共働き&家族経営の方必見!世帯の税負担を減らす方法

確定申告、年末調整の時期がやってきました。

今回は、所得控除を活用して世帯の税負担を減らす方法を解説します。
共働き&家族経営の方は、確定申告や年末調整の際に、家族のうち誰が所得控除を申告するのが一番得なのか、これを機に見直してみて下さい。

所得控除は所得が高い人が申告する方が得

所得控除とは、一定の支払いを行った場合や家族構成に応じて、所得から所定の金額を差し引くことができる制度です。
そして、所得控除の節税効果は、所得の高い人の方が高くなります。

なぜ所得によって節税効果が変わるの?

なぜ所得によって節税効果が変わるのでしょうか。
具体例で解説します。
Aさん(所得800万円)とBさん(所得400万円)とCさん(所得50万円)の3人で、同額の所得控除(仮に小規模企業共済等掛金控除50万円とします)を計上した場合、節税額にどのくらいの差がつくのか比較してみます。

まず、小規模企業共済等掛金控除を計上する前の所得税から確認しましょう。
Aさんの税額は87万2,500円、Bさんは20万8,500円、Cさんは6,000円です。

Aさん Bさん Cさん
所得金額 800万円 400万円 50万円
所得控除※ 社会保険料 112万円 56万円 0円
基礎控除額 38万円 38万円 38円
課税される所得金額 650万円 306万円 12万円
所得税額 87万2,500円 87万2,500円 6,000円

※ AとBの社会保険料は所得の14%で計算。Cは配偶者の扶養に入っていると仮定。
上記以外の所得控除は考慮しない。

続いて、同じ人物に対し、50万円の小規模企業共済等掛金控除を計上した場合の税額を確認します。

Aさん Bさん Cさん
所得金額 800万円 400万円 50万円
所得控除 社会保険料※ 112万円 56万円 14万円
小規模企業共済等掛金控除 50万円 50万円 50円
基礎控除額 38万円 38万円 38円
課税される所得金額 600万円 256万円 0円
所得税額 77万2,500円 15万8,500円 0円

Aさんの所得税額は77万2,500円、Bさんは15万8,500円、Cさんは0円に下がりました。
50万円の所得控除に対し、それぞれ10万円、5万円、6,000円と節税額が異なることがわかります。

原因は「所得税率」の仕組み

節税額の違いは、所得税率が所得の高い部分ほど高くなる仕組みによって生じるものです。
所得税の税率は下記のように決められています。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円超〜330万円以下 10%
330万円超〜695万円以下 20%
695万円超〜900万円以下 23%
900万円超〜1,800万円以下 33%
1,800万円超〜4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

これは、課税される所得金額の価格帯の末尾に全て「の部分」をつけるとわかりやすいです。
例えば所得200万円の人の場合、195万円以下「の部分」は5%、195万円超〜200万円の5万円「の部分」は10%ということを意味します。

では、この仕組みを踏まえてさきほどの例を考えてみましょう。
所得800万円のAさんは、50万円の所得控除が計上されたことにより課税される所得金額が650万円から600万円になりました。この価格帯の税率は20%ですから、50万円の20%である10万円が節税できたのです。
Bさんは、50万円の所得控除が計上されたことにより課税される所得金額が306万円から256万円になりました。この価格帯の税率はAさんの半分の10%ですから、50万円の10%である5万円の節税となったのです。
最後にCさんについては課税される所得金額は12万円ですので、50万円は控除し過ぎということになります。

つまり所得控除での節税効果は、税率が高い価格帯の方が高くなります。
簡単にいえば「所得が高い人の方が所得控除の節税効果が高い」ということです。
このことが共働きや家族経営など、所得のある人が複数いる世帯の確定申告や年末調整で重要になります。

家族のための支払いも対象となる所得控除って?

世帯の節税を考えた時、所得が最も高い人が所得控除を計上するのが望ましいですが、「その所得控除を計上するのが誰か、自由に決めてもいいの?」という疑問が湧きますよね。
所得控除にはまず「支払った本人」が控除するというルールがあり、さらに「自分のために支払った分」しか計上できないものもあります。
しかし中には、「自分のために支払った分」にプラスして「家族のために支払った分」も対象となる所得控除があるのです。それでは、家族のための支払いも対象となる主な所得控除をご紹介します。

生命保険料控除

生命保険料控除は、生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料の支払いに対する所得控除で、本人か家族(個人年金保険については、本人か配偶者)を受取人とする保険であれば控除の対象です。
特に、配偶者の扶養に入るために働き方を制限し始めた場合は、例年どおり保険料を申告すると所得に対する控除がオーバーしやすいため注意しましょう。
高い保険料を払っている割に年末調整の還付金が少ないと感じている方は、このケースに該当していないか確認しましょう。

社会保険料控除

社会保険料控除とは、健康保険や年金保険、介護保険、後期高齢者保険料の支払いに対する所得控除です。
本人か本人と生計を同じくする配偶者・親族の分であれば計上することができます。

医療費控除

医療費控除もまた、本人か本人と生計を同じくする配偶者・親族のために支払った医療費であれば計上することができます。
ただし医療費控除については少し注意が必要です。
医療費控除の金額は、医療費の額から「総所得金額等の5%」を差し引いた金額しか申告できません。
この「総所得金額等の5%」は10万円が上限です。
これを整理すると、医療費の額から差し引く金額は、
・所得200万円未満の人はその所得の5%
・所得200万円以上の人は一律10万円
となります。
このことから、医療費の額が10万円未満の場合、所得が高い人は1円も計上できません。
この場合は、あえて共働きで所得の低い方の確定申告に計上するとお得になることがあります。
例えば医療費の額が8万円の場合、上記のCさん(所得50万円)であれば、8万円−(50万円×5%)=5万5,000円で、5万5,000円の医療費控除を計上できるというわけです。
医療費が少ない場合は、所得の低い方でも節税額のシミュレーションをしてみましょう。

セルフメディケーション税制

医療費控除では、2017年からセルフメディケーション税制を選択できるようになりました。
セルフメディケーション税制とは、特定の成分を含む指定医薬品(スイッチOTC)の購入費が年間で1万2,000円を超える場合、8万8,000円を上限に医療費控除として申告できる制度です。
従来の医療費控除との選択になりますが、同じ世帯のうち1人が従来の医療費控除を、もう1人がセルフメディケーション税制を計上するのは可能となります。
では、医療費の額が12万円、スイッチOTCの購入費が5万円で、上記Aさん(所得800万円)とCさん(所得50万円)が夫婦の場合、どのように申告するとお得でしょうか。

答えは、Aさんがセルフメディケーション税制、Cさんが従来の医療費控除を申告する方法です。

Aさんが従来の医療費控除、Cさんがセルフメディケーションの場合(節税額5,900円)

Aさん Cさん
医療費控除 20,000円 38,000円
節税額 4,000円 1,900円

Aさんがセルフメディケーション、Cさんが従来の医療費控除の場合(節税額1万2,350円)

Aさん Cさん
医療費控除 38,000円 95,000円
節税額 7,600円 4,750円

ただし、セルフメディケーション税制を申告できるのは、予防接種や健康診断など政府が定める一定の取り組みを受けている人に限られます。

共働き&家族経営の方必見!世帯の税負担を減らす方法 まとめ

共働きや家族経営など、所得のある人が複数いる世帯の節税策を解説しました。
所得控除で最も避けたいのは、所得の低い人が控除額をオーバーして申告することです。
従業員でもこのような人がいたら声をかけてあげましょう。

▲ページトップへ戻る