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【令和7年度税制改正】中小企業の設備投資に関する優遇税制の延長と拡充

■投資促進税制・経営強化税制が2年延長へ

中小企業の設備投資を後押しする税制である「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」がともに2年延長されます。これにより、令和8年度末(2027年3月31日までに事業の用に供した資産)まで同制度が適用されることとなりました。

■中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制とは、中小企業による設備投資を支援するため、一定の設備投資を行った場合に特別償却(設備の取得価額×30%)または税額控除(設備の取得価額×7%)の適用が認められる制度です。税額控除が認められるのは、資本金3,000万円以下の企業に限られます。
●対象企業
中小企業投資促進税制の対象となるのは、中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)や従業員数1,000人以下の個人事業主です。
●対象設備
中小企業投資促進税制の対象となる設備と、その最低額は以下のとおりです。

対象設備 最低額
機械及び装置 単価160万円以上
測定工具及び検査工具 単価120万円以上
単価30万円以上かつ複数合計120万円以上も可
ソフトウェア 単価70万円以上
事業年度内合計70万円以上
貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
船舶

●特別償却または税額控除
特別償却30%または税額控除7%(※)の選択
(※)税額控除額は法人税額の20%が限度になります。
(※)税額控除を適用できるのは資本金3,000万円以下の場合に限られます。(特別償却は3,000万円超えでも可)
●令和7年度税制改正における改正点
今回の延長にあたり、税制の内容について大きな改正点はありません。
ただし、みなし大企業の判定(投資促進税制の対象外となる法人の判定)に用いる大規模法人に、「農地所有適格法人」が含まれる企業については、判定ルールの改正があります。

■中小企業経営強化税制とは

中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けた設備投資に対し、特別償却(設備の取得価額×100%)または税額控除(設備の取得価額×10%)の適用が認められる制度です。資本金3,000万円超の法人の税額控除は7%になります。

●対象企業
中小企業経営強化税制の対象となるのは、中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)や従業員数1,000人以下の個人事業主です。

●対象設備
中小企業経営強化税制の対象となる設備と、その最低額は以下のとおりです。

対象設備 最低額
機械及び装置 単価160万円以上
工具 単価30万円以上
ソフトウェア 単価70万円以上
器具備品 単価30万円以上
建物附属設備 単価60万円以上

(※)上記以外に、令和7年度税制改正で拡充されるB類型「経営規模拡大設備」において「建物及びその附属設備」が追加されます。詳しくは後述します。

●特別償却または税額控除
・資本金3,000万円以下
特別償却100%(即時償却)または税額控除10%(※)の選択
・資本金3,000万円超
特別償却100%(即時償却)または税額控除7%(※)の選択
(※)税額控除額は法人税額の20%が限度になります。

●令和7年度税制改正における改正点
令和7年度税制改正大綱において、次の3つの改正点が示されています。
・改正点1: A類型およびB類型は指標の見直しを実施
・改正点2: C類型は廃止
・改正点3:売上高100億円超を目指すためのロードマップ作成等を要件とし「建物」への投資を追加

以下、類型ごとに改正点をまとめます。

  現行 改正後
生産性向上設備
(A類型)
生産性(※)が旧モデル比平均1%以上向上する設備
(※生産効率、エネルギー効率、精度など)
生産性(※)が旧モデル比平均1%以上向上する設備
(※単位時間当たり生産量、歩留まり率、投入コスト削減率のいずれか)
収益力強化設備
(B類型)
投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 投資利益率が年平均7%以上の投資計画に係る設備
経営規模拡大設備
(B類型の拡充)
新設(詳細は後述)
デジタル化設備
(C類型)
可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備 廃止
経営資源集約化設備
(D類型)
修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備 改正なし

●新設:B類型「経営規模拡大設備」とは
売上高100億超の中小企業の創出を促進するためのB類型の拡充措置です。
売上高100億円超の達成に向けたロードマップの作成などを要件とし、たとえば工場のラインや店舗など、生産性向上に関連する設備導入に伴う建物が税制の対象設備に追加されます。
【主な適用要件】
・投資利益率が年平均7%以上
・売上高100億円超を目指すロードマップの作成
・売上高成長率が年平均10%以上を目指す
・前年度売上高が10億円超90億円未満
・最低投資額1億円、または前年度売上高の5%以上
・賃上げ率2.5%または5.0%以上等
【対象設備】

対象設備 最低額
機械及び装置 単価160万円以上
工具 単価30万円以上
器具備品 単価30万円以上
ソフトウェア 単価70万円以上
建物及びその附属設備 一つの建物及びその附属設備の合計1,000万円以上

【税額控除または特別償却の割合】
・建物及びその附属設備
国内の事業所に勤務する雇用者給与支給総額の増加率(いわゆる賃上げ率)によって変わります。

前年度比+2.5% 特別償却15%または税額控除1.5%
前年度比+5.0% 特別償却25%または税額控除2%

・上記以外 通常どおり(即時償却または税額控除7%)

■(参考)中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の違い

中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制では、経営強化税制のほうが適用要件が厳しい分、適用対象や控除等の優遇が大きくなっています。
両者を、対象設備の範囲・適用手続き・優遇税制で比較すると、以下の違いがあることがわかります。
・対象となる設備の範囲

  中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
貨物自動車・内航船舶 対象 対象外
工具 「測定工具及び検査工具」に限定 A類型のみ「測定工具及び検査工具」に限定
器具備品 対象外 対象
建物附属設備 対象外 対象
建物及びその附属設備 対象外 経営規模拡大設備(B類型の拡充)のみ対象

・適用手続き

中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
税務申告 経営力向上計画の認定+税務申告

・優遇税制

  中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
資本金3,000万円以下 特別償却30%
または
税額控除7%
特別償却100%
または
税額控除10%
資本金3,000万円超 特別償却30% 特別償却100%
または
税額控除7%

(※)中小企業経営強化税制の「経営規模拡大設備(B類型)」の建物取得における税制は特別償却(15%or25%)または税額控除(1.5%or2%)となります。(前項参照)

■まとめ

以上のとおり、「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」が2年間延長され、引き続き税制優遇が受けられることになりました。税制の適用には細かい要件もありますので、設備投資を検討されている方はお早めに税理士にご相談ください。

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特定プラットフォーム事業者名簿を公開中

国税庁HPにおいて、プラットフォーム課税の対象となる特定プラットフォーム事業者名簿が公開されています。
【特定プラットフォーム事業者】

特定プラットフォーム事業者の名称 プラットフォームの名称
iTunes株式会社 App Store
Apple Books
Apple Podcasts
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 AWS Marketplace
グーグル アジア パシフィック プライベート リミテッド Google Play
任天堂株式会社 Nintendo eShop

(出典)国税庁HP:特定プラットフォーム事業者名簿より作成(執筆時点)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kazei/index.htm

プラットフォーム課税とは、国外事業者が同プラットフォームを通じて日本の消費者等にアプリ配信などインターネットを通じた役務提供を行う場合、その申告納税をプラットフォーム側が行う新しい制度です。適用は2025年4月以降の取引となります。
事業において特定プラットフォームを通じ海外事業者からアプリ配信等の提供を受ける場合は、顧問税理士に報告するとよいでしょう。

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