サラリーマンにも一定の必要経費を認める特定支出控除制度が今年度税制改正で拡充され、来年から利用できることから、国税庁がQ&A集を作り、適用ミスがないよう呼びかけています。
特定支出控除制度とは、サラリーマンが自腹を切った通勤費や転勤のための引っ越し費用などについて、その合計額が給与所得控除額を超える場合に、確定申告により、その超える部分の金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができるという制度です。
同制度が、平成24年度税制改正により、次のように拡充されました。
まず、特定支出として「職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費」や、「職務に関連すると認められる書籍、定期刊行物、不特定多数の人に販売している図書の購入費」、「制服、事務服、作業服などの購入費」、「交際費、接待費などで、給与の支払者の得意先、仕入先その他の職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出」などが新たに追加されました。
次に、適用判定の基準も変わりました。具体的には、その年の特定支出の合計額が、次の区分に応じて、それぞれに定める金額を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算して給与等の収入金額から控除することができることになりました。
(1)その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下である場合、その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額
(2)その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合は125万円
なお、国税庁が作成したQ&A集は、「法科大学院に係る支出は、特定支出となりますか」や「金融新聞の電子版を定期購読するための支出は、特定支出となりますか」などといった16個の質問にわかりやすく回答しています。
一定の燃費基準を満たす新車の購入者に補助金を交付する「エコカー補助金」制度が、9月21日の申請受理分をもって終了しましたが、このほど、自工会会長が記者会見で自動車にかかる税金の軽減が必要であることを強く訴えました。
自工会(一般社団法人日本自動車工業会)の豊田暁生会長(トヨタ自動車(株)社長)は、9月20日の記者会見で、開口一番「自動車取得税や自動車重量税は道路特定財源でなくなっており、課税根拠を失っているだけでなく、二重課税でもあることから、引き続き両税の廃止をお願いしていく」と切り出しました。
そもそも、日本の自動車産業は、「モデルチェンジ〜買替え」というサイクルの中で、時代にあった技術革新を追及し、それが裾野の広い産業構造の中で波及していく過程を経て国際的な競争に臨んでいます。しかし、豊田会長は「自動車ユーザーには、9種類8兆円もの税金が課せられており、これが米国の50倍になっていること自体が、そうしたサイクルが回っていない最大の原因だと思っている」と税金が業界発展の足かせとなっていることを説明しました。
自動車は富裕層だけが購入するものではなく、運転免許を持っている老若男女誰もが持ちたいと思っているものです。しかも、公共交通機関の整備されていない地方では、自動車は生活の足となっています。そういったニーズを大切にするため豊田会長は「クルマを持ちたいという方に対しては保有コストを下げる必要があると認識しており、両税の廃止が実現するまで言い続けようと思っている。とくに、民自公の3党合意においても、両税は抜本的見直しを行い、消費税率8%への引上げ時までに結論を得るとしており、消費税引上げまでに両税は確実に廃止すべきである」と強い口調で語りました。
そして、「本件は本年末がヤマ場になると思っている。自動車税制改革フォーラム、および、自動車総連が、労使一体となり、総力をあげて要望実現に向けて取り組む」と意気込みを見せました。
税務署が税務調査を実施するときに行使する質問検査権の範囲などが法定化されたことに伴い、国税庁が募集していた同規定の解釈通達案に関する意見がまとまりました。全部で142通の意見が寄せられています。
国税庁が内部職員に対して税法を運用する上で定めている解釈通達で示されていた国税の税務調査に関する各種手続きなどが、昨年11月の税制改正で国税通則法(第7章の2)に「国税の調査」として法定化されました。
これを受け国税庁が同規定の解釈通達案を作成し、平成24年7月2日から平成24年7月31日まで意見を募集していました。その結果がこのほどまとまったわけですが、国税庁によると「郵便等によるもの」は11通、「FAXによるもの」57通、「インターネットによるもの」74通、計142通が寄せられたとしています。
そして、それらの意見に対して国税庁が通達案を修正するかどうかを回答したわけですが、多くの人が注目していた医師や歯科医師などが求めていた「患者のカルテは質問検査権の対象となる物件にはあたらないということを明確にするように」とする意見について、国税庁は「御意見のような事項を明記することは適当ではないと考えております」と回答しています。
一般社団法人の静岡県社会福祉士会(三田忠男会長)が問い合わせていた「成年被後見人の特別障害者控除」の適用に関する質問に、このほど国税庁が回答しました。
同社会福祉士会は、成年後見制度に従って、後見開始の審判の申立てがあった者について家庭裁判所から成年後見人の候補者の推薦依頼を受け、専門職成年後見人として社会福祉士を推薦している団体です。
成年被後見人については、家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者のことです。そこで、同社会福祉士会は、成年被後見人が家庭裁判所から後見開始の審判を受けているわけだから「社会福祉士が成年後見人としてその事務を行うに当たり、成年被後見人は、所得税法上、特別障害者として障害者控除の適用があるのではないか」とする質問を国税庁に行っていました。
成年後見制度とは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない者について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人を法律的に支援する制度であることや、所得税法上、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は特別障害者とされ、居住者または控除対象配偶者もしくは扶養親族が特別障害者である場合には、40万円の障害者控除が認められていることなどを取り上げ、特別障害者として障害者控除の適用を国税庁に求めていました。この質問に対して、このほど国税庁は「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。
国税庁が国税の電子申告・納税システム(e-Tax)に搭載していた528の手続きに関する申告書や申請書について、平成24年9月14日午後9時をもって停止します。
政府では、税金の無駄遣いを減らすのため、国の行政手続のオンライン化に関する「新たなオンライン利用に関する計画」(平成23年8月IT戦略本部決定)において、費用対効果等の観点からオンライン利用の範囲について見直すことを決定しました。
これを受け、国税庁では「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」でオンライン利用が非常に少ない888の手続きをピックアップ。2011年12月に意見公募(パブリックコメント)を行い、その意見募集の結果を2012年02月21日に公表しました。
そして、財務省がその888の手続きに関する費用対効果を検討し、528の手続きを利用停止にすることを決定しています。この528の手続きについて、このほど国税庁が9月14日午後9時に利用を停止する措置を講じるわけですが、使えなくなる手続きの中には、「所得税の減価償却資産の耐用年数短縮の承認申請」や「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請」、「相続税や贈与税の延納申請」、「相続税の物納申請」といった、今後の税制改正の動向次第では、再び必要となると思われるものまで含まれています。なお、今回のオンライン利用停止対象手続については、停止後は書面により提出することになっています。
東京都などが、地方税の電子申告・納税システムのeLTAXについて、平成24年9月3日以降に利用する人たちに「今まで使ってきたJavaについて、実行環境のバージョンアップが必要だ」と呼びかけています。
eLTAXとは、自宅や会社にあるパソコンからインターネットを通じて、地方税の各種申請手続きや納税ができるシステムのことです。特に今回は、eLTAXを動作させる際の基本的な環境であるJavaのバージョンアップに関することなので、利用者は注意が必要です。
Java実行環境のバージョンアップが必要になるのは、「利用届出(新規)(廃止)、電子申請・届出を利用する人」です。
利用届出(新規)(廃止)、電子申請・届出を利用する人については、Java Runtime Environment(JRE)7 Update4(バージョン情報が1.7xxと表記される場合もある)に更新する必要があります。
ただし、「PCdeskで利用届出(変更)、電子申告、電子納税等を利用する人」は、PCdeskの再インストールが必要ですが、あらかじめJava実行環境のバージョンアップを行う必要はありません。再インストールは、新PCdeskのバージョンアップ手順(http://www.eltax.jp/download/downloadfile20120827000111.html/)に詳細が載っています。
一方、eLTAX対応税務・会計ソフトウェアを利用している人で、Internet Explorer 7/8/9 のいずれかを使っている場合でも、対応するJavaに変更(インストール)しなければならない場合があります。詳細については、eLTAX対応税務・会計ソフトウェアの案内で解決することができます。
8月30日、野田佳彦首相に対する問責決議が参議院で可決し、国会は事実上閉幕しました。それにより財務省が困惑しているのが、まもなく国にお金がなくなってしまうことと、マイナンバー制度の導入準備ができなくなったことです。
今年度の国家予算の4割を占める38兆円の赤字国債(特例国債)を発行するための法案が今国会で成立しませんでした。財務省によると「赤字国債を発行しないで調達できる予算額は46兆1千億円で、現在のまま予算の執行を続けていくと10月にも歳出が上回り、事実上財源が枯渇することになる」としています。
一方、政府・民主党が国会に提出しているマイナンバー法案(国民総背番号制度とも呼ぶ)も、早期に成立しないと消費税が10%に引き上げられる2015年10月の時点から低所得者対策として導入を予定している給付付き税額控除がスタートできないと予測されています。マイナンバー法により全納税者に番号が付けられてはじめて低所得者が把握できるようになるわけですが、マイナンバーの制度設計や試験的な運用も必要で、それらをクリアーするには現時点でも日程的にかなり難しいものがあるわけです。
野田政権がぐらつき始めたことから、2015年10月からの給付付き税額控除のスタートを疑問視する声があることに対して、財務省の五十嵐文彦副大臣は定例記者会見の席上、「とにかくまずマイナンバー法案について、最終リミットがあって、(制度設計などの下準備を)いつまでにやれば間に合うのかというところを詰めていかなければいけないと思っている。国会においては、民主、自民、公明の3党ともにそんなに大きな差異があるとは思えないので、時期が来ればさっと上がるべき分野の法律だ。準備期間を考えると早期に成立させる必要がある」として明言を避けました。
今年3月30日に国会で成立した平成24年度税制改正関連法に盛り込まれていた特定役員の退職金に対する所得税の計算方法の改正について、このほど国税庁がQ&A集を作成しました。
特定役員の退職金に対する所得税の計算方法の改正とは、公務員の天下りを規制する目的で導入されたものです。2、3年しか勤めないで高額な退職金をもらいながら天下り先を渡り歩く公務員について、政府は退職金に関する税の優遇措置は必要ないとして、役員としての勤続年数が5年以下の人については、退職金への所得税の2分の1課税を適用しないことにしました。
この改正された計算方法は、来年1月1日から適用することになっていることから、このほど、国税庁が民間企業に事前にアナウンスする目的も兼ねて改正内容をわかりやすく説明したQ&A集を作成しました。同Q&A集は、「役員等に支払う退職手当等について、どのような改正が行われたのですか」という基本的なことから「一時勤務しなかった期間がある場合の勤続期間の計算方法について教えてください」といったイレギュラーなものまで、全部で11問の質問に国税庁が答えています。
ただ、今回の退職金に対する所得税の計算方法の改正は、必ずしも公務員だけに限られているわけではありません。一般企業の役員でも、勤続年数が5年以下で退職した場合は、2分の1課税は適用されません。したがって、公務員の天下りを受け入れていない会社も今回のQ&A集は無視できないものであると言えます。