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平成31年度税制改正で変わる「ふるさと納税」

平成31年度税制改正により、ふるさと納税に関する法令が改正されました。
新制度のスタートは、2019年6月1日からです。
今回は、平成31年度税制改正によって変わった「ふるさと納税」について解説します。

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自治体に対して行われる寄付のことです。
制度の内容については既にご存知の方が多いと思いますので、ここでは今回の税制改正に関わる部分だけ簡単に押さえておきましょう。

ふるさと納税には寄附金控除の特例分がある

通常、個人から地方公共団体への寄付は、その寄付総額から2,000円を差し引いた額が、所得税分(5%〜45%)と住民税(10%)の寄附金控除の対象になります。
「ふるさと納税」の場合、この控除に加えて、通常の寄附金控除では控除対象にならない残りの割合を「特例分」とし、住民税からさらに控除できる点が特長です。
つまり、ふるさと納税で寄付した金額から2,000円を除いた全額が、所得税・住民税の前払いに充てられることとなります。
ただし、特例分は住民税の所得割額の2割が上限となるため、各人の所得によって寄付できる上限が変わります。

ふるさと納税をすると返礼品がもらえる

ふるさと納税をすると、お礼としてその自治体の特産品などを受け取ることができます。
返礼品は、寄付の金額が大きいほど高価なものになることが一般的です。

平成31年度税制改正の内容

平成31年税制改正によってふるさと納税制度に関する法改正が行われ、改正に基づく告示や運用の方針などが総務省から示されました。
新しいふるさと納税のポイントは、
・指定制度の導入
・募集方法の改正
・返礼品の改正
・一時所得についての周知
の4つです。

改正の背景

指定制度の導入や、募集方法、返礼品の改正に至った背景には、自治体間の加熱する返礼品合戦があります。
もちろん、自治体間の競争そのものが悪いわけではありません。
ふるさと納税には、「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ」ることと「自治体間の競争が進むこと」という意義があります。

総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/

ところが、ふるさと納税の人気が高まっていくにつれて、返礼品の豪華さを競うような争いが激化してきました。
その結果、寄付金額に対して高価な返礼率を謳うものや、金券と同視できるギフト券、国外メーカーの人気製品などが返礼品として現れるようになったのです。
国はこれまで、こうした返礼品を送付する自治体に通知をしたり、該当する自治体名のリストを公開したりするなどの対応をしてきました。
そして今回の税制改正にともない、その募集方法や、返礼品に関する基準を設け、基準を満たした自治体のみを指定する指定制度の導入に至ったのです。

改正ポイント1:指定制度の導入

ふるさと納税の対象となる自治体は、6月1日から国の指定を受けた自治体に限られます。
指定を受けるには、国が示す基準を満たした上で、指定の申出を行わなければなりません。
万が一、指定を受けられなかった自治体があった場合、納税者が6月以降にその自治体にふるさと納税を行っても、寄附金控除の「特例分」の恩恵は受けられません。

改正ポイント2:募集方法の改正

指定制度の導入にともない、ふるさと納税の募集方法に基準が設けられました。
指定制度の下では、納税者の「適切な選択を阻害するような表現」を使ったふるさと納税の募集は行えません。
たとえば「お得」、「コスパ最強」、「ドカ盛り」、「圧倒的なボリューム」、「還元」などがこうした表現にあたるとして例示されています。

「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190401_05.pdf

改正ポイント3:返礼品の改正

ふるさと納税の返礼品については、次の基準が設けられました。
・「返礼割合」を30%以下とすること
・返礼品を「地場産品」とすること

「返礼割合」とは、寄付額に対し、返礼品の額が占める割合のことです。
仮に10,000円のふるさと納税であれば、その返礼品は3,000円以内でその自治体が調達できる品でなければなりません。
「地場産品」については、「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&A」によると、その自治体の区域内で「原材料の主要な部分が生産されたもの」や、その自治体の区域内で「製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているもの」とされています。
たとえば、自治体の区域内で生産された牛乳や果物を100%使用して、区域外で製造されたジェラートは、前者の例に該当するとされますが、1割程度しか使用されていないアイスクリームであれば地場産品とは認められないなどの考え方が示されています。
あくまで考え方の例示なので、実際には製品ごとの個別判断となると思われます。
「地場産品」という制限ができたことによって、6月以降は、国外製品や量販される家電、ギフト券などが返礼品として並ぶことはなくなるでしょう。

ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&Aについて
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190401_05.pdf

改正ポイント4:一時所得についての周知

指定制度の導入とともに、自治体は寄付をした人に、その返礼品が一時所得に該当することを、返礼品を送る際等に周知させるというルールが加わりました。
これは、返礼品合戦を抑止するものではなく、納税者への注意喚起です。
意識していない方もいらっしゃるかも知れませんが、ふるさと納税の返礼品は、受け取った人の所得として認識されます。
たとえば、返礼品が3,000円相当であれば、それは3,000円の収入です。
個人の場合、この3,000円は「一時所得」にあたります。

一時所得は申告しなくて良いケースが多い?

返礼品を受け取ったからといって、全ての人がその所得を申告しないといけないわけではありません。
一時所得には、50万円の特別控除額があるので、金額が50万円を超えなければ税金はかからず、申告も不要です。
また50万円を超えた金額についても全額が課税対象となるのではなく、超えた金額の2分の1しか税金はかかりません。
ただし、一時所得にはふるさと納税の返礼品以外にも該当するものがあります。
たとえばふるさと納税の返礼品が30万円相当でも、他の一時所得が40万円(たとえば一時金で受け取った保険金など)の場合、50万円をオーバーした20万円(※)が一時所得(課税対象は10万円)になるので、注意が必要です。

(※)返礼品30万円+保険金40万円−特別控除額50万円=20万円

サラリーマンの方が有利?

サラリーマンや公務員など給与所得者については、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告をしなくてよいというルールがあります。
そのため給与所得者は、一時所得が50万円を超えたからといって、直ちに確定申告が必要になるわけではありません。
ただし給与所得者は、他の理由で確定申告が必要になることがあります。
たとえば2箇所から給与をもらっている場合や、医療費控除を申告したい場合などです。
その場合は、たとえ他の所得が20万円以下であっても、その額を申告しなければなりません。

まとめ

ふるさと納税の改正によって、お得感あふれる返礼品でのふるさと納税の募集は、6月から自粛されることとなります。
しかし、3割以下とはいえお礼がもらえる上に、寄附金控除の特例分も受けられるのですから、ふるさと納税が今後も魅力的な制度であることには変わりありません。
納税者にとってのふるさと納税の趣旨は、納税者が自分の考えに基づき納税したい自治体をセレクトすることにより、故郷やお世話になった自治体を応援できることです。
今後も、本来の趣旨を忘れずにふるさと納税と付き合っていきましょう。

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