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通則法の改正響く。再調査の請求が前年よりも47.5%も減る

2017年6月26日

このほど、国税庁が昨年度の国税に関する「再調査の請求」「審査請求」「訴訟」の状況をまとめました。それによると、再調査の請求(元異議申し立て)の件数が前年度よりも47.5%も減っています。

 国税の課税処分から納税者を救済する制度として、国が設けているのが処分庁に対する再調査の請求(改正前の異議申立て)と国税不服審判所長に対する審査請求です。その救済制度を使っても納得がいかない場合は、裁判所に対して訴訟を提起し、処分の是正を求める仕組みになっています。
 このほど、国税庁が昨年度のその救済制度および訴訟の状況をまとめました。
 まず、再調査の請求を見てみると、請求件数は1,674件で、前年度より47.5%減少しています。これは、平成26年6月の国税通則法改正により、不服申立手続が全体的に改正され、平成28年4月1日以降になされた課税処分については、再調査の請求を経ないで審査請求を行うことが可能となったことが大きく影響したものと推測されます。
 そして、国税当局が平成28年度中に行った再調査の請求の処理件数は1,805件でした。このうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は123件(一部認容100件、全部認容23件)で、その割合は6.8%(一部認容5.5%、全部認容1.3%)となっています。
 一方、審査請求の件数は2,488件で、前年度より18.6%増加しました。
 そして、国税不服審判所が平成28年度中に実施した審査請求の処理件数は、1,959件で前年度比84.8%となっています。
 その処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は241件(一部認容192件、全部認容49件)で、その割合は12.3%(一部認容9.8%、全部認容2.5%)でした。前年度と比べ4.3ポイント増加しています。
 さらに、国税に関する訴訟の発生件数は230件で、前年度より0.5%減少しています。
 ちなみに、28年度中に終結した訴訟の終結件数は245件でした。このうち、国側が一部敗訴したもの及び全部敗訴したものは11件(一部敗訴5件、全部敗訴6件)で、その割合は4.5%(一部敗訴2.0%、全部敗訴2.5%)となっています。

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広大地の相続税評価の改正内容明らかに。新たに規模格差補正率を導入

2017年6月26日

昨年12月8日に公表された「平成29年度税制改正大綱」(与党大綱)において「相続税等の財産評価の適正化」として広大地補正の見直しが指摘されましたが、このほど、その改正内容が明らかになりました。

 広大地とは、面積が1,000u以上(三大都市圏では500u)の宅地で、戸建て分譲を行う場合に道路等の負担が必要となる宅地のことです。現行の広大地の相続税評価額は路線価×地積×広大地補正率で算出することになっていて、土地の間口や奥行、不整形といった土地の形状を加味せず、面積だけで評価額を算出する形になっています。
 したがって、土地の形状が加味されていないことから、正方形や長方形といったきれいな形の広大地であっても、三角形や台形などの不整形な土地や無道路の広大地と面積が同じならば評価額も同額になってしまうという不公平な評価が行われているわけです。
 そこで、今回の改正に至ったわけですが、具体的には、「財産評価基本通達14−2((地区))の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するものの価額は、同通達15((奥行価格補正))から前項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する」とされました。
 次の算式とは、(地積規模の大きな宅地の地積×?+?)÷地積規模の大きな宅地の地積×0.8のことで、「?」及び「?」は、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じて、それぞれの数値が財産評価基本通達20−2に新たに定められました。
 なお、この改正内容について、国税庁では電子政府の総合窓口e−Govにおいて7月21日までパブリックコメントを募集しています。

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過去5年間で最多の告発件数をマーク―平成28年度マルサ白書

2017年6月19日

裁判所の令状を持って強制調査を行う国税局査察部が今年3月までの1年間(平成28年度)で実施した調査の概要、いわゆるマルサ白書を国税庁が明らかにしました。それによると過去5年間で最多の告発を行っています。

 平成28年度においてマルサが調査に着手した件数は、178件でした。平成28年度以前に調査に着手した査察事案も含め、平成28年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は193件で、そのうち検察庁に告発した件数は132件、告発率は68.4%でした。この告発件数と告発率は、過去5年間で最も多い数字となっています。
 平成28年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額161億円で、そのうち告発分は127億円でした。告発した事案1件当たりの脱税額は9,600万円となっています。
 平成28年度に告発した査察事案を業種別に見てみると、一番多かった業種は「建設業」の30件で、2番目が「不動産業」の10件でした。
 一方、平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は100件でしたが、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が14人に下されています。
 今回のマルサ白書で注目されているものが、もうひとつあります。平成23年度税制改正で創設された消費税受還付未遂犯を2件告発している点です。消費税受還付未遂犯とは、仕入税額控除の仕組を逆手にとって不正に還付金を受け取ろうとした未遂者に刑事罰を与える規定。仕入れに係る消費税について、売り上げに係る消費税を上回るように偽装して不正に還付金を受け取った場合、受還付犯として「10年以下の懲役若しくは1,000万円(情状により脱税額)以下の罰金又はこれらの併科」という罰則が適用されますが、平成23年度税制改正によって不正に還付申告を税務署に行った時点でも未遂犯として同じ罰則が適用されるようになりました。

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e-Taxから「国税クレジットカードお支払サイト」に直接アクセスできるようになった

2017年6月19日

6月12日に、e-Tax(国税の電子申告システム)から「国税クレジットカードお支払サイト」へのアクセスが可能となりました。これにより、e-Taxから「国税クレジットカードお支払サイト」に移動した場合、住所・氏名や税金の種類などの入力が不要となっています。

 国税のクレジットカード納付は、国税庁長官が指定した民間の納付受託者であるトヨタファイナンス株式会社が運営している外部の専用Webサイト「国税クレジットカードお支払サイト」に搭載されているクレジットカード支払機能を利用して国税を納付する手続です。
 このほど、e-Taxから「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスできるようになりました。
 通常、同サイトでクレジットカード支払機能を利用するとき、住所・氏名や税金の種類などの入力が必要ですが、e-Taxから同サイトにアクセスした場合は、それらを入力する必要がありません。
 同時に、e-Tax を利用して徴収高計算書データを送信することで、源泉所得税についてもクレジットカード納付ができるようになりました。
 ちなみに、その源泉所得税のクレジットカード納付の具体的な手順は、まず、e-Taxソフト(WEB版)にアクセスし、源泉所得税及び復興特別所得税の徴収高計算書データを作成・送信します。次に、メッセージボックスに格納される通知を確認し、「クレジットカード納付」を選択すると「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスするので、注意事項及びe-Taxから引き継がれた内容(税金の種類や納付金額等)を確認します。そして、クレジットカード情報(クレジットカード番号等)を入力し、納付手続を完了させると「クレジットカード納付完了通知」がメッセージボックスに格納されます。
 なお、いったん納付手続を完了させると、その納付手続の取消しはできなくなるので注意が必要です。

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9月30日までにマイナンバー登録しなければNISA口座利用出来なくなる

2017年6月12日

日本証券業協会がNISA口座利用者に対し、今年9月30日までにマイナンバーを証券会社に登録するよう呼びかけています。もし、登録しなかった場合は、平成30年以後の年分のNISA口座は利用できなくなるそうです。

 マイナンバー(個人番号)とは、国民一人ひとりに市区町村から通知される12桁の番号のことです。そもそもマイナンバー制度は、法律で国民総背番号制にして把握が難しい個人の所得をコンピュータによって名寄せしてすべて把握し、課税漏れを防ごうという政府の思惑によって2016年1月からスタートしたものです。
 したがって、2016年1月1日以降に銀行や証券会社に新規口座を開設する場合は、マイナンバーを金融機関に通知することが義務付けられました。2016年1月から募集が開始されたジュニアNISAについても、本人だけでなく親権者として登録するときの口座に関してもマイナンバーの登録が必須となっています。
 2015年12月末以前に口座の開設手続きをした人については、2018年12月までに口座を開設している金融機関にマイナンバーを登録しなければなりません。ただし、証券会社に開設しているNISA口座については、今年9月30日までに証券会社に提示して登録することになっています。
 仮に、そのマイナンバーの登録を行わなかった場合は、自動的に来年以後NISA口座は利用できなくなります。そのため、日本証券業協会ではいま、NISA口座の持ち主に対してマイナンバーの登録をするよう必死に呼びかけているわけです。

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国税庁が文書回答の運営指針を改正。複数の選択肢がある相談を排除

2017年6月12日

このほど、国税庁が「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)の一部改正を行いました。納税者の事前紹介(事前相談)に対して国税局が文書回答を行う相談事項の範囲を改正しています。

 日本の税制は複雑で分かりにくいものばかりです。そのため、国税庁は課税に対する納税者の予測可能性の向上に役立ててもらうため、納税者からの個別事情に関する事前照会に対して、一定の要件に該当しない限り、文書による回答を行っています。
 その一定の要件については、国税庁が「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)に定めているわけですが、このほど、この事務運営指針が一部改正されました。
 事務運営指針に定められている「文書回答を行う対象となる事前照会の範囲」について改正されています。具体的には、「(3)仮定の事実関係や複数の選択肢がある事実関係に基づくものではなく、実際に行われた取引等又は将来行う予定の取引等で個別具体的な資料の提出が可能なものに係る事前照会であること。(注)「複数の選択肢がある事実関係に基づくものではなく」とは、一つの照会文書において前提としている事実関係が複数ではなく一つであることをいう」とされていたものが、次のように改正されています。
「(3)実際に行われた取引等又は将来行う予定の取引等で個別具体的な資料の提出が可能なものに係る事前照会であること。(注)「将来行う予定の取引等」に係る事前照会には、照会の前提とする事実関係について選択肢があるものは含まれないことに留意する」

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株で儲ける人が大幅に減った―平成28年分の所得税等の確定申告状況で明らかに

2017年6月5日

平成28年分の所得税等の確定申告状況を国税庁がまとめました。それを見ると、平成28年は株取引で儲けた人が非常に少なかったことがひと目でわかります。

 国税庁の集計によると、平成28年分所得税等の確定申告書の提出人員は2169万人で、前年分(2151万5千人)から17万6千人(+0.8%)増えたものの、平成23年分からほぼ横ばいで推移しています。このうち、申告納税額のあった人(納税人員)は637万人でした。そして、納税人員の総得金額は40兆572億円で、申告納税額は3兆621億円となっています。前年分と比較すると、納税人員(+0.7%)、総所得金額(+1.7%)及び申告納税額(+3.1%)はいずれも増加しました。
 注目の事業所得の申告については、納税人員が173万1千人(対前年比+1.9%)で、その総所得金額は7兆1107億円(同+3.1%)、申告納税額6365億円(同+2.4%)といずれも増加しています。一方、事業所得者以外は、納税人員が463万9千人(対前年比+0.3%)で、その総所得金額は32兆9465億円(+1.4%)、申告納税額は2兆4256億円となっています。
 今回の国税庁の集計で、前年よりも大きな動きがあったのが譲渡所得の申告でした。なかでも株式等の譲渡所得に著しい変化が見られました。確定申告書を提出した人員のうち、株式等の譲渡所得の申告人員は93万2千人(対前年比+2.7%)でしたが、有所得人員が29万4千人(同マイナス36.3%)と大きく減少し、その影響で所得金額も2兆6130億円(同マイナス4.7%)と減少しました。ちなみに、昨年は株取引でまったく儲からなかったか、または、損をした人は63万8千人(同+43%)でした。すなわち、昨年は株取引が非常に低調だったと言えます。

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配偶者控除の拡充で地方交付税の減額を懸念。地方六団体が国に待ったをかける

2017年6月5日

国と地方の協議の場平成29年度第1回会合がこのほど開催され、焦点となった議題の中のひとつに平成29年度税制改正に盛り込まれた所得税の配偶者控除の見直しに伴う措置がクローズアップされています。

 5月31日、総理官邸において、国と地方(全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町村議会議長会の地方六団体)の協議の場平成29年度第1回会合が開催されました。
 主な議題は(1)「骨太の方針」の策定等と(2)地方創生及び地方分権改革の推進についてでしたが、この協議のなかで、税制面で地方六団体が国に強く求めた「個人所得税改革に当たっては、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる個人住民税の減収額について、地方財政に影響を及ぼすことがないよう、確実に全額国費で補?すること」という要請が話題となっています。
 今年3月27日に国会で成立した平成29年度税制改正関連法案では、「配偶者控除」の廃止そのものが見送られ、逆に2018年1月から世帯主の所得からの満額控除(38万円)が適用される配偶者の所得の上限が103万円以下から150万円以下に引き上げられました。
 当初、所得税配偶者満額控除の上限については「年収130万円」案もありましたが、「配偶者の年収が130万円を超えると社会保険料負担が発生する『130万円の壁』と重なって壁が厚くなりすぎる」ことや「パートの時給が上昇していて、上限が低いとパート女性らが労働時間を増やす効果が見込みにくいため」という理由で年収150万円に落ち着きました。
 配偶者控除の拡充ということは、その分税収が減るということになることから、地方六団体は国が地方交付税を引き下げるのに格好の材料となることをけん制、減る分は国の費用として処理するよう先手を打ったわけです。

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