●過去5年間で最多の告発件数をマーク―平成28年度マルサ白書

裁判所の令状を持って強制調査を行う国税局査察部が今年3月までの1年間(平成28年度)で実施した調査の概要、いわゆるマルサ白書を国税庁が明らかにしました。それによると過去5年間で最多の告発を行っています。

 

平成28年度においてマルサが調査に着手した件数は、178件でした。平成28年度以前に調査に着手した査察事案も含め、平成28年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は193件で、そのうち検察庁に告発した件数は132件、告発率は68.4%でした。この告発件数と告発率は、過去5年間で最も多い数字となっています。

平成28年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額161億円で、そのうち告発分は127億円でした。告発した事案1件当たりの脱税額は9,600万円となっています。

平成28年度に告発した査察事案を業種別に見てみると、一番多かった業種は「建設業」の30件で、2番目が「不動産業」の10件でした。

一方、平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は100件でしたが、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が14人に下されています。

今回のマルサ白書で注目されているものが、もうひとつあります。平成23年度税制改正で創設された消費税受還付未遂犯を2件告発している点です。消費税受還付未遂犯とは、仕入税額控除の仕組を逆手にとって不正に還付金を受け取ろうとした未遂者に刑事罰を与える規定。仕入れに係る消費税について、売り上げに係る消費税を上回るように偽装して不正に還付金を受け取った場合、受還付犯として「10年以下の懲役若しくは1,000万円(情状により脱税額)以下の罰金又はこれらの併科」という罰則が適用されますが、平成23年度税制改正によって不正に還付申告を税務署に行った時点でも未遂犯として同じ罰則が適用されるようになりました。