●納税者からの審査請求激増で処理に拍車をかける国税不服審判所

このほど、平成29年度の「税務署への再調査請求」と「国税不服審判所への審査請求」について、それぞれの発生件数や審理の結果などを国税庁が取りまとめました。それによると、再調査の請求件数が激減する一方で、審査請求件数は過去5年間で最高をマークしています。

 

 税務署から課税処分を受けた納税者の救済制度には、税務署長などに対する再調査の請求と国税不服審判所長に対する審査請求、さらには、裁判所に訴訟を提起して処分の是正を求める司法上の救済制度があります。これらの救済制度の平成29年度の利用状況等を、このほど国税庁がまとめたわけですが、再調査請求の状況を見てみると、発生件数は1,814件で、前年度より8.4%増加したものの、3年前の3,191件と比べると大幅に減っていることがわかります。

 一方、審査請求の状況を見てみると、請求件数は2,953件で、前年度より18.7%増加し、しかも、この件数は過去5年間で最高でした。ちなみに所得税だけの審査請求件数は910件で、過去10年間で最高をマークしています。

 このように再調査の請求件数が激減する一方で、審査請求件数が大幅に増えたのは、国税不服申立制度が見直されて、20164月から納税者は税務署等の課税処分に対して、異議申立て(現・再調査の請求)を行わなくても、直接、第三者機関である国税不服審判所へ審査請求を行うことができるようになったからです。

 ただし、審査請求件数が増えたからといって、国税不服審判所の審理は以前と変わらず厳正に行われているようで、平成29年度の審査請求の処理件数は2,475件(前年度比26.3%増加)で、そのうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数は202件(一部認容148件、全部認容54件)でした。審判所が納税者に軍配を上げた割合は8.2%(一部認容6.0%、全部認容2.2%)で、前年度と比べると4.1ポイント減少しています。