●東京国税局が示した見解「二次相続でも信託財産の登記等の課税の特例は適用可能」に脚光
信託の契約時の委託者兼受益者と同一の委託者に信託財産が戻って来る場合には登録免許税が課税されない、いわゆる信託財産の登記等の課税の特例で、昨年、東京国税局が示した「二次相続の場合も要件さえ満たせば同特例は適用できる」とする見解がクローズアップされています。
東京国税局に持ち込まれたのは、「被相続人甲が、その有する不動産の管理、運用及び処分を目的として、甲の相続人(養子)である乙が代表取締役を務めるX社との間で、甲を委託者兼受益者、X社を受託者とし、建物、宅地及び金銭を信託財産とする信託契約を締結していたところ、実際に相続が発生して乙と甲の妻(丙)とで甲のその信託財産を2分の1ずつ相続し、両者ともに委託者となった。ところが、数年後丙が死亡。丙が相続した甲の信託財産を乙が二次相続で取得したわけだが、その際、信託財産の登記等の課税の特例が適用可能か」という質問でした。
原則として、信託財産の登記等の課税の特例が適用されるのは、「信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合」(要件1)であって、「当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合」(要件2)において、「当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(……)であるとき」(要件3)という要件を満たす必要があります。
今回の場合、まず甲の死亡後においても、信託の委託者となった乙及び丙のみが信託財産の元本の受益者であることに変わりはなく、要件2を満たしています。次に、乙は今回の信託の効力が生じた時における委託者である甲の相続人に該当することから、要件3も満たしていました。問題は、「信託財産を受託者から受益者に移す場合」(要件1)でした。
「信託の効力が生じた時からその信託の信託財産を受益者に移すまでの間の受益者を、例えば『信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る』などと限定する規定が同特例には設けられていない。したがって、信託財産の移転を受ける受益者が『信託の効力が生じた時における委託者の相続人』であること」という要件1を満たしていることから、東京国税局は同特例の適用は可能とする見解を示したわけです。