HBOCの罹患者が受けた乳房切除手術などの費用も医療費控除の対象に

大阪国税局管内の病院から、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の罹患者が受けた乳房切除手術などの費用が医療費控除の対象になるのかどうかの問い合わせについて、このほど同国税局が回答を出しました。

 

今回、大阪国税局に問い合わせをしていた病院では、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian CancerHBOC)が疑われる患者に対し、遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行い、HBOCと確定診断された方の中で希望する患者に、乳房切除手術または両側卵巣卵管切除手術と、これらの手術後の経過観察を行っています。

HBOCと診断された患者は、遺伝子に変異がない者と比べてがんの発症リスクが乳がんの場合で6から12倍、卵巣がんの場合は8から60倍高いとされ、現状において遺伝子の変異を直接治療する方法は存在しないものの、がんを発症していない乳房切除手術または両側卵巣卵管切除手術を受けることにより、乳がん等を発症するリスクをほぼ確実に減少させることができるとされています。

ただし、その手術費は、社会保険診療の対象ではありません。同病院においては、保険診療の際の診療報酬の額に準じた額を自費診療として患者に請求しているわけですが、これらの費用が所得税法第73条第2項≪医療費控除≫に規定する医療費に該当するかどうかが問題でした。

問い合わせに際し、同病院では「本件遺伝子検査等は、その患者がHBOCであるか否かを診断するために行われるものであるため、その費用は原則としていずれも医療費控除の対象とはなりませんが、本件遺伝子検査等の結果、HBOCであることが判明し、本件手術が行われる場合には、所得税基本通達734に定める場合と同様にいずれも医療費控除の対象として差し支えないと考えます」との見解を添えていたところ、このほど大阪国税局はその見解について「御照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。