個人事業主によくある青色申告と白色申告の誤解

個人事業主で青色申告をしていない方の中には、「複式簿記がわからないから青色申告はできない」「だから簡単な白色申告をしている」というケースが見受けられます。
確かに、青色申告の特典である青色申告特別控除65万円を受けるには、複式簿記と呼ばれる方法で記帳することが一般的です。
しかし、青色申告特別控除には65万円ではなく10万円の控除もあり、10万円の控除であれば複式簿記による記帳は求められていません。
要件を満たせば、現金主義による記帳も可能です。
たかが10万円と思われるかも知れませんが、この10万円は、所得税だけでなく住民税や国民健康保険料の計算にも影響する10万円です。お金を払わずに計上できる、とても貴重な控除となります。
さらに、白色申告にもそれなりに厳しい要件がありますので、白色申告をしている個人事業主の方は、ぜひ来年から、青色申告で10万円(できれば65万円)の控除を受けることも検討していただきたいと思います。
この記事では、白色申告をしている個人事業主に向けて
・青色申告を受けるための要件
・65万円の控除を受けるための要件
・10万円の控除を受けるための要件
・白色申告の要件
を整理してみたいと思います。

■青色申告とは

青色申告とは、個人に不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがあるときに行うことのできる確定申告の方法です。
不正をしにくい方法で会計処理を行う代わりに、税金を計算する上でのさまざまな特典を認めてもらえます。
対象となるのは「居住者」のみですので、日本に住んでいないなどの理由から非居住者にあたる人はできません。(所得税法第143条)
青色申告をしない人は、自動的に白色申告となります。

青色申告の特典

青色申告をする納税者は、さまざまな特典を受けることができます。
適用するにはそれぞれ必要な手続きがありますが、いずれも白色申告には使うことができません。
<青色申告の主な特典>
・青色申告特別控除(最大65万円)
・青色事業専従者給与の必要経費算入
・純損失の繰越控除、繰戻還付
・30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例
・低価法による棚卸資産の評価
・貸倒引当金の一括評価
など
青色申告特別控除のほか、青色事業専従者給与や繰越控除は、特に節税効果の高い特典といえます。

■青色申告や青色申告特別控除の要件

この項目では、
・青色申告をするための要件
・65万円の控除を受けるための要件
・10万円の控除を受けるための要件
を整理します。

青色申告をするための要件

青色申告をするには、次のいずれの要件も満たす必要があります。
・青色申告承認申請書を期限内に提出する(初回のみ)
・法定の帳簿書類に取引を記録し、一定期間保管する

<申請書の提出期限>
・青色申告を始めたい年の3月15日まで
(1月16日以後に開業した場合は、事業開始から2ヶ月以内)

<法定の帳簿書類>
青色申告をすることが認められる記帳の方法には、
・正規の簿記の原則にしたがった記帳
・簡易簿記による記帳
・現金主義による記帳
があります。
それぞれの方法で、作成する帳簿が変わります。

【正規の簿記の原則にしたがった記帳】
・仕訳帳
・総勘定元帳
・補助簿(現金出納帳、売上帳、仕入帳などを必要に応じて作成)
すべての取引を借方・貸方に分けて記録する仕訳帳と、勘定科目ごとに取引を記録する総勘定元帳を作成することがポイントです。複式簿記による記帳が必要となります。

【簡易簿記による記帳】
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
簡易簿記による記帳は、上記の帳簿だけでは正規の簿記の原則にしたがった記帳とは認められません。
これだけだと損益に関する取引以外の状況が網羅できず、正しい貸借対照表が作成できないからです。
しかし上記の帳簿に、預金や手形、元入金等の動きがわかる帳簿(債権債務等記入帳など)を加えることで、正規の簿記の原則にしたがった記帳と認められます。

【現金主義による記帳】
・現金式簡易帳簿(現金出納帳や固定資産台帳など)
現金主義とは、現金収支を基準にして収入や経費を記録する方法です。
ただし減価償却費などは、通常どおり期間の経過に応じて計上します。
現金主義を適用するには、次のいずれも満たす必要があります。
・前々年分の事業所得と不動産所得の合計額が 300 万円以下(※)であること
・「現金主義の所得計算の特例を受けることの届出書」を期限内に税務署に提出すること
届出書の提出期限は、「青色申告承認申請書」と同じです。
(※)青色事業専従者給与を必要経費とせずに計算した額

<青色申告の帳簿・書類の保存年数>
帳簿は7年間です。
書類(請求書等)も基本的に7年間ですが、5年間でよいものも一部あります。

65万円の控除を受けるための要件

次のいずれも満たす必要があります。
・不動産所得か事業所得があること(山林所得のみは対象外。不動産所得の場合は事業的規模であることも必要)
・正規の簿記の原則にしたがって取引を記録すること
・貸借対照表を含む「青色申告決算書」を作成すること
・上記の「青色申告決算書」を添付した確定申告書を法定期限内に提出すること
・電子申告か電子帳簿保存のいずれかを行っていること(行っていなければ55万円)

65万円の控除を受けるためのポイントは「正規の簿記の原則にしたがった記帳」です。
これによる記帳ができれば、貸借対照表を正しく作成することができるようになります。

10万円の控除を受けるための要件

65万円の要件を満たさない青色申告の控除は、10万円になります。
たとえば、
・正規の簿記の原則にあたらない簡易帳簿による記帳をしている人
・現金主義による記帳をしている人
・貸借対照表を作成していない人(損益計算書や所得の明細書は必要)
・期限後申告をした人
などが考えられます。

青色申告によくある誤解

複式簿記ができなければ青色申告ができないというのは誤解です。
さらにいうと、65万円の控除も、一定の要件を満たす簡易簿記で受けることができます。
そして冒頭のとおり、65万円の要件を満たさない簡易簿記や現金主義による記帳でも、10万円の控除を受けることはできます。

■白色申告をするための要件

次のいずれも満たす必要があります。
・法定の帳簿書類に取引を記録し、一定期間保管する
・確定申告書に収支内訳書を添付する
帳簿は、総収入金額(売上、雑収入など)や必要経費(仕入、給与など)を記載するものがあればよく、日々の合計金額をまとめて記載してもよいこととされています。

白色申告によくある誤解

上記の内容を見ると、白色申告は難易度が低いと思われやすいのですが、これには少々誤解があります。
まず、日々の合計金額をまとめて記載してよいと言っても、それほど記帳の手間が省けるわけではありません。
決算では、青色申告と同様に棚卸しや減価償却などが必要になりますし、白色申告には現金主義を認める法令がないため、未払金などの整理も必要となります。
このことから、白色申告で正しい記帳するために必要な簿記の知識は、青色申告の簡易簿記による記帳とあまり変わりません。
さらにいうと帳簿書類の保存年数についても、青色申告と同様に基本的に7年間となります。
こうなると、白色申告を続けるよりも、早めに青色申告特別控除10万円を受ける方法に慣れたほうがよいのではないでしょうか。

■青色申告特別控除を受けるには

まず、青色申告承認申請書を、期限内に税務署に提出します。
今からであれば、令和3年分からの適用が最短ですので、令和3年3月15日までに提出します。
経理が苦手な方は、申告書の作成を税理士に依頼して、65万円の控除要件を満たす青色申告決算書、確定申告書の作成を任せるという選択肢もあります。
特に令和2年分の確定申告から、電子申告か電子帳簿保存のどちらかを行わなければ控除額が55万円に下がってしまうのですが、税理士に依頼すれば電子申告も代行することができます。

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