大震災の被災者について、政府が提供する生活支援金も所得税の雑損控除の対象とする取扱いの変更を国税庁が行いました。
所得税の雑損控除の金額については、災害などにより住宅や家財に生じた損失の金額から、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより、その損失の金額を補てんされる部分の金額は控除しなければならないとされています。
そして、平成19年度の税制改正では、被災者生活再建支援法に基づいて住宅が全壊した人などに支給される被災者生活再建支援金についても、その被害の程度や住宅の再建方法により支給されるものであることから、税務上は、雑損控除の損失の金額から控除するものとして、取り扱うとされました。
しかし、この税務上の取扱いについて国税庁は、東日本大震災後の実情などから再検討を行い、このほど、見直しを行い、被災者生活再建支援金については、雑損控除の損失の金額から控除しないものとしました。
これにより、今後、新たに雑損控除を適用し、確定申告書などを提出される人については、見直し後の取扱いによることになります。
また、すでに、東日本大震災に係る雑損控除の損失の金額から被災者生活再建支援金を控除して確定申告書などを提出された人については、この取扱いの見直しにより、雑損控除の金額が増加することになり、翌年に繰り越す損失額が増加する場合や、所得税が還付される場合があります。
今回の税務上の取扱いの見直しは、東日本大震災後の実情などを踏まえたものですが、平成19年改正後の被災者生活再建支援法に基づき、東日本大震災以外の災害により支給された被災者生活再建支援金についても、遡って取扱いが変更されています。
国税庁がe-Tax(国税庁の電子申告システム)の利用者に「申告書の添付書類については、自宅や事業所などに5年間保存しておいてください」と呼びかけています。
e-Taxを利用して税金の申告をするときに添付を省略した書面については、法定申告期限から5年間、税務署等から提示又は提出を求められることがあります。
これは、国税通則法の一部改正により、国税について増額更正できる期間が、従来の3年間から5年間に延長されたことに伴い、平成23年12月2日以後にe-Taxで申告した際に、添付を省略した書面について税務署等から提示又は提出を求められることがある期間が、従来の3年間から5年間に延長されたからです。
具体的には、税務署長等が提示又は提出を求めることができる期間は、平成23年12月2日より前については原則として3年間でした。しかし、平成23年12月2日以後は原則として5年間となりました。
アスベスト被害者の遺族が、会社から受け取る見舞金や弔慰金の相続税と所得税の取り扱いを、このほど高松国税局が示しました。
アスベストは、天然にできた鉱物繊維で、耐久性や耐熱性などに優れているため、建設資材や電気製品など様々な用途に使用されてきたものです。しかし、空中に飛散した石綿繊維を長期間大量に吸入すると肺癌や中皮腫を誘因することが分かり、多くの被害者を生む結果を招いてしまいました。
とくに、建設現場で働く人の間で被害が拡大。雇い主が、今でもアスベストが原因で中皮腫にかかった人に補償などを行っています。高松国税局管内にも、そうしたアスベスト被害者へ労災補償を行っている会社があるわけですが、中には、社内規定で弔慰金や見舞金を支払っている会社があり、それを受け取った被害者の家族の税務が問題となっていました。
そこで、高松国税局では被害者の家族からの問い合わせに答える形で次のような税の取り扱いを示しました。
社内規定で支給される見舞金については「従業員又は退職者が、在職中の業務に起因して石綿による傷病に罹患し、業務上の負傷又は疾病により労働者災害補償保険法第12条の8第1項第2号に規定する休業補償給付を受給した場合に一時金として支給されるもので、これを受け取る人は支給請求権を取得しているものと考えられる。見舞金の支給請求権は、遺族が相続開始のときに、承継的に取得する財産である被害者の本来の相続財産として相続税の課税対象となる」とし、見舞金を受け取る被害者の遺族の所得税の取り扱いは「非課税所得になる」としています。
一方、会社から受け取る弔慰金は、社内規定で「退職者が、在職中の業務に起因して石綿による傷病に罹患し、労災保険法第7条第1項第1号に規定する業務上の死亡と認定された場合に、その遺族に対して一時金として支給されるものであり、退職者が既に特別見舞金の支給を受けている場合には、本件取扱細則に定める業務上死亡弔慰金の金額から既に支給された特別見舞金との差額が支給される」ことになっています。よって、相続財産となる退職手当金には当たらず、心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料などに該当することから「非課税所得となる」としています。
今年も東京国税局が作成した平成23年度版の「相続税、贈与税及び譲渡所得の申告のためのチェックシート」が好評を博しています。
相続税は、基礎控除額が5,000万円+1,000万円×法定相続人の数で計算される点を見てもわかるように、ささいなミスで大ケガをしてしまう恐ろしい税金です。
そこで、東京国税局は毎年、相続税の申告書が正しく作成できるよう、一般に誤りやすい事項についてチェックポイントをまとめたチェックシートを作成し、納税者に提供しています。
そのチェックシートの中身はというと、まず、質問項目が「遺産分割に関するもの」や「相続財産の種類」、「葬式費用」など多岐にわたっています。具体的には、相続人等に関する質問項目では、「法定相続人に誤りはありませんか」と問いかけが行われていて、点検するときに必要な関係書類として「戸籍の謄本」があることを提示、そして、すでにその謄本を取っている場合はチェック欄にチェックを入れ、さらに、申告書への添付の有無を確認する仕組みになっています。
今年のチェックシートの特徴は、震災特例法の課税価格の計算の特例を適用する人向けのチェックシートが用意された点です。とくに、土地を相続した人については、非常に役立つ内容になっていて、例えば、質問項目では東日本大震災により被害を受けた地域内にある土地等の価額を計算するために「調整率」を用いるかどうかを尋ねています。そして、その調整率を自分で調べて書き込んだ上で、土地の評価額が確認できる仕組みになっています。
さらに、平成22年中に贈与によって取得した財産について、震災特例法を適用して更正の請求を行う場合のチェックシートも用意されていることから、来年早々にスタートする贈与税の申告で多くの納税者が活用するだろうと税理士の間では見られています。
誤って税金を多く納めすぎた場合にそれを取り戻す「更正の請求」期限が、これまでの1年から5年に延長されました。
平成23年12月2日に、平成23年度税制改正に関する法律「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」が公布されましたが、同法の中で、多くの納税者が注目しているのが「更正の請求」に関する改正です。
具体的には、これまで更正の請求期限は「法定申告期限から1年」でしたが、今回の法改正により「平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について、更正の請求ができる期間が法定申告期限から原則として5年」に延長されました。
国税庁では「平成23年12月2日より前に法定申告期限が到来する国税で、更正の請求の期限を過ぎた課税期間について、増額更正ができる期間内に更正の申出書の提出があれば、調査によりその内容の検討をして、納めすぎの税金があると認められた場合には、減額の更正を行うことになる」としています。したがって、申出のとおり更正されない場合は、不服申立てをすることができないわけです。
なお、更正の請求に際しては、請求理由の基礎となる「事実を証明する書類」の添付が義務付けられました。そして、虚偽の記載をして更正の請求書を提出した人には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになっています。
来年2月16日からスタートする「平成23年分の所得税確定申告」でも、国税庁は例年通り国税の電子申告システム(e-Tax)の利用時間を24時間にすることにしています。
このほど国税庁が、平成23年分の所得税確定申告期においてもe-Taxとe-Tax・作成コーナーヘルプデスクの受付時間を延長することを発表しました。
まず、e-Taxの受付時間(送信可能時間)については、平成24年1月4日(水)から3月15日(木)までの月曜日から金曜日(祝日を除く)は「午前8時30分〜午後10時30分」(通常は午前8時30分〜午後9時)までとなります。
しかも、1月16日(月)から3月15日(木)までは「24時間送信可能」となります。
ただし、メンテナンスが行われている時間帯は利用できないので注意が必要です。そのメンテナンスの時間帯は、毎週月曜日午前0時から午前8時30分が予定されています。
さらに注意が必要なのは、申告期限の3月15日(木)の24時を過ぎて受信した所得税の確定申告データは、申告期限後に提出されたものとみなされるということです。
次に、e-Taxを利用するときのパソコン操作などに関する問い合わせに対して、電話で対応してくれる「e-Tax・作成コーナーヘルプデスクの受付時間」も延長されます。通常は平日の午前9時から午後5時までしか対応してくれませんが、平成24年1月16日(月)から3月15日(木)までは、祝日を除く月曜日から金曜日までと2月19日、26日、3月4日、11日の日曜日については、受付時間が「午前9時〜午後8時」までとなります。
11月30日、東京電力(株)が問い合わせていた福島第一・第二原子力発電所の事故の被害者への賠償金に関する所得税法上の取扱いについて、個人の生活に関連するものは非課税、個人事業者の営業に関連するものは事業所得として取り扱うという見解を国税庁が示しました。
東京電力(株)の福島第一・第二原子力発電所の爆発事故で被害を受けた人については、現在、被害の状況に応じて賠償金の支払いが始まったところです。
その賠償に関しては、原子力損害賠償紛争審査会において、今年8月5日に「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」が取りまとめられ、東京電力(株)では、その中間指針の内容に基づいて確定した損害に対して賠償を行っているとしています。
問題は、被害者が受け取る賠償金に対する税の取扱いでした。そこで、東京電力(株)では、税法に基づいて次のように取扱って良いかどうかを国税庁に問い合わせていました。
避難等対象者への賠償金については、(1)避難生活等による精神的損害、避難・帰宅費用、一時立入費用、生命・身体的損害、検査費用(人)、家事用の資産に係る検査費用(物)としてお支払する賠償金については、非課税所得に該当し、所得税の課税関係は生じない。(2)就労不能損害としてお支払する賠償金のうち、給与等の減収分に対する賠償金(転居費用及び通勤費増加額としてお支払する部分を除いたもの)については、一時所得に係る収入金額となる。
また、個人の事業に関する賠償金については、(1)営業損害、業務用の資産又は棚卸資産に係る検査費用(物)としてお支払する賠償金については、事業所得等に係る収入金額となる。(2)前記(1)の場合において、事業所得等に係る収入金額として算入すべき時期は、一般的には、被害を受けられた方が賠償金のお支払に関する合意書を当社あて送付したことにより、当社との間で合意が成立したときとなるが、継続して、その補償対象期間に応じそれぞれの年分の事業所得等に係る収入金額に算入し、これに基づいて申告しても、差し支えない。
これらの取扱いについて、国税庁は11月30日付で「貴見のとおりで差し支えない」とする回答を出しています。
国税庁が平成22年度までの3年間で1件も利用されなかった90の申請手続きとシステム改修費に比べて利用件数の少ない516の申請手続きを、e-Taxでは利用停止にすることにしました。
国税庁が今回示した方針は、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が今年8月3日に決定した「新たなオンライン利用に関する計画」に基づいたものです。同計画では、書面も含めた申請等がない手続(3年程度申請等件数が0件の手続)については、そもそもオンライン利用の効果の発現が見込めないことから、オンライン利用を停止することを求めています。また、システムの管理・維持費などとの費用対効果の面でも利用率の低い手続きについては、オンラインでの利用を停止する方向で検討することを要請しています。
この要請に応えて国税庁は、次のようにe-Tax(国税の電子申告システム)で利用できる手続きを停止する方針を固めました。
平成20年度から22年度までの間にオンライン及び書面等で1件も申請などがなかったものとしては、「所得税の特別修繕費の金額または期間の認定申請書」や「法人の適格退職年金契約の承認申請書」など90の手続きを対象としています。
一方、e-Taxにおいて利用可能な申請などの手続きの中でも、システム改修作業に要する費用に比べて利用件数が少ないものとしては、「保全差し押さえをしないことを求める申請」や「相続税の延納の許可」など516の手続きを対象としています。
なお、「新たなオンライン利用に関する計画」では、「オンライン利用停止の判断を行おうとする場合には、利用者ヒアリングや意見公募手続(パブリック・コメント)等を通じて、利用者から意見を聴取するものとする」とされていることから、国税庁では現在、郵便やFAX、インターネットによる意見などを募集中(今年1月5日必着)です。