このほど、国税庁が平成24年度分の「会社標本調査」の結果を公表しました。それによると、またも全法人の7割が赤字で法人税を納めていないという実態が明らかになっています。
今回の調査で、平成24年度分の法人数は253万5,272社となり、前年度より43,321社(−1.7%)減少しています。この全体の法人数のうち、連結親法人は1,243社で前年度より157社(+14.5%)増加、連結子法人も9,288社で1,185社(+14.6%)増えました。
ただし、資本金階級別の構成比を見ると、資本金1,000万円以下の階級(85.5%)と資本金1,000万円超1億円以下の階級(13.5%)とで全体の99.0%を占めていることがわかります。
一方、政府が現在、法人税の税率引き下げを検討していますが、全法人から連結子法人を除いた252万5,984社のうち、利益計上法人は74万9,731社しかなく、残る177万6,253社が欠損法人いわゆる赤字企業で、その割合は前年度より2.0ポイント減少したものの70.3%もの会社が法人税を納めていませんでした。
業種別(連結法人を除く)の欠損法人の割合を見ると、料理飲食旅館業(81.3%)が最も高く、次いで、繊維工業(80.6%)、出版印刷業(79.3%)の順となっています。逆に、赤字会社が少ない順に見ると、1位が不動産業(66.1%)、2位サービス業(67.4%)、3位が金融保険業(67.6%)となっています。
なお、今回の調査は、活動中の内国普通法人(標本法人数は136万1,178社)について、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に終了した法人の各事業年度を対象として、平成25年7月31日現在で取りまとめられたものです。
日本税理士会連合会(日税連)の池田隼啓会長から受けた昨年10月の「贈与税の機能と資産課税における役割について」と題する諮問に対して、日税連の税制審議会(金子宏会長)が答申を提出しました。
来年から相続税の課税強化が始まることから、現在多くの資産家が資産課税の動向に強い関心を示しているだけに、今回の答申もクローズアップされることは間違いありません。
そこで、答申の内容を見てみると、まず、相続税と贈与税の持つ富の再配分機能については「贈与税は相続税の補完税として位置付けられてきた。近年の税制の動向をみると、相続税の課税強化を行う一方で、贈与税については軽減策を講じるという傾向が顕著であり、贈与税の補完機能が相対的に弱まっていることは明らかである」としています。
そこで、政策税制としての贈与税をいじる場合はどうすべきかについて、答申では「贈与税の実効性・有効性を検証できる仕組みを伴って措置されるべきであり、また、有効な施策であると判断される場合においても、資産格差の固定化を著しく助長させるような制度は適当とはいえない。資産の移転に対する税制の中立性を維持するためには、可能な限り、基礎控除額の引き上げや税率構造の見直しを行うなど、贈与税の仕組みの中で資産移転の円滑化を図ることが望ましい」と結んでいます。
さらに、贈与税の個別事項の問題点として取り上げたのが相続税の配偶者控除で、それについては「夫婦別産制を採用する民法の下で、配偶者の潜在的持分を考慮したものと解されている。このような民法及び相続税法の規定を踏まえれば、贈与税の配偶者控除額の上限を大幅に引き上げるとともに、その対象財産を居住用不動産に限定することなく贈与者の選択に委ねることが適当である」と拡充する方向を示しています。
3月20日、平成26年度の税制関連改正法案が参議院本会議で可決・成立し、国会を通過しました。これにより、4月からの消費税率8%へのアップに伴う景気の落ち込みにブレーキをかける仕組みが動き出すことになります。
消費税率アップに伴う景気の落ち込みを抑えるための税制として、まず注目されているのが、生産性向上設備投資促進税制です。これは、企業が最先端の機械など生産性の高い設備を導入した場合に、費用の一部を法人税額から差し引くか、または、費用を一括して損金として処理できる即時償却を可能にしたもので、企業の設備投資を後押しするために創設されました。また、資本金が1億円を超える企業を対象に、飲食のために支払う交際費の半分を経費として認める制度も消費の腰折れを防ぐ効果を狙って導入されました。
さらに、平成25年度税制改正で新設された所得拡大促進税制の拡充もサラリーマンの間で大きな期待が寄せられています。同促進税制とは、賃金を一定割合増やした企業に対し、法人税を軽減するというものです。
一方、政府には財政の健全化という課題もあるため、増税に踏み切った制度もいくつかあります。例えば、給与の年収の一定割合を課税対象から差し引く「給与所得控除」について、平成28年から年収1200万円を超える層を対象に、平成29年からは年収1000万円を超える層を対象に、それぞれ控除額が縮小されます。また、軽自動車税について、来年4月以降に購入する新車を対象に、現行年間7200円とされているものが1万800円に引き上げられます。ただし、自家用の普通車は消費税率引き上げによる販売の落ち込みを緩和するため、来月から自動車取得税の現行5%の税率が3%に、営業用の普通車と軽自動車も現行3%の自動車取得税の税率が2%に引き下げられます。
大阪府が公共事業の入札に参加する事業者に対して、府税の納税証明書の交付請求時に雇用している従業員たちの個人住民税の特別徴収実施状況書の提出を義務付けました。
個人住民税は、従業員自らが所得税の確定申告により、年4回に分けて納付する普通徴収と、勤務する会社が給料から天引きする特別徴収の2通りがあります。特別徴収の方が自治体としては徴収漏れが少ないため、すでに、鹿児島県や埼玉県などいくつかの自治体で、公共工事などの入札参加事業者に対して個人住民税の特別徴収実施状況書の提出を義務付けているところがあります。
それに見習って、このほど大阪府も建設工事や測量・建設コンサルタント業務、物品・委託役務関係業務の入札参加資格審査を申請する事業者に対して、申請時に必要な納税証明書の交付請求の際に「個人住民税の特別徴収実施状況書」の提出を義務付けました。
具体的には、平成26年4月1日以降、大阪府の入札参加資格審査の申請に必要な「府税(全税目)の納税証明書」の交付申請をする際に「納税証明書交付請求書」の添付書類として同状況書を提出しなければならないとしています。
大阪府では「この書類は、地方税法の規定により事業者の義務とされている個人住民税の特別徴収の実施状況の確認、特別徴収制度の周知、手続の案内などに使用する目的で設けたもの。この書類の内容は、入札参加資格の審査に影響するものではない」としています。
4月の消費税率引上げに際して消費税の転嫁を拒否する行為が横行するおそれがあることから、3月12日、公正取引委員会が消費税転嫁対策を強化しました。
公取では、今回の消費税転嫁対策について「転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組」、「転嫁拒否行為の未然防止のための取組」、「転嫁・表示カルテルの届出等に対する迅速かつ丁寧な対応」の3点を強化するとしています。
注目されている「転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組」では、現時点でも「様々な情報収集活動によって把握した情報を踏まえ、立入検査等の調査を積極的に実施しており、違反行為が認められた事業者に対しては転嫁拒否行為に係る不利益の回復などの必要な改善指導を迅速に行っている」としながらも、4月からは「中小企業庁と合同で、特に大規模小売事業者に重点を置いた特定事業者(買手側)への書面調査を実施し、転嫁拒否行為について報告させる」としています。
また、とくに今年2月にスタートさせている食品分野におけるプライベート・ブランド商品の取引に関する実態調査(調査対象は小売業者等500名及び製造業者又は卸売業者3,000名)では、「独占禁止法上の優越的地位の濫用行為や下請代金支払遅延等防止法に関する問題状況を把握するという観点だけでなく、併せて、転嫁拒否行為に関する情報収集も実施している。これにより転嫁拒否行為に関する情報が得られた場合には、速やかに調査を行い、違反行為に対して迅速かつ厳正に対処する」と強い決意をにじませています。
一方、消費税の転嫁拒否を受けている側からの情報収集の手立てとして、休日専用の相談ダイヤルを設けて毎週土曜日に電話相談を受け付けることにしています。
中小企業庁主催による「中小企業・小規模事業者経営力強化フォーラム」が盛況です。4月の消費税率引上げにともなう政府の施策紹介と、税理士による実務上の注意点の解説に多くの経営者が強い関心を示しています。
中小企業庁と(独)中小企業基盤整備機構が全国9カ所で開催している「中小企業・小規模事業者 経営力強化フォーラム〜会計・税制を活用した消費税率引上げ対策〜」(東京は2月に終了)は、消費税率の引上げに対する政府の施策や実務的なポイントを説明するとともに、消費税率引上げの影響を乗り越えて経営力強化に取り組もうとする中小企業の取組事例等を紹介しています。そのため、多くの中小企業経営者が参加しているわけですが、今後の同フォーラムの開催予定は次のようになっています。参加は無料です。
・3月18日(火)名古屋10:00〜TKP名古屋栄カンファレンスセンターホール7A 。
・3月18日(火)大阪15:30〜TKP大阪心斎橋カンファレンスセンターホール7A 7F
・3月24日(月)沖縄14:00〜沖縄県青年会館大ホール
・3月25日(火)福岡10:00〜TKPガーデンシティ博多、阿蘇
・4月8日(火)広島14:00〜ホテルグランビア広島4階悠久の間
・4月9日(水)高松10:00〜高松センタービル会議室大ホール
・4月15日(火)札幌14:00〜TKP札幌駅カンファレンスセンターカンファレンスルーム3B
・4月17日(木)仙台14:00〜TKPガーデンシティ仙台30階ホールD
社会保障と税の一体改革で誕生することになったマイナンバー制度の導入推進チーム「マイナンバー・税務執行ディスカッショングループ」の第3回会合で、銀行界から提出された資料が物議を醸しています。
マイナンバー制度は、事実上の納税者番号制度と呼ばれているもので、すでに法制化されていて、2016年には利用を開始する予定で策定作業が進められているものです。今回、その策定作業を進めている「マイナンバー・税務執行ディスカッショングループ」が第3回目の会合を開いたわけですが、そこに銀行界から提出された資料が物議を醸しています。マイナンバー制度導入による効果があらわれるまでに険しい道のりが待っていることを如実に表わしていたからです。
マイナンバー制度によって国民に番号を付与する目的は、一人一人の実際の所得を把握することにあります。そのためには、預貯金の口座をすべて把握して、常に入出金の状況を記録しておかなければ意味がありません。そこで、銀行界では国内銀行の個人口座の状況を調査しました。すると、個人預金口座は総数で7億8610万口座あり、そのうち普通預金口座は3億327万口座もありました。
問題なのは、日常的に使われている口座ではなく、長期間使われていない休眠口座の方です。動きのない口座にまでコストをかけて残高調査を行うとなると、銀行の負担は計り知れないものになるわけです。そういった、無駄をどうやって排除するのか、今回の会合で大きな難問が提起されたわけです。
4月の消費税率アップに伴い、モノの値段が引き上げられますが、このほど、国税庁も消費税の影響を受ける所得税の取り扱いを整備しました。
国税庁が整備したのは所得税法取扱基本通達36−22関連です。同通達は、民間企業などが創業記念に社員たちに配る記念品について、基本的に給与とみなすとともに、社会通念上、記念品としてふさわしいもので、かつ、1万円以下のものならば非課税とすると規定しています。
しかし、所得税法183条では、給与とみなすものを評価するときには、消費税を含んだ価格で評価すると規定されているため、創業記念品が1万円の場合、消費税を含んで評価すると非課税限度額をオーバーしてしまいます。
そこで、このほど国税庁は、記念品の非課税限度額の計算をする際には「消費税を含まない価格をその金額とする」と取り扱いを整備しました。これにより、名実ともに1万円相当の記念品を会社は従業員たちに与えることができるわけです。
4月の消費税増税まで残り1カ月を切り、住宅や電化製品などで「駆け込み需要」を当て込んだ商戦がヒートアップしていますが、なかでも、自動車の売れ行きはすさまじく、カーディーラーや自治体までもが税の取扱いに注意を呼びかけています。
自動車でも中古車市場の動きが活気を帯びているのは、消費税だけでなく、自動車重量税が今年4月から増税されるからです。自動車重量税とは、自動車の購入時や車検の時に重量に応じてかかる国税で、平成26年度税制改正関連法案に「平成26年4月1日以後に継続検査等を受ける自家用の検査自動車のうち、新車新規登録から13年を経過したものについて税率を見直す」とされているものです。例えば、乗用自動車については、現行0.5トンごとに1万円とされているものが、今年4月から0.5トンごとに1万800円になる予定です。
こうした増税を回避しようと、長年愛用してきた自動車を買い換える動きが盛んなわけですが、その買い換えるタイミングについて、あるカーディーラーでは「自動車の税率は契約日ではなく、原則として納車前の登録日で決まる。増税前の2〜3月は販売店が攻勢をかける決算シーズンとも重なるため、人気車種は3月末までの購入が間に合わなくなる可能性もある。納車までのスケジュールを販売店にしっかりと確認することが重要だ」と語ります。
また、大阪府では「自動車を譲渡したり、廃車した場合や転居等で住所を変更した際には、運輸支局において登録変更の手続きが必要。とくに、自動車税が4月1日現在の自動車の所有者に課税されることなどから、毎年、年度末にあたる3月は自動車の名義変更や廃車などの手続きが1年の中で最も集中する。3月の下旬は窓口が極端に混雑し手続きの完了までに時間がかかるような事態が予想されるので、登録手続きなどについては、お早めにお済ませください」と呼びかけています。
偽造防止のため、このほど国税庁が納税証明書の台紙のつくりを変更しました。新しい台紙には、視線を変えることで2つの画像が現れるマーク、マイクロ文字などがほどこされています。
建設業者などが公共工事の入札に参加するときに必要となる納税証明書の台紙について、このほど国税庁が様式を変更しました。偽造防止を目的として、国税庁では納税証明書の台紙のデザインなどを定期的に変更しているわけですが、今回は、安倍政権が進める国土強靭化にともなう公共工事の増発で納税証明書の需要が高まっているため、いつもより手の込んだ様式変更となっています。
具体的には、台紙の左上に視線を変えることにより2つの画像が現れるマークを配置しました。また、台紙の左下には、特殊なアルミ箔を施しているのですが、その箔にも2種類の模様を刻んで、視線を変えると変化するようになっています。
偽造防止策としてこれまで仕組まれていたコピー機などで複写した場合に台紙全体に「複写」の文字が浮き出る機能も充実し、「複写」の文字が浮き出たり「モアレ(干渉模様)」が発生するようになっています。
さらに、気をつけてほしい点として国税庁では「用紙番号(台紙右下に記載)と納税証明書の発行番号は異なるので、ご注意ください」としています。