(社)日本医師会(原中勝征会長)が平成24年度の「医療に関する税制に対する意見」をまとめました。社会保険診療報酬に対して消費税が非課税となっている現行制度を見直すことを強く求めています。
医師の不足や偏在による地域医療の崩壊が懸念されていますが、医師や医療機関にとって不利な税制は医業経営環境の悪化をさらに助長しています。そこで、日本医師会では、毎年、政府に対して税制改正要望を行っているわけですが、平成24年度税制改正に向け、今回も意見書を取りまとめました。
同意見書は「医業経営に関するもの」や「医療法の改正に伴うもの」、「患者健康予防に関するもの」など全部で25項目に上っています。なかでも、医師会が強く見直しを求めているのは、現行の社会保険診療報酬に関する消費税の非課税制度の見直しです。
現行の制度では、社会保険診療報酬等に対する消費税は非課税とされているため、本来、事業者は消費税を払う必要がないのに医師や医療機関は消費税を払っているのです。具体的には、医療機関は医薬品や医療材料、医療器具を仕入れた際に消費税が課税されます。本来ならば患者が払う治療費(社会保険診療報酬)に消費税を課税して、その消費税から医療品などを仕入れた際に課税された消費税を差し引く仕入税額控除を行い、残りを税務署に納めればよいわけですが、社会保険診療報酬が非課税とされていることから、それができないわけです。
日本医師会では、こうした不合理な制度について「これを解消するには、社会保険診療報酬等に対する消費税を課税制度に改め、かつ患者負担を増やさないように制度設計することにより、社会保険診療報酬等に関わる一切の消費税非課税に関する不合理を解消できます」と強く政府に訴えかけています。
与謝野馨経済財政相が8月23日、内閣府がまとめた「経済成長と財政健全化に関する研究報告書(中間整理)」を公表しました。民主党代表選を前に、消費税率の引き上げに反対する意見をけん制する内容となっています。
同研究報告書の主要項目は、「税収弾性値」と「インフレによる財政の健全化」、「インフレと高い税収弾性値によって財政健全化を図る政策スタンスについて」の3本建てで構成されています。まず、名目経済成長率が1%増えたら、税収が何%増えるかを示す税収弾性値については、「2000 年代以降の平均では4程度といった指摘はあるが、分母である成長率がゼロに近いため数値が大きく振れやすいことや、種々の税制改正が行われたこと等を考慮すると、信頼できる推計値ではない」などとして、「高い税収弾性値を前提に大きな自然増収を期待することは適当ではない」と指摘しています。
次に、インフレによる財政の健全化については、「民間需要の増加による実質成長を伴わない単なる物価上昇による成長では、財政は健全化しない」と、物価上昇に伴う税収増も期待できないことを説明。そして、インフレと高い税収弾性値によって財政健全化を図る政策スタンスについて「 インフレと高い税収弾性値によって税収が増加するとして、その負担の増加分を具体的に誰がどのように負うことになるのか、現時点においては不明である。民主的な課税の決定という観点から、負担の具体像が明確でない税収に期待するのではなく、現時点において国民が予見し得る形で税負担を法律に明確に規定し、財政を健全化することが重要と考えられる」と消費税率の引き上げによる安定的な税収確保を促す内容となっています。
政府・与党社会保障改革検討本部が6月30日に決定した「社会保障・税番号大綱」について、日本税理士会連合会(池田隼啓会長、日税連)が意見書を作成し、政府に提出しました。
社会保障・税番号大綱は、乳児から老齢者まで全国民に共通番号を割り振り、その共通番号と氏名、住所などを登録したICカードを一人ひとりに配布して、年金手帳や健康保険証、介護保険証などとして使えるようにしようという国民総背番号制の骨子を取り決めたものです。
このほど、日税連が同大綱に関する意見書を政府に提出したわけですが、番号制の基本原則となる法整備の項目に記されている文言のうち9箇所について変更・見直しを求めています。
例えば、付番の対象となる個人について大綱では「住民基本台帳法第7条第13 号の住民票コードが住民票に記載されている日本の国籍を有する者及び同法第30 条の45 の表の上欄に掲げる中長期在留者、特別永住者等の外国住民とする」としています。これについて、日税連は「納税義務を負う非居住者たる個人を番号制度の外に置くことなり、課税について著しい不公平を生ずる懸念がある」と指摘。
その懸念については「非居住者たる個人もしくは番号を付番されている日本居住個人が、海外の非居住者を経由することにより、日本の国内源泉所得に関する納税を不当に免れる可能性を高めることとなる」と説明し、「極力すべての納税義務者に付番するような制度とすべきである」と要請しています。
働く女子にうれしい情報サイト「escala cafe(エスカーラ・カフェ)」(提供:(株)毎日コミュニケーションズ)が、「復興増税」に関するWebアンケート調査の結果を公表しました。それによると、57.9%が「反対」としています。
政府は、東日本大震災の復興財源確保を目的とする臨時増税の対象について、所得税と法人税を軸とする方向で最終調整に入りました。そこで、エスカーラ・カフェでは、同サイトの会員の女性を対象に臨時増税に関するWebアンケート調査を実施。22歳から34歳までの働く女性から337件の有効回答を得ました。
調査の結果、臨時増税に57.9%が「反対」としているわけですが、「反対」の理由としては、「増税の前に、無駄の徹底的な洗い出しが済んでいないと感じる」など増税以外の方法で財源を捻出すべきという声がありました。さらに、「適した配分・有意義な使い方がなされるのか」「名目はあっても、実際の使い道が不透明」と、震災復興に税金が役立てられるのかという疑問や、「被災地域の人にまで増税してしまう可能性がある」「あまり増税すると消費が低迷して結果的に復興が遅れるのでは」など、増税が復興の足かせになることを心配する意見もありました。
一方、酒税やたばこ税が見送られ、所得税と法人税を軸とした増税が検討されていることについては、「反対」が75.4%を占めました。その多くが理由として「酒やたばこなど嗜好性の強いものから取るべき」としています。
エスカーラ・カフェでは「女性たちは、震災復興のための資金確保は必要だと考えており、増税の必要性も否定していません。増税はどうしても必要なのか、どこでどのように使われるのか、納得のいく説明を求めているのです」と分析しています。
東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県及び福島県の3県に納税地を有する法人に対して、国税庁が法人税などの確定申告書を発送することを告知しています。
国税庁は、東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県及び福島県の3県に納税地を有する納税者について国税の申告・納付等の期限を延長していましたが、このほど、その延長の期限を今年9月30日としました。
これを受け、岩手県、宮城県、福島県の3県の納税者は、今年3月11日から今年9月29日までに期限が到来する国税の申告・納付等(確定申告や中間申告など)を今年9月30日までに行わなければなりません。
そこで、国税庁では、見合わせていた法人税関係の申告書用紙の発送を再開したわけです。申告書用紙の発送対象は、次の法人です。
(1)平成23年2月決算法人、3月決算法人、4月決算法人及び5月決算法人の確定申告書、並びに平成23年8月決算法人、9月決算法人、10月決算法人及び11月決算法人の予定(中間)申告書を提出する必要のある法人のうち、まだ申告を終えていない法人
(2)平成23年6月決算法人の確定申告書及び12月決算法人の予定(中間)申告書を提出する必要のある法人
なお、e-Tax(国税の電子申告システム)で申告している法人についても、国税庁では同様にメッセージボックスへ格納を行うことにしています。
ただし、引き続き国税の申告・納付等の期限が延長されている次の地域の法人の納税者については、申告書用紙の発送は行われません。
岩手県:宮古市、山田町、大船渡市、陸前高田市、住田町、釜石市、大槌町
宮城県:石巻市、東松島市、女川町、多賀城市、気仙沼市、南三陸町
福島県:川俣町、田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村
京都地方税機構(京都市左京区)が、法人府民税・法人事業税・法人市町村民税の3税の課税事務を共同化する方針を固めました。来年4月から窓口を一元化する予定です。
京都地方税機構は、京都府と府内25市町村(京都市を除く)で組織する広域連合です。課税権は府・市町村にあることを前提に、地方税の賦課徴収業務を共同で実施する組織として設立され、平成22年1月から徴収業務を開始しています。
このほど、同機構が法人府民税や法人事業税、法人市町村民税の3税の課税事務を共同化する方針を固めたわけですが、これにより府内に拠点を持つ企業はこれまで府や市町村ごとに別々に納付(提出)しなければならなかったものが、地方税機構に一括して納付できるようになります。こうした地方分の法人関係税の課税事務を共同化するのは全国初の試みです。
同機構では、人員体制の拡充などを含めこれから準備を整えることから、府内の事業者が実際に一元化の恩恵を受けるのは来年2012年4月からになると想定しています。
今回の課税事務の一元化により同機構では、これまで法人関連税の受付などの事務処理にかかっていた人件費など約5億円が20%減の4億円に圧縮できると試算しています。
ただ、危惧されているのは、京都府の人口の6割を占める京都市が同機構に加盟していないことです。課税事務が一元化されたとしても、京都市とそのほかの市町村に拠点を持つ企業は、京都市と地方税機構の2箇所に法人関係税を納付することになるからです。
このほど、東日本大震災の被災地に対して国税の申告・納付の延長措置が講じられている「岩手県」「宮城県」「福島県」の一部地域について、国税庁が延長期限の期日を指定しました。
国税庁では、東日本大震災の被災者に対する緊急の対応として「青森県」、「岩手県」、「宮城県」、「福島県」、「茨城県」の5県に納税地を有する納税者について、平成23年3月11日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を「別途国税庁告示で定める期日」まで延長する措置を平成23年3月15日に講じました。
このほど、被災後の状況などを踏まえ国税庁では、「岩手県」、「宮城県」、「福島県」のうち、次の市町村を除く地域について、延長期限の期日を指定しても問題ないと判断。平成23年9月30日を期日に指定し、国税の申告・納付を行うよう告示しました。
期日指定されていない市町村
岩手県:宮古市、大船渡市、陸前高田市、釜石市、住田町、大槌町、山田町。
宮城県:石巻市、気仙沼市、多賀城市、東松島市、女川町、南三陸町。
福島県:田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、
浪江町、葛尾村、飯舘村。
なお、青森県と茨城県については、平成23年6月3日付国税庁告示により、すでに延長期限の期日が平成23年7月29日に指定されています。
このほど、社団法人不動産協会(理事長:木村 惠司氏・三菱地所(株)会長)が平成24年度の税制改正要望を発表しました。登録免許税の手数料化や不動産譲渡契約書に係る印紙税の廃止を求めています。
不動産協会では、「震災からの復興と日本経済の活性化に向けた政策要望」を取りまとめ、その中に平成24年度の税制改正要望を盛り込んで関係官庁に要望実現を求めていくことにしています。
「震災からの復興と日本経済の活性化に向けた政策要望」では、冒頭、被災地の復興について、復興特区の創設などの施策を速やかに実施していくことを訴えています。同時に「日本経済の再生なくして被災地の復興はない」を強調。街づくりや住宅供給を担っている立場から「当協会としては、被災地の一日も早い復興のためにも、経済の成長に貢献していきたい」と協力姿勢をアピールしています。
経済成長の要は「大都市の国際競争力の強化」にあるわけですが、そのために同協会では「都市の防災性能の向上に加え、災害時における事業継続に不可欠な自家発電設備や備蓄倉庫等の拡充等、BCP機能の強化を促進することが必要」としました。
一方、平成24年度の税制改正要望ですが、注目されるのが「消費税率引き上げへの対応」です。政府が税と社会保障の一体改革に関連し、消費税率を2010年代半ばまでに10%まで段階的に引き上げるとしていますが、同協会では「住宅取得時の初期負担の軽減のために、住宅には軽減税率を導入するなどの負担軽減措置が必要」としています。
また、住宅等の建築物には、消費税だけでなく不動産取得税・登録免許税・印紙税・固定資産税と、重畳的に重い税負担が課されている現状を説明。これについて「税制の抜本改革に際しては多重課税を排除し、不動産取得税の廃止や登録免許税の手数料化等、不動産流通課税を抜本的に見直すとともに、不動産譲渡契約書に係る印紙税を廃止すること」を要求しています。
国税庁が平成22年度の国税の滞納状況を取りまとめました。それによると、新規に発生した年間の総滞納額は平成時代最少の額をマークしています。
平成22年度中に確定申告などにより課税された国税に対して、新規に発生した滞納額が占める割合、いわゆる滞納発生割合は、1.6%でした。具体的に金額で見てみると、平成22年度の新規発生滞納額は6,836億円(前年度7,478億円、8.6%減少)で、過去最も新規滞納発生額の多かった平成4年度の36.2%まで減少し、平成元年以来最少の額となりました。
一般の納税者が一番気にしている消費税の総滞納額については、3,398億円(前年度3,742億円より9.2%減少)となっています。
一方、こうした国税の滞納について国税庁では、「納税者個々の実情を踏まえながら、大口・悪質事案や処理困難事案に対して厳正・的確な滞納整理を実施するとともに、消費税滞納の残高圧縮に向けて確実に処理することに重点を置いて滞納の整理促進に努めている」としています。
その結果、平成22年度の滞納整理済額は、7,591億円(前年度8,061億円より5.8%減少)となり、新規発生滞納額を755億円上回る整理が行われました。このうち、消費税については、3,561億円(前年度3,860億円より7.7%減少)が整理されています。
国税庁が今年2月から5月にかけて実施した「国税電子申告・納税システム(e-Tax)のアンケート」の調査結果を公表しました。それによると5千円の電子申告控除を適用したくて利用を開始した人がかなり増えています。
e-Taxは、自宅や会社にあるパソコンを使ってインターネットを通じて国税の申告・納税ができる便利なシステムです。国税庁では、このe-Taxをさらに使い勝手の良いシステムにするため、毎年利用者にアンケート調査を実施して、その回答を参考にシステムの改良を行っているわけですが、今年はこのアンケート調査に対して58,028件(前年度36,631件)の回答がありました。
まず、e-Taxが利用された手続を見てみると、所得税の申告(5万4,393件)が一番利用されていました。そして、利用しようと思った理由を聞いてみたところ、今年もトップは「税務署または金融機関に行く必要がないから」(4万4,634件)で、二番目が「税務署の閉庁時でも申告書の提出ができるから」(3万6,269件)でした。
ただし、昨年3番目だった「パソコンを有効活用したいから」が4番目(2万8,257件)となり、3番目には、昨年8番目だった「ペーパレス化が図れるから」(3万1,994件)が入りました。目だったのは昨年7番目だった「電子証明書等特別控除制度(5千円の税額控除)を受けるため」が今年6番目(2万1,052件)にランクアップしたことと、昨年5番目だった「国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーが便利であり、さらに直接送信できるから」が11番目(6,433件)に大幅にランクダウンしたことでした。
回答者から出された主な要望・意見では、「確定申告書等作成コーナーの社会保険料控除等所得控除について、入力画面の遷移が煩雑で入力の仕方が分かりにくいので、より分かりやすく、入力しやすくしてほしい」とする要望に対して、国税庁が「社会保険料控除などの入力画面については、利用者のご意見を踏まえ、改善を検討していきます」と回答している点が注目されています。