このほど、東京国税局が死亡した歯科医が加入していた小規模企業共済制度について、同共済から支払われる一時金を受け取る権利を相続人が相続した場合も500万円までの相続税の非課税規定が適用されるという見解を示しました。
死亡した歯科医(被相続人)が加入していた小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している共済制度で、個人事業主や企業の共同経営者などが自分の給与から掛金を毎月支払い、廃業や退職したときに共済金(一時金または解約手当金とも言う)が退職金として支払われるというものです。退職金なので、相続人が受け取った場合は、500万円までの相続税の非課税規定が適用されます。
しかし、今回東京国税局に相談を持ちかけていた納税者は、死亡した歯科医の事業を全部承継するとともに、被相続人が加入していた同共済制度(旧共済制度)については、一時金を受け取らずに新たに締結した共済契約に旧共済制度の掛金及びその掛金に係る納付月数を通算することを選択しました。
そのため、旧共済制度で支払われる一時金を受け取る権利が、退職金(みなし相続財産)に該当しなくなり、旧共済制度に関する契約を相続したこととみなされ、500万円までの相続税の非課税規定が適用されないのではないかという疑問が浮上したのです。ちなみに、一般的な生命保険の契約を相続する権利については、相続開始日における当該権利の解約返戻金相当額に対して相続税が課税されます。
今回、東京国税局は「被相続人が加入していた共済制度から支払われる一時金を受け取る権利は、相続税法施行令第1条の3に規定する一時金に関する権利に該当するため、その一時金を受け取らずに、旧共済制度の掛金及び納付月数を新共済契約に承継通算することを選択したとしても、相続税の課税対象となるのは、旧共済契約に関する権利ではなく、相続税法に規定する退職手当金等に含まれる給付に該当する一時金に関する権利となるはずである」という説明を容認し、相続人が受け取ったとみなされる旧共済制度で支払われる一時金についても、500万円までの相続税の非課税規定は適用されるという見解を示しました。
一般社団法人地方税電子化協議会が、今年2月25日にeLTAXのメッセージボックスに格納される各種通知データの保存期間を変更しました。
eLTAXとは、地方税ポータルシステムの呼称で、地方税における手続きを、インターネットを利用して電子的に行うシステムです。そして、メッセージボックスとは、地方税ポータルセンタが利用者ごとに用意しているもので、ポータルセンタや地方公共団体からのメッセージを格納するものです。
このほど、地方税電子化協議会では、地方税ポータルセンタのセキュリティの観点から、メッセージボックスに格納される各種通知データの保存期間について、120日や400日とされていたものを30日や90日に変更しました。具体的には、申告書不受理通知について400日だったものを30日に、また、申告書の訂正通知は400日でしたが90日に変更されています。
地方税電子化協議会では今回の保存期間の変更にあたり、留意点として「平成25年2月25日において、平成25年1月26日(土)以前(変更後の保存期間が30日の通知データ)と平成24年11月27日(火)以前(変更後の保存期間が90日の通知データ)に格納された通知データは削除されるので注意してください」としています。
平成24年分の所得税の確定申告がスタートしましたが、このほど、国税庁が2月23日に国税の電子申告システム(e-Tax)の一部が利用できなくなることを明らかにしました。
e-Taxは、わざわざ税務署に行かなくても、自宅や会社のパソコンからインターネットを通じて国税の申告や納付ができる便利なシステムです。国税庁もこのe-Taxの利用を積極的にアピールしているわけですが、所得税の確定申告の本番がスタートして間もない2月23日土曜日の午前7時30分から午後8時30分の間、一部システムが利用できなくなります。
国税庁によると「e-Taxと接続している外部システムのメンテナンスの影響で、『電子納税』及び『納税証明書の手数料納付』の一部について利用できなくなる」と説明しています。
その利用ができなくなる納付方法について国税庁は、「『納付区分番号通知確認』画面の『インターネットバンキング』ボタンによる電子納税で、2月23日の午前7時45分から午後8時30分までの間、利用できない」とし、また、「『納税証明書発行確認』画面の『インターネットバンキング』ボタンによる納税証明書の手数料納付で、同じく23日の午前7時30分から午後8時30分までの間、利用できない」としています。
したがって、ダイレクト納付、登録方式及び入力方式による電子納税については利用できるわけです。ただし、利用可能時間は、金融機関のオンラインサービス提供時間により異なるので、利用する金融機関のオンラインサービス提供時間を確認したうえで使うようにしたいものです。
不当解雇にあたるとして訴えてきた元役員に裁判に負けてしまい、支払わなければならなくなった損害賠償金について相談してきた会社に対し、このほど名古屋国税局が所得税の源泉徴収は行う必要はないという見解を示しました。
名古屋国税局に税務相談をしていた会社は、ある取締役をその任期の中途で解任したところ、その元役員から「正当な理由のない解任である」として会社法の規定に基づく損害賠償請求を受け、結果的に同社はその元役員との争いで敗訴してしまいました。
そこで、その損害賠償金について、同社は次のように考えました。
まず、一般的に従業員の不当解雇が取り消された場合、通常は、解雇時に遡ってその身分が回復し解雇時に遡及して給与が支払われることになるので、雇用者はその支払の際に所定の源泉徴収をする必要があります。
次に、株式会社の役員については、会社法上株主総会の決議によっていつでも解任することができるので、たとえその解任に正当な理由があると認められず会社が損害賠償金を支払うことになったとしても、その解任自体は有効に成立していることから、取締役としての身分が遡って回復することにはならないと考えました。
また、今回の損害賠償金については、解任された日の翌月から任期満了時までの役員報酬の額を基に算定されていますが、元役員は取締役を解任された後は取締役としての職務を行っていないことから、損害賠償金に役員としての役務提供の対価たる役員報酬の性質は認められず、会社法の規定に基づき解任によって生じた逸失利益の賠償にすぎないと考えました。
こうした理屈から同社は今回の損害賠償金について、給与所得ではなく対価性のない一時所得に該当すると考えられるので、会社はその支払の際に役員報酬(給与所得)として源泉徴収を行う必要はないのではないかと名古屋国税局に相談を持ちかけていたわけです。名古屋国税局は、それについて。「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答しています
定期借地権を設定したときに地主が賃借人から預かった保証金に対する経済的利益の課税について、このほど、国土交通省が平成24年分の適正な利率を公表しました。
定期借地権の設定に伴って地主が賃借人から預かる保証金は、返還請求があるまで必ずしも銀行口座に保管しておく必要はなく、金融商品で運用したり、事業用資産の購入にあてたりしても良いことになっています。
問題は無利息で預かっているため、運用利益に対して課税する必要があるということです。銀行口座に保管している場合や公社債などで運用している場合は、利子等に所得税が自動的に課税されるので問題はないのですが、事業所得や不動産所得を生むための資金として活用したり、自宅の改修など私的なことに使った場合は、その経済的利益に対する所得課税が困難です。
そこで、政府は保証金に適正な利率を乗じた金額を経済的利益の額と定めて、それに所得税を課税することにしたのです。適正な利率は、10年長期国債の平均利率を準用することになっているわけですが、国土交通省は国税庁などと協議し、平成24年分の適正な利率を次のように決めています。
①当該保証金が各種所得の基因となる業務に係る資金として運用されている場合又は当該業務の用に供する資産の取得資金に充てられている場合は「両建の経理の場合の適正な利率は、平均的な長期借入利率によるべきであるが、0.8%としても差し支えない」。
②の場合以外で、かつ、当該保証金が、預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託等の金融資産に運用されている場合以外のときは「利息に相当する金額を計算する場合の適正な利率は、各年中の10年長期国債の平均利率によることとしており、平成24年分については、0.8%となる」。
なお、平成24年中の10年長期国債の平均利率は、0.86%です。
中小企業向けの会計ルールとされている「中小会計要領」を採用している中小企業が融資を受けるときの信用保証料率を0.1%割り引く制度を、中小企業庁と全国の信用保証協会が今年4月から3年間実施することをPRしています。
「中小会計要領」とは、中小企業の実態に配慮して、多くの中小企業で利用可能な会計処理方法として、平成24年2月に中小企業の会計に関する検討会(事務局:中小企業庁、金融庁)によって策定された中小企業向けの会計ルールです。
現在、日本商工会議所や日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、全国銀行協会などが、この「中小会計要領」を普及するため、広報、研修、活用支援等を行っているところですが、その普及活動の一環として中小企業庁が、全国の信用保証協会52協会の協力を得て、今年4月から、「中小会計要領」を採用している中小企業に対して、信用保証料率を割り引く制度を開始すると発表しました。
具体的には、信用保証制度を利用する中小企業が、「中小会計要領」に従って計算書類を作成していることを税理士、公認会計士等による確認書類を信用保証協会に提出すると、保証料率が0.1%割り引かれるというものです。この信用保証料率の割引は、平成28年3月末までに申し込んだ分について適用されます。
なお、同割引制度の対象となる信用保証制度は、一般の保証などの責任共有制度対象で、料率弾力化された保証(特定社債保証、一括支払契約保証を除く)なので、セーフティネット保証などの特定の政策目的により設けられている保証制度は対象外となっています。
また、これまで実施していた「中小企業の会計に関する指針」採用企業に対する保証料率の割引は、今回の割引制度の開始に合わせて平成25年3月末の申し込みをもって終了します。
国税庁が「特定役員退職金を支給した人の退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」のひな型とその記載方法を公表しました。未払い金については、支払金額の欄に内書することなどが指示されています。
特定役員退職金とは、一つの会社で役員として勤務した期間が5年以下の人が、その会社から受け取った退職金のことです。この特定役員退職金については、通常支払われる退職金に設けられている2分の1の軽減課税が適用されないことになっています。この特定役員退職金課税が今年1月から始まったことを受け、このほど国税庁が同課税制度に関する退職所得の源泉徴収票・特別徴収票のひな型を作成、その記載方法と一緒に公表しました。
ひな型の記載例では、氏名欄にある役職名について「退職時の役職名を記入する」としたほか、区分欄が3段に分けられて適用法令の条項が列記されている部分について、その3段を上中下として1段ずつ説明、例えば上段については「受給者が提出した『退職所得の受給に関する申告書』に、平成25年中に受けた他の退職手当等がない旨の記載がある場合に使用する」と解説しています。
さらに、中小企業の間では、不景気で退職金の未払いが増えていることから、特定役員退職金についても未払いが発生する可能性がかねてより取り沙汰されていました。そこで、今回公表された源泉徴収票にも、未払い金については支払金額欄にその金額を内書することを指示しています。
このほど、関東信越国税局が、「埼玉県の県立病院に対する個人及び法人の寄附金は、国又は地方公共団体に寄付した場合と同じように寄付金課税を行わない」とする見解を示しました。
原則として、個人または法人が、国や地方公共団体に対して寄附をした場合、その寄付金の額については所得税では全額所得控除の対象とされ、法人税では全額損金算入するとされています。ただし、国税庁の通達で「その寄附金を国や地方公共団体が採納の手続をしたとしても、『特定の団体』に交付されるときには、最終的に国等に帰属しないことから、国等に対する寄附金には該当しない」という取り扱いが定められていることから、公益法人の多くが民間からの寄付を受け入れないようにしています。
埼玉県の県立病院を管理・運営している埼玉県病院局も同様で、これまで寄付の受け入れを行っていませんでした。しかし、同県の財政事情や患者・県民の厚意を無駄にできないことから、今後は寄付を受け入れて、県立病院の充実・強化を図ることにしました。そこで、一番の障壁となる寄付金課税について「同病院局に対して寄附者が支出する寄附金は、所得税法と法人税法に規定されている『国又は地方公共団体に対する寄附金』に該当するものとして取り扱ってよいか」と関東信越国税局に問い合わせたわけです。
その質問の中で、同病院局は「本病院局は、地方公営企業法第7条に基づく地方公営企業の業務執行を行う本病院事業管理者の権限に属する事務を処理させるため、『埼玉県病院事業の設置等に関する条例』に基づき設置された、埼玉県の行政組織である」ことなどを訴え、地方公共団体の一組織であるから「国又は地方公共団体に対する寄附金」に該当すると説明していました。
こうした照会について、関東信越国税局は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答しています。