平成27年からスタートした相続税の課税強化により、相続税の申告者数は従来の1.8倍に増えたことから相続税の申告でミスリードする納税者が相次いでいます。とくに債務控除に関する勘違いは都市部の税務署で数多く発生しているようです。
国税庁によると相続税の債務控除の申告でミスが多いのが、墓の購入で組んだ借入金と住宅ローンです。
確かに、相続税法では、相続財産の価額から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものであると規定されています。したがって、墓購入の借入金残高と住宅ローンの残高は被相続人の死亡時に存在していれば、債務控除の対象になると思われがちです。
しかし、墓の借入金残高について国税庁では「被相続人が生前に購入したお墓については、相続税の課税価格に算入されない財産(非課税財産)であることから、その非課税財産の取得に係る未払金(債務)も相続税の課税価格の計算において差し引くことはできません」としています。
一方、住宅ローンについては、住宅金融公庫などから融資を受けた場合、団体引用生命保険に加入することから国税庁では「団体信用生命保険契約に基づき返済が免除される住宅ローンは、被相続人の死亡により支払われる保険金によって補てんされることが確実であって、相続人が支払う必要のない債務ですので、相続税の課税価格の計算上、債務として差し引くことはできません」と説明しています。
8月22日に大阪府と同府内全43市町村で構成する大阪府個人住民税特別徴収推進会議が開かれ、「オール大阪特別徴収推進強化宣言」が採択されました。
「オール大阪特別徴収推進強化宣言」とは、個人住民税の特別徴収を強く推進して行くことを目的としたものです。具体的には「特別徴収は、事業主(給与支払者)が所得税の源泉徴収と同様に、従業員(納税義務者)に代わり、毎月従業員に支払う給与から個人住民税を差し引きして、納入する制度で、地方税法で義務づけられています」と前置きし、「大阪府及び府内全43市町村は、平成30年度から、原則として、法定要件に該当する事業主すべてを特別徴収義務者に指定し、個人住民税の給与からの特別徴収(給与から差し引き)を徹底する」と宣言しています。
大阪府と府内全市町村は、平成27年9月に「大阪府及び府内全43市町村は、平成30年度から、原則として、法定要件に該当する事業主すべてを特別徴収義務者に指定し、個人住民税の給与からの特別徴収(給与から差し引き)を徹底する」とした共同アピールを採択し、これまで関係団体や事業主への周知活動を行うなど、連携して特別徴収の推進に取り組んできました。
今年度は、特別徴収義務者の一斉指定実施の前年度であることから、周知活動等の取組みを強め、法令の遵守、納税者の利便性向上及び安定した税収の確保を図るため、大阪府及び府内市町村は特別徴収の推進強化に取り組むことを宣言したわけです。
なお、近畿府県(大阪府、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県)においても、特別徴収を強く推進していくため、平成28年10月26日に「個人住民税の特別徴収推進に関する近畿府県共同アピール」を採択しています。
四病院団体協議会(四病協)が、2018年度税制改正に関する要望書をこのほど加藤厚生労働相に提出しました。同要望書では、医療における消費税非課税制度を基にした診療報酬への補てんを維持しながらも、医療機関の負担に配慮した措置を新たに設けるよう求めている点が注目されています。
医療行為に関する報酬に消費税は非課税とされています。つまり、医療機関は、医療機器や医薬品、医療材料などを購入した時に係る消費税を患者に転嫁することができないわけです。そこで、政府からは診療報酬で消費税相当額が補てんされているわけですが、画一的な方式のため、医療機関によっては医療機器などに上乗せされた消費税額が補てん分を上回るケースも少なくありません。
そのため、四病協では今回の税制改正要望で、この消費税問題を「重点的な要望事項」として取り上げています。
具体的には、診療報酬による補てん方式について「個々の医療機関の仕入税額まで考慮されていないことから、補てんの不均衡が生じざるを得ない」と指摘。一部の医療機関に補てん不足が生じていることなどを挙げ、この問題を抜本的に解決するには「診療報酬等に対する消費税を原則として課税に改め、仕入税額控除を認めるしかない」としています。
その一方で、直ちに医療を課税化することは困難との見解を示し、医療機関が負担する超過額の税額控除(還付)を認める「税制上の措置」を新設するよう求めています。
なお、このほかにも今回の要望で四病協は「医療機関に対する事業税の特例措置の存続」や「持ち分のある医療法人に係る相続税、贈与税の納税猶予制度の創設」、「社会医療法人に対する寄附金税制の整備、非課税範囲の拡大」、「医療法人の法人税率軽減と特定医療法人の法人税非課税」などを重点的な事項として改正を求めています。
このほど中小企業庁が、消費税軽減税率対応窓口相談等事業(事業者支援措置等に係る講師派遣事業等)を請け負ってくれる事業者の公募を開始しました。都道府県や全国の商工会などが実施する軽減税率に関する説明会に講師を派遣するこの事業には、最大6,000万円の国家予算が投入されます。
平成31年10月に消費税の税率が10%へ引き上げられるとともに、酒類・外食を除く飲食料品に税率8%の軽減税率の適用がスタートします。この消費税の軽減税率制度の導入により、取扱商品の税率毎の仕分けや複数税率対応レジの設置など新たな事務負担が事業者サイドに発生することから、それに適切に対応できるよう都道府県や経済産業局、商工会などによる軽減税率制度の説明会が全国で展開されることになっています。
問題は、向こう2年間でその説明会が全国各地で開催されることから、軽減税率に精通した講師が不足することが目に見えているということです。また、説明会に参加した事業者らの理解度を把握するためにアンケート調査も同時に進めなければなりません。
具体的には、今回の事業の委託期間は契約締結日から平成30年3月30日までで、この間、1000回程度の説明会に講師(講師候補リストは中小企業庁から提供される)を派遣しなければならず、併せて制度・支援措置に関する理解度を確認するアンケート調査(アンケート回収数・集計数の下限は2000件)を行うことになります。
なお、中小企業庁では、この事業の応募希望者向けの説明会を8月22日の16時30分から17時30分に経済産業省別館3階302会議室において実施するとしています。
8月10日、東京商工会議所(三村明夫会頭)が中小企業庁(安藤久佳長官)に「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」と「国の中小企業対策に関する重点要望」を提出しました。安藤長官は「経営者年齢も高まっていることから、時限的な期限を区切り、集中的に取り組みたい」と語りました。
中小企業の事業承継に係る現状について、東京商工会議所は直近5年間で全国では約40万、東京では約4万事業者が廃業により減少していて、地域経済全体の課題となっているとしています。しかも、廃業企業の5割超が黒字企業で、まさに価値ある事業が失われていると分析しています。
そこで、同会議所は7月14日に「中小企業の円滑な事業承継の実現に向けた意見」と「国の中小企業対策に関する重点要望」を取りまとめました。そして、それらをこのほど中小企業庁に提出したわけですが、とくに「円滑な事業承継の実現に向けた総合的な支援」として、事業承継に関する経営者の意識改革に向けて、国による事業承継の機運醸成を図るための徹底的な広報の実施と地方自治体や支援機関、地域金融機関を通じた事業承継ガイドラインの普及などを強く要望しています。
税制については、親族内承継の促進に向けた対策として、株式の円滑な移転に向けた「事業承継税制」と「取引相場のない株式評価」の見直しを求めています。
具体的には事業承継税制では「発行済議決権株式の総数等『3分の2 要件』の撤廃」、「相続税の 納猶予割合100%への引き上げ」、「納税猶予開始後5年経過時点での納税免除」、「代表者要件・筆頭株主要件(被相続人・後継者)の見直し」を要求しています。
一方、国税庁が取り決めている「取引相場のない株式の評価方法」については、財産評価基本通達で原則的な評価方法とされている純資産価額方式に対し「企業の清算を前提とした評価方法に替えて、事業の継続を前提として、配当還元方式の適用拡大など、議決権を多く保有することで生じる配当を重視した評価方法に見直すべきである」としています。
今年2月に実施した国税の電子申告システム(e-Tax)の利用に関するアンケート調査の結果を国税庁がまとめました。それによると、e-Taxを利用しようと思った理由で「申告書の作成・送信が容易だから」という回答が俄然増えています。
今回のアンケート調査は、今年2月から5月にかけて国税庁が実施したもので、個人、法人合わせて4万3674件から回答を得ています。
主な質問に対する回答を見てみると、まず「e-Taxや確定申告書等作成コーナーを利用するきっかけとなったもの」という質問に対しては、一番多かったのが「国税庁のホームページ」の2万3636件でした。2番目に多かったのは「税務署からの案内」で6808件、3番目は「テレビ・ラジオ」の3779件でした。
次に、「e-Taxで利用した手続き」では、一番多かったのが「所得税申告」で4万2429件でした。2番目は「申請・届出手続き」(3127件)で、3番目に多かったのは「納税手続き」(2102件)となっています。
「e-Taxを利用しようと思った理由」については、「税務署に行く必要がないから」が一番多くて3万7384件でした。2番目に多かったのは「税務署の閉庁時間でも申告書等の提出(送信)ができるから」(3万751件)で、3番目は「申告書の作成・送信が容易だから」(2万6673件)となっています。
じつは、前年の調査では「パソコン(インターネット)を活用できるから」( 21,109件)が3番目で、「申告書の作成・送信が容易だから 」(1万2237件)は7番目でした。
このアンケート調査では、e-Taxを利用していない方に対して、その理由を尋ねています。前年は「電子証明書の取得(更新)に費用や手間がかかるから 」が34.4%で一番多かったのですが、今回は前年2番目だった「ICカードリーダライタの取得に費用や手間がかかるから」が34.1%でトップとなっています。
日本商工会議所(三村明夫会頭)が、8月4日に安倍晋三総理大臣に提出した要望書「安倍改造内閣に望む」の中で要請した事業承継税制のさらなる拡充がクローズアップされています。
日本商工会議所は同要望書で、小・中堅企業の活力強化に向けた取り組みとして「多くの経営者が引退期に直面する『大事業承継時代』を迎え、円滑な承継を可能とする税制措置の抜本的拡充をはじめ、早期・計画的な事業承継の取り組みの後押しが必要であり、さらには、創業・第二創業支援も重要である」と訴えています。
この訴えに多くの中小企業経営者が、強い関心を寄せているわけですが、税制措置の抜本的拡充については、具体的な内容が示されていません。税理士をはじめ税の専門家の間では、昨年9月に日本商工会議所が取りまとめた「平成29年度税制改正に関する意見」に盛り込まれている改正要望ではないかとみています。
具体的には、事業承継税制の抜本的な見直しとする要望で、@現行制度は、納税猶予割合が約5割で効果が薄く、利用が進まない。発行議決権株式総数3分の2制限の撤廃、生前贈与を促す観点から納税猶予割合の100%への引き上げが必要、A中小企業の実態を踏まえ、兄弟等複数人での承継を納税猶予の対象に加えることを認めるべき、B人手不足下での厳しい採用環境や、大規模な災害や急激な経済の悪化等により雇用維持が困難となるケースに対応した雇用維持要件の一層の緩和―、などを求めています。
なお、事業承継税制とは、相続によって後継者が取得した非上場株式のうち、相続前から所有していた分を含め全体の3分の2までの部分について、80%等の納税猶予を認めるという優遇措置です。
このほど、今年3月末までの1年間に全国の税務署・国税局で発生した国税の滞納額などを国税庁が取りまとめました。それによると、消費税の滞納が大きく減少し、前年度よりも7,024億円も滞納額が解消しています。
国税庁の調べによると、2016年度末の国税の滞納残高は15年度比8.2%減の8,971億円だったとしています。これにより18年連続で減少したことになりました。この滞納額は、ピーク時の1998年度末(2兆8,149億円)の31.9%になります。
滞納額を税目別に見てみると、所得税が4,111億円で最も多く、次に消費税の3,100億円、法人税の981億円、相続税の752億円といった順になります。滞納残高のうち2016年度に新たに生じた滞納額は15年度分より650億円少ない6,221億円でした。注目されるのは、消費税の滞納が大きく減少した影響などで、7,024億円の滞納が解消されたことです。
徴収すべき税額に占める割合は1.08%で、1949年の国税庁発足以来、最低となった点も話題となっています。国税庁では「滞納の未然防止や、コールセンターの活用による早期の催告実施などに努めた結果だ」としています。
また、徴収を免れるため財産を隠蔽(いんぺい)するなどした悪質なケースに対する国税徴収法違反(滞納処分免脱)の容疑での告発は2016年度には4件ありました。