平成30年分(2018年分)の個人確定申告のポイント

個人確定申告の時期が迫ってきました。
今回は、平成30年分(2018年分)の個人確定申告のポイントとして、
・確定申告が必要な人
・確定申告の期限
・配偶者(特別)控除額の見直し
・医療費控除明細書の作成
・ID パスワード方式の新設
・財産債務調書・国外財産調書の提出
について解説します。

確定申告が必要な人

事業主であっても、全ての方が個人の確定申告をする必要はありません。
たとえば、役員報酬を年間1,200万円受け取る会社役員で、他に収入がなければ、年末調整で納税を終えることができます。
ただし次に掲げる方は、個人確定申告が必要です。
・個人事業主
・給与収入が2,000円を超える人
・他の所得が20万円を超える人
・2か所以上から給与を受け取っている人
・同族会社から賃貸料などの支払いを受けた役員・親族など

個人事業主

納税額が生じる方は、全て確定申告が必要です。
特に個人事業主については、仮に納税額がなくとも青色申告特別控除額や繰越控除を受ける場合、確定申告を行わなければなりません。

給与収入が2,000万円を超える人

給与収入が2,000万円を超える人は、そもそも年末調整の対象外です。
2,000万円の基準は「収入」であって「所得」ではありません。つまり給与所得控除額を差し引く前の総支給額で判断します。

他の所得が20万円を超える人

1か所から給与を受け取っていて、20万円を超える他の所得(給与や退職金を除く)がある場合、確定申告が必要です。

2か所以上から給与を受け取っている人

給与を2か所以上からもらっている人については、主たる勤務先以外から受け取った給与について年末調整を行えないため、確定申告が必要です。
ただし年末調整しなかった給与の収入額と他の所得(給与や退職金を除く)との合計が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。

同族会社から賃貸料などの支払いを受けた役員・親族など

同族会社の経営者やその親族は、その同族会社から、給与のほかに、貸付金の利子、店舗・ 工場などの賃貸料、機械・器具の使用料などの支払いを受けている場合、個人の確定申告が必要です。
それぞれ不動産所得や雑所得などに区分します。
これらの所得の合計がたとえ20万円以下だったとしても確定申告が必要となる点に注意が必要です。

確定申告をした方がよい人

上記に該当しない方でも、たとえば医療費控除や雑損控除など、年末調整で対応できない所得控除がある方は、確定申告を行うことで、源泉徴収された税額との差額が還付されます。

確定申告の期限

確定申告書の受付は、平成31年(2019年)2月18日(月)から3月15日(金)までとなります。
ただし還付申告書については、2月18日より前でも受け付けてもらえます。

配偶者(特別)控除額の見直しを

配偶者(特別)控除額の改正にともない、個人の確定申告においても、全ての人が配偶者(特別)控除額の見直しをいったん行う必要があります。
従来の配偶者控除・配偶者特別控除では、配偶者の所得額から納税者の控除額が決まる仕組みで、配偶者特別控除のみ納税者の所得制限がありましたが、今回の確定申告からは、納税者の所得が900万円を超えると2段階で控除額が下がるようになりました。
その一方で、配偶者の所得制限は緩和されたことにより、前回の確定申告と全く同じ収入でも控除額が変化する場合があるのです。
毎年同じ金額を記載されていた方は、今回の確定申告ではいったん金額を見直しましょう。

医療費控除は引き続き明細書の作成を

昨年分から医療費控除について明細書を作成し確定申告書に添付することが必要になりました。
ただし、平成31年分(2019年分)までは、従来どおり領収書の添付でもよいこととされています。 明細書は、基本的に支払先ごとに金額を記載しますが、健康保険組合などが発行する「医療費通知」を添付する場合は、まとめた金額を記載することができます。
また、従来の医療費控除との選択適用となる「セルフメディケーション税制」を摘要する場合も、専用の明細書の作成が必要です。

ID パスワード方式の新設

確定申告を「電子申告」で行う方法に、今回から「IDパスワード方式」が加わりました。
「電子申告」とは、国税庁の「e-Tax」システムを使用し、確定申告書をデータ送信する方法です。これまで「e-Tax」システムを利用するには、マイナンバーカードを取得し、さらに市販のカードリーダーを購入してカード情報を読み取るという準備が必要でした。
これに対して今回新設された「IDパスワード方式」では、マイナンバーカードもカードリーダーも必要ありません。
まず、税務署に身分証明書を持参して職員による本人確認を受け、「IDパスワード方式の届出完了通知」を受け取ります。
あとは自宅のパソコンから「e-Tax」にアクセスして、税務署で受け取った書類に書かれた16桁の利用者識別番号とパスワードを入力すれば準備完了です。
ただし、「IDパスワード方式」は、マイナンバーカードとカードリーダーが普及するまでのおよそ3年間の暫定措置であり、その後の対応は未定とされています。
後にマイナンバー方式での申告に統一される可能性もあるため、その点は理解しておきましょう。
なお既に電子申告をし、ID パスワード方式の届け出完了通知を受け取っている場合、今回のID パスワード方式の手続きは不要です。

電子申告のメリット

電子申告では、提出が義務付けられている書類の提出を省略できることや、自宅から確定申告が行えること、そして2年後からの青色申告特別控除額の引き下げを免れることができるなどのメリットがあります。
平成30年度税制改正により、2年後の2020年分の個人所得の確定申告から、青色申告特別控除額が現行の65万円から55万円に引き下がることが決定しています。
主に個人事業主の方に関係することですが、例えば不動産賃貸を事業的規模(おおむね5棟又は10室以上の貸付)で営み、不動産所得に対し65万円の控除を受けている方も同じく引き下げの対象です。
この55万円の控除を65万円のまま維持する方法の一つが、電子申告を行うことになります。
2年後の措置ではありますが、早めに電子申告に慣れるために、準備の少ないIDパスワード方式で電子申告にトライすることもよいでしょう。

マイナンバー方式を使うなら

IDパスワード方式の新設に伴い、従来の電子申告の方法を「マイナンバー方式」と改名しています。簡略化された部分もありますが、マイナンバーカードとカードリーダーが必要である点は変わりません。
もし「マイナンバーカード方式」で電子申告を始めたい方は、カードリーダーをスマートフォンで代用できないか確認してみましょう。
一部のスマートフォンでは、カードリーダーのアプリケーションソフトが開発されています。
国税庁では、カードリーダーのアプリに対応する機種を公開しているのでぜひ確認してみてください。

財産債務調書・国外財産調書の提出も忘れずに

確定申告が必要な方の中には、財産債務調書と国外財産調書という書類の提出も必要になることがあります。
この書類は納税するためのものではなく、保有資産を税務署に自己申告するためのものです。
提出期限は確定申告と同じで、2019年3月15日までとなります。

財産債務調書とは

財産債務調書とは、個人が12月31日末で保有する財産と債務の内容や価額を税務署に申告する書類です。
確定申告書を提出する義務のある人のうち、その年の所得の合計が2,000万円(退職所得を除く)を超え、かつ、12月31日時点で合計3億円以上の財産又は合計1億円を超える国外転出特例対象財産(上場株式等の有価証券、未決済の信用取引・デリバティブ取引の権利など)を保有する人は、提出しなければなりません。
財産債務調書を提出しない、あるいは財産を全て記載せずに提出すると、後に所得税などの税で「加算税」が生じた場合、その加算税がさらに5%加重されるペナルティを受けることがあります。
たとえば賃貸している土地や建物などを財産債務調書に記載せず、その不動産から生じた賃貸収入の所得税の申告もしなかった場合に、その所得税の加算税が通常より5%増えるということです。
また提出した時はこの逆で、加算税を5%減らしてもらえるという特典もあります。
通常の加算税は、無申告で10%〜20%、過少申告で5%〜15%、悪質なものにはさらに加重措置があります。

国外財産調書とは

国外財産調書とは、国外に5,000万円以上の財産がある場合に提出しなければならない書類です。
このことから、財産債務調書の提出は不要でも、国外財産調書の提出は必要になる方もいます。
提出しない、あるいは偽りの記載を記載した場合は、財産債務調書と同様に加算税を5%加重することに加えて、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることもあります。

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