民間の信用調査会社の株式会社東京商工リサーチ(本社:東京千代田区)が、1月に実施した「社会保障・税番号(通称:マイナンバー)制度に関するアンケート」調査の結果によると、業務面の「メリットはない」、利活用も「進んでいない」という実態が浮き彫りとなっています。
今回のマイナンバーに関する調査は、2016年1月19日から同月29日にかけてインターネットによるアンケートを実施、7,887社から得た有効回答を集計・分析したものです。
まず、マイナンバー法の内容について「概ね知っている、よく知っている」と答えたのは5,046社で約6割を占めました。「少し知っている」と答えた2,513社(同31.9%)と合わせて9割以上に認知されていることがわかりました。
しかし、マイナンバー制度の一番のメリットについて尋ねたところ「メリットはない」と答えたのが5,881社で約7割を占めました。また、マイナンバー制度の一番のデメリットについては「情報漏洩のリスク」が3,194社(構成比40.5%)で最多を占めました。次いで「業務の煩雑化」が1,809社(同22.9%)、「業務の増加」1,802社(同22.8%)、「コスト増加」548社(同6.9%)の順となっています。なお、昨年6月から7月に実施した同様のアンケート調査でもデメリットは「情報漏洩のリスク」(同53.3%)が最多でしたが、構成比は12.8ポイント下がりました。東京商工リサーチでは「各企業がセキュリティ強化に努めたことや、行政による広報活動で安全性への認識が広がっていることがうかがえる」と分析しています。
一方、法人番号制度については「ある程度知っている、よく知っている」と答えたのが4,437社で最も多く、約6割を占めましたが、法人番号の主な活用内容を尋ねたところ、総回答数8,543のうち、「活用の予定はない」が最多の回答数4,653社で、過半数を占めました。
今回の調査結果を受け東京商工リサーチでは「受入側となる企業から導入への賛意を得て幅広く浸透させるためには今後、政府が、導入に関する一層の広報を行うとともに、受入企業側の不満解消に結び付く施策や利活用のアイデアを示していくことが求められている」としています。
このほど、大阪府は府税の猶予制度について見直しを行い、職権による換価の猶予制度に加えて申請による換価の猶予制度を新設しました。
現行の制度では、徴収の猶予については災害、病気、事業の休廃業等を理由に、府税を一度に納付できないときは、申請によって、1年以内の期間に限り猶予が認められることがあるとされています。
一方、換価については、府税が滞納になり、納税の督促が行われてもなお完納されないときは、他の納税者との公平性を保つため財産の強制換価が行われることになっていますが、納税について誠実な意思を有し、財産の換価により事業継続・生活維持を困難にするおそれがあるときは、職権によって、1年以内の期間に限り換価の猶予が認められるという例外が規定されています。
しかし、平成26年度税制改正により、国税の猶予制度が見直されたことに連動して、平成27年度に地方税法が一部改正されたことを受け、大阪府では、納税者の軽減負担と確実な納税履行の確保の観点から、現行制度を見直し、職権に基づくもののみならず納税者からの申請に基づく換価の猶予もできることにしました。
具体的には、府税を一度に納付することにより、事業継続・生活維持を困難にするおそれがあるなど一定の要件に該当するときは、申請によって、1年以内の期間に限り換価の猶予を受けることができると条例を改正することにしたわけです。
大阪府税条例改正案は、今月の府議会に上程中で、平成28年4月1日に施行する予定です。よって、申請による換価の猶予は、同改正条例が施行された日以後に納期限が到来する府税に適用されます。
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連、榊原定征会長)が、このほど政府に提出した「2015年度経団連規制改革要望(12分野・149項目)」の中で国税の電子申告(e-Tax)ソフト(WEB版)による法定調書の作成・提出対象の範囲拡大と送信できるデータ容量の上限アップを要求していることが明らかになりました。
所得税法上、法定調書は、書面により所轄の税務署に提出することを原則としています。ただし、所定の手続を踏めば書面による提出に代えてe-Taxや法定調書の記載事項を記録した光ディスク(CD、DVDなど)によって提出することも可能です。
さらに、法定調書の種類ごとに、法定調書の枚数が1,000枚以上ある場合は、インターネットを利用したe-Taxや光ディスク(CD・DVDなど)によって提出しなければならないとされています。
ところが、生命保険関係の支払調書については、e-Taxソフトで作成・提出可能となっていますが、e-Taxソフト(WEB版)の対象には含まれていません。e-Taxソフト(WEB版)とは、e-Taxソフトのダウンロードやパソコンへのインストールをすることなく、Web上で入力することにより、e-Taxでの申請(合計5,000件かつ10MBを上限とするCSVファイルの送付が可能)や帳票表示ができるというものです。
そのため、生命保険会社では、e-Taxソフト(WEB版)ではなく、1件ずつ入力するe-Taxソフトを通じた提出や、書面や光ディスクの郵送、持込みによる提出をせざるを得ず「効率性の観点から大きな負担となっている」(規制改革要望提案理由)としています。
また、仮に生命保険関係の支払調書がe-Taxソフト(WEB版)の対象に含まれたとしても、生命保険業界は業務の特性上、一度に多量のデータを送付する必要があるため、送付可能なデータ容量の上限を超えてしまう可能性が考えられます。
そこで、2015年度経団連規制改革要望の中で経団連は「生命保険関係の支払調書をe-Taxソフト(WEB版)の対象に加えるとともに、一度に送信できるデータ容量の上限を拡大することを要望する。要望の実現により、法定調書に係る安全かつ効率的なデータ提出が可能となる」と説明しています。
スマートフォン(スマホ)のアプリを使って税金などの支払いができるサービスを西日本シティ銀行(本店=福岡市)が、2月22日から開始すると発表しました。サービス名は「NCBアプリペイ」というもので、アプリから直接税公金の支払いができます。
「NCBアプリペイ」は、政府が現在推進している「オープンイノベーション(外部連携による革新)を通じた『決済業務等の高度化』」の事例として西日本シティ銀行が株式会社NTTデータと協業して開発した税公金の支払サービスです。全国の金融機関では初めての試み。
既に西日本シティ銀行が顧客向けに提供している「西日本シティ銀行アプリ」に「NCBアプリペイ」は搭載され、地方税や国民健康保険料などの税金・公共料金の納付書に記載されたバーコードを同アプリで読み取ることにより、わざわざ銀行やコンビニエンスストアの窓口などに出向かなくても、いつでもどこでもスマートフォンから税公金を支払うことができるようになります。
同アプリはインターネットバンキングの契約を結ぶ必要が無く、手数料も無料。西日本シティ銀行のキャッシュカードさえ持っていれば、支払口座を登録するだけで誰でも利用が可能となっています。
はじめは、福岡市を含む14都道府県の57自治体を対象として2月22日からサービスをスタートさせることについて西日本シティ銀行では、「新たな税公金の納付手段を提供することで、地域住民向けのサービス向上に繋がると共に収納効率の向上も期待されます」としていて、今後は福岡県を中心に順次取り扱う自治体を増やしていく予定です。
税制改正により、昨年から相続税の基礎控除が約半減となり、課税対象が広がったことから、相続に必要な資金需要に応える金融商品を売り出す銀行などが増えています。
相続税の課税に対する不安は、東京都内だけでなく、近県にマイホームを持つ人たちにまで広がっています。
相続税に関する悩みというと、まずは税理士に相談するもの。そこで、税理士報酬の支払いに充てる費用にも使える無担保ローン「相続税支援ローン」を千葉興業銀行が2月8日から取り扱いを始めました。相続税は現金一括払いが原則であることから、この相続税支援ローンでは、相続税自体の納付にも使えるようになっています。
もちろん、司法書士等への支払いなど相続登記にかかる費用にも利用可能です。借入金額は最高1千万円までで、借入期間は最長20年。借入金利は変動で現在年2.5%となっています。
地域社会に根付いている信用金庫も相続に的を絞った金融商品を取り扱うところが現れています。東京都内23区と千葉県、埼玉県に支店を持つ朝日信用金庫は「朝日相続サポートローン」を展開中。使い道は千葉興業銀行と同じで、相続税の納付金だけでなく、司法書士や税理士への支払いにも利用できることになっています。借入金額は最高1千万円までで、借入期間は最長20年。借入金利は「短期プライムレート」を基準として年2回見直しを行う変動金利を採用しています。
埼玉県全域と東京、千葉、茨城、群馬に支店を持つ埼玉県信用金庫も「さいしん相続税サポートローン」を取り扱っています。使い道は、千葉興業銀行や朝日信用金庫と全く同じで、借入限度額が1千万円、借入期間も最長20年と両行と変わりませんが、借入利率については埼玉県信用金庫が定める住宅ローンプライムレートを基準として金利計算されることになっています。
相続税の納付資金を融通する金融機関が増えているということは、今回の相続税の課税強化の影響力がいかに大きいかを物語っています。
このほど、政府が法人実効税率の引下げや消費税の軽減税率の導入などを盛り込んだ平成28年度税制改正法案を閣議決定しました。
このほど閣議決定された平成年度税制改正法案には、法人実効税率について現行の32.11%を段階的に引き下げることが盛り込まれています。具体的には、平成28年度に29.97%へ、平成29年度には29.74%まで引き下げるとしています。今回の法人実効税率の20%台への引き下げについて、政府は「現下の経済情勢等を踏まえ、経済の好循環を確実なものとする観点」から行うものと説明しています。
減税分の財源については、租税特別措置の見直しや法人事業税の外形標準課税の更なる拡大、欠損金の繰越控除限度額の段階的引下げなどで、課税ベースを拡大することにより確保するとしています。
消費税の軽減税率制度については、平成29年4月からの消費税増税に伴う低所得者への配慮として同時に導入することを決定。酒類及び外食(店内飲食)を除く生鮮食品及び加工食品と、週2回以上発行される新聞の定期購読料を軽減税率の対象品目としています。
納税額を厳格に把握するためのインボイス制度は、平成33年4月からの導入を予定していて、それまでは現行の請求書等を応用した「区分記載請求書等方式」と呼ばれる簡素な経理方式が採用されることになっています。
また、売上・仕入を税率ごとに区分することが困難と想定される中小事業者に関しては、一定割合を軽減税率対象項目の売上・仕入とみなして税額計算を行うことを認める特例等を経過措置として設け、財源の捻出及び事業者の準備状況については今年度末までに法制上の措置等を講じることで対応すると明記されました。
その他、法律案には少子化対策・教育再生に向けた三世代同居改修工事に係る税額控除の導入や寄附金税制の見直し、地方創生推進の観点から企業版ふるさと納税の創設や外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充、国税のクレジットカード納付制度の創設などが盛り込まれています。
同法案は同日国会に提出され、年度内に可決・成立されれば平成28年4月1日より施行されることになります。
政府は来年4月に消費税の税率を8%から10%へ引き上げる構えを依然として崩していませんが、このほど大手生命保険会社の日本生命保険相互会社(筒井義信社長)が「消費税増税前に購入したいもの」などについて行ったアンケート調査の結果を公表しました。
日本生命が行なったアンケート調査は「2016年の抱負・期待」と題するもので、昨年12月1日から同月17日の間にインターネットを利用して1万2,927名(女性7,128名、男性5,799名)から回答を得たものです。
それによると、「2015年と比べて2016年は景気が良くなるか」との質問について、「いいえ(悪くなる)」と答えた人が55.6%を占めて最多となり、昨年より31.8%も増加しました。そして、「はい(良くなる)」と答えたのは23.6%で、「変わらない」は20.8%でした。「どんな時に景気が良くなったと感じるか」とする質問では、1位が「収入が増える」(64.8%)で、2位が「商店街がにぎやかになる」(29.5%)、3位「企業の採用数が増える」(25.6%)となりました。
「2016年の給料は増えると思うか」を聞いたところ、「変わらない」が最多で65.4%を占めました。次いで「減る」が20.6%、「増える」は14.0%でした。「増える」と回答した人を年代別に見てみると、「〜20代」が24.2%で最も多く、「30代」も18.9%となり、若い世代ほど賃上げへの期待が高いということがわかりました。
「2017年4月に予定されている消費税増税前に購入するものは何か」との質問では、1位が「家電」(32.9%)でした。2位は「食品・日用品の買いだめ」(23.6%)、3位は「趣味に使うもの」(19.8%)、4位「自動車・バイク」(19.7%)、5位「旅行」(17.1%)という順番となりました。
家電や日用品の買いだめの割合が高かったことについて、ニッセイ基礎研究所では「前回の消費税増税(2014年4月、5%から8%へ引き上げ)前に住宅などの購入を行ったことが理由でしょう。ただし、駆け込み需要は消費税率を引き上げる半年前くらいから発生するので、今年の年末に同様の調査を行えば、高額商品の回答が増えることが予想される」としています。
このほど、国税庁が国土交通省と話し合い、定期借地権を設定した際に預かった保証金から得られる経済的利益の課税に係る平成27年分の適正な利率を決定しました。
定期借地権の設定に伴って賃貸人が賃借人から預かった保証金は、賃借人から返還請求があるまでは、事業投資や金融投資の運用資金に充てることができることになっています。ただし、保証金を無利息で預かっている場合には、経済的利益を受けることになるため、この経済的利益に対して課税する必要性が生じます。
例えば、銀行口座に預金している場合や金銭信託などに運用している場合には、利息等から所得税が源泉徴収されるので経済的利益を気にする必要はありません。しかし、不動産所得や事業所得を生むための資金とした場合や自宅の改修など個人的な目的に使用した場合には、その経済的利益の額をどのように算定するかが問題となります。
そこで、政府は保証金に「適正な利率」を乗じた金額を経済的利益の額と定め、これに所得税を課税することにしています。この適正な利率は、10年長期国債の平均利率によることとなっており、平成27年度中の同利率が0.38%であることから、国税庁は、平成27年分の適正な利率を過去最低となる0.3%としました。
この結果、保証金が事業等の運転資金や事業用資産の取得資金として運用されている場合について、経済的利益の額の計算に用いられる適正な利率は、平均的な長期借入利率の他、0.3%としても差し支えがないことになります。なお、算出された経済的利益の額は、各年分の不動産所得の収入金額と必要経費に同額ずつ算入されることになるため、課税関係は発生しません。
また、上記の場合に該当せず、かつ、保証金が預貯金や公社債、貸付信託等の金融資産に運用されている場合以外のときについては、適正な利率を0.3%として求めた経済的利益の額を、各年分の不動産所得の収入金額に算入することになります。
今年1月1日から公社債を売却すると、譲渡所得税が新たに課税されます。これについて、このほど東京国税局が、昨年末に譲渡契約を結んで今年に入って引き渡したものについては、非課税として取り扱うとすることを明らかにしました。
金融所得課税の一体化により、平成28年1月1日以降、公社債や公募公社債投信などに対する税制上の取扱いが大きく改正されました。
これまでは、債券を満期償還前に売却した場合、いくら儲けても非課税でした。反面、売却益が非課税であることから、売却損を被ったとしても他の利益と損益通算をすることは認められていませんでした。これが、今年1月1日以降に非課税から課税扱いになり、売却損は損益通算可能となったわけです。
問題は、証券会社等を通じて公社債を譲渡すると、契約の効力発生の日から引渡しの日までに通常4営業日要するため、平成27年中に公社債の譲渡に関する契約をして、その引渡しが平成28年中となる場合があるということでした。
租税特別措置法通達37の10・37の11共−1(1)では、「契約の効力の発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認める」とされています。よって、質問者は、「公社債の譲渡による所得については、平成28年1月1日前は、一定の公社債を除き、所得税を課さないこととされているため、今回のケースでは、何らの申告をすることなく、その譲渡による所得の総収入金額の収入すべき時期を平成27年とすることが認められるものと解して良いのではないか」としていました。
この見解に対して、このほど東京国税局が「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答したわけです。
大阪府が、府内のホテルや旅館の宿泊客に課税する「宿泊税」の導入を決定しました。平成29年1月から施行するとしています。
大阪府では、近年外国人観光客が急増していて、東京オリンピック・パラリンピック等を控えていることから、増加する観光客の受入環境整備やより魅力あふれる観光資源づくりなど、新たな行政需要に対応するための安定的な財源確保が喫緊の課題でした。
そこで、大阪府は東京都の「宿泊税」を参考とし、法定外目的税として、府内の宿泊施設に?定以上の室料価格で宿泊する人に対し課税する制度の創設に踏み切ったわけです。
具体的には、府内のホテル又は旅館に宿泊したときに、1人1泊の素泊まり料金がそれぞれ1万円以上1万5千円未満の場合には100円、1万5千円以上2万円未満の場合には200円、さらに東京都(平成14年10月から施行)とは異なり、担税力の観点から2万円以上の場合には300円を徴収するとしています。税収規模は年間10億円を見込み、毎年度事業実績を公表、充当事業については「観光客が大阪での滞在を安全・快適かつ、楽しみ、満足いただくための観光振興の取組みに充当する」としています。
これを受け、1月15日に「宿泊税(仮称)の導入」を議題として、知事を本部長とする大阪府戦略本部会議を開催。会議では、前例である東京都では行っていない宿泊税の使途の公表について議論が集中しました。
新井副知事は「こういう受益がある、こういう目的に使っている、ということをきっちりおさえて説明できるようにしないと、おもてなししようとしているのに来訪者の理解も得られないし、特別徴収義務者の理解も得られない」と外部に対する説明責任を強調。一方で松井知事は「(使途を)あまり縛りすぎて、このお金の使い方はおかしい、効果が出ないということになると本末転倒なので気を付けてもらいたい」と述べています。
宿泊税の導入に向け、大阪府では2月の定例議会で条例案を提出し、総務大臣の承認や会計システムの準備等を経て、平成29年1月からの実施を目指しています。