今年も日本税理士会連合会(日税連、池田隼啓会長)が「平成26年度・税制改正に関する建議書」を取りまとめて、7月23日に財務省や国税庁、総務省、中小企業庁などに提出しました。
税の専門家集団が、このほどまとめた平成26年度・税制改正に関する建議書(税制改正要望書)は、全国15の税理士会と日税連が取り上げた改正要望582項目の意見を35項目に集約した「個別建議項目」と、特に早期実現・重要と考える12の「重点要望事項」から構成されています。
建議書では、税目別でも強く要望している項目を取り上げていて、まず所得税については、「財源調達機能を回復し、所得再分配機能を有効に機能させるため、既存の各種措置の見直し」をすることを求めています。続いて、法人税では「国内産業の活性化を図るため、税率の引下げ及び課税ベースの拡大を検討」することと「世代交代・第二創業等の中小企業支援措置を引き続き検討」することを要望。消費税については「単一税率の維持」と「逆進性対策は、社会保障と税一体改革の中で解決」することを求め、請求書等保存については「現行方式の維持」を主張しています。
相続税・贈与税については「延納・物納の申請要件の緩和又は簡素化」や「非上場株式の納税猶予制度のさらなる活用促進」を求め、通達で規定している「財産評価方法を法令等で明定」する必要性を訴えました。
重点要望事項として、所得税では「事業運営不振を補てんするための遊休不動産の売却による流動化が阻害さている」ことから「土地建物等の譲渡損益を他の所得と損益通算」できるようにすることなどを要望。法人税では「企業にとっては従業員に対する確定債務的な要素を有している」として「退職給付引当金・賞与引当金」の復活などを求めています。
7月25日、公正取引委員会が今年10月1日からスタートする「消費税転嫁対策特別措置法」の具体的な取り扱いについて事例などを用いて解説しているガイドラインを公表し、パブリックコメント(意見)の募集を始めました。
消費税転嫁対策特別措置法は、来年4月に消費税率が5%から8%に引上げられたときに、大手小売業者やゼネコンなどが卸業者や下請けに対して消費税率引上げ分の転嫁を拒否して、代金の支払いを行う行為などを禁止した法律です。同法が今年10月から施行されることから、このほど、公正取引委員会が同法の具体的な取り扱いについて事例などを用いて解説しているガイドラインを取りまとめました。
例えば、同ガイドラインには「消費税を含まない価格が100円の商品について、消費税率引上げ後の対価を108円として契約したにもかかわらず、支払段階で消費税率引上げ分の3円を減じ、105円しか支払わない場合」という前提で、次の2つのような合理的な理由があれば「消費税率引き上げ分の転嫁を拒否したことにはならない」と説明しています。
1つ目が「商品に瑕疵がある場合や納期に遅れた場合等、特定供給事業者の責めに帰すべき理由により、相当と認められる金額の範囲内で対価の額を減じる場合」。2つ目は「一定期間内に一定数量を超えた発注を達成した場合には、発注増加分によるコスト削減効果を反映したリベートを支払う旨の取り決めが従来から存在し、当該取り決めに基づいて取り決められた対価の額から事後的にリベート分の額を減じる場合」としています。
なお、公正取引委員会では、このガイドラインに対するパブリックコメントを8月23日まで募集。コメントは電子メールとFAX、郵送で受け付けていて、電話での意見や無記名、日本語以外の文章は受け付けていません。
帝国データバンクが、今年6月に行った「事業承継に関する企業の意識調査」の結果(有効回答数のうち代表権を持つ役職者4196社が対象)を発表しました。それによると、経営者の86.3%が事業承継を経営問題と捉えています。
まず、事業承継について「最優先の経営問題」と捉えている経営者は23.3%で、「経営問題の一つ」(63.0%)と合わせると企業の86.3%が事業承継を経営問題と捉えていました。しかも、「最優先の経営問題として認識」しているのは、「大企業」が26.9%で、「中小企業」は23.0%、「小規模企業」18.9%と規模の大きい企業ほど事業承継を経営問題として認識しています。
ところが、事業承継を進めるための計画があるかどうかを尋ねてみると「計画があり、進めている」のは27.6%で、4分の1しか事業承継の計画を進めていませんでした。その事業承継計画を遂行している企業を規模別に見てみると「計画があり、進めている」のは、「大企業」が35.4%で、「中小企業」は27.0%、「小規模企業」20.7%といった具合で大企業の間で事業承継計画が熱心に進められていました。
事業承継計画を遂行している企業(27.6%)、または、「すでに事業承継を終えている」と回答した企業(6.5%)に、事業承継を進めるうえで苦労した(している)ことを尋ねたところ、「後継者育成」が61.9%(複数回答、以下同じ)で6割超に達し、次いで、「従業員の理解」(33.3%)、「事業の将来性・魅力」(30.7%)、「自社株など個人資産の取扱い」(30.0%)が3割台でした。注目の「相続税・贈与税などの税金対策」は27.8%で、あまり悩みの種になっていないようです。これは相続税の課税強化が行われる27年以降になると、この意識は随分変わるに違いありません。
日本税理士会連合会(日税連、池田隼啓会長)が今年も「電子申告に関する要望事項」を取りまとめました。今回注目されているのは、今年3月で終了した所得税の電子申告控除に替わるインセンティブを提案している点です。
電子申告は自宅や会社にいながらにしてパソコンで国税や地方税の申告納税ができるというもので、国税については国税庁がe-Taxを、地方税については総務省がeLTAXというシステムをそれぞれ構築していて、インターネットを通じて申告納税ができるようにしています。
こうした電子申告システムについて日税連は、毎年、「電子申告に関する要望事項」を取りまとめ、国税庁や総務省などに提出しているわけですが、今回はe-Taxに対して15項目、eLTAXについては12項目の要望を掲げています。今回の要望で注目されているのは、平成24年度で終了した所得税の電子証明書等特別控除(電子申告控除)に替わる効果的なインセンティブを提案していることです。
これまでの電子申告控除は、電子申告システムを初めて使う人だけが1度だけ適用できる優遇税制でしたが、日税連では、「電子申告控除を全ての税目において税額控除(恒久的な税額控除)を実施するように」求めています。また、「電子申告を利用した場合の申告・納税期限の延長も効果的なインセンティブと考えられる」としていて、具体的には「例えば、①全ての税目において電子申告をした場合の申告期限は1ヶ月延長する、②ダイレクト納付を利用した場合の法定納付期限を振替納税と同程度の期限とすることなどが実施されると大きなインセンティブとなる」と説明しています。
国税不服審判所が7月10日付で審判官に民間人を13名(弁護士5名・税理士6名・公認会計士2名)採用しました。これで全国の国税不服審判所に民間人の審判官は総勢50名が配属されることになります。
国税不服審判所は、税務署が行った課税処分に対して不服がある人から提起された審査請求について裁決を行うという、納税者の正当な権利利益の救済を図る機関です。いまは、国税の賦課徴収を行う税務署や国税局などの執行機関から分離された別個の機関とされていますが、平成18年まではその裁決を行う審判官に国税局や税務署で働いている現役の税務職員が起用されていました。
すなわち、国税職員が行った課税処分について、国税職員自らが裁決を行うというお手盛りが可能な状態が続いていたわけです。また、税理士政治連盟の調査で、審判官を終えた後の職制について112名(異動なし11名を含む)を対象に調査したところ、税務署長になるケースが37名と圧倒的に多かったという報告があり「審判官は税務署長への登竜門となっている」との指摘もありました。
税理士会などからの批判を受け、国税庁では誤解を招きやすい状態を解消しようと平成19年から審判官に民間人の登用を開始。平成21年までは一桁の採用でしたが、翌年から二桁になり、今年は過去最高の17名(4月の4名採用分含む)となっています。これにより、民間専門家から登用した国税審判官の在籍者数(平成25年7月10日現在)は、50名となりました。
東京都が不燃化特区制度の活用を都民に呼びかけています。4年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下型地震に備え、火災に弱いとされる木造家屋が密集する下町の住民に自宅の建替えを要請しています。
不燃化特区制度とは、木造家屋が密集している(木密)地域の中でも特に改善を必要としている地区を不燃化推進特定整備地区(不燃化特区)に指定し、従来よりも踏み込んだ取組を行う区に対して、都が不燃化のための特別の支援を行うというものです。なかでも不燃化特区内に住宅を持っている人が、不燃化のためにその住宅を建替えた場合、建替え後5年間、固定資産税と都市計画税が全額免除されます。
問題は、この制度の適用要件。建替え前の家屋については「家屋の構造が木造または軽量鉄骨造であること」や「不燃化特区の指定を受けた後に住宅を新築して家屋を取り壊す場合は、住宅を新築した日から1年以内であること」などが要件とされています。また、新築する住宅に関する要件としては「耐火建築物または準耐火建築物であること」や「住宅の居住部分の割合が2分の1以上であること」などを満たさなければなりません。
もちろん、住宅の所有者については「新築された日の属する年の翌年の1月1日(1月1日新築の場合は同日)において、建替え前の家屋を取壊した日の属する年の1月1日における所有者と、同一の者」でなければなりません。
このほど国税庁が、国税の電子申告・納税システム(e-Tax)に関する24年度のアンケート調査の結果を公表しました。5年前に設けられた所得税の電子申告控除が、その役目を終えた年のアンケートには同控除制度の効果がクッキリと表れています。
今回のe-Taxに関するアンケート調査は、今年2月から5月にかけてe-Taxホームページと確定申告書等作成コーナーにおいて実施されたものです。5年前の平成19年度にいわゆる5,000円の電子申告控除が創設され、同制度(24年分の控除額は3,000円)が24年度をもって終了したわけですが、その導入効果が今回のアンケートにも表れています。
まず、アンケートに寄せられた回答件数ですが、平成19年度の調査では、10,837件だったものが今回は約5倍の56,321件でした。そして、e-Taxを利用した手続き(複数回答)を見てみると、所得税の申告は平成19年度では6,525件だったものが、平成24年度には54,454件と約8倍になっています。
一方、今回のアンケート調査の結果と5年前の調査結果を比較すると、e-Taxを利用している年齢層が高齢者層に広がっていることと、ホームページによるPR効果が依然としてハイレベルにあることがうかがえます。平成19年度では、60歳以上でe-Tax を利用している割合は33.4%でしたが、今回は46.6%を占めました。また、「e-Taxや確定申告書等作成コーナーをどのようにして知りましたか」(複数回答)との質問に、「テレビ・ラジオを通じて」と答えた人(15,262人)の約2倍の33,335人が「国税庁ホームページを通して知った」と答えていて、ホームページの持つPR力を再確認することができます。
日本で初めてコアラの展示を開始(昭和59年)したことで知られる愛知県名古屋市の東山動物園に対して、このほど名古屋国税局がサポーター事業に賛同して資金を提供する人への税の優遇措置の適用を認めました。
公益財団法人東山公園協会では、名古屋市東山総合公園内にある東山動物園で飼育する動物の環境の改善と、動物への理解を深めてもらうことを目的に、広く市民から資金提供を求める東山動物園サポーター事業を行っています。
これまでの動物園サポーター事業は、資金提供者(個人または法人)に対して動物園招待券の配付を始め各種の特典を付与していたので、サポーターが提供する資金は法人税法と所得税法に規定する特定公益増進法人に対する寄附金には該当しないものとして取り扱ってきました。しかし、同協会は今年4月に財団法人から公益財団法人に移行。教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人、いわゆる特定公益増進法人になりました。
そこで、同協会では、動物園サポーター事業の制度を明確化し、動物園への支援をより一層促進するため、これまで行ってきた動物園サポーター事業を見直して、今年9月から、これまで付与していた各種特典を廃止することにしたのです。これにより、同協会は動物園サポーター事業に賛同して資金を提供してくれる法人や個人について、税の優遇措置(法人の場合は寄付金の損金算入、個人は寄付金控除)が適用できるはずだと考え、名古屋国税局に照会していました。これに対して同国税局がこのほど「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答してきたわけです。
このほど国税庁が「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」について、国税の電子申告システム(e‐Tax)が対応できていないことをアナウンスし始めました。
前年に15万円以上の所得税(復興特別所得税含む)を納めた事業者が、翌年の7月と11月の2回に分けて税務署に納付しなければならない予定納税額について、このほど国税庁が「納付税額の減額申請」がe‐Taxを使って行えないことを明らかにしました。「ご不便をおかけしますが、書面での提出をお願いいたします」としています。
e‐Taxは、自宅や会社のパソコンを使ってインターネットを通じて国税の各種申告や届出、納付まで行える便利なもので、いまや所得税の申告だけでも911万人(平成24年分)が利用しています。そのため、所得税の予定納税額の減額申請もe‐Taxで行おうと思っている人は少なくないことが予測されます。
ちなみに、所得税の予定納税額の減額申請は、税務署から予定納税の通知を受けている人で、廃業や休業、または、業況不振などで今年の申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合に行う手続きで、7月15日までに税務署に申請しなければならないものです。
このほど大阪国税局が、今年12月から大阪市(橋下徹市長)が本格的にスタートさせる中学生の「塾代助成事業」で交付される利用券(バウチャー)に対して、所得税を課税しないという方針を示しました。
大阪市では、中学生の学習能力向上を目指して平成24年9月から西成区で試験的に実施してきた「大阪市塾代助成事業」を、今年12月から全市域において本格的にスタートさせることにしています。
塾代助成事業とは、大阪市の市立中学校などに通学している生徒の保護者で、大阪市児童生徒就学援助制度や生活保護法による教育扶助の認定を受けている人について、助成事業に登録している事業者が運営する学習塾や文化・スポーツ教室を利用する場合に、そのサービスの対価を補てんできる利用券(バウチャーと呼ぶ。1ヵ月当たり1万円)が市からもらえるというものです。
そのため、そのバウチャーは金券と同様の効果があることから、所得税が課税される可能性がありました。そこで、大阪市は大阪国税局に「バウチャーは、所得税法上、学資に充てるため給付される金品として非課税所得に該当するものとして取り扱ってもよいか」と問い合わせていたわけですが、このほど同国税局は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答。バウチャーは非課税所得という位置づけで交付されることになりました。