役員退職金がこの1月より課税強化されたことを国税庁がアナウンスしています。企業が毎月納付している源泉所得税に大きく影響するものだからです。
一般の従業員だけでなく役員に対しても、原則として退職金を支払うときには、所得税を源泉徴収して翌月の10日までに税務署に納めなければならないことになっています。ただし、死亡退職により支払う退職金で相続税の課税対象となるものは、所得税の源泉徴収の対象となっていません。
退職金に対して源泉徴収を行う場合、退職する人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と受けていない場合とで計算方法が異なります。ただ、これは同申告書を提出すれば、退職金に対する税の優遇措置を加味した形で源泉徴収されるというもので、仮に同申告書が提出されていない場合は、後日、所得税の確定申告でその優遇措置を適用することになり、最終的には納める税金は同じ額になる仕組みになっています。
退職金から源泉徴収する所得税の計算方法は、同申告書を提出している場合を見てみると、退職金の支給額から退職所得控除額を差し引いた金額の2分の1が退職所得となり、その退職所得に所得税の税率を乗じて算出された金額が源泉徴収税額となります。この計算式の中で2分の1を退職所得とする部分が、いわゆる税の優遇措置と呼ばれているものです。
先の税制改正により、平成25年1月1日以降に支払われるもののうち、役員としての勤続年数が5年以下の人に支給する役員退職金については、税の優遇措置が適用されなくなりました。したがって、これからは一般社員として働いてきた期間の退職金と役員退職金を同時に支給する場合は、一般社員の勤務期間と役員退職金とを分けて所得税の源泉徴収税額を計算しなければならない場合があるわけです。
1月24日、自民党と公明党の連立与党が平成25年度税制改正大綱を決定しましたが、同日、日本税理士会連合会の池田隼啓会長が同大綱の中身についてコメントを発表しました。
日本税理士会連合会(日税連)では、昨年、国税庁と財務省主税局との間で14回にわたって勉強会を行うなどして、「税理士法に関する改正要望書」を取りまとめました。しかも、実現可能な項目として12項目を絞り込んで「平成25年度改正要望項目」として主要な政党や関係機関に要望書を提出しています。
その要望書については、現在、自動的に税理士資格が付与される弁護士と公認会計士に対して、一定の科目試験の合格を前提とする措置を講じる改正要望が盛り込まれていることから、税理士業界だけでなく他の士業からも強い関心が寄せられていました。しかし、今回の与党の税制改正大綱には、日税連が望む税理士法改正案が盛り込まれませんでした。
これに対して池田会長は「平成25年度税制改正大綱が決定され、その中の検討項目において、『税理士制度については、税理士の業務や資格取得のあり方などに関し、関係者等の意見も考慮しながら、税理士法の改正を視野に入れて、その見直しに向けて引き続き検討を進める』とされました。(中略)本会は一日も早い税理士法改正の実現を強く要望しており、政府における法案作成に向けて更なる検討と各党関係議員のより一層のご尽力をお願い申し上げます」とするコメントを発表、悔しさをにじませています。
東京都が今年4月以降も、固定資産税と都市計画税の軽減措置を継続することを決めました。地価高騰で同税の負担に戦々恐々としている23区内の納税者の多くが、ホッと胸をなでおろしています。
東京都では、23区内に土地を所有する都民を対象に「小規模住宅用地に対する都市計画税の軽減措置」と「小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免措置」、「商業地等に対する固定資産税・都市計画税の負担水準の上限引下げ措置」の3つの税負担軽減措置を講じています。ただ、3つとも適用期限付きの措置であることから、年度末が近付くたびに納税者は負担軽減措置の継続に神経を尖らせています。
3つの措置の内容は、まず「小規模住宅用地に対する都市計画税の軽減措置」は、都民の定住確保と地価高騰による負担緩和を目的として、昭和63年に導入されたもので、200u(約60坪)までの小規模住宅用地について都市計画税を半額にするというものです。次に、「小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免措置」も地価高騰による過重な負担緩和と中小企業支援を目的としていて、平成14年度に導入された措置です。面積400u以下の土地のうち200uまでの部分について固定資産税・都市計画税を2割カットされます。最後に、「商業地等に対する固定資産税・都市計画税の負担水準の上限引下げ措置」ですが、これも地価高騰による負担水準の不均衡を是正を目的として平成17年度に導入されたもので、負担水準が65%を超える商業地等を対象としていて、負担水準65%に相当する固定資産税・都市計画税が軽減されるというものです。
国税庁が昨年6月までの1年間に納税者から提出された法定調書の監査結果を公表しました。それによると、「不動産等の譲受けの対価の支払調書」について提出漏れなどのミスが68%もあったとしています。
国税当局にとって資料情報は、納税者を的確に把握し、税務調査や税務指導を行うかどうかを判断する材料として重要なものとなっています。とくに、法定調書については、商取引で発生した具体的な金額を税務署に知らせることを納税者に法律で義務付けていることから、税務署は納税者にその提出を毎回強く働きかけています。
そもそも法定調書は、所得税法で43種類、相続税法で4種類、租税特別措置法で6種類、国外送金等調書提出法で1種類の計54種類が定められています。これらについて国税庁の調べでは、昨年6月までの1年間(平成23事務年度)に合計30,664万枚(対前事務年度比93.4%)が全国の税務署に提出されたとしています。具体的には、所得税法関係が24,240万枚、相続税法関係143万枚、租税特別措置法関係5,765万枚、国外送金等調書提出法関係517万枚が提出されました。
全国の税務署では、法定調書について毎年厳しく法定監査を行っているわけですが、平成23事務年度で提出漏れなどのミスが一番多かったのが「不動産等の譲受けの対価の支払調書」(68.0%)でした。2番目が「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の43.2%で、3番目は「給与所得の源泉徴収票」の36.4%となっています。
介護福祉士による吸引装置を使った痰の吸引、排痰を行う診療補助行為(喀痰吸引等)について支払った費用も、平成23年度税制改正で所得税の医療費控除の対象とされましたが、このほど、国税庁がその喀痰吸引等の費用の目安を示しました。
今回の喀痰吸引等の費用の目安については、厚生労働省からの照会に国税庁が答える形で明らかにされたものです。
介護保険法では、介護福祉士や認定特定行為業務従事者についても認知症にかかっている人などの自宅や専門の介護施設に赴いて介護をすることを認めています。その訪問介護の業務は、介護福祉士らによる居宅サービス等と呼ばれているわけですが、介護福祉士らはその居宅サービスの中で喀痰吸引等を行います。
よって、介護福祉士らは訪問介護を依頼してきた人に業務代金を請求するとき、喀痰吸引等を含んだ形で居宅サービス等として代金を請求しているわけです。そのため、平成23年度税制改正で喀痰吸引等が医療費控除の対象となったのに、これまで、居宅サービスの料金のうち、喀痰吸引等の金額がいくらになるのかわかりませんでした。
そこで、厚生労働省は、「24時間訪問看護サービス提供の在り方に関する調査研究事業報告書(平成23年3月)」のデータを用いて試算したところ、訪問看護における医療処置等の所要時間のうち、喀痰吸引に係る平均的な所要時間は1件につき3.1分で、管を用いて胃に直接栄養を送る経管栄養に係る平均的な所要時間は1件につき3.7分でした。訪問看護1回当たりの平均所要時間は約57分であることから、(3.1+3.7)÷57=11.9%となり、訪問看護における喀痰吸引等の所要時間の割合は、約1割と推計できました。そこで、訪問看護においては喀痰吸引等に係る所要時間の割合は1割とし、居宅サービス等における喀痰吸引等に係る費用の割合もこの割合により算定するのが合理的であると国税庁に説明しました。
これを受け国税庁も「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」としたわけです。なお、居宅サービスには「指定居宅サービス」や「指定介護予防サービス」といった5つの異なるサービスがあるわけですが、例えば「指定居宅サービス」については、「居宅介護サービス費用基準額から居宅介護サービス費の額を控除した金額」の10分の1といった形で医療費控除の金額が算出されるようになっています。
一筆の土地の共有持分を別個の時期に相続と売買により取得した人が、その土地を譲渡する際にアレンジした譲渡所得の計算方法に対して名古屋国税局が問題ナシと判断しました。土地の取得費について、相続で取得した部分と売買で取得した部分とを別々に算出しています。
今回、一筆の土地の譲渡にあたり、独自の所得税の計算方法を用いた納税者S氏は、その売却した土地について、相続で取得した部分と売買で取得した部分とを別けて取得費を算出しています。
S氏が売却した一筆の土地の譲渡価格は6,000万円でした。譲渡所得を出すためには、この譲渡価格から土地の取得費を差し引かなければなりません。そもそも、この一筆の土地は、平成13年4月にS氏の父親から相続した部分(3分の1)と、平成18年3月にS氏の兄から2,500万円で購入した部分(3分の2)との共有という形になっていました。兄から購入した部分については、取得費を2,500万円として計上すればよいのですが、問題は、父親から相続した部分の持ち分の取得費でした。わかっていたのは、父親はその土地を昭和30年代に購入したということだけで、いくらで購入したのかは明らかではありませんでした。
そこで、S氏は税法上の長期譲渡所得の概算取得費控除を活用。6,000万円(土地譲渡価額)×3分の1×5%で算出した100万円を相続した部分の取得費とし、兄から購入した部分と合わせて2,600万円を売却した土地の取得費として譲渡所得を計算しました。こうした計算方法で良いかどうかをS氏は名古屋国税局に尋ねたわけですが、同国税局は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答しています。
自民党税制調査会の復権が取り沙汰されています。2000年前後の頃のように、インナーと呼ばれる税制に精通した長老議員たちが実験を握り、総裁や党三役らですら手出しできないようになるのではないかと財務省などが危惧しています。
昨年12月16日の衆議院総選挙で自民党が大勝し、喜びの余韻に浸る間もなく12月21日に自民党税制調査会(自民税調、野田毅会長)が2013年度の税制改正に向けた本格的な議論を開始しました。自民党が政権を取り戻したわけですから、税制改正案の策定作業を行うのはあたり前の話ですが、税制改正大綱を内閣府や財務省の幹部(閣僚等)が取りまとめるのではなく、自民税調が素案を作り、公明党と協議して取りまとめた大綱をそのまま政府の税制改正大綱として閣議決定することにしているのです。
民主党が政権を握っていたときは「政府主導の税制改正」にこだわり、党税調は形式的に党内の議論を集約した重点要望を政府税制調査会に提出する役割にとどまっていました。そして、党税調の要望も業界団体からの要望などと同じレベルで扱い政府税調が大綱案を作っていました。
じつは、自民党には他にも多くの調査会があるわけですが、古くから党内には「税は政治の最重要政策」という考えがあって、2003年に小泉内閣が誕生する直前までインナーと呼ばれる少数の税制に詳しい有力議員らが、党税調で実質的に税制改正を決めてきた経緯があります。その権限は自民党の総裁をも侵すことのできない強いものでした。
ただ、過去の自民党政権下では、税に精通した大学教授などで組織する政府税制調査会が中長期的な税制改正の方向性を首相に答申する役割を担っていたため、財務省などはその政府税調を通して自分たちが目指す税制改正を主張していました。ところが、このほど誕生した安倍内閣には、政府税調がいまのところ存在しません。民主党が政権をとったときに大学教授らでつくる政府税調を廃止してしまったからです。
まさに現状の自民税調は、インナーが権力を握っていた時代にいつでも戻れる状態にあるわけです。そのため、税制の立案をつかさどっている財務省主税局は、特定の業種や団体に偏った税の優遇が行われないよう現在自民党本部に日参しているといわれています。
国税庁が昨年と同様、平成24年分確定申告期間中(平成25年2月18日〜同年3月15日)の2月24日と3月3日の日曜日に一部の税務署で確定申告の相談及び申告書の受付を行うと発表しました。
通常、税務署が業務を行っているのは、土、日、祝日を除く平日(月曜日から金曜日)午前8時30分から午後5時までです。しかし、仕事で日曜日しか動きが取れない人も少なくないことから、国税庁では平成16年から所得税の確定申告期間中の日曜日に税務署を開けて申告相談や申告書の受付を行う、いわゆる閉庁日対応を始めました。今年の確定申告期間中の閉庁日対応は2月24日と3月3日の日曜日です。
ただし、この閉庁日対応を行うのは一部の税務署なので、国税庁のホームページなどで閉庁日対応を行っている税務署を確認したうえで出向きたいものです。また、複数の税務署が一緒になって業務を行う合同会場と広域センターというものがあるので注意が必要です。合同会場では、参加している税務署管内の納税者だけの申告書の収受等を行います。一方の広域センターでは、税務署管内以外の納税者の申告書も仮収受等を行います。
さらに、道府県内の一部の税務署で閉庁日対応を行う場合、確定申告電話相談センターなどで、広く道府県内の納税者からの電話相談に答える予定です。
国税庁では、「パソコンのインターネットで接続できるe-Tax(電子申告)を利用すると、申告データも自分で作成することができ、作成したデータを直接、自宅や会社のパソコンから電子申告することができる。しかも、平成25年1月15日(火)から同年3月15日(金)までは、メンテナンス時間を除き24時間インターネットで受付を行っている」としています。
申告書に記載されている内容が、事実に基づくものであることを税理士が確認した書面を添付する書面添付制度の事務運営指針を国税庁が改正しました。これまで、不透明だった加算税の取り扱いが明確にされています。
書面添付制度は、納税者に対して税務署が実地調査を実施する前段階で必ず顧問税理士の意見を聞かなければならないため、納税者にとっては税務署と直接やり取りする機会が大幅に減少することから、多くの税理士が推奨しているものです。
しかし一方で、国税通則法に「税務調査を予知して修正申告書を税務署に提出した場合は、過少申告加算税を課す」とされているため、いくら書面添付制度を利用しても、税理士に意見聴取が行われた段階で「税務調査を予知した」と税務署から判断されると修正申告に対する過少申告加算税という罰則からは逃れられないのではないかという懸念が持たれていました。
事実、これまで同制度の事務運営指針にも「意見聴取を行った後に修正申告書が提出された場合の加算税の適用に当たっては、(途中省略)意見聴取の際の個別・具体的な非違事項の指摘に基づくものであり、『更正の予知』があったと認められる場合には、加算税を賦課することに留意する」とされていて、これが同制度のメリットを半減させていました。
ところが、今回の事務運営指針の改正で「意見聴取における質疑等は、調査を行うかどうかを判断する前に行うものであり、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものであることから、意見聴取における質疑等のみに基因して修正申告書が提出されたとしても、当該修正申告書の提出は更正があるべきことを予知してされたものには当たらない」と明記されたことから、書面添付制度は納税者だけでなく税理士にとってもうれしい制度となりました。
平成24年12月4日の「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」が施行されたことから、このほど、国税庁が「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」及び「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(再び居住の用に供した方用)」の記載要領を取りまとめました。
昨年から太陽光発電パネルや高効率給湯器などの販売が盛んに行われ始めました。これは、エコまち法案が国会に提出され、低炭素建築物を購入した場合に税の優遇制度が適用されることになったからです。低炭素建築物とは、二酸化炭素の排出の抑制に資する建築物のことで、住宅については、省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量がマイナス10%以上となり、しかも、断熱性を高め、太陽光発電パネルや高効率給湯器を設置して低炭素化に資する措置が講じられているものが低炭素住宅として認定されることになっています。
エコまち法の成立に伴い税制改正も行われたわけですが、具体的には、平成24年1月1日から平成25年12月31日までの間に低炭素住宅を銀行ローンで購入した場合、平成24年取得分については、年末ローン残高(限度額4,000万円以下)の1%を所得税額から控除でき、また、平成25年取得分については、年末ローン残高(限度額3,000万円以下)の1%を所得税額から控除できるというものです。しかも、控除額が所得税額を上回る場合は翌年度の個人住民税額から最高9万7,500円を控除できることになっています。
このエコまち法に伴うローン控除(住宅借入金等特別控除)の改正にともない、国税庁は計算明細書を改訂したわけですが、このほどその明細書の記載要領を取りまとめました。購入した住宅の床面積や敷地面積、購入価格などについて事例を示して明細書の記載方法を解説。素人でも作成できるようわかりやすく説明しています。