今年3月に全国の税務署で行われた所得税の確定申告(平成27年分)の状況を国税庁が取りまとめました。それによると株式等の譲渡所得を申告した人たちの総所得金額が前年よりも25.9%も増えています。
平成27年分所得税の確定申告書の提出人員は2,151万5千人で、平成26年分(2,139万1千人)から12万3千人(前年比0.6%)増加しました。ただ、この提出人員については、平成23年分からほぼ横ばいで推移しています。
確定申告書を提出した人員のうち、申告納税額のある人(納税人員)は632万4千人(同3.3%増)で、その所得金額は39兆3,729億円(同6.1%増)でした。申告納税額は2兆9,701億円(同9.6%増)となっていて、納税人員、所得金額、申告納税額がいずれも前年よりも増加しました。
事業所得者については、納税人員が170万人で、その所得金額の合計は6兆8,969億円でした。申告納税額は合計で6,216億円となっています。これを平成26年分と比較すると、納税人員は4.5%増、所得金額も6.3%増、申告納税額も9.1%増加しました。
また、確定申告書を提出した人員のうち、還付申告者は1,246万5千人で、平成26年分(1,248万7千人)から2万2千人(マイナス0.2%)減少したものの、平成22年分からほぼ横ばいで推移しています。
一方、所得の種類別に見てみると、土地等の譲渡所得(総合譲渡を含む)を申告した人員は48万9千人でした。そのうち、所得金額のある人(有所得人員)は32万1千人で、その所得金額は4兆595億円となっています。
これを平成26年分と比較すると、申告人員は1.7%増、有所得人員も6.6%増、所得金額も12.2%増加しています。
さらに、株式等の譲渡所得を申告した人員は90万7千人でした。そのうち、有所得人員は46万2千人で、その所得金額は2兆7,405億円となっています。
これを平成26年分と比較すると、申告人員は3.1%減少し、有所得人員も0.2%増とほぼ横ばいでしたが、所得金額が25.9%も増加しました。これは、アベノミクスの第一の矢「大胆な金融政策」により円安ドル高が加速。2015年5月28日には日経平均株価が終値で2万551円を記録し、27年ぶりに日経平均株価が10日連続で続伸するといった現象が影響したものと思われます。
このほど、国税庁が平成27年度における異議申立て等の状況を取りまとめました。やはり税率アップが影響してか、消費税に関する異議申立てが前年度よりも42%も増えています。
国税当局による課税処分に不服のある納税者の救済制度として、税務署に対する異議申立て(再調査の請求)と国税不服審判所長に対する審査請求という行政上の救済制度(不服申立制度)があるほか、裁判所に訴訟を提起して処分の是正を求めることもできます。こうした救済制度の平成27年度分の活用件数を国税庁が取りまとめました。
それによると、平成27年度における異議申立ての件数は3,191件で、前年度と比べ15.8%増加しています。やはり平成26年4月に消費税率が8%に引き上げられたことが要因だったのか、消費税に関する異議申立て件数(1,155件)が前年度(816件)よりも42%も増加したことが影響しました。
そうした異議申立てに対して税務署は、平成27年度中に3,200件を処理しています。このうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は270件(一部認容212件、全部認容58件)で、その割合は8.4%(一部認容6.6%、全部認容1.8%)となり、前年度と比べると0.9ポイント減少しています。
次に、平成27年度における国税不服審判所への審査請求は2,098件でした。前年度と比べると3.3%の微増となっています。
そうした審査請求を、国税不服審判所は平成27年度中に2,311件処理しましたが、この処理件数は前年度比22.4%減少しています。そのうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は184件(一部認容147件、全部認容37件)で、その割合は8.0%(一部認容6.4%、全部認容1.6%)でした。この割合は、前年度とは同率です。
さらに、平成27年度における国税の課税処分等に関する訴訟は231件発生しました。ただし、法人税及び徴収関係に係る事件が減少したことに伴い、前年度と比べると2.5%減少しています。平成27年度中に終結したのは262件で、このうち、納税者側が一部でも勝訴したのは22件(一部勝訴3件、全部勝訴19件)で、その割合は8.4%(一部勝訴1.1%、全部勝訴7.3%)でした。
このほど国税庁が平成27年度マルサ白書を公開しました。それによると、一番多く告発された業種は建設業で、まさに東日本大震災の復興需要で儲かっている業種がターゲットになった形になっています。
国税庁の発表によると、全国の国税局査察部、いわゆるマルサが平成27 年度に査察に着手した件数は189 件(前年度194件)でした。そのうち、平成27 年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は181 件(同180件)で、検察庁に告発した件数は115 件(告発率63.5%、前年度112件)でした。
一方、平成27 年度中の査察事案の脱税額は総額で138 億円でした。そのうち告発分は112 億円で、告発した事案1件当たりの脱税額は9,700 万円となっています。
平成27年度に告発した査察事案でもっとも多かった業種は、「建設業」(15社、前年度8社)でした。2番目が「不動産業」(12社、同16社)、3番目「クラブ・バー」(7社、同10社)となっていて、昨年度3位だった建設業が一挙に1位に躍り出ています。建設業は、東日本大震災の復興需要で好景気となっていると言われていますが、マルサは常に儲かっているところをターゲットにすることから、建設業に対する噂が真実味を帯びた格好になっています。
脱税の手段を見てみると、建設業や不動産業では架空の経費を計上していたところが多かったとしています。クラブ・バーではホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していたにもかかわらず納付していなかったものが多くみられました。
マルサの強制調査は、一罰百戒の効果があると言われていて、単純に脱税事件ばかりを扱っているわけではありません。国税庁では「その事業活動自体に違法または不当な行為が含まれるとして、社会問題化した業種についても積極的に告発しました」としています。
例えば今回は、ネットワークビジネスと称して、新規会員を勧誘することで多額の手数料を得ていた、いわゆる「マルチ商法」を展開している事業者や、運用実態がないにもかかわらず、海外投資の名目で出資金を募っていた、いわゆる「投資詐欺」などにも手入れを行なっています。
6月14日に大阪府が総務省から同意を取り付け、法定外目的税の「宿泊税」を新設することを決めました。平成29年1月1日から条例を施行し、課税を開始する予定です。
大阪府では、世界有数の国際都市として発展させていくことを目指しています。そこで、都市の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てるための財源として、大阪府宿泊税条例を制定。これまで地方税法に基づき総務省と協議を行なってきました。
このほど、総務大臣から法定外目的税新設の同意を取り付けたわけですが、今後は、平成28年7月から12月までの6ヶ月間の周知期間を設けたうえで、平成29年1月1日から課税をスタートさせる予定です。宿泊税の施行は、東京都に次ぎ全国で2例目となります。
大阪府の宿泊税の制度概要は、納税義務者については大阪府内のホテルまたは旅館の宿泊者としています。税率は「宿泊料金(一人一泊)10,000円以上15,000円未満−税率100円」、「宿泊料金(一人一泊)15,000円以上20,000円未満−税率200円」、「宿泊料金(一人一泊)20,000円以上−税率300円」となっていて、宿泊料金については食事料金などを含まない、いわゆる素泊まりの料金です。なお、宿泊料金が一人一泊10,000円未満の宿泊には課税されません。
納入方法は、ホテルまたは旅館の宿泊施設の経営者(特別徴収義務者)が、納税義務者であるホテル等の宿泊者から税金を徴収し、納入することになっています。さらに、課税を行う期間は条例施行後5年ごとに、施策の効果や条例の施行の状況を勘案して、制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとされています。
消費税の軽減税率対策補助金がクローズアップされています。安倍晋三首相が消費税率10%への引き上げ延期を発表したあとも、中小企業庁が同補助金の公募を続けているからです。
安倍首相は6月1日、消費税率の10%への引上げ及び軽減税率制度の導入時期を平成31年10月にすると発表。税率引き上げ延期は今回で2度目であり、しかも、平成31年10月に安倍政権が存続しているかどうかもわからないことから、税率10%への引き上げを実施すること自体について多くの識者が疑いを強めています。
そのような中、中小企業庁が消費税の軽減税率対策補助金の公募を継続する意向を示しました。軽減税率導入時期の延期が国会で決まり次第「受付期限について事務局ホームページで案内する」(現時点の受付期限は平成29年5月31日)としています。税理士らは「軽減税率が8%であることから、この次こそ政府は税率を10%へ引き上げるという強い決意のあらわれ」と見ています。
軽減税率対策補助金とは、消費税の軽減税率制度(複数税率)への対応が必要となる中小企業・小規模事業者が、複数税率対応レジの導入や、受発注システムの改修などを行うにあたって、その経費の一部を補助する制度です。
例えば、複数税率に対応した機能を有するPOS機能のないレジを中小企業が導入する場合、その中小企業が飲食料品(お酒や外食サービスは除く)を販売する事業者か、または、週2回以上発行される定期購読の新聞販売業者ならば、設置費用の3分の2(1台につき上限20万円、総額200万円)までを国が補助するとしています。
(株)地域経済活性化支援機構が実施する中小企業の事業再生支援で、同機構が作成した弁済計画に従って債権放棄を行った金融機関や債務を抱えていた事業者、その債務を保証していた代表者らの税務上の取扱いが明らかになりました。
(株)地域経済活性化支援機構(略称:REVIC?レヴィック?)は、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中堅・中小企業、個人事業者の事業再生を支援することなどを目的として2009年10月14日に国の認可法人として設立されたものです。
同機構が中小企業の事業再生を支援するときに活用するのが、一般社団法人全国銀行協会が平成2014年12月に公表した「経営者保証に関するガイドライン」です。同ガイドラインに基づいて、主たる債務と保証債務の一体的な整理を図って代表者らの再チャレンジを支援しているわけですが、税務上の取り扱いが大きな障壁となっていました。
そこで、同機構は国税庁に問い合わせたわけですが、その質問の中で「作成した弁済計画では、債権を有する金融機関が弁済計画には同意するものの債権買取りを希望しない場合は、債権放棄することになる。そして、債権放棄したことにより生じた損失は債権放棄の日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入される」との見解を述べています。
また、債務免除を受けた個人事業者については「所得税法にある『資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合にその有する債務の免除を受けたとき』に該当することから、債務免除益は各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない」と解説。さらに、代表者が抱えている保証債務については「弁済計画により代表者等が個人資産を譲渡し、その譲渡代金により保証債務を履行することがあるが、その場合、保証債務の特例が適用される」としました。というのも、「求償権を放棄(債務免除)しても、なお債務超過の状況にあれば、自動的に求償権を放棄したこととなるから」です。
しかも、「残債務に付されている担保権の消滅や個人保証の免除を行ったとしても、偶発債務の免除等にすぎず、関係金融機関等及び特定債権買取りを行った機構から代表者等に対する利益供与はない。よって、収入の実現はなく、原則として代表者等に所得税の寄附金課税は生じない」と説明。これに対して、国税庁は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。
相続税納付対策商品を取扱う金融機関が増えていますが、このほど、ある銀行が相続税の節税につながる商品を開発。「暦年贈与サポートサービス」という名称の商品で、東京国税局も節税規制の対象ではないとする見解を示しています。
相続税のオーソドックスな節税手法の中に、1年間にもらい受ける金銭贈与の非課税枠110万円を使って、一定期間毎年その非課税枠内で贈与を受けることで多額の財産を無税で移動させるという手法があります。「暦年贈与サポートサービス」はこの手法に目をつけたものです。
ただし、例えば10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることを、贈与者との間で約束している場合には、税務署は1年ごとに贈与を受けたと考えずに、約束した年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税を課すことにしています。
そこで、その銀行は「暦年贈与サポートサービス」について、定期金に関する権利の贈与に該当するかどうかを東京国税局に文書で問い合わせました。
まず、その銀行は質問の前に、「暦年贈与サポートサービス」の内容を解説。「本件サービスでは、その申込みは贈与者が行い、当行は、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った上で、その双方合意による贈与契約の成立を証する贈与契約書に基づいて贈与資金の払出し・振込(預金の振替)を行うこととしている」と説明しています。
したがって、「本件サービスに基づき行われる贈与については、各年に締結される贈与契約の内容に基づき、各年の贈与として贈与税の課税が行われることとなるものと解するのが相当であり、あらかじめ定期的に贈与することについて贈与者・受贈者双方の合意がなされている場合でない限り、本件サービスを利用した贈与は、『定期金給付契約に関する権利』の贈与に該当するものではないと考えられる」としました。
これに対して、東京国税局は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」としています。
このほど、国税庁が平成27年分の贈与税の確定申告状況を発表しました。同年1月1日にスタートした相続税の課税強化への対応策として、財産の生前贈与の動きが取り沙汰されていましたが、その実態が明らかになっています。
国税庁の発表によると、昨年分の贈与税の申告書を提出した人員は53万9千人(前年比3.7%増)でした。そのうち申告納税額のある納税人員は38万3千人(同比4.6%増)で、その申告納税額は2,402億円(同比14.3%減)となっています。
申告人員と納税人員が増加したのに申告納税額が減少したのは、贈与税の課税の特例や非課税枠をうまく使った人がいかに多かったかを物語っています。
そこで、暦年課税(年間110万円の非課税枠を利用した人)の申告状況を見てみると、暦年課税を適用した申告人員は48万9千人(前年比4.1%増、そのうち、祖父母や父母などから20歳以上の子や孫などへの贈与に使用する特例税率の適用者は23万8千人)で、申告納税額は2,161億円(同比16.4%減)となっています。
また、60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫に対し、財産を贈与した場合に2,500万円の特別控除額が使える相続時精算課税の申告状況を見てみると、同制度を適用した申告人員は4万9千人(前年比0.1%減)で、申告納税額は241億円(同比10.2%増)となっています。
さらに、非課税限度額が最高1,500万円の住宅取得等資金贈与の非課税制度を適用した人の申告状況を見てみると、同制度を適用した申告人員は6万6千人(前年比2.1%増)で、住宅取得等資金の金額は6,508億円(同比29.6%増)、そのうち非課税の適用を受けた金額は6,159億円(同比42.6%増)となっています。
無駄遣いされるのを恐れて、子供たちに現金ではなく住宅を買い与える親たちが多かったことがこのデータから読み取れます。