今年6月の東京高等裁判所の判決を受け、このほど国税庁がゴルフ会員権の譲渡所得の計算方法を変更しました。これにより、過去に破たんしたゴルフ場の会員権を売却した人たちによる所得税の還付申告が相次ぐ可能性があります。
所得税法上、ゴルフ会員権は「生活に通常必要でない資産」とされていないため、ゴルフ会員権の譲渡損失は他の所得との損益通算が認められ、譲渡収入から取得価額を減算した譲渡所得の金額が赤字ならば、過去に納めた所得税と住民税の一部が還付されることになっています。
ところが、これまでのゴルフ会員権(預託金制)の譲渡所得の計算方法は、その取得価額について、ゴルフ場が破綻したり再生手続に入ったりしてしまうと、その会員権の譲渡所得の計算上、高値で買った当初の取得価額を用いることができず、時価で判断されて譲渡損失の計上ができなくなってしまうケースが少なくありませんでした。
そこで、6月の東京高裁判決は、その時価で取得価額を判断するのはおかしいというものでした。例えば、入会金(優先施設利用権)500万円と預託金1,500万円で購入したゴルフ会員権が、ゴルフ場の私的整理により預託金全額が切り捨てられ、同時に優先利用権の時価が50万円になったので、140万円(譲渡収入)で売却したとします。
これまでの譲渡所得の計算は、140万円から50万円を減算した90万円が譲渡所得となる仕組みでしたが、今回の取り扱いの変更により、140万円から500万円を減算して出た360万円の赤字が譲渡所得となる計算式に変わりました。国税庁では過去5年以内にゴルフ会員権を譲渡した人に対し「この取扱いの変更を知った日の翌日から2カ月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより、納め過ぎとなっている所得税が還付となる」と呼びかけています。
福島県の一部の地域に納税地を有する人々は、平成23年3月11日以降に到来するすべての国税の申告・納付等の期限が延長されていることから、このほど、国税庁が平成24年分所得税の予定納税などの通知を見送ることにしました。
昨年3月11日に発生した東日本大震災に伴う、福島第一原発の爆発事故で避難生活を余儀なくされている地域については、いまなお、国税の申告・納付等の期限が延長されたままです。具体的には、川俣町、田村市、南相馬市、飯舘村、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、葛尾村、川内村がその地域に該当します。
そこで、国税庁では、「今年11月(第2期)の所得税の予定納税と、個人事業者の消費税の中間申告について、通知書や申告書の送付を見合わせることにした」としています。
所得税の予定納税とは、その年の5月15日までに提出した前年分(平成23年分)の所得税の確定申告に基づいて計算した予定納税基準額が15万円以上となる人について、その年の7月(第1期)と11月(第2期)に基準額の1/3ずつ納税する義務があるというものです。また、個人事業者の消費税の中間申告とは、前年(平成23年)の消費税の年税額が48万円を超える個人事業者に義務付けられているものです。
日本税理士会連合会の池田隼啓会長が8月17日、首相官邸に野田首相を訪問し、平成25年度税制改正に関する建議書を手渡しました。
日税連が取りまとめる「税制改正に関する建議書」は、税の専門家であり、税務署と納税者の間に立つ中立的な立場の税理士が行う税制や税務の改正要望とあって、政府もこれまでこの建議を受け入れて数多くの税制を見直してきました。
平成25年度の今回の建議書で、まず取り上げられているのが「税制に関する災害基本法の制定」です。過去の経験を踏まえて、「災害の予防、応急対策及び災害復旧の各段階における基本的な税制上の支援措置を体系的に明確にすべきである」としています。
続いて、税目ごとに税制の見直しを求めているわけですが、所得税については「土地建物等の譲渡損益は、他の所得との損益通算を認めること」や、サラリーマンについて「個人情報に係るプライバシーを保護する観点から、マイナンバー制度の導入も踏まえつつ、年末調整制度を廃止又は少なくとも選択制とし、原則として申告納税方式にすべきである」などとしています。また、法人税では「役員給与の損金不算入規定のあり方を見直すこと」や「受取配当等は、全額益金不算入とすること」、「貸倒損失に係る要件を緩和し、部分的な貸倒損失の計上を認めること」など税の専門家ならではの視線で改正要望をしています。
いま話題の消費税では「課税事業者かどうかを判定する基準期間制度を廃止又は抜本的に見直すこと」を求めるだけでなく、「簡易課税制度の選択を確定申告時にできる制度にするとともに、事業区分及びみなし仕入率を見直し、設備投資に対する別枠での控除を認めること」などを要請しています。
帝国データバンク仙台支店が、このほど消費税率引上げに対する東北6県内の企業に対して実施したアンケート調査の結果を公表しました。それによると、72.7%の企業が消費税率引上げによる業績への「悪影響」を懸念しています。
同社仙台支店の今回のアンケート調査は、今年7 月19 日から31 日にかけて東北6 県内の企業に対して実施されたもので、620 社から有効回答を得ているものです。同調査結果で、まず目を引くのが、今回の消費税率のアップで業績への「悪影響」を懸念している企業が72.7%もあることです。特に、「小売」では8 割を超える企業が悪影響を懸念していました。
その悪影響の理由について見てみると、57.7%が「税負担の上昇」を挙げています。「販売価格に転嫁できない」も43.2%にのぼり、特に小規模企業でその「税負担増」が高い割合を示しています。
一方、消費税率が平成14年と平成15年の二段階で引き上がることに対する業績への影響については、「変わらない」と考える企業は36.6%で、「強まる」と考える企業は26.2%でした。また、注目されている税率引上げ分の価格への転嫁についてですが、「すべて転嫁できる」企業は28.4%とその割合は小さく、「まったく転嫁できない」が多くを占めていました。
さらに、税率引上げ後に国内消費が「縮小する」と認識している企業は88.9%で、消費マインドの悪化を懸念する声も数多く寄せられています。
8月8日、全国知事会(会長=山田啓二京都府知事)を代表して尾ア正直高知県知事が、全国知事会議で決定した「子ども・子育て支援施策の充実に関する提言」と「平成25年度国の施策並びに予算に関する提案・要望」(次世代育成支援対策関係)を小宮山洋子厚生労働相に提出しました。
新たな子育て支援制度については、「子ども・子育て関連3法案」が衆議院で可決され、現在、参議院において審議されているところです。今回の全国知事会の提言・要望は、同法案の各種施策について財政措置と呼ばれる税金の投入を強く求めたものです。
具体的には、「子ども・子育て支援施策の充実に関する提言」の中に明記されていて、しっかりと税金を投入することで各種施策が有名無実とならないよう求めています。
まず、小規模保育や家庭的保育、事業所内保育については「待機児童の多い地域、人口減少地域など地域の実情に応じた保育を確実に提供できる制度にする」とし、また、妊婦健康診査についても「妊娠中の適切な母体管理を図るため、必要な回数の健康診査を受けられるよう、市町村に対する財政支援を恒久的なものにすること」としています。
さらに、「待機児童の解消や保育の質の充実等を図るため、保育士・幼稚園教諭の処遇改善など保育士・幼稚園教諭の安定的、継続的な雇用につながるよう、適切な財政措置を講じること」として、保育士や幼稚園教諭の報酬を充実させることを要請。放課後児童クラブについては「補助基準額の引き上げなど実態に応じた費用を保障する仕組みにするとともに、国庫補助における人数要件の撤廃などにより小規模クラブにおいても、安定的な運営ができるようにすること」が大切であると提言しています。
8月10日、社会保障一体改革の関連法案、いわゆる消費税増税法案が参議院本会議において可決・成立したことを受け、日本商工会議所の岡村正会頭がコメントを発表しました。その中で岡村会頭は、複数税率の導入に反対する考えを表明しています。
今回、国会で成立した消費税増税法は、現行5%の消費税率を平成26年4月に8%、27年10月に10%へと2段階で引き上げる内容になっています。
同法案成立について岡村会頭は「持続可能な社会保障制度は国民生活や社会安定化の基盤であり、将来世代に負担を先送りしないためにも改革は不可避である。社会保障・税一体改革関連法の成立はその第一歩である」と評価しました。
そして、消費税10%で持続可能な制度にするため「日本商工会議所としては、給付の重点化・効率化の徹底や制度上の積み残し課題について提言しており、これを踏まえた議論が必要である。当然ながら、今後とも行政改革、政治改革の断行は不可欠である」と襟をただすよう要請。また、消費税の引き上げは、景気や経済、中小企業経営に大きな影響を与えることから「政府はデフレ脱却に全力で取り組むとともに、円滑な価格転嫁ができるよう、徹底した広報をはじめ、万全の対策を講じていただきたい」としました。
しかし、今後の検討課題となっている複数税率については「対象品目の設定や税額計算等で混乱を招き、中小企業にさらなる負担増を強いるため、導入すべきではない」と反対姿勢を明確にしています。逆進性対策については「社会保障と税の共通番号を早期に導入し、真に措置すべき者を特定化できるよう設計すべきである」と注文をつけました。
日本税理士会連合会(日税連、池田隼啓会長)が、国税庁が内規として取扱いの制定を予定している「国税の調査に関するに対する通達」に対して、このほど、意見を取りまとめ、国税庁に提出しました。
昨年11月30日に国会で成立した「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」で、国税庁が内部職員向けの運用上の取扱いとして定めていた「国税の調査手法」が法定化(国税通則法第7章の2)されました。
これに伴い、今年7月2日に国税庁が同規定に関する法令解釈通達を制定するとして、パブリックコメントを募集。これに対して、このほど日税連が意見を取りまとめたわけです。
同意見の中で注目されているのは、質問検査権の行使についてです。そもそも質問検査は、国税犯則取締法の規定に基づく強制調査とは異なり任意調査です。したがって、日税連では「罰則によって間接的に履行が担保されているに過ぎないので、この権限行使はすべて納税義務者の協力・承諾が前提となる。
しかし、その点が関係通達案からは必ずしも明確には読み取ることができない」と指摘。「質問検査等及び留置きは納税義務者の協力・承諾が前提(任意調査)であることを関係通達案又は事務運営指針等において明確化されたい」と要望しています。
さらに、調査の手順についても意見を述べています。具体的には「調査は、着手(再調査)決定、臨場、質問検査、調査結果の説明等といった一連の手続を踏んで行われ、さらに調査終了後には更正や加算税賦課決定等の処分を伴う場合もあるが、関係通達案だけでは、改正法の下で、調査事務がどのように実施されるのか、現在とはどこが変わるのか、実務面ではどのような取扱いとなるのかといった全体像が理解し難い」と指摘。「実務上の留意点を解説したQ&A等を策定・公表することが望まれる」と要請しています。
日本最大手の企業信用調査会社の「帝国データバンク」が、消費税率の引き上げに対する意識調査を実施し、このほどその結果を公表しました。それによると小売業者の8割超が業績悪化を懸念していることが明らかになっています。
今回の意識調査は、今年7月19日から同月31日の間で行われ、1万637社から有効な回答を得たものです。
まず、消費税率アップによる業績への影響を尋ねたところ、業績への「悪影響」を懸念する企業は67.1%にのぼりました。特に、「小売」で8割を超える企業がその悪影響を懸念しています。
業績に悪影響を与える理由については、49.7%が「税負担の上昇」を挙げました。「販売価格に転嫁できない」も39.2%を占めています。特に税負担増は小規模企業の割合が高く、なかでも「不動産」(同60.1%、140社)が、6割を超えていました。
次に、消費税率を平成26年4月に8%、27年10月に10%と2段階で引き上げることに関する質問では、税率の1段階引き上げと比べて業績への影響が「強まる」と考える企業は25.1%でした。これについて帝国データバンクでは「企業からは『段階的な税率アップは零細企業にとってシステム改修など大きな負担になる』(出版、東京都)といった意見も挙がっており、政府は消費税率引き上げを円滑に進めるためにも企業の実態を把握し、適切な施策を実施していく必要がある」と分析しています。
中小企業がもっとも心配している商品価格への消費税率の転嫁については、「すべて転嫁できる」企業は31.1%とその割合は低く、一方で、「まったく転嫁できない」が1割を超えていることから、帝国データバンクは「不公正取引への対処を万全にすることが肝要」と政府に呼びかけています。