電子取引の具体的な保存方法やその確認方法について

以前、「電子帳簿保存法の改正点について(電子取引)」として、電子取引保存の改正点を解説しました。
改正時期は、令和4年でしたが、企業への認知が進んでいない現状を考慮して、事実上、令和6年以降に延長されています。
今回は、電子取引の具体的な保存方法や、適法な保存の確認方法について、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」と「お問合せの多いご質問」に基づいて解説します。
(参考)
国税庁:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和3年7月改訂)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_06.pdf
国税庁:お問合せの多いご質問(令和3年11月)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf

■真実性・可視性の要件

電子取引の具体的保存は、「真実性の要件」「可視性の要件」の両方を満たすものでなければなりません。
実務では、これらの要件を踏まえた上で、取引ごとの実態に応じて適正な保存方法を確立する必要があります。

真実性の要件とは

次の@〜Cのいずれか1つを行うことが必要です。
@:タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
A:取引情報の授受後、一定期間内にタイムスタンプを付すとともに、保存者等の情報を確認できるようにしておく
B:記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで授受及び保存を行う
C:正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その運用、備え付けを行う

真実性の要件とは、改ざん防止のための措置です。
いずれか1つを実行すればよいため、たとえば、タイムスタンプの確認や付与の機能を備えたシステムを導入できなくても、Cの事務処理規程の策定・運用・備付けがあれば問題ありません。
事務処理規程については、国税庁が文章のサンプル「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を公開しています。
(参考)国税庁HP:参考資料(各種規程等のサンプル)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
なお、データの授受の方法によって、異なる改ざん防止措置を適用することも認められます。
Bは、訂正・削除が事業者側から物理的にできないシステムや、訂正・削除をしても前の内容が残るシステムにおいて、授受と保存の両方ができる場合に限られます。
ECサイトやクラウドサービスなどに、こうした要件を満たすシステムが多いと考えられます。

■可視性の要件とは

@〜Bのすべてを満たす必要があります。
@:保存場所に電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにすること
A:電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
B;次のA〜Cの検索機能を確保すること(A:取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できること、B:日付と金額は範囲指定で検索できること、C:3項目のうち2項目以上の任意の組み合わせで検索できること)

保存したデータを、税務調査などで示す際の措置です。
「改ざんできない状態で保存すれば終わり」ではなく、任意のデータが速やかに出力できなければ、適法に保存していないと判断される可能性があります。
検索機能の確保(B)については、原則的にはA〜Cのすべてを満たす必要があります。 ただし、税務職員からのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、BとCの要件は不要です。
さらにこのうち、2期前の売上高が1,000 万円以下の事業者については、検索機能の確保(B)の要件がすべて不要となります。

■電子取引の具体的な保存方法

真実性の要件・可視性の要件を踏まえた上で、実務では、データを授受するサービスやツールごとに、適法な保存方法を企業内で確立する必要があります。
国税庁は、下記のような方法で保存することを例示しています。

■電子メールにおける取引の場合

電子メールにおいて、請求書や領収書などの取引情報が添付データでやりとりされる場合は、その添付データを保存します。
ただし、電子メールの本文で取引情報をやりとりしている場合は、メール本文の内容を保存しなければなりません。
まとめると、下記のような保存方法になります。
【保存対象が添付データの場合】
@電子メールそのものをサーバ等の自社システム(運用委託しているものを含む。以下、「サーバ等))に保存する
A添付された請求書等をサーバ等に保存する
【保存対象がメール本文の内容の場合】
@電子メールそのものをサーバ等に保存する
A電子メールの内容をPDF等にエクスポートして保存する

■Webサイトにおける取引の場合

ECサイト等における取引では、領収書のPDFデータ等をダウンロードできる場合が一般的です。
このように、発行者のWebサイトから取引情報をダウンロードできる場合、一般的には、可視性の要件などを満たすためにデータをダウンロードして保存することになるでしょう。
その場合は、真実性の要件はB以外を満たす必要があると考えられます。
これに対し、真実性・可視性の要件を満たすWebサイトであれば、ダウンロードをせずにそのままWebサイト上で保存する方法も考えられます。(保存期間に問題がないか、別途検討する必要があります。)
したがって、Webサイトにおける保存方法は、主に以下の方法になります。
【保存方法】
@Webサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する
A要件を満たすWebサイト上に領収書等を保存する

(注意)ダウンロードできるデータがHTML等の場合

ダウンロードできるデータがHTML等の場合、国税庁は、下記の方法を認めています。
@Webサイト上に表示される領収書等の画面をスクリーンショットし、自社のサーバ等に保存する
AWebサイト上に表示されたHTMLをPDF等の形式に変換し、自社のサーバ等に保存する

取引内容が変更されるおそれのない、合理的な方法によってデータを編集するのであれば、変換後のデータによる保存も認められます。
国税庁では、具体例として「HTML→PDF」や「XML→エクセル」への変換例をあげています。
ただし、手動でデータを転記し、別形式のデータを作成して保存する方法は、合理的な方法による編集にあたらないためNGです。

クラウドサービスによる取引の場合

クラウド事業者が提供するクラウドサービスを介して、発注や請求等をしている場合は、下記の保存方法が考えられます。
保存時の注意点は、Webサイトの内容を参照してください。
【保存例】
@要件を満たすクラウドサービスに領収書等を保存する
Aクラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する

■電子取引の要件を満たしているかどうか確認する方法

市販ソフトの認証制度を活用する

市販のソフトウェア及びソフトウェアサービスが要件に適合しているかどうか、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証を行っています。
認証を受けているかどうかは、JIIMAのWebサイトで公開されている「電子取引ソフト法的要件認証製品一覧」や、認証マークの表示の有無で確認することができます。
ただし、ソフトの機能性以外で満たさなければならない要件もあるため、その点は、企業ごとに判断しなければなりません。

税務署への相談

国税局や税務署に相談する方法もあります。
一般的な質問は、国税局の電話相談センターに行いましょう。
これから具体的に導入・開発するシステムに対する要件適合性を確認したい場合は、事前の相談窓口があります。
国税庁HP:要件適合性に関する事前相談窓口
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/10.htm

▲ページトップへ戻る