経済産業省が消費税の転嫁状況に関する事業者への6月のモニタリング調査の結果を公表しました。それによると、事業者間取引で84.4%、消費者向け取引では70.5%の事業者が「全て転嫁できている」と回答したものの、前月比でそれぞれマイナス1.5ポイント、マイナス1.4 ポイントとなっています。
消費税の転嫁状況に関する事業者へのモニタリング調査は、平成26年4月から毎月実施しているものです。調査手法は書面郵送調査で、株式会社東京商工リサーチに登録されている事業者を対象に実施されています。今回は今年6月1日から15日にかけて実施され、9,822者から有効回答を得ています。
今回の調査結果の特徴は、消費税の転嫁状況について、事業者間取引で84.4%が、そして、消費者向け取引では70.5%の事業者が「全て転嫁できている」と回答したものの、前月比で見てみると、それぞれマイナス1.5ポイント、マイナス1.4ポイントと低下しました。
一方で、「全く転嫁できていない」と答えた事業者が、事業者間取引では3.8%、消費者向け取引では6.1%となり、前月比でそれぞれプラス0.2ポイント、プラス0.7ポイントと増加している点が気になります。
実際に転嫁拒否行為を受けたと回答した事業者は80社ありました。具体的な拒否行為について見てみると、80社のうち「減額」と回答した事業者が最も多く55.0%で、次に多かったのは「本体価格での交渉拒否」の36.3%でした。
資産家らが敬遠する「財産及び債務の明細書」(財産債務明細書)が、大幅に見直されたことを国税庁がPRしています。未提出者へのペナルティまで設けられているだけに、無視できない制度改正です。
財産債務明細書は、これまで年間所得金額が2千万円を超える人に対して、その年の12月31日時点で所有する土地などの財産と借入金などの債務を記載して翌年の3月15日までに税務署に提出しなければならないという資産家にとっては厄介な書類です。
同明細書が平成27 年度税制改正で、その名も「財産債務調書」と改められ、制度も大幅に見直されました。具体的には、提出対象について「所得税等の確定申告書を提出しなければならない方」で、「その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2 千万円を超える方」という点について変わりはありません。
変わったのは「その年の12 月31 日において、その価額の合計額が3億円以上の財産、または、その価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方」について「財産債務調書を提出しなければならない」とされた点です。「国外転出特例対象財産」とは、所得税法に規定されている有価証券や未決済信用取引、未決済デリバティブ取引に係る権利のことです。
また、財産債務明細書では、未提出や適当に記載する人が多かったことから「財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%軽減される」とされました。逆に、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合や提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合は「その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)が生じたときは、過少申告加算税等が5%加重される」というペナルティも設けられています。
生命保険協会(会長:筒井義信 日本生命保険社長)が、平成28年度税制改正に関する要望を取りまとめました。所得税の生命保険料控除の控除額引き上げを重点項目として要望しています。
来年の春の通常国会で審議される平成28年度税制改正関連法案の策定に向けて、生命保険協会がとりまとめた改正要望は、全部で6項目の税制について見直しや廃止を求めています。また、重点要望項目として、生命保険料控除制度について「所得税法上および地方税法上の生命・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を少なくとも5万円および3.5万円とすること、また、所得税法上の保険料控除の合計適用限度額を少なくとも15万円とすること」を要望しています。
生命保険料控除とは、納税者が民間の生命保険などに加入して、一定の生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合に、一定金額の所得控除を受けることができるというもので、現行制度では、平成24年1月1日以後に締結した保険契約で最高4万円まで所得控除が受けられる仕組みになっています。
同協会では「持続可能な社会保障制度の確立に資するために、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、社会保障制度の見直しに応じて現行制度を拡充すること」を求めています。
一般社団法人日本損害保険協会(鈴木久仁会長)が、7月16日に開催した理事会で、平成28年度の税制改正要望項目を取りまとめました。重点要望として異常危険準備金制度の充実を求めています。
同協会がまとめた来年度税制改正要望は、タックスヘイブン対策税制や損害保険に係る消費税制上の課題など全7項目について改善や廃止などを求めています。中でも、火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実を重点要望項目として掲げていて、「現行の積立率5%を維持すること」と「洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること」を求めています。
同準備金制度は、異常災害損失が生じた場合にはその損失の額、積立後10年を経過した場合にはその積立額と[(異常危険準備金の金額+当期の積立額)−当年度正味収入保険料等×洗替保証率]のいずれか少ない金額を取り崩して益金に算入するというものです。
改正理由として、同協会では「同準備金制度は損害保険会社が、発生の時期や規模の予測が困難な巨大自然災害に対して、確実に保険金を支払うという社会的使命を全うするための重要な制度。しかし、近年国内外において、地震・台風・洪水・雪災などの巨大自然災害が頻発していることで、異常危険準備金の大幅な取崩しを余儀なくされ、残高は低水準となっている。巨大自然災害に対する保険金支払に耐えうる十分な残高を確保・維持するため、大幅に減少した残高を早期に増加させることが必要不可欠であることから、現行の積立率5%を維持することなどを要望した」としています。
全国約2万社の建設企業が加盟している(一社)全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)がこのほど理事会を開き、2016年度税制改正要望の内容を決定しました。全建としては珍しく「雇用促進税制」の延長と見直しを要望しています。
全建では、これまでも毎年行われる政府の税制改正に対して、建設業の活性化と発展を目指して独自の税制改正要望を策定して、国土交通省や政府与党に提出してきました。昨年度は、中小企業の法人税実効税率の引き下げや、工事契約書に係る印紙税の廃止、貸倒引当金の繰り入れ限度額の引き上げなど8項目の見直しを要望しています。
このほど決定した2016年度の税制改正要望では、近年では珍しく「雇用促進税制」について適用要件の緩和を求めています。政府の建設投資への縮減が20年以上も続いており、建設企業の間では従業員を増やすことなど考えられない厳しい状況があったからです。
しかし、ここへきて建設需要の増加や将来の担い手確保対策のために、人員を増やそうという機運が高まりつつあることから、全建では新たに要望することにしたわけです。
雇用促進税制の概要は、事業主が単年度中に雇用者を増やした場合、法人税から純増人数1人当たり40万円の税額控除が受けられるというものです。適用にあたっては、純増人数が5人(中小企業は2人)以上で、全体の10%以上であること、該当する年度に事業主都合による離職者がいないこと、支払い給与額が前年度より一定割合以上増加することなどの要件を満たす必要があります。
適用期間は16年度末までで、全建は同制度の延長と、適用要件の緩和を求めていくことにしています。適用要件については、雇い入れる対象が雇用保険の一般被保険者でなければならず、建設業独特の日雇労働者や季節労働者の一部が対象外となっていること、また、少子高齢化で65歳以上の技能工などにも活躍を期待しているにもかかわらず、高年齢継続被保険者が対象外とされています。こうした不合理の見直しを求めていくと思われます。
一罰百戒を狙って裁判所の令状をもって強制調査を行う国税局査察部の調査事績、いわゆるマルサ白書の平成26年度版を国税庁が発表しました。東京、大坂、名古屋の三大都市圏の地価の上昇を受け、活況を呈している不動産業をマルサがマークしている状況が明らかになっています。
国税庁によると、平成26年度において査察に着手した件数は、194件(前年度185件)でした。そして、平成26年度以前に着手した査察事案について、平成26年度中に処理した件数は180件(同185件)で、そのうち検察庁に告発した件数は112件(同118件)、告発率は62.2%(同63.8%)となっています。
金額で見てみると、平成26年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で149億7,500万円(前年度144億5,800万円)で、そのうち告発分は123億4,600万円(同117億3,100万円)でした。告発した事案1件当たりの脱税額は1億1,000万円(同9,900万円)となっています。また、告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは6件(同4件)、うち5億円以上のものは1件(2件)でした。
マルサが検察庁に告発した業種を見てみると、一番多かったのは不動産業で16件でした。平成24年度では不動産業は4件で3番目に多かったのですが、平成25年度には7件で2番目と順位を上げ、とうとう今回1番となったわけです。大都市圏の地価の上昇に伴う、不動産業の活況に狙いを絞った調査をマルサが行なっていることが如実にうかがえるデータです。
ちなみに、国税庁では「脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多くみられたほか、平成23年度に創設された単純無申告ほ脱犯の事例もあった。そして、脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金、株式及び不動産として留保されていたほか、高級外車や腕時計の購入、競馬などの遊興費、特殊関係人に対する資金援助や老人ホームの入居権利金などに充てられていた事例も見受けられた。また、不正資金の一部が海外の預金で留保されていた事例や海外のカジノで費消されていた事例もあった」としています。
国税庁が募集していた「平成27年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見は、たったの1件しかったことがこのほど分かりました。
東日本大震災で福島の原子力発電所が爆発事故を起こし、平成27年1月1日時点でも帰還困難区域や居住制限区域、避難指示解除準備区域に指定されている土地が存在します。そういった避難指示区域内の土地は、売買実例などがないため具体的に把握することは非常に難しいものがあります。
しかし、避難指示区域内の土地といえども相続税の課税対象となっている以上、国税庁としては財産として適正に評価額が算定できるようその計算方法を示す必要がありました。そこで、国税庁は「平成27年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」と題して法令解釈通達(案)を取りまとめて、平成27年4月28日から平成27年5月27日までホームページ等を通じて意見を募集していました。
その募集の結果がこのほど発表されたわけですが、寄せられた意見はたったの1件だけでした。その意見の内容は、同法令解釈通達(案)で示されている「平成27年1月1日から平成27年12月31日までの間に相続、遺贈又は贈与により取得した避難指示区域内の土地等の価額については、その価額を『0』として差し支えない」という部分に対するもので、「評価額は『0』ではなく『マイナス』評価すべきではないか」としていました。
これに対して国税庁は「避難指示区域内の土地等については、使用収益制限などによって減価していると認められますが、その減価の程度を具体的に把握することは困難であることから、評価の安全性を十分に考慮し、その価額を『0』として差し支えないものとするものです」と回答し、公表した通達(案)の修正は行わないことにしています。
所得拡大促進税制の適用を検討している会社に対して、継続雇用者に対する給与等の支給額を計算するときに、親会社からの出向者に係る給与負担金を含めて計算しても良いとする見解をこのほど東京国税局が示しました。
今回、東京国税局に文書で問い合わせていた会社は、平成27年3月期の法人税の申告で、所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)の適用を検討していました。問題となったのは、従業員の中に親会社からの出向者が含まれていて、出向元の親会社に同社が毎月給与負担金を支払ったうえで、その出向者たちが親会社から給与をもらっていることでした。
所得拡大促進税制を適用する際に、その出向者たちに係る給与負担金の額を「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含めて計算を行い、「雇用者に対する給与等の支給額」にもそれを含めて計算しても良いのかどうかが分からなかったわけです。
所得拡大促進税制とは、平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して支給する給与について、雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額(雇用者給与等支給増加額)を計算する場合、その基準雇用者給与等支給額に対する割合が一定割合以上で、しかも、一定の要件を満たす場合にその会社の当該事業年度の所得に対する法人税の額から、雇用者給与等支給増加額の100分の10に相当する金額を控除するとされているものです。
同社は東京国税局に対して「税法上、出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出する場合において、当該出向先法人の賃金台帳に当該出向者を記載しているときは、当該給与負担金の額は『国内雇用者に対する給与等の支給額』に含めることとされていて、所得拡大促進税制においてそのように出向者に係る給与負担金を取り扱っていることから、『継続雇用者に対する給与等の支給額』についても、同様に取り扱うことが整合的であると考えられる。したがって、継続して当社に勤務する出向者について当社において賃金台帳に記載していることから、出向者に係る給与負担金の額を『継続雇用者に対する給与等の支給額』に含めることとなると考えられる」などと説明。そういった考え方を容認する形で、今回、東京国税局が回答を出しています。