平成22年度税制改正によって、所得税の生命保険料控除制度が見直されましたが、このほど、国税庁が契約内容の変更を行った場合に旧制度と新制度のどちらが適用されるかを明確にしました。
今回の生命保険料控除制度に関する取り扱いは、社団法人生命保険協会(会長=筒井義信・日本生命保険社長)の質問に対して国税庁が答えたことで明らかになったものです。
一般的に生命保険は、個人が生命保険会社と複数年にわたって契約を結ぶものが主流なので、生命保険料控除制度の見直しが行われた場合、古くから加入している保険商品と改正後に加入した商品とで取り扱いが変わってきます。
平成22年度税制改正では、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除(適用限度額はそれぞれ5万円)で構成されていた生命保険料控除制度について、介護医療保険料控除(適用限度額4万円)が創設され、新契約に係る一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の適用限度額がそれぞれ4万円に引き下げられるとともに、各保険料控除の合計適用限度額が10万円から12万円に引き上げられました。そして、この新制度は、平成24年分以後の所得税について適用されることになっています。
したがって、昨年12月31日以前に契約した生命保険は旧制度が適用され、今年1月1日以後に契約した生命保険には新制度が適用されるという複雑な内容になっているわけですが、問題は、旧制度が適用される生命保険契約について、契約の内容を変更した場合、どうなるのかということでした。そこで、生命保険協会が国税庁に問い合わせて、取り扱いを明確にしてもらったわけです。
具体的には、「平成24年1月1日以後に、旧契約について『転換』や『アカウント型商品の保障見直し』、『主契約の更新』、『特約の更新』、『特約の(中途)付加』といった契約変更を行った場合は、その旧契約は新契約とみなす」などとされています。
経済産業省が、東日本大震災の被災者支援のために「復旧・復興支援制度データベース」をインターネット上に立ち上げました。
東日本大震災の被災地復興のための政府の施策は400を超えていて、被災者やその関係者などが望む施策を的確に把握するのが困難な状況がありました。
そこで、経済産業省は、東日本大震災復興対策本部、内閣官房情報通信技術(IT)室、内閣府防災担当、総務省と協力して、国や地方公共団体等が運用する多種多様な支援制度をワンストップで検索することができる「復旧・復興支援制度データベース」をネット上に立ち上げたわけです。これにより、被災者やその関係者、ボランティアに参加を望んでいる人たちは最新の支援制度情報を、これまでより格段に早く、的確に把握することができるようになりました。
「復旧・復興支援制度データベース」(URL =http://www.r-assistance.go.jp)の使い方は、例えば、事業者が税金の減免について知りたい場合、同データベースを開いたら「事業者向けの支援制度を探す」をクリックして、「フリーワード検索」の窓に「税金」と書き込みます。次に、地域別に知りたい場合は、「地域から探す」の窓で地域を選択し、支援の種類として「減免・猶予(延長・金利の引き下げ含む)」にチェックを入れたら、「検索」をクリックするだけです。すると「検索結果一覧」が開き、国税の特別措置が1件あるという回答を得ることができます。その措置の詳しい状況は「制度詳細」をクリックすれば見ることができます。
個人が売却した宅地で、宅地開発時に自治体へ寄附した道路部分の取得価額とその道路の設置にかかった費用は、譲渡所得の計算上、取得費に算入するという見解を東京国税局が示しました。
宅地を造成するとき、自治体の条例で一定の広さの道路や公園などを造ることが定められていて、それを自治体に寄附するケースがよくあります。しかも、いま不動産市場が冷え込んでいることから、造成した宅地を手放さざるを得ないケースも少なくありません。
個人が造成した一団の宅地を売却して得た所得は譲渡所得となり、税法上「譲渡所得の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の合計額とする」と規定されています。自治体に寄附した道路などの公共施設の取得費やその道路などの設置にかかった費用については、どのように取り扱うのか不透明な状態になっているのです。
ただ、国税庁の通達で「一団地の宅地の造成・分譲による事業所得又は雑所得の金額の計算について」とする規定があり(所得税基本通達36・37共-7《造成に伴って寄附する公共的施設等の建設費の原価算入》)、「一団地の宅地を造成して分譲する場合において、団地経営に必要とされる道路、公園、緑地、水道、排水路、街灯、汚水処理施設等の施設について、その公共的施設等を公共団体等に帰属させることとしているときであっても、その公共的施設等の取得に要した費用の額を、造成して分譲する宅地の工事原価の額に算入する」と定められています。
しかし、この通達は、事業所得又は雑所得の金額の計算上、造成して分譲する宅地の工事原価として控除する必要経費について定めたもの。譲渡所得の金額の計算上控除する取得費について直接定めたものではありません。そのため、宅地を造成して分譲することによって得る所得が譲渡所得に該当する場合には、その宅地の造成に伴い寄附した公共的施設等の取得に要した費用の額は、造成して分譲する宅地の譲渡所得の金額の計算上考慮されないのではないかという疑問が地主などの間でありました。
類似の事案を抱えていたある納税者が東京国税局に「本件道路部分の取得価額及びその設置に要した費用の額は、本件道路部分を市へ寄附したことにより本件分譲地の取得価額に算入され、本件分譲地を相続により取得した甲(質問者)の本件分譲地に係る譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入されると解するのが相当と考えます」などと文書で見解を伝えたところ、このほど同国税局が「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答をしています。
東京国税局管内の個人事業者から「今年は青色申告決算書が税務署から送られてくるのが遅い」といった不満の声が聞かれます。
青色申告決算書は、事業所得や不動産所得、山林所得がある青色申告者が確定申告書を用紙で提出する際に添付が必要な書類です。東京国税局管内の税務署では、個人で青色申告を行っている納税者が自力で正しい決算を行えるように、毎年、青色申告決算書の作成説明会を開催しているほど重要な書類です。
にもかかわらず、2月16日からスタートする平成23年分の所得税の確定申告を目前にし、いまだに同決算書が届いていないケースがあります。
これはじつは、東京国税局は昨年12月中旬にインターネットのホームページ上で「確定申告書を書面により御提出いただいた個人の方に対し、例年11月に送付しておりました青色申告決算書等につきましては、平成23年分より確定申告書等と併せて平成24年1月下旬に送付いたしますので、あらかじめ御承知おきください」というお知らせを掲載していて、すでに同決算書が届いているところもあります。
なお、東京国税局では、同決算書が届いていない納税者に「青色申告決算書や確定申告に必要な各種様式は、国税庁ホームページ『確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等』に掲載しており、これらは印刷して御利用することができます」と呼びかけています。また、「これまで確定申告書をe-Tax(国税の電子申告システム)または国税庁ホームページ『確定申告書等作成コーナー』を利用して御提出いただいている方へは、行政コスト削減の観点から確定申告書等を送付しておりません」と注意を促しています。
このほど、国税庁が所得税の寄附金控除を受けるための計算明細書の様式に誤りがあることを公表しました。これまでの計算明細書は、東日本大震災関連の寄附金について控除額の範囲に含まれない形になっていました。
平成23年12月14日から平成24年1月12日までの間、国税庁ホームページに掲載していた所得税の特別控除(税額控除)額の計算明細書について、一部誤りがあったことを国税庁が明らかにしました。特別控除の対象となる寄附金のほかに寄附金控除の適用を受ける「震災関連寄附金」がある場合、特別控除額が少なく(所得税額が多く)計算されるとき(最高800円)があったとされています。
特定の寄附をした場合の所得税額の特別控除(税額控除)の対象となる、(1)公益社団法人等寄附金、(2)認定NPO法人寄附金、(3)政党又は政治資金団体に対する寄附金のほか、寄附金控除の対象となる(4)震災関連寄附金がある人については、これまでは「公益社団法人等寄附金特別控除額等の計算明細書様式」で寄附金に係る特別控除額を計算すると、特別控除額が少なく(所得税額が多く)計算される形になっていました。
つまり、(4)震災関連寄附金が控除金額に含まれていなかったわけです。そこで国税庁では、「公益社団法人等寄附金特別控除額の計算明細書などの⑧欄の計算に当たり、2千円から申告書第二表の『所得から差し引かれる金額に関する事項』欄の『寄附金控除』欄の寄附金の額(②)を差し引いた後に、さらに同じ欄の震災関連寄附金の額を差し引ける形に様式を訂正しています(差し引いた結果、赤字のときは0となる)。
国税庁がe-Tax(国税の電子申告システ)の利用者で、利用者識別番号や暗証番号を忘れてしまった人へ注意を呼びかけています。とくに、サラリーマンの場合、利用頻度が少ないため、暗証番号などを忘れてしまっている人が少なくないと言われています。
e-Taxを利用するときには、必ず「利用者識別番号」や「暗証番号」が必要となります。いずれも、e-Taxを使い始める際に一定の手続きを経て取得する番号です。そのため、忘れてしまった人に対して国税庁は「利用者識別番号を忘れて分からなくいなった場合は、変更等届出書を提出する必要があります」としています。
「利用者識別番号」や「暗証番号」はe-Taxの利用開始届出書を書面(オンライン)で提出したときに、税務署から送られてきた「利用者識別番号等の通知書」に記載されているものです。ところが、サラリーマンの場合、めったにe-Taxを利用することがありません。そのため、同通知書を紛失して忘れてしまっている人が結構多いわけです。
国税庁では「利用者識別番号や暗証番号を忘れてしまった人は、変更等届出書を税務署に提出して再度取得する必要があります」としています。その変更等届出書については、郵送のほか、自宅にあるパソコンでインターネットを利用してオンラインで提出することもできます。ただし、変更届出書をオンラインで送信した場合は、送信後に表示される送信結果画面について、必ず保存又は印刷をしておき、後日、税務署から送信した届出の内容に応じた通知書が届くので、その通知書の内容と照合するようにしたいものです。
大和証券グループのシンクタンク“大和総研”が、消費税の税率が2015年に10%に引き上げられた場合に個人の可処分所得がどのくらい減少するかを予測したレポートが注目を集めています。
さきごろ、政府が決定した社会保障と税の一体改革の素案には、消費税の税率を2015年に現行の5%から10%まで段階的に引き上げることが明記されていますが、大和総研が昨年12月22日に発表した「復興増税・2012年度税制改正―ポイント、影響、今後の課題―」と題するレポートには、消費税増税が2015年に行われた場合に個人の可処分所得がどれだけ減少するかが予測されていて物議を醸しています。
可処分所得とは、サラリーマンの年間収入から税金や社会保険料などを差し引いた、いわゆる給料の手取り額の1年分のことです。同レポートでは、「40歳以上の片働き4人世帯」や「40歳以上の共働き4人世帯」、「40歳未満の単身世帯」、「75歳以上の夫婦世帯」に区分して、2011年分の可処分所得が2015年にはどの程度減少するかを算出しています。
その結果を見てみると、例えば、「40歳以上の片働き4人世帯」については、「実質可処分所得の減少率で見ると、年収300万円(可処分所得の差額マイナス24.08万円)と年収1,000万円(同マイナス70.84万円)の世帯への影響が相対的に大きい。これは住民税の年少扶養控除の廃止、新児童手当の所得制限(給付なしを仮定)が原因」という分析をしています。
国税庁が今年も所得税の確定申告期間中、一部の税務署で日曜日に確定申告の相談・申告書の受付を行うことを明らかにしました。
通常、税務署が開庁しているのは、土・日・祝日を除く月曜日から金曜日までの平日のみとなっています。しかし、国税庁では、仕事で平日に税務署へ行くことができない納税者のことを考えて、所得税の確定申告期間に限り日曜日を開庁して来ました。
今年も平成23年分の所得税の確定申告期間中(2月16日から3月15日)、一部の税務署で2月19日と2月26日に限り日曜日も、確定申告の相談・申告書の受付を行うことになりました。
具体的に東京都内についてみてみると、江東西、江東東、目黒、大森、雪谷、蒲田、中野、杉並、荻窪、豊島、王子、荒川、板橋、葛飾、江戸川北、江戸川南、八王子、立川、武蔵野青梅、武蔵府中、町田、日野、東村山の各税務署が申告書の収受を行います。麹町、神田、日本橋、京橋、芝、麻布、四谷、新宿、小石川、本郷、東京上野、浅草、本所、向島は一つの合同会場で申告書の収受などを行う予定です。そのほか、合同会場で申告書の収受を行うのは、品川・荏原、練馬東・練馬西、足立・西新井、世田谷・北沢・玉川・渋谷の4パターンがあります。
国税庁が内部の職員向けに作成した「震災特例法の一部改正に伴う印紙税の取扱いに関するQ&A」が注目されています。
印紙税は、仕事の請負契約書などに課税される税金であることから、事業者にとってはコスト計算上、無視できない存在です。とくに東日本大震災で被災した企業にとっては、紛失した契約書などを再度作成し直した場合、印紙税はどうなるのかといった疑問がありました。
震災特例法の一部改正(平成23年12月7日成立)によって、被災した企業に対する印紙税の特例措置が認められたことから、このほど国税庁が内部の職員向けに「震災特例法の一部改正に伴う印紙税の取扱いに関するQ&A」を作成。それに対して、被災した企業やその企業の取引先などが強い関心を寄せています。
具体的に、同Q&Aの中で示されている取扱いを見てみると、例えば「震災特例法が改正されたことにより、東日本大震災により滅失した文書に代わるものとして作成される文書が非課税とされるとのことですが、どのようなものが非課税措置の対象となるのですか」との質問に、国税庁は「震災特例法により非課税とされるのは、銀行その他の金融機関が保存する東日本大震災の発生前に作成された次の(1)から(5)に掲げる文書が、東日本大震災により滅失したことにより、当該滅失した文書の作成者と当該金融機関との間の約定に基づき、当該金融機関の求めに応じて作成(復元)される文書で、平成23年3月11日から平成25年3月31日までの間に作成されるものです。(1)消費貸借に関する契約書、(2)約束手形又は為替手形、(3)継続的取引の基本となる契約書、(4)債務の保証に関する契約書、(5)債権譲渡又は債務の引受けに関する契約書」と回答しています。
平成23年12月24日、国税庁が平成24年度の国税庁関係の予算案を公表しました。それによると今回初めて共通番号制度の導入経費を要求しています。
平成24年度の国税庁の予算案は、総額で7,093億2,500万円(対前年度比98.7%)です。情報化経費が412億8,800万円(同99.8%)に減額されているだけでなく、納税者利便向上経費は97億1,200万円(同78.0%)にとどまるなど、軒並み経費削減が行われています。
そういった中で、注目されているのが共通番号制度の導入経費16億8,100万円が新たに要求されている点です。
共通番号制度は、納税者背番号制(米国ではグリーンカード)と呼ばれているものと同様で、納税者に番号を割り振って利子・配当所得といった小額資産性所得を把握する日本の総合課税制度。以前、政府は1984年1月からの導入を計画しましたが、当時の郵政省や郵政族議員、金融業界などから反対の声があがり、1985年に議員立法で廃止された経緯のあるいわく付きの制度です。
この共通番号制度の導入経費を国税庁が要求したのは、政府・与党が平成24年度税制改正大綱に「平成27年1月から社会保障・税に関わる共通番号制度を導入する」予定を盛り込んだからです。