前年分の「扶養控除等申告書」や「従たる給与についての扶養控除等申告書」の記載事項について異動がない従業員を対象に、前年から異動がないことを記載した「簡易な申告書」の提出を受けて源泉徴収事務を行うことが、令和7年分から認められます。
申告書の様式は通常どおりのものを使用し、具体的には、本人の氏名、住所又は居所及びマイナンバー(個人番号)を記載の上、前年の記載事項から異動がない旨を余白に記載してもらいます。
(画像出典)国税庁:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ3-1
従業員にとっては、多くの記載を省略できるメリットがあり、企業側にも、変更がないことが視覚的に確認しやすいメリットがあります。
一方、扶養親族がある年齢に達したことで、下記のような変化がある年においては、簡易な申告書の提出はできません。通常どおり、記載を求める必要があります。
・「控除対象扶養親族」が 70 歳に達し、「老人扶養親族」に該当する場合
・「控除対象扶養親族」が19 歳に達し、「特定扶養親族」に該当する場合
・「特定扶養親族」が 23 歳に達し、「特定扶養親族」に該当しない「控除対象扶養親族」に該当することとなる場合
・「年少扶養親族」が 16 歳に達し、「控除対象扶養親族」に該当する場合
・国外居住親族の年齢の変動により、扶養控除の適用要件である年齢等の区分が変わる場合
(参考)国税庁:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ2-4
これにより、家族構成に変更がないにもかかわらず、簡易な申告書を提出できる人とできない人が存在することになります。かえって例年どおりにしたほうが混乱が少ない場合もあるのかもしれません。
なお、国税庁より「扶養控除等申告書の提出について」という、簡易な申告書による提出が可能かどうかのチェックリストが公開されています。こちらを従業員に配布すれば、企業側の負担を減らしつつ簡易な申告書を運用することもできそうです。
(参考)国税庁HP:扶養控除等申告書の提出について(簡易な申告書のチェックリスト付き)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0024005-130_02.pdf
簡易な申告書についての詳細は、こちらも参考にしてください。
(参考)国税庁HP: 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/shinkokusyo/index.htm
定額減税とは、所得のある個人の「令和6年分の所得税」と「令和6年度分の住民税所得割」から、1人あたり4万円(所得税3万円+住民税1万円)を減税する政策です。
減税対象者に、合計所得金額が48万円以下である同一生計の家族がいれば、その分も1人あたり4万円を加算して減税できるしくみになっています。
加算できるご家族の要件は、下記のとおりです。
・国内居住者であること
・同一生計であること
・合計所得金額48万円以下であること
・青色事業専従者や事業専従者(白色)にあたらないこと
上記のとおり、青色事業専従者や事業専従者(白色)の方は、加算対象として定額減税を受けることができません。
したがって、青色事業専従者や事業専従者(白色)である本人の所得税や住民税から定額減税を受けることになります。
本人に所得税や住民税所得割が発生する給与がある場合、6月以降の月次減税で事業主から減税を受け、減税不足分は市区町村から「調整給付」を受けることになります。
それでは、青色事業専従者や事業専従者(白色)に所得税や住民税所得割が発生するほどの給与がない場合(つまり、税額0円の場合)はどうでしょうか。
この場合についても、市区町村からの「調整給付」の対象になり、4万円が支給されるのですが、若干スケジュールが異なります。
(参考)国税庁HP:令和6年分所得税の定額減税Q&A(予定納税・確定申告関係【令和6年8月30日更新】問1-5-2
https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/pamphlet.htm
市区町村による調整給付は、2024年の夏以降、各市区町村のスケジュールで実施される「当初給付」と、2025年以降に行われる「不足額給付」の2段階で実施されます。
令和5年分と令和6年分の所得税額、令和6年度個人住民税所得割がすべて0円だった場合は、2025年以降の「不足額給付」のみの対象になります。
前年(2023年)の所得税と住民税に基づき、定額減税で引ききれないと見込まれるおおむねの額が支給されます。対象者には、市区町村から「確認書」が送付されます。
不足額給付は、上記の当初給付で不足する金額があった場合に、追加で行われる市区町村からの給付です。
不足額給付の額は、「2024年分の所得税」と「2024年の定額減税の実額」の両方が確定した後に決定しますので、実施されるのは、2025年以降になります。
税額0円である青色事業専従者等も、こちらの対象になります。
自治体によって確認が必要ですが、既にいくつかの自治体では、不足額給付のスケジュールを「令和7年7月以降」とアナウンスしていますので参考にしてください。
不足額給付を受給するには、本人から市区町村への申請が必要となる場合があるようです。特に税額0円の方は、内閣府のQ&Aによると、要件確認のため、原則として申請が必要とされていることに注意しなければなりません。
ただし、この対応も市区町村によって異なることがあるようですので、具体的な時期や申請方法については、お住まいの市区町村のホームページ等で確認しましょう。
(参考)内閣官房HP:新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置「よくあるご質問」より
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/FAQ/index.html#Q11
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/FAQ/index.html#Q26
昨年分の年末調整からの変更点は、年末調整の際に「定額減税」(年調減税)を同時に実施することです。
国税庁のHPで公開されている「令和6年分 年末調整のしかた」では、年調減税の手順に関する部分が赤色文字で強調されていますので、活用しましょう。
また、年調減税について個別により詳しい説明が必要な場合は、国税庁の定額減税のQ&Aや「令和6年分所得税の定額減税のしかた」等で確認することができます。
国税庁HP:令和6年分所得税の定額減税Q&A
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf
国税庁HP:令和6年分所得税の定額減税のしかた
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf
年末調整の各種様式も公開されています。
(参考)国税庁HP: 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/shinkokusyo/index.htm
上記のページには、基礎控除申告書や配偶者控除等申告書などと兼用になっている「年末調整に係る定額減税のための申告書」も掲載されています。
この様式により、合計所得金額1,000万円を超える方でも、年調減税の対象になる同一生計配偶者について減税してもらうための申告ができるようになります。
なお、「年末調整に係る申告書として使用」の欄にチェックが入った「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」でも減税は可能です。
年調減税の対象は、合計所得金額が1,805万円以下の方です。
この1,805万円は、基礎控除申告書に記載された「本年中の合計所得金額の見積額」などから判断します。
もし、基礎控除申告書の提出がなく合計所得金額の見積額の確認ができない従業員がいれば、その場合には口頭やメール等で見積額を通知してもらい、年調減税の対象かどうかを判断することができます。(定額減税Q&A 8-1【令和6年9月修正分】)