国税庁がこのほど、平成23年度の「不服申立て及び訴訟の状況」を取りまとめました。それによると、異議申立ての件数が前年度よりも25.5%も減少し、過去10年間で最少の3,803件をマークしています。
国税の課税処分に関する納税者の救済制度には、処分庁(税務署)への異議申立てと国税不服審判所に対する審査請求、裁判所に訴訟を提起して処分の是正を求めるという3つの方法があります。
この救済制度の平成23年度の活用状況を国税庁がまとめたわけですが、目立ったのが異議申立ての件数が前年度よりも25.5%減少し、過去10年間で最少の3,803件に止まっていることです。一方で、税務署による異議申立ての処理件数が4,511件にのぼり、そのうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は375件で、処理件数に占める割合は8.3%(一部認容331件7.3%、全部認容44件1.0%)でした。しかも、それは前年度よりも1.7ポイント減っていることから、このまま納税者の間で「無駄な抵抗はやめよう」というムードが拡大することが危惧されています。
ただ、審査請求の件数が、前年度よりも16.1%増えて3,580件となり、過去10年間で最多でした。また、国税不服審判所による平成23年度の審査請求の処理件数2,967件のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数が404件(一部認容285件、全部認容119件)で、前年度よりも0.7ポイント増えて救済制度の存在を示している点に、多くの税理士が「権力へ立ち向かう勇気は失われてはいない」と安堵しています。
なお、平成23年度における訴訟の終結件数は、380件でした。そのうち、国側が一部敗訴したもの及び全部敗訴したものは51件(一部敗訴20件、全部敗訴31件)で、その割合は13.4%(一部敗訴5.3%、全部敗訴8.1%)となっています。
三井住友フィナンシャルグループのシンクタンクである株式会社日本総合研究所が、「社会保障・税一体改革3党合意の評価と課題」と題するレポートをまとめました。消費税の逆進性への対応について「低所得層は確かに恩恵を受けるが、その分財政健全化を後退させる懸念がある」と指摘しています。
2012年6月15日、社会保障と税の一体改革について民主、自民、公明の3党が合意しました。その協議の中で、税制で激しく議論されたのが、低所得者ほど税負担が重くなる消費税の逆進性への対応でした。
結果的に3党は「(低所得者に対して)簡素な給付措置が消費税率8%引き上げの条件である」とし、具体的な対応は消費税の税率引上げ法案成立後に議論することで折り合いをつけています。
これについて、日本総研の今回のレポートでは「公的年金には物価上昇に応じて年金額が引き上げられる物価スライドというルールがあり、仮に、消費税率引き上げに伴う物価上昇分だけ年金額が引き上げられれば、年金の購買力は維持される。簡素な給付措置は、これらに上乗せされるものであり、過剰となる可能性がある」と指摘。さらに、今回の社会保障・税一体改革のスキームには「消費税率引き上げ幅5%のうち1%相当が社会保障充実に充てられることとなっており、そのなかには、低所得者の社会保険料軽減なども盛り込まれていることから、それ自体が既に逆進性対策となっている」ので、「その分財政健全化を後退させる懸念がある」と制度設計の際の注意点を示唆しています。
ちなみに、民主党が当初示していた給付付き税額控除とは、税額控除と現金給付を組み合わせた制度です。同制度の仕組みは、算出された税額が一定の控除額より多い場合は税額控除、少ない場合はその分が給付されるというもので、例えば、10万円の給付付き税額控除を行う場合、税額が15万円の人は、10万円が控除され、5万円を納付することになります。一方、税額が5万円の人は、税負担はなく、差額の5万円が支給されるというのが一般的です。
福井商工会議所が今年4月に実施した「消費税に関する小規模事業者への実態調査」の結果がまとまりました。それによると、税率が引き上げられた場合に「全て転嫁できる」という事業所は全体で48.8%でした。中小企業の約半数が、消費税分の値引きを強いられるとしています。
政府による社会保障と税の一体改革では、2014年4月に現行の消費税率を8%に、そして、2015年10月には10%に引き上げる方針ですが、このほど、福井商工会議所がその税率引き上げを盛り込んだ「消費税関連法案」が成立した場合、小規模事業者の資金繰りや商品の販売価格への転嫁などへの影響に関するアンケート調査を実施しました。福井商工会議所の会員小規模事業者2,600社に対して行った(有効回答数721件)ものです。
それによると、税率が引き上げられた場合に、「全て転嫁できる」という事業所は全体で48.8%でした。現状では、60.1%が転嫁できていることから、転嫁できない事業所がさらに約1割増えて半数を占めることになります。特に「飲食(50%)」、「サービス(53.5%)」、「製造(44.3%)」、「卸売(35%)」の業種で転嫁できなくなると答える割合が大きく、取引先や消費者との価格調整が厳しくなることが予想されます。
税率引上げ後、販売価格に転嫁できない場合の対応としては、「利幅が減少するがどうしようもない」が圧倒的に多く、特に小規模ほどその割合は高くなる傾向があります。また、「廃業を検討」している事業所も4.5%ありました。
消費税が引き上げられた場合に同商工会議所に求める支援策については、「分割納税等の納付方法の変更」が43.7%で一番多く、次に「行政や業界団体への申し入れ」(39.8%)、三番目に「資金繰りに対応する低利の融資制度」(35.7%)を要求しています。特に飲食業では「外税方式への変更」を望む事業所の割合が高い数値を示しました。
6月15日夜、「社会保障と税の一体改革」をめぐる修正協議で、民主・自民・公明の3党が最終的に合意しました。あまりクローズアップされていませんが、所得税と相続税の改正が「平成25年度税制改正で必要な措置を講じる」ことで合意されています。
社会保障と税の一体改革で、政府が今国会に提出している税制関連の法案「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」には、消費税の税率を現行の5%から10%まで段階的に引き上げることだけでなく、所得税と相続税(資産税)の改正案も盛り込まれていました。
ところが、今回の3党の修正協議で消費税の税率引き上げ関連の法案のみ残し、所得税と相続税の改正は「平成25年度税制改正で必要な措置を講じる」とされました。
当初、法案に盛り込まれていた所得税の改正とは、現行の最高税率が「課税所得1800万円超について40%」とされているものを「課税所得5,000万円超について45%に引上げる」などとしているものです。また、相続税の改正については、相続税の基礎控除の引下げ(「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」⇒「3,000万円+600万円×法定相続人数」)や相続税の税率構造の見直し(最高税率を50%⇒55%に引上げ)などが盛り込まれていました。
このほど、日本証券業協会(前哲夫会長)が「復興特別所得税に関するQ&A」を取りまとめました。東日本大震災の被災地復興のために必要な財源を確保するために、昨年12月2日に「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が公布されましたが、納税者にあまり浸透していません。
今回、日本証券業協会がまとめたQ&A集は、「復興特別所得税とは、どのようなものに課税されるのですか」や「復興特別所得税額は、具体的にどのように計算されますか」といった質問が全部で14個あり、その質問にわかりやすく解答しています。
例えば「復興特別所得税とは、どのようなものに課税されるのですか」では、「給与や賞与のほか、預貯金や債券の利子、株式や投資信託の配当金・売却益、デリバティブ取引等の利益などには、所得税が課されていますが、これらの所得税が課される所得のうち平成25 年から平成49 年までの間に生ずる(収入金額の収入すべき時期とされる)ものに対して復興特別所得税が課税されます。復興特別所得税とは、平成25 年から平成49 年までの各年分の所得税の額に2.1%を乗じた金額が、追加的に課税されるものです」と答えています。
特に気になるのが、マル優制度の適用を受けている人や財形住宅貯蓄又は財形年金貯蓄の非課税制度の適用を受けている人でしょう。いずれも利子又は配当金にかかる所得税が非課税、または、源泉徴収が不適用とされていますが、Q&Aでは「このような所得税が非課税又は源泉徴収が不適用とされている利子又は配当金には、復興特別所得税は課税されません」として解説しています。
相続や贈与により取得した生命保険金を年金形式で受け取っている人たちに、国税庁が税金の還付手続きの締切りが迫っていることをアナウンスしています。
遺族が年金形式で受け取っている生命保険金のうち、相続税の課税対象となった部分については、相続税と所得税が二重に課税されているとして、最高裁が違法という判決を下しました(平成22年7月6日)。
これを受け、国税庁は、昨年10月に「平成12年分から平成18年分の各年分の所得税額が納め過ぎとなっている人について、平成24年6月29日までに手続きをしていただければ、納め過ぎとなっている所得税額に相当する額(特別還付金)を支給する」という取り扱いを定めています。したがって、その手続の締め切りが迫っているわけです。
国税庁では、特別還付金に関する判定表などをホームページに公開するとともに、電話や税務署の窓口で相談に応じるなどしてきましたが、ここへきて、改めてホームページなどで早急に手続きを行うようアナウンスをしています。
ちなみに、特別還付金の受給対象者は、年金型保険の死亡保険金を年金形式で受給している人や、学資保険の保険契約者が亡くなったことに伴い養育年金を受給している人、相続等により個人年金保険契約に基づく年金を受給している人です。注意しなければならないのは、いずれも、保険契約等に係る保険料の負担者ではない方が対象であるということです。
このほど、国税庁が平成23年分の所得税の確定申告の状況を取りまとめました。それによると,所得税の確定申告書の提出者の総数が3年連続して減少しています。
今回の確定申告の状況では、東日本大震災により申告期限の延長措置の影響が注目されましたが、平成23年3月11日以降に到来する国税の申告・納付等の期限が延長されていた福島県の一部の地域についても含めて取りまとめられています。
具体的には、まず、平成23年分所得税の確定申告書を提出した人員は2,185万3千人で、前年分(2,315万人)よりも129万7千人(▼5.6%)減少し、3年連続して減少しました。確定申告書を提出した人のうち、納税した人(納税人員)は607万1千人で、こちらも前年分(702万1千人)より95万人(▼13.5%)減少しています。
納税人員の申告状況について前年分と比較すると、所得金額は33兆6,790億円で1兆168億円(▼2.9%)減少したものの、申告納税額は2兆3,093億円で662億円(+2.9%)増加しました。これを事業所得者について見てみると、納税人員は、154万1千人(+11万1千人・+7.8%)と増加傾向を示し、比例して所得金額も、5兆9,474億円(+3,127億円・+5.6%)と前年よりも増えています。したがって、申告納税額も、5,151億円(+278億円・+5.7%)と前年よりも増加しました。
確定申告書を提出した人のうち、土地等の譲渡所得(総合譲渡を含む)の申告人員は40万3千人で、前年分(41万人)よりも減少(▼1.5%)しました。そのうち、所得金額のあるものは24万人で、こちらは前年分(22万4千人)よりも増加(+7.1%)しました。所得金額は2兆7,902億円でした。一方、株式等の譲渡所得の申告人員は99万9千人で、前年分(103万9千人)よりも減少(▼3.8%)。そのうち、所得金額のあるものは21万人で、前年分(26万3千人)よりも減少(▼20.2%)しています。所得金額は1兆1,108億円でした。
国土交通省の調べで、平成23年中に住宅の建築に着工した戸数は、2年連続で増加していることがわかりました。
国土交通省によると、平成23年中に新たに住宅の建築に着工した戸数は国内で834,117戸でした。前年と比べると 2.6%増え、2年連続の増加となりました。
これを住宅の形態別に見てみると、持家の着工については305,626戸(前年比 0.1%増、2年連続の増加)でした。貸家の着工は285,832戸(前年比 4.1%減、3年連続の減少)で、分譲住宅の着工は234,571戸(前年比 16.2%増、2年連続の増加)。マンションの着工は116,755戸(同 28.9%増、2年連続の増加)で、一戸建住宅の着工は116,798戸(同 5.8%増、2年連続の増加)でした。
このように住宅の建築が好調なのは、「税の優遇措置が効いている」(国土交通省)と見られているわけですが、国税庁の調べによると、住宅取得資金の贈与の非課税措置を適用した申告人員は7万3千人で、前年分(7万1千人)よりも増加(+3.0%)したものの、住宅取得資金の金額は6,683億円で、前年分(7,765億円)よりも減少(▲13.9%)しています。住宅取得資金のうち非課税の適用を受けた金額も5,937億円で、前年分(7,199億円)より減少(▲17.5%)しました。同非課税措置の効果もピークを過ぎた感があります。
なお、同非課税措置は、平成22年1月1日から平成23年12月31日までの間に、自己が居住する住宅用家屋を新築したり、若しくは建売住宅を取得するか、さらには増改築等を行うときに、父母や祖父母など直系尊属から金銭の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、平成22年中の贈与であれば住宅取得等資金のうち1,500万円までの金額、平成23年中の贈与であれば1,000万円までの金額について贈与税が非課税となる制度です。