前回は「収益性分析の指標」として、会社の「稼ぐ力」を計るROAやROEなどさまざまな利益率について解説しました。今回はその続きとして、会社の「効率性」と「安全性」を計るための指標をご紹介します。
「効率性」は経営資源をどれだけ効率よく回転させているか、「安全性」は会社がどれだけ安定した支払い能力を有しているかを示します。どちらも経営の健全性を判断する上で欠かせない指標です。
効率性分析のための指標として代表的なものは、「経営資源の回転の速さ」を見るものです。
たとえば100万円の設備投資で1,000万円の収益を稼ぐことは素晴らしいことですが、それに要する期間が1か月か1年か、あるいは10年かかるかによって効率性は大きく変わります。また、物販業であっても、100万円分の仕入れ商品で200万円分の収益を得られるとして、やはりその回転期間(=在庫期間・売上になるまでの期間)によって、効率性は大きく変わります。
効率性分析の指標では、回転率が高い会社ほど、少ない原資で大きな売上高を生み出せる力があることを表します。これにより、効率的な経営をしているかどうか判断できるのです。
本記事では、代表的な以下の4つの指標をご紹介します。
| 経営指標 | 計算式 |
|---|---|
| 総資本回転率 | 売上高÷総資本 |
| 有形固定資産回転率 | 売上高÷有形固定資産 |
| 棚卸資産回転率 | 売上高÷棚卸資産 |
| 棚卸資産回転期間 | 棚卸資産÷1か月あたりの売上高 |
以下、一つずつ解説します。
計算式:売上高÷総資本
会社の所有するすべての資産から生み出された売上高の回転率です。1.0以上(1回転以上)が理想となります。
計算式:売上高÷有形固定資産
有形固定資産(建設仮勘定を除く)から生み出された売上高の回転率です。目安は業種によって異なります。
計算式:売上高÷棚卸資産
棚卸資産から生み出された売上高の回転率です。在庫管理の上手い(=資金の効率的な活用が上手い)会社ほど高くなるといえます。
製造業や卸・小売業などでは製品や商品の回転の早さが売上に直結するため、とても重要な指標です。サービス業など棚卸資産の少ない事業ではあまり重要ではありません。
計算式:棚卸資産÷1か月あたりの売上高
棚卸資産が1か月のうちに何回販売されたのかを表す指標です。数字が小さいほど販売までの期間が短くなり、売上アップや資金繰りの改善につながります。なるべく年を通じて平均的な値を用いるよう、分子の棚卸資産は期首と期末の平均を使うことが一般的です。分母の1か月あたりの売上高は年額の12分の1を用います。
なお、計算式を分解すると「12か月÷棚卸資産回転率」でも計算できることがわかります。「棚卸資産回転率」は年単位となる数字でしたが、これを1か月単位に直した「棚卸資産回転期間」ではより感覚的に商品の回転数を捉えやすくなります。
こちらも、製造業や卸・小売業などで重要な指標となります。
参考までに、令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)(※)の結果から各指標を計算してみました。結果は以下のとおりです。
| 総資本回転率 | 有形固定資産回転率 | 棚卸資産回転率 | 棚卸資産回転期間 |
|---|---|---|---|
| 1.01回 | 3.43回 | 11.47回 | 1.0月 |
| 産業 | 総資本回転率 | 有形固定資産回転率 | 棚卸資産回転率 | 棚卸資産回転期間 |
|---|---|---|---|---|
| 建設業 | 1.08回 | 5.37回 | 9.94回 | 1.2月 |
| 製造業 | 0.92回 | 3.38回 | 7.17回 | 1.7月 |
| 情報通信業 | 0.99回 | 7.93回 | 26.38回 | 0.5月 |
| 運輸業,郵便業 | 1.11回 | 2.66回 | 172.40回 | 0.1月 |
| 卸売業 | 1.61回 | 9.12回 | 16.44回 | 0.7月 |
| 小売業 | 1.59回 | 5.20回 | 13.88回 | 0.9月 |
| 不動産業,物品賃貸業 | 0.29回 | 0.58回 | 3.62回 | 3.3月 |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 0.53回 | 4.32回 | 37.24回 | 0.3月 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 1.08回 | 2.22回 | 59.89回 | 0.2月 |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 1.07回 | 2.29回 | 67.50回 | 0.2月 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 0.96回 | 4.40回 | 55.12回 | 0.2月 |
続いて、安全性を分析するための指標を見ていきましょう。
安全性とは、会社の支払い能力に注目した指標です。返済不能に陥るリスクがないかを確認するために用いられます。たとえば、融資を多く受けていたり、短期の債務(買掛金、支払手形など)が支払いに使える資産(現金預金、受取手形、売掛金など)に対して多かったりすると、数字が悪くなります。
一方で、借入金が少ない会社は安全性の数値が良好となります。しかし、融資を受けて事業を行うことは会社の成長に欠かせないため、必ずしも「安全性が高い会社=成長性の高い会社」とは言えません。各指標の目安や、業種別の数値もぜひ参考にしてください。
本記事でご紹介する指標は以下のとおりです。
| 経営指標 | 計算式 |
|---|---|
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債×100 |
| 当座比率 | 当座資産÷流動負債×100 |
| 自己資本比率 | 自己資本÷総資本×100 |
以下、一つずつ解説します。
計算式:流動資産÷流動負債×100
会社の短期的な支払い能力を見るための指標です。
流動資産とは商品や売掛金など通常の営業サイクルにある資産や1年以内に現金化が予定される債権であり、流動負債とは買掛金など1年以内に支払い期限が到来する債務となります。一般的には200%以上が好ましいとされていますが、業種にもよります。
計算式:当座資産÷流動負債×100
「流動比率」の分母を当座資産に置き換えたものです。当座資産とは、現金預金、受取手形、売掛金、有価証券の合計であり、棚卸資産を含みません。これにより、なかなか現金化できない不良在庫を計算から除くことができます。100%以上が好ましいと言われています。
計算式:自己資本÷総資本×100
総資本(総資産)のうち、自己資本(純資産から新株予約権を除いた額)が占める割合を示す指標です。一般的に50%以上であれば安全性が高いと言われます。
一方、会社を成長させるには他人資本を活用した投資(銀行からの借り入れなど)も活用することが望ましいでしょう。そのため、40%前後が良いとする見方もあります。
それでは、令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)の結果から算定した各指標を見ていきましょう。
| 流動比率 | 当座比率 | 自己資本比率 |
|---|---|---|
| 185.7% | 155.9% | 44.4% |
| 産業 | 流動比率 | 当座比率 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 208.9% | 176.1% | 47.6% |
| 製造業 | 204.1% | 159.1% | 49.8% |
| 情報通信業 | 238.1% | 225.1% | 55.5% |
| 運輸業,郵便業 | 178.4% | 175.8% | 36.6% |
| 卸売業 | 175.6% | 150.7% | 43.5% |
| 小売業 | 150.3% | 120.0% | 36.0% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 169.4% | 129.5% | 40.2% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 228.7% | 221.0% | 65.6% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 151.4% | 144.2% | 16.0% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 158.6% | 151.8% | 34.5% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 185.2% | 179.5% | 45.1% |
(※)中小企業実態基本調査とは、中小企業の経営実態等を明らかにするため、平成16年に開始された国の調査です。調査対象は全国の約11万社の中小企業であり、総務省が実施した「経済センサスー基礎調査」等の結果をもとに選出されています。
(参考)中小企業庁:中小企業実態基本調査の結果から独自に計算
今回は、効率性分析と安全性分析に使用する経営指標について解説しました。
効率性分析では資産や在庫の回転率から経営資源をどれだけ効率的に活用できているかを、安全性分析では支払い能力や資本構成から会社の安定性を知ることができます。
前回の収益性分析に引き続き、財務諸表や試算表の数字を使ってすぐに計算できるものばかりです。ぜひ業種別の平均値や他の分析指標と組み合わせて、経営に役立ててください。