●定年延長を実施した会社が旧定年で支給した一時金について国税局が退職所得と判断
定年の年齢を延長した会社が、その延長前の定年に達した従業員に支払った一時金の所得区分について、このほど高松国税局が退職所得として取り扱って差し支えないとする見解を示し注目を集めています。
少子化に伴い新卒者の採用が難しくなってきていることから、ベテラン社員の定年を延長して働ける高年齢者を確保する企業が増えています。今回、高松国税局に対して文書で税務相談を持ち掛けていた会社も同様に就業規則を改正し、平成30年4月1日より従業員の定年を60歳から65歳に延長することを決定していました。
そして、その定年延長前(平成30年3月31日以前)に入社した従業員に対しては、延長前の定年である満60歳の月末に達したときに退職一時金を支給することにしました。ところが、その一時金が税務上の退職所得(所得税基本通達30-2(5)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》)に該当するかどうかが問題となったのです。そこで、同社は管轄する高松国税局に対し、事前に文書で相談をすることにしました。
その文書で同社は「定年延長前に入社した従業員に対して、旧定年のときに本件退職一時金を支給することとしたのは、当該従業員は、旧定年のときに本件退職一時金が支給されることを前提に生活設計をしており、定年延長に伴い本件退職一時金の支給が65歳になると不都合が生じるため、定年を延長する場合においても旧定年のときに本件退職一時金を支給するように要求していること、また、定年延長に伴い改正された退職金規程の改正前及び改正後においても本件退職一時金の金額は変わらないことは、本件退職一時金の支給が65歳に延長された場合には従業員にとって不利益な変更となるため、このような不都合及び不利益は、雇用主として配慮する必要があるので、定年延長前に入社した従業員に対し、旧定年のときに本件退職一時金を支給することについて『相当な理由』があると認められる」と説明。
したがって、「所得税基本通達30-2(5)に定める給与に該当し、退職所得として取り扱うのが相当である」との考えを示していました。これに対し高松国税局は「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答しています。