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【事業承継税制】後継者の役員就任期間・事業従事期間の要件の緩和

事業承継税制とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」により、都道府県の認定を受けた法人や個人事業主の事業承継を税務面から支援する制度です。先代経営者から、非上場株式や個人事業用の資産を後継者が取得する際に発生する贈与税や相続税を、一定の条件の下で猶予・免除する特例になります。
令和7年度税制改正では、法人の後継者についての役員就任期間の要件と、個人事業の後継者についての事業従事要件が、ともに緩和されました。
法人の後継者は、これまで非上場株式の贈与の日まで引き続き3年以上、その法人の役員等でなければならず、個人事業の後継者もまた、対象の事業用資産の贈与の日まで引き続き3年以上、その事業に従事しなければなりませんでした。
令和7年1月1日以降に行われる贈与からは、この「引き続き3年以上」がいずれも「贈与の直前」とされ、贈与が行われるまでにその状態であればよいことになりました。

改正前 改正後
法人版事業承継税制
(特例措置)
贈与の日まで引き続き3年以上、対象の法人の役員等であること 贈与の直前において
個人版事業承継税制 贈与の日まで引き続き3年以上、対象の個人事業に従事していること

今回の改正には、事業承継税制の適用期限が関係しています。
昨年度の税制改正により、法人版事業承継税制における「特例措置」の適用期限は令和9年12月31日、「特例措置」の適用に必要な都道府県への「特例承継計画」の提出期限は令和8年3月31日となりました。同時に、個人版事業承継税制の適用期限は令和10年12月31日、都道府県への「個人事業承継計画」の提出期限は令和8年3月31日となりました。
仮に「3年以上」の役員就任・事業従事要件がそのままであると、これから後継者探しを行う企業にとって事業承継税制を活用することが難しくなるのですが、今回の改正により、適用期限まで最大限に本税制を活用できるようになるといえます。
事業承継税制の適用要件や手続きは非常に複雑ですので、ご興味のある方は、お早めに顧問税理士等にご相談ください。

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【第1号・2号被保険者】企業型DC・iDeCoの拠出限度額の引き上げ

令和7年度税制改正により、企業型DC・iDeCoの拠出限度額が引き上げられました。

■改正後のiDeCo・企業型DCの拠出限度額の全体像

下記の図のようになります。

(画像出典)厚生労働省HP: 令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47600.html
以下、改正点を詳しく解説します。

■第2号、iDeCoの拠出限度額を「穴埋め型」の引き上げへ

会社員・会社役員などが属する第2号被保険者のiDeCoの従来の掛け金の拠出限度額には、その勤務先が企業年金に加入しているかどうかにより差がありました。改正後は、この差を埋める形でiDeCoの拠出限度額が月6.2万円(改正前は2万円または2.3万円)に引き上げられます。
【iDeCoの拠出限度額の改正(第1号・第2号)】

第2号被保険者 改正前 改正後
企業年金あり 月額2万円 月額6.2万円
企業年金なし 月額2.3万円(iDeCo+と合わせた額)

■第2号、企業型DCのマッチング拠出も月6.2万円へ

企業型DCを実施している企業に勤める第2号被保険者は、個人でiDeCoに加入するか、企業が「マッチング拠出」を導入する場合は、その企業型DCに掛け金を上乗せすることも選択できます。この「マッチング拠出」による企業と個人を合わせた拠出限度額もまた、iDeCoと同額の月6.2万円(改正前は月5.5万円)に引き上げられます。
また、改正前のマッチング拠出では、個人が上乗せする掛け金は企業側の掛け金を上回ることができないという規定がありましたが、この規定は廃止されました。
【マッチング拠出限度額の改正】

改正前 改正後
月5.5万円
(企業+従業員の拠出額)
月6.2万円
(企業+従業員の拠出額)
企業の拠出額を従業員が上回らないこと(従業員の拠出額≦企業の拠出額) 廃止

■第1号は月7.5万円へ

自営業者などが属する第1号被保険者の掛け金の拠出限度額も、国民年金基金等の掛け金と合わせて月7.5万円(改正前は月6.8万円)に引き上げられました。

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iDeCoの受取りに影響する退職所得控除の改正

令和7年度税制改正では、iDeCoや企業とのマッチング拠出の拠出限度額が拡充されるなど、老後の資産を私的年金で形成したい納税者にとって有利な改正が行われています。
その一方で、iDeCoなど確定拠出年金法に基づく給付を将来一時金として受け取る場合の退職所得控除が見直されています。この改正は、加入者にとって税負担面で不利になる場合があり、「iDeCo改悪」などとして一時話題になりました。
この記事では、後者の「改悪」と呼ばれている改正部分を解説します。

■退職所得控除の調整の見直し

老後資金となるiDeCoなどの私的年金と、企業からの退職金については、その給付が一時払いか年払いかによって税制上の扱いが異なります。
一時払いであれば優遇の大きい「退職所得」、年払いであれば公的年金と同じ「雑所得」となります。
今回見直されたのは、「退職所得」の扱いとなる老齢一時金です。
「退職所得」とはその名のとおり、企業からの退職金も含まれ、その計算は「(退職金の総額−退職所得控除)×2分の1」となります。
「退職所得控除」とは、退職金やiDeCoなどの老齢一時金から差し引くことができる控除であり、計算方法は「勤続年数(または加入年数)×40万円(20年を超過する年数は1年あたり70万円)」となります。つまり、勤続年数や加入年数が長いほど控除も大きくなり、納税者には有利となります。
一方、この勤続年数や加入年数には重複期間を排除するための調整規定があります。たとえば、2か所以上から退職金をもらう人のほか、退職金をもらう前や後にiDeCoなどから老齢一時金を受け取る人も、退職金と老齢一時金の受け取りの間隔が所定の年数以下であると重複期間の調整対象になります。
調整対象になると、通常の退職所得控除から重複期間に相当する分を差し引かなければなりません。控除が減少し、退職所得として課税対象となる金額が増えるため、税負担は大きくなります。
税制改正の対象となったのは、退職金を受け取る「前」にiDeCoなどの老齢一時金を受け取っている場合、重複期間の調整対象となる「受け取りの間隔」になります。

■5年ルールから10年ルールへ

改正前は、iDeCoなどの老齢一時金受け取った年が、後に退職金を受け取った年の「前年以前4年内」に該当すると、重複排除の調整対象となりました。つまり、「iDeCo→退職金」の順に4年内の間隔で両方を受け取るケースが調整対象でした。
このことから生まれたのが、いわゆる「5年ルール」です。先にiDeCoを一時金で受け取り、5年の間隔を空けて退職金を受け取れば、退職所得控除をフルで活用できるルールになります。
令和7年度税制改正では、この「4年以内」が「9年以内」に見直されました。それにより、「5年ルール」も「10年ルール」へと変わります。 たとえば、60歳でiDeCoの老齢一時金、65歳で会社の退職金を受け取る場合、改正前は重複排除の調整対象になりませんでしたが、改正後は調整の対象となり、退職所得控除をフル活用することができなくなります。

■受け取りの順番に引き続き注意を

なお、受け取りの順番が逆(退職金→iDeCo)の場合、重複排除の調整対象となるのは、iDeCoの一時金を受け取った年が退職金の受け取りから「19年内」となります。特に何も対策しなければ、こちらの順番になる方が多いのではないかと思います。この順番で受け取ると、たとえ10年の間隔を空けても、退職所得控除をフルに活用できない点は変わらないためご注意ください。
iDeCoや企業型DCの一時金など確定拠出年金法に基づく老齢一時金の受け取り時期については、顧問税理士にご相談ください。

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