており、税理士はその推進役としての責務を負うべきであると認識しているところです」と絶賛しています。
このほど、国税庁が平成28年分の相続税の申告状況を公表しました。それによると今回の相続税の課税割合(全死亡者に占める相続税の課税対象者)は、平成26年分の相続税の課税割合と比べると約2倍に膨れ上がっています。
平成28年中(平成28年1月1日から平成28年12月31日)に亡くなられた人から、相続や遺贈などにより財産を取得した人たちの相続税の申告状況を国税庁が公表しました。
それによると、平成28年中に亡くなられた人(被相続人数)は約131万人(平成27年約129万人)で、このうち相続税の課税対象となった被相続人の数は約10万6千人(平成27年約10万3千人)でした。課税割合は8.1%(平成27年8.0%)となっています。
注目したいのは、平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後の相続から基礎控除額が引下げられているということです。具体的には、定額控除が6,000万円から3,000万円に引き下げられ、法定相続人比例控除額も1,000万円から600万円に引き下げられています。
これにより、税理士などが相続税の課税割合について「平成26年が4.4%だったが、基礎控除額の改正後は6%程度に増加する」と予測したものです。ところが実際には、課税割合は8%にまで膨らみ、基礎控除額引き下げの影響の大きさを物語っています。
ちなみに、課税価格の合計は14兆7,813億円(平成27年14兆5,554億円)で、被相続人1人当たりでは1億3,960万円(平成27年1億4,126万円)となっています。また、税額の合計は1兆8,681億円(平成27年1兆8,116億円)で、被相続人1人当たりでは1,764万円(平成27年1,758万円)でした。
さらに、相続財産の金額の構成比は、土地38.0%(平成27年38.0%)、現金・預貯金等31.2%(平成27年30.7%)、有価証券14.4%(平成27年14.9%)の順となっています。
このほど、国税庁が来年2月16日から始まる平成29年分所得税と個人事業者の消費税の確定申告において、今回も全国の主要税務署で閉庁日対応すると発表しました。
平成29年分の所得税等の確定申告の相談及び申告書の受付は、平成30年2月16日から3月15日までです。基本的に土曜・日曜日、祝日は全国の税務署は一律閉庁日となっているわけですが、この確定申告期だけについては納税者の利便性を考慮して、国税庁では毎年、期間中の日曜日に限り閉庁日対応を行ってきました。
このほど、国税庁は、「今回も一部の税務署では、2月18日と2月25日に限り、日曜日も確定申告の相談・申告書の受付を実施すると発表しました。閉庁日対応を行う一部税務署等とは、例えば北海道では、札幌北・札幌南・札幌西・札幌東の各税務署が閉庁日対応するとされています。
今年も全国各地で自然災害が発生しました。そのためか、災害に遭われた方々を中心に「災害により自宅に住めなくなった場合、その年の12月31日まで住んでいなかったことから、その年分以降は住宅借入金等特別控除が適用できないのではないか」という疑問の声が出ています。
平成29年7月の九州北部豪雨は福岡県と大分県の合計で、住宅288棟が全壊しました。当然、全壊してしまうと住めなくなるわけですから、仮に、住宅ローンがまだ残っていたとすると、今年分以降、住宅借入金等特別控除が受けられなくなると思うものです。
これについて、国税当局に聞いてみたところ「住宅借入金等特別控除の適用を受ける要件として、この控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していることが必要とされていますが、平成28年1月1日以後に、従前家屋が災害により居住の用に供することができなくなった場合において、居住年以後10年間(居住日が平成13年1月1日から同年6月30日までの期間内である場合には15年間)の各年のうち、その居住の用に供することができなくなった日の属する年以後の各年(一定の場合に該当する年以後の各年を除く)は、租税特別措置法第41条第1項《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》に規定する適用年(居住日以後その年の12月31日まで引き続き居住の用に供している年)とみなして、平成29年分以後の所得税について同項の規定を適用することができることとされています」と回答しました。
したがって、災害で全壊した場合でも残った住宅にローンは住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるわけです。
ビットコインをはじめとする仮想通貨をやり取りして生じる損益の計算の仕方を国税庁が明らかにしました。個人課税課情報として内部職員に周知するとともにホームページなどで一般にも公開しています。
日本生命関連のシンクタンク「ニッセイ基礎研究所」によると「2017年の初め1ビットコインは1000ドル弱だったものが、1年間で10倍以上に値上がりして、時価総額は20兆円近くに達している」としています。
このようにビットコインの利用者が急増していることから、このほど、国税庁が質疑応答形式で仮想通貨の損益やその具体的な計算方法を提示しました。
仮想通貨を売却したり、使用することにより生じる利益は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要です。
そのため仮想通貨の損益が発生する場合の計算方法が問題になるわけですが、今回国税庁が公開した情報には、「仮想通貨の売却」、「仮想通貨での商品の購入」、「仮想通貨と仮想通貨の交換」といった想定問答が9パターン紹介されています。
例えば、「仮想通貨の売却」では、「保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した際の所得の計算方法を教えてください。(例)3月9日2,000,000円(支払手数料を含む)で4ビットコインを購入した。5月20日0.2ビットコイン(支払手数料を含む)を110,000円で売却した」との質問に対し、「保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。前記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、10,000円です。110,000円【売却価額】−(2,000,000円÷4BTC)【1ビットコイン当たりの取得価額】×0.2 BTC【支払ビットコイン】=10,000円【所得金額】」と回答しています。
来年2月16日から始まる平成29年分所得税の確定申告においても、国税庁はe‐Tax(国税の電子申告システム)について24時間対応すると発表しました。
平成29年分の所得税確定申告期は平成30年2月16日から3月15日までとなっています。例年通り国税庁ではこの間、e-Taxにおいて24時間対応をすることにしています。
具体的には、平成30年1月15日月曜日から3月15日木曜日 (土日祝日を含む)まで24時間申告データの送信を可能にします。ただし、1月15日は、午前8時30分からの利用となっています。また、毎週月曜日午前0時から午前8時30分はシステムのメンテナンスを行うため利用できません。
一方、国税庁では、e-Taxソフト・確定申告書等作成コーナーの事前準備、送信方法、エラー解消などの使い方に関する質問に電話で対応する専門窓口として「e-Tax・作成コーナーヘルプデスク」を設けています。このヘルプデスクの受付時間についても、通常よりも長くする予定です。
通常、その受付時間が、月曜日から金曜日(祝日等及び12月29日〜1月3日を除く)の9時から17時までとされているものを、平成30年1月15日月曜日から3月15日木曜日までは月曜日から金曜日(祝日等を除く)及び2月18日と25日、3月4日と11日の日曜日については9時から20時まで受け付けることにしています。