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環境対策では全ての化石燃料を課税対象に。東京都税調が23年度答申

2011年11月28日

このほど東京都の税制調査会が「平成23年度東京都税制調査会答申」をまとめました。同答申では、東日本大震災を教訓とした防災都市づくりの財源には、特定の税に偏ることなく、多様な税の組み合わせで捻出するよう訴えています。

 平成23年度東京都税制調査会答申は、平成21年度から3年間にわたって重ねてきた審議の成果を取りまとめたものです。「分権」と「環境」の2つの視点から国・地方を通じた税制のあり方について石原慎太郎都知事から諮問を受け、「社会経済の持続可能性を高めることを基軸に据えて議論してきた」としています。
 具体的な税制改革の方向性を見てみると、まず地方消費税については「行政の無駄見直しとともに、地方消費税の充実に向け、地方の役割の増加を踏まえた税率引上げの議論を具体的にすべき」として、国の消費税の増税と足並みをそろえるよう求めています。
 次に、法人二税ですが「実効税率の引下げは慎重であるべき。産業競争力強化等は国の責任で地方法人課税はその手段に馴染まない」とこちらは国の政策とは逆の立場にあることを鮮明にしました。そして、法人事業税の一部国税化措置(地方財政調整制度)については「分権に逆行。税制の抜本改革を速やかに行うことを前提とする措置であり、直ちに撤廃すべき」と廃止を求めています。
 個人住民税では「所得税への給付付き税額控除の導入を検討すべき」として所得再分配の機能を高めることを要請。そして、環境問題では「全ての化石燃料を課税対象とし、燃料ごとに炭素含有量(CO2排出量)比例税率を上乗せ。ただし揮発油、軽油(自動車用)は現行税率を維持し、本則税率を超える部分を温暖化対策税に振替える」ことを重要視しました。
 そして、東日本大震災を教訓とした防災都市づくりでは、財源調達と税制について「地域ごとの課題や施策の性格に応じた課税を行うとともに、特定の税に偏ることなく、多様な税の組み合わせが適当」としています。

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消費税の税率は1度目が8%。そして2度目で10%へ―五十嵐財務副大臣

2011年11月28日

政府税制調査会の企画委主査の五十嵐文彦財務省副大臣が、消費税の税率の引上げパターンについて初めて胸の内を明かしました。

 政府では、段階的に2010年代半ばまでに消費税率を10%にする方針を示していますが、五十嵐副大臣は11月21日の記者会見で、もう一歩踏み込んだ発言をしました。
 具体的には「あくまでも個人的な見解」としたうえで、段階的については「3段階は難しくて、2段階にならざるを得ない」としました。これは消費税の税率アップについて政府は「選挙を経ないとそれは実現されない」と言明していることから、「衆議院議員の任期が切れるまでには選挙はあるわけで、その任期となる2013年の10月以降でないと引き上げは難しい」ということと、2012年から2010年代半ばまでの間隔が短いため経済界から「3段階では対応できない」という声が出ているからです。
 したがって、2012年から2015年までの間に1度目の税率引上げを行い、2度目(2015年または2006年)で消費税率を10%に持っていくことになるとしたわけです。
 さらに、1度目の税率アップでは8%になる可能性を示唆しました。これについては「10%と5%の間では7.5%が真ん中になりますが、小数点がつくようなことは難しい。そこで、7%か8%ということになります。その7%か8%のどっちをとるのかというと、7%では計算しにくい」と説明しています。

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海外資産の申告漏れ件数が過去10年間で最多に―22事務年度の相続税調査

2011年11月21日

このほど、国税庁が今年6月までの1年間(平成22事務年度)に全国の国税局・税務署が実施した相続税調査の状況をまとめました。それによると、海外資産の申告漏れが過去10年間で最多の116件を記録しています。

 相続税は、法定相続人が一人の場合だけでも基礎控除額が6,000万円と高額なことから、申告が必要な被相続人の数は毎年4万5千人程度です。
 今回、国税庁がまとめた相続税調査の状況によると、実地調査件数は1万3,668件(前事務年度1万3,863件)で、このうち申告漏れなどがあった件数は1万1,276件(同1万1,748件)でした。申告漏れ(非違)割合は82.5%(同84.7%)となっています。
 申告漏れ課税価格は総額で3,994億円(同3,995億円)となり、実地調査1件当たり2,922万円(同2,882万円)でした。
 加算税を含む追徴税額は総額で797億円(同856億円)で、実地調査1件当たりにすると583万円(同618万円)になります。
 さらに、悪質な不正にかけられる重加算税の賦課件数は1,897件(同1,970件)で、賦課割合は16.8%(同16.8%)でした。
 今回の発表で注目されているのは、納税者の海外資産に対する調査です。実地調査件数は695件(同531件)にのぼり、海外資産に係る申告漏れなどがあった件数は平成13事務年度以降で最多となる116件(同85件)を記録。海外資産に係る重加算税賦課件数も17件(同9件)となっています。ただし、1件当たりの申告漏れ課税価格が5,047万円(同1億661万円)となっていることから、相続税調査では数千万円単位の金額まで細かくチェックされていることが分かります。

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個人住民税の生命保険料控除の見直しも先送りへ―政府税制調査会

2011年11月21日

政府税制調査会が年末に決定する平成24年度税制改正大綱の詰めの議論を行っていますが、いま注目されているのは所得税の所得控除制度の見直しです。

 民主党が2009年衆院選のマニフェスト(政権公約)で子ども手当の財源確保のために廃止を打ち出していた配偶者控除については、子ども手当て自体が公約どおり実施されていないことや、消費税の税率アップ議論の本格化が控えていることから、廃止決定が見送られました。
 次に、注目されているのが個人住民税の生命保料控除です。平成23年度税制改正大綱に「生命保険料控除など政策目的へのインセンティブの色彩が強い控除の在り方については、個人住民税の『地域社会の会費』としての性格や地域主権改革の推進等の観点のほか、公的保障の補完としての性格や国民の自助努力の支援等の観点を踏まえ、検討します」とされているからです。
 生命保険料控除は、その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ、保険料の割合に対して所得から一定額が控除されるというものです。一般の生命保険と個人年金保険の両方が控除の対象で、個人住民税は最大7万円が所得から控除されます。この個人住民税における生命保険料控除を廃止・縮小する方向で検討することになっているわけです。
 しかし、11月16日に開かれた第18回税制調査会に金融庁から「政権交代後の平成22年度税制改正においては、介護・医療保障の必要性の高まりを踏まえて制度の拡充が図られ、来年1月より、医療・介護といった保険商品にも対応した保険料控除制度が実施されることが決まっている。各保険会社では、この新制度の実施に向けて、保険契約者への周知やシステム対応に万全を期している。こうした中で、再度、制度を変更することは、保険会社のみならず保険契約者等にも多大な混乱を生じさせることになりかねないことから、適当でない」とする意見が出され、生命保険料控除の廃止・縮小も見送られる公算が高まっています。

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東日本大震災で液状化被害を受けた土地の評価方法を解説―国税庁Q&A集

2011年11月14日

11月に入り、平成23年度分の相続税の申告がスタートしましたが、東日本大震災で被災した納税者の間で国税庁が作成した「東日本大震災に係る財産評価関係質疑応答事例集」がクローズアップされています。

 「東日本大震災に係る財産評価関係質疑応答事例集」には、大震災が発生した平成23年3月11日以後に相続税の申告期限を迎える納税者で、指定地域内(災害地指定された地域)にある土地(特定土地)を平成23年3月10日以前に相続もしくは遺贈により取得した人に関係する取り扱いが盛り込まれています。
 とくに、課税時期が東日本大震災の発生日より前である場合の取扱いが注目されていて、そこには「地割れ等が生じた特定土地等の評価」や「津波被害を受けた特定土地等の評価」などについてその評価手法が解説されています。
 被災地の千葉県に土地を持つ納税者が強い関心を持っているのが「液状化現象により被害を受けた特定土地等の評価」ですが、同質疑応答事例集では「震災特例法の適用を受ける特定土地等については、平成23年分の路線価及び評価倍率に、原則として、指定地域内の一定の地域ごとに定めた『調整率』を乗じたものを路線価及び評価倍率として評価することができます。なお、液状化現象により、庭の陥没等の被害を受けた特定土地等については、物理的な損失が生じていると考えられますので、陥没等に係る原状回復費用の見積額の100分の80に相当する金額が、災害減免法第6条(相続税又は贈与税の計算)における土地等の『被害を受けた部分の価額』に該当します」と回答しています。

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政府税調で沈静化したはずの相続税増税論が再燃

2011年11月14日

11月9日に開催された政府の第16回税制調査会の席上、日本労働組合総連合会(連合)が相続税の強化を政府に要請しました。政権与党民主党の支持母体の連合からの要請とあって、相続税増税論議が再燃する可能性が高まっています。

 今回の税制調査会では、日本経済団体連合会と日本商工会議所、日本税理士会連合会、そして連合の4団体から提出された各団体の平成24年度税制改正要望について説明を受けました。
 連合は所得税を再構築して、所得再分配機能と財源調達機能を高めることや、消費税の益税問題などの制度的な不備を早急に改善すること。消費税を社会保障給付の安定財源として、段階的に引き上げることなど他団体と似たような要望を提示したわけですが、相続税の課税強化を求めたのは連合だけでした。
 具体的には、「相続税は、資産の再分配機能、所得税の補完機能として社会的に重要な制度として位置づけること」を連合は強調。次のように説明しました。
(1)課税遺産総額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数とされている相続税の基礎控除の計算を、課税遺産総額=2,000万円+400万円×法定相続人数とすること。なお、死亡保険金の相続税非課税限度額は維持すること。
(2)相続税(3億円超は50%)および贈与税の最高税率1,000万円超の税率50%を引き上げる等、累進性を高める税率構造の見直しを行うこと。
(3)小規模宅地等の課税特例(相続した住居に引き続き住み続ける場合、240 uまで評価額を80%減額する措置)は継続すること。事業承継税制は、現行制度を維持すること。
(4)現行の相続時精算課税制度は、将来的には一生累積課税方式(生前贈与を一生にわたって累積課税し、最終的には相続時に相続税と合わせて課税する方法)とすること。

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給与計算ミスで厚生年金給付額が減額。会社から受ける補償金は一時所得

2011年11月07日

従業員のために加入しなければならない厚生年金保険の標準報酬月額の計算ミスを犯した会社について、厚生年金給付額が低くなる従業員に対して支払う補償金は一時所得として課税するという見解を東京国税局が示しました。

 今回の東京国税局の見解は、管轄内にある民間企業が同国税局に対して事前照会してきたものに対して文書で回答したものです。
 照会内容は、同社の平成11年以前の給与計算システムの誤りが原因で、同社の社員や退職者の一部に厚生年金保険の標準報酬月額が過少に決定されていたことから、同社が、年金記録の訂正が認められなかった社員と退職者に年金減額相当額を補償することにしたというものでした。
 会社員の場合、国から給付される1ヵ月あたりの年金は、夫の分が老齢厚生年金(40年加入している人の場合は平成16年改正の水準で101,000円)と老齢基礎年金(同水準で65,000円)、そして、妻の分の老齢基礎年金(同水準で65,000円)を合わせた金額(同水準で231,000円)となります。照会内容に該当する従業員たちには、この中の老齢厚生年金について標準的な水準よりも低い金額が給付されるわけです。年金記録の訂正は原則として認められません。
 そこで同社は、年金減額相当額としての補償金を支払うことにしました。
具体的には、厚生年金保険の平成21年度年金額の報酬比例部分の算式を用いて1年分の年金減額相当額を算出し、その1年分の年金減額相当額に補償年数を乗じた金額として支払うことにしました。補償年数は、補償要因ごとに補償すべき額を算定することができないことから、年金受給開始年齢から100歳までの年数としています。
 問題は、その補償金にどのような課税が行われるのか不透明だったことです。同社は「従業員が受ける補償金は、(1)標準報酬月額が正しく決定されていたとすれば受け取ることとなる老齢厚生年金の年金減額相当額を補償するものであり、従属的な役務提供の対価としての性質を有するものではないこと、(2)当社の採用していた給与計算システムの誤りに基因して支払われるものであり、各種手当てのように雇用契約に基づき支払われる給付とは性質を異にしていることから給与所得には該当せず、臨時・偶発的な一時の所得として一時所得に該当するものと考えます」と説明。これを東京国税局が容認したわけです。

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昨年度分の法人の申告所得漏れは1兆2,557億円。消費税は大口・悪質化

2011年11月07日

このほど、国税庁が今年6月までの1年間(平成22事務年度)に全国の税務署が行った法人税と消費税の税務調査の結果を取りまとめました。それによると、消費税に関する不正計算が大口・悪質化の傾向を示しています。

 全国の税務署では、大口・悪質な不正計算が想定される法人を中心に、今年6月までの1年間で12万5,000件(前年対比89.7%)に対して実地調査を実施。このうち、法人税で何らかのミスがあった法人は9万件(同90.0%)でした。申告漏れ所得の総額は、1兆2,557億円(同61.3%)で、それに対する追徴税額は2,520億円(同66.3%)となっています。
 一方、法人に対する消費税調査については、法人税との同時調査で11万7,000件(前年対比89.2%)に実地調査を行っています。このうち、消費税で何らかのミスがあった法人は6万5,000件(同91.2%)で、追徴税額は557億円(同90.7%)でした。注目すべきは、調査1件当たりの追徴税額です。前年よりも1.9%も多い47万8,000円となり、消費税に関する不正計算が大口・悪質化の傾向を示しています。
 税務署が実施する法人に対する税務調査では、無申告法人や赤字を装っている法人の洗い出しに焦点が絞られています。無申告法人については、5,300件(前年対比154.4%)に対して調査を実施し、総額で法人税102億円、消費税55億円、合わせて157億円(同154.3%)が追徴課税されました。
 その中には、稼働している実態を隠すため、故意に納税地を移転したり、借名口座を用いて利益を隠ぺいするなどして、無申告を装っていた事案が400件あり、それらに対して法人税69億円、消費税12億円、合わせて81億円(同210.4%)が追徴課税されています。
 また、赤字法人については、約5万2,000件(前年対比92.7%)に対して調査を実施し、それによる申告漏れ所得金額は総額で6,592億円(同56.0%)にのぼりました。とくに、調査した赤字法人のうち約6,000件(同87.5%)が、本来黒字でした。それらに対して税務署は合計で488億円の法人税と212億円の消費税を追徴しています。

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