担税力の観点から外形標準課税を中小企業に導入すべきでない―、このほど、日本税理士会連合会(日税連、池田隼啓会長)が税理士による税制改正要望「平成27年度・税制改正に関する建議書」を取りまとめました。
税制改正の建議は、税理士法の「税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、 又はその諮問に答申することができる」との規定に基づいて、日税連が毎年、財務省や国税庁、総務省、政府税制調査会等に行っているものです。今年もその建議書を取りまとめたわけですが、今回の建議書では、次の3点が強く打ち出されています。
ひとつ目が「消費税の単一税率を維持すること」です。平成26年度与党税制改正大綱で「消費税の軽減税率制度については、税率10%時に導入する」ことが決定されているわけですが、これに対して日税連では「軽減税率はその効果が高所得者により多く及ぶことや一定の税収確保のためには標準税率を引き上げるなどの措置を講ずる必要があり、きわめて効率の悪い制度である」として導入に反対しています。
二つ目は「外形標準課税は中小企業に導入しないこと」です。外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金、付加価値などの外観から判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税方式であることから赤字企業にも税負担が生じます。よって日税連では「中小企業は大企業と比較すると財務基盤も弱く欠損法人割合も高い。したがって、担税力の観点から外形標準課税を中小企業に導入すべきでない」としているわけです。
そして、三つ目に訴えているのが「欠損金の控除限度額を一律に縮減しないこと」です。現行の大企業及び中小企業の欠損金の控除限度額は、繰越控除前の所得金額のそれぞれ80%及び100%相当額とされているわけですが、この控除限度額が一律に50%に縮減される方向が示されていることから、日税連では「内部留保が相対的に乏しい中小企業については、現行の制度を維持すべきである」としています。
今年4月30日に東京電力株式会社が福島第一・第二原子力発電所の爆発事故の被害者に対して住居確保に係る費用を賠償することを発表しましたが、その賠償金に関する税務上の取扱いを国税庁が明らかにしました。
今回、東京電力が被害者に支給する賠償金については、基本的に所得税法にある「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金については非課税」とされている規定を準用することになっています。
そこで、支払われる賠償金は「持ち家に居住されていた方」へのものと、「借家に居住されていた方」に対するものに区別したうえで、まず、「持ち家に居住されていた方」については、「爆発事故に基因して住居を確保するために要する必要かつ合理的な範囲の費用について、その支出を行うことに対し支払らわれるものであり、不法行為その他突発的な事故により資産(財産)に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金に該当し、いずれも非課税」としています。この場合のポイントは「避難指示区域から移住した人について、住宅や宅地を新たに確保するために要した新築工事費用や家賃、宅地取得費用、借地権の設定費用等のうち、従前の住宅や宅地に係る賠償金額を超えて負担した費用」も損害賠償金としていることです。
次に、「借家に居住されていた方」についても「爆発事故に基因して住居を確保するために負担を余儀なくされた費用について支払われるものであり、同じく損害賠償金として非課税となる」としています。この場合の特別な取扱いは、支払われる賠償金が「新たに借家に入居するための礼金等の一時金相当額として、本件事故発生当時の世帯人数に応じて定額で賠償される」という点です。しかも、この賠償金については「新たな借家の家賃と本件事故発生時点の借家の家賃との差額に相当する額は含まれていないが、本件事故発生時点の借家の家賃が低廉であって、新たな借家の家賃との差額が発生する場合は、負担された家賃の差額を必要かつ合理的な範囲で賠償する」としていて、この点も含めて国税庁は非課税として取り扱うことにしています。
今年3月末まで(平成25年度)の1年間における異議申立ての件数が、過去10年間で最少だったことを国税庁が明らかにしました。消費税増税直前とあって、全国の税務署が強硬な課税を手控えたのではないかとの憶測が流れています。
異議申立ては、税務署による更正・決定や差押えなどの処分に不服がある場合に、その納税者が税務署に対して処分の取消しや変更を求める手続きのことです。
国税庁によると、平成25年度の異議申立ての処理件数は2,358件でした。この数字は、過去10年間で最低で、もっとも多かった平成20年度の5,359件の半分にも満たない数です。そして、25年度中に税務署が処理した異議申立ての件数は2,534件で、そのうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は253件(一部認容179件、全部認容74件)でした。納税者に軍配があがったその割合は10.0%(一部認容7.1%、全部認容2.9%)で、前年度よりも0.1ポイント増加しています。
ちなみに、この異議申立ての件数の減少は、国税不服審判所への審査請求件数にも影響が出ていて、平成25年度における審査請求の件数は、2,855件(前年度比79.3%)でした。全国の国税不服審判所が平成25年度中に処理した審査請求は3,073件で、そのうち、納税者の主張が容認されたのは7.7%(前年度より4.8ポイント減少)でした。
さらに、25年度中に提起された訴訟は290件で、前年度より14.7%減少。終結件数は328件で、このうち、国側が一部または全部敗訴したものは23件(一部敗訴9件、全部敗訴14件)。その割合は7.0%(一部敗訴2.7%、全部敗訴4.3%)となっています。
金融検査当局の取り締まり強化でインサイダー取引が減少したことから、このほど、国税庁が「公開途上にある株式」の相続税評価方法を改正しました。
これまで国税庁では「気配相場等のある株式」のうち、「公開途上にある株式」については、次のいずれかに該当する株式としていました。
@金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式(登録銘柄を除く)
A日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日から登録の日の前日までのその株式(店頭管理銘柄を除く)
また、公開途上にある株式の公開価格については、金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格としていました。
この取り扱いについて国税庁では、公開途上にある株式に該当する期間の始期について「金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日」から「金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日」に改正。そして、公開途上にある株式の公開価格については、現在、入札方式とブックビルディング方式(機関投資家の意見を基に仮条件を決定し、この仮条件を基に投資家が提示した価格、購入株式数により公開価格を決定する方式)の2つの方法により決定されていることから「金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われるブックビルディング方式又は競争入札方式のいずれかの方式により決定される公募等の価格」に改めています。
マイナンバー制度(納税者番号制度)は昨年5月に国会で成立していますが、このほど国税庁が法人向けの付番についてパブリックコメントの募集を開始しました。
マイナンバー制度とは、納税者の管理制度の一つで、納税する年齢に達した国民に番号を割当てて、所得や資産、納税の状況を国が一元的に把握できるシステムです。法人についても例外ではなく付番され、過去現在未来にわたり出納状況を国が保管して、脱税や社会保険料の未納について把握できるようになります。ただ、この番号制度は、個人情報保護法との関係で、過去の過ちが生涯つきまとうという人生のやり直しを妨げる可能性を秘めたものでもあります。
6月7日に国税庁が公表した「法人番号の指定等に関する省令(案)」は、「番号を国税庁が付番するが、それに対して、何か不満はないですか」と、問いかけたものです。具体的には「マイナンバー制度に基づいて、平成28年1月からの利用開始に先立ち、27年10月に個人番号と法人番号を、それぞれ個人、法人に通知するが、このうち、法人番号については、法人番号の所管となる国税庁が13桁の番号を指定し法人に通知するとともに、法人等の基本3情報であるその法人の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を広く一般に公開する」としています。
そして、法人番号については「法人への通知後、速やかに、インターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法により行われる(ただし、人格のない社団等の場合は、あらかじめ同意を得てからの公表となる)。公表後、その法人に、清算の結了その他の事由が生じたときは、その事由が生じた旨及びその年月日を公表する」とされています。
なお、その他の事由については「清算の結了の他、合併による解散、商業登記規則第81条第1項の規定により登記記録が閉鎖されたことその他これに準じる事由」としています。
この省令案に対する意見募集は7月6日まで受け付けています。
このほど日本税理士会連合会(日税連)の池田隼啓会長が、同会の税制審議会(会長=品川芳宣筑波大学名誉教授)に対して、現状の「給与所得と公的年金等所得に対する課税のあり方」で問題はないかを問う諮問を行いました。
税制審議会は、日税連の会則に基づいて設置されているもので、学識経験者によって構成されていて、日税連会長が単年度ごとに行う諮問に応じて税制や税務行政全般について調査・審議を行い、その結果を会長に答申しなければならないことになっています。そして、その答申は、日税連が、毎年、関係省庁に提出する税制改正建議書に反映されています。
今回は、給与所得と公的年金等所得に対する課税のあり方について諮問しています。これを諮問した背景については、「わが国の全就業者のおよそ9割は給与所得者であり、民間の事業所に勤務している者だけでも約5,400 万人にのぼっている。また、公的年金等の実受給者数は、およそ3,900 万人となっており、今後さらに増加することが予測されている。このような現状をみると、給与所得や公的年金等に係る所得に対し、どのような課税を行うかは、税制として重要であるばかりでなく、今後のわが国の財政にも大きな影響を及ぼす問題である」としています。
そして、「給与所得と公的年金等に係る所得について、両者に共通しているのは、概算控除制度として給与所得控除又は公的年金等控除が適用されていて、一定の収入金額以上の場合に源泉徴収制度が採用されている。ただし、概算控除の最低保障額は、給与所得の場合は65 万円であるのに対し、公的年金等については65 歳以上で120 万円、65 歳未満で70 万円とされるなど、両者の間には相当程度の差異が生じている。また、給与所得についてのみ年末調整が行われており、税額の確定方法にも相違がある」という問題意識を提示。
公平で適正な課税を看板に掲げている税の執行現場と比べてみると、「概算控除額が適切な水準といえるかどうか、近年の税制改正において給与所得控除額が徐々に引き下げられている中で、現役世代と年金受給世代との間の課税のバランスが維持されているかどうか、また、公的年金等所得を雑所得に区分していることが適当かどうか、といった疑問が生じる。さらに、公的年金等については、拠出・運用・給付を通じた課税のあり方も問題になる」としています。
6月5日、自民と公明の連立与党が、衆院第2議員会館で税制協議会を開き、消費税率10%への引き上げに伴い導入する生活必需品に対する軽減税率で論点を整理し、対象品目と経理手法の具体案を公表しました。
昨年末に与党がまとめた税制改正大綱で、消費税の軽減税率については「税率10%時に導入する」と明記されました。これを受け、与党両党はこれまで税制協議会で軽減税率の導入に向けて議論を重ねてきました。そして今回、その論点を取りまとめたわけです。
公表した具体案は、対象品目で8パターン、事業者の経理手法で4パターンです。まず、対象品目では、生活必需品に対する税負担を軽くし、痛税感を緩和する観点から飲食料品を想定し、対象品目の線引きや税収への影響を計算。例えば、全ての飲食料品を対象とした際の減収額は1%あたり6600億円となり、「酒、外食を除く飲食料品」の場合は4900億円。さらに「コメ、みそ、しょうゆの3品目」だけに絞ったときと、精米のみに限定した場合は200億円と試算しています。
一方、経理手法については、4パターンが示されましたが、公明党が提案した「請求書に税率ごとの合計額を記載する案」が、ほかの案に比べ事務負担が軽く、これに「売り手に請求書の発行・保存を義務付ける」ことにより不正のチェックをしやすくするというのが有力視されています。
今後、与党は今回の具体案を事業者団体などに示して意見を聞き、年末までに結論を出すことにしています。
パソコンでしか利用できなかった国税の電子申告システム(e-Tax )が6月16日から、スマートフォンでも使えるようになります。
最近のスマートフォン(SP)は、パソコン並みの容量と処理能力を持つものが出回っていて、納税者からもスマートフォンでe-Taxが使えるようになればうれしいとの声を多く聞くようになりました。そこで、その声に応えて国税庁は「スマートフォン等専用のe-Taxホームページ」を立ち上げ、「重要なお知らせ」などが6月16日から閲覧できるようにしました。
また、そのスマートフォン等専用のe-Taxホームページへアクセスし、「e-Taxソフト(SP版)」へログインすることで「e-Taxの利用者情報の登録・確認・変更」(法人利用者については、利用者情報の確認機能のみ利用可能)や「納税」 、「メッセージボックスの確認」、「還付金処理状況の確認」などが利用できます。
スマートフォンで利用可能なOS及びブラウザ等は、以下のとおりです。
端末はAndroid、iPhoneの2種類で、バージョンはAndroidがAndroid4以降、iPhoneはiOS6以降とされています。ブラウザはAndroidがAndroid Browserで、iPhoneはiOS Safariとされています。
なお、e-Taxソフト(SP版)の利用可能時間については、e-Taxの利用可能時間と同じです。
経済産業省が企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査の中間集計結果を公表しました。それによると、平成26年度は46.7%(平成25年度7.7%)の企業がベースアップを実施しています。
経済産業省では、安倍政権の「経済の好循環」実現に向けた施策の一環として、内閣府をはじめとする関係省庁と連携し、企業の賃上げ動向に関するフォローアップ調査を行っています。今年3 月に東証一部上場企業1,762社に調査票を送り、5月14日までに提出のあった927社の状況について、このほど中間集計結果をとりまとめました。
それによると、92.2%の企業が何らかの形で賃金を引き上げていて、そのうち46.7%の企業がベア(ベースアップ)を行ったと回答。平成25年度のベアが7.7%だったことから、平成26年度は大幅に増加しました。しかも、そのうちの約80%の企業がベア分の引き上げ額について「1,000円以上」と回答(平成25年度約47%)しています。さらに、賞与・一時金の引き上げ額が「10万円以上」と回答した企業は41%(平成25年度約33%)でした。
驚かされたのは、この平成26年度のベアについて、7割以上の企業が「6年以上ぶりに実施」と回答したことです。「14年以上ぶり」という企業は14%で、10社は「創業以来」と回答しています。
賃金の引き上げを後押した理由については、3割以上の企業が、「復興特別法人税の前倒し廃止や所得拡大促進税制の創設・拡充等といった税制措置を含む政策効果等により、企業収益が改善したことが賃金の引上げ」を大いに後押しした、又は、後押ししたと回答しています。
このほど国税庁が、平成25年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告状況をとりまとめました。それによると、66万1千人が株式の売買で儲けていることがわかります。
平成25年分所得税及び復興特別所得税の確定申告書を税務署に提出した人は2,143万4千人で、平成24年分よりも9万1千人減少し、5年連続の減少となりました。
確定申告書を提出した人のうち、申告納税額のある人(納税人員)は621万8千人で、こちらは前年分よりも13万人増加しています。所得金額で見てみると総額は38兆4,838億円で前年よりも3兆8,534億円増加。申告納税額は2兆7,093億円で3,074億円増加しました。
一方、確定申告書を提出した人のうち、還付申告をした人は1,240万3千人で、こちらも前年分よりも17万人も減少しています。
アベノミクス効果で注目されている株式の譲渡所得を見てみると、申告した人は109万8千人で、前年よりも11万4千人も増加。そのうち、所得のあった人(有所得人員)は66万1千人で、前年よりも43万2千人増加しました。総所得金額は4兆8,357億円で、前年分よりも3兆4,051億円も増加しています。